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ガルズモンズ 序章編
作者: たくと七星  (総ページ数: 25ページ)
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10~ 20~

*3*

第2話「守りたい人、心からの涙」



 門人にはよく解らなかった。気が付いたら牢獄にいて、そこを自分が必要だと言っているこの世界の住人に言われ、そして戦いで彼等の力を引き出す石版が手に渡った。今、彼女達に無理矢理ではあるが導かれるように牢屋の外を目指していた。


「うおりゃあああ!」
 ガーネットが大剣を振り下ろして牢を守る敵を薙ぎ倒した。
「やったあ、これで一つ目の牢屋を突破ね!」
 ガーネットは嬉しさで門人に飛びかかった。少年はこれにびっくりしてどうしたらいいか解らなくなってしまう。いかにも人柄のいい無邪気な女の子に抱きつかれた事なんて経験したこともないからだ。
「あの猫との戦いではどうなるかと思ってたけど、あんたのお陰で何とかなったわ。ありがとブヒン!」
 アカオークが門人の足をどつきながら礼を言った。
「だけど、この石版は何なんだ?」
「それについて教えましょう」
 門人が手に持っている石版が何なのか気になると、側にいたシオンが説明した。
「その石版は私達の力を高め、能力を引き出してくれる伝説のアイテム、石版に刻まれた矢印に指をなぞるごとに力を高められ、スキルを使えるようになる、そしてその石版を手にすることができるのは選ばれた人間、つまり門人さん、貴方自身なのです」
「え、選ばれた人間、そう言われてもよく解らないよ、俺なんかが何で、それにこの世界は・・・」
「はーい、あたしが教えてあげるね!」
 話についていけない門人にガーネットが無邪気に自分達の世界について話した。
「今この世界では帝国軍が力をつけているの。彼等は様々な戦士やモンスター達を従えてこの世界を我が物にしようとしてるの。それであたし達のリーダーのコーラルがレジスタンスを結成して帝国に立ち向かってきたんだけど、あたし達じゃ勝てない。そんな時にコーラルがある牢獄にこの世界を救うかもしれない人間が囚われているって予知してねあたし達はこの牢獄へやって来た。そしてその人間があなただったの」
「俺が、世界を救う?待って、何かの冗談だろう、俺がその人間?」
「そうよ、ああ、これで帝国からこの世界を救えるわ。だから貴方にはあたし達に協力して欲しいの?」
 ガーネットが手助けして欲しいと陽気に言うと、門人は急に険しい顔をした。
「どうしたの?」
「それは、俺を君達の都合のいいように利用するってこと?」
「え、え、利用って、どうしたの、そんな怖い顔して?」
 少年の表情にガーネットは戸惑っていた。自分としては彼の協力で世界が救われるからその手伝いをして欲しいと言っただけだったのに、
「俺は、君達の道具じゃない!それならあの牢屋で寂しくいた方がマシだ!」
 門人は自分が囚われた牢へと戻ろうとした。
「待って、ねえ待って!」
 ガーネットは慌てて門人の手を掴んで引き止めた。
「どうして戻ろうとするの、あたし何か悪いことを言った?言ったのなら正直に謝るよ!だから落ち着いて!」
 ガーネットに言われて門人は怒りと悲しみに満ちた顔をしながらも歩を止めた。
「君のこと、よく知らないのに勝手に話を進めたあたしがいけなかったんだよね、本当にごめんね!」
 ガーネットが謝ると、門人は驚いていた。自分の人生で相手が自分に謝るなんて無かったからだ。
「ねえ、君がどんな人なのか聞いていなかったね。教えて、君のこと・・・」
 赤いポニーテールの少女は水のような澄んだ瞳で門人に尋ねた。この少女を信じていいのだろうかと、門人は戸惑いつつも自分の過去を話した。現実の世界では周りの人や友達からいじめにあう日々、両親は出来のいい妹を可愛がり、自分は邪魔者扱いされ、自分は誰からも必要とされていない、あの牢屋の中でひっそりと死んでいたいと思っていた、と全てのことを話した。大して同情もされないと思っていた。
「くすん、ひっく、うえええええええん、可哀想だよーーーっ!」
 話を聞いたガーネットは溢れんばかりに涙を流して大泣きに泣いた。オーク達とモッチ達も泣きじゃくっている。シオンは泣いてこそいなかったが苦悶の顔をしていた。
「やめてくれ、憐れみなんかいらないよ・・・」
「違うもん・・・・本当に可哀想なんだもん・・・」
「え・・・?」
 門人が見ると、ガーネットは涙で頬を濡らしていた。
「だって、こんなにもひどい扱いをされてたなんて、こんな話を聞かされて涙を流さないわけがないよ〜・・・」
 ガーネットは涙を拭うと門人に言った。
「うん、辛い思いをしてきたんだね・・・・。君の周りにはひどい人たちがいたんだ。それで人を信じられなくなったんだね。でも、私達のことは信じて、あたしは絶対貴方にひどいことはしない。本当だから」
 ガーネットに続いてアカオークも言った。
「そうよ、あんたがどんな人生を過ごしたかは解らないけど、でもね人生何て辛いことや苦しいいことがたくさんあるのよブヒン、あたちなんて、一番の美女だって自負してるのに、周りは全然信じてくれなくて困ってるのよねブヒン、でも、こんな辛い時こそ、笑顔よ!」
 アカオークはそう言って門人の前にガッツポーズをした。
「あの、良かったらこれでも食べる?貴方に少しでも元気になってもらいたいからブヒ・・・」
 アオオークはミントアイスを差し出して門人に食べて欲しいと言った。モッチ達も可愛い笑顔をして門人に笑いを誘った。それを見て、門人も何かに救われているかのような気持ちになった。
「あ、お兄さんが笑ったモチ!」
 ミズモッチが言った。
「そうそう、その調子よ、あんたは笑顔が似合うんだから」
「大丈夫よ、これから先は、あたし達がどんなことがあっても、貴方のことを守ってみせるから」
 ゲーネット達の優しさに触れて少年の心は救われた気がした。
「信じてもいいんだね」
 門人が言うとガーネットは強く頷いた。少年は彼女との出会いにかすかに運命の出会いを感じていた・・・。
 

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