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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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Episode15【ただいま、おかえり。】

 今日からおよそ一週間振りに学校に行く。
制服をキチンと着てネクタイを締めて髪の毛を梳く。
「―――あ、千雪ちゃん。おはよう~!」
「千雪ちゃん、よく眠れたか?」
「おはよ、千雪。やばいっこんな時間!!」

料理をしているお母さんに新聞紙を読んでいるお父さん、仕事に遅れると言いパンを無理やり口に突っ込むお兄ちゃん。
「―――――お、おはようっ!!」
全てが懐かしい。
ずっと夢に見てきた光景、今、現実になってる。
夢みたいだ。
「じゃあ。行こっか。」
お母さんの声で私は外に出る。
今まで自分で鍵を閉めていたのに閉めてくれる人がいて行ってきますを言う相手がいる。
お兄ちゃん、お父さんって会社に行って私とお母さんは途中まで一緒に通勤する。

「「――では、行ってきます。」」

初めてすることなのに声が被ったから不思議すぎて二人で笑い合う。
一人で歩きだして少し経つとスラリと高い男の子がそこに立っているのを見つける。
―――――色素の薄い髪に整った顔。手には読みかけの本。
藍君だ。

『ごめん、本当に。俺は、千雪が好きだ。俺の好きな人は千雪なんだ。』

不意に思い出し、私は挨拶をする前から緊張する。
「おはよう、千雪。今日はね、言いたいことがあるんだ。」
 ドキドキ……。
「え、あぁ…うぅあぁ。」
固まってしまう私を藍君は見つめて息をつく。
「―――泰陽との事、頑張れ。」
「へ?」
私の間抜けな表情に藍君はクスッと笑う。
「……気づいてた、泰陽の事を千雪がどう思っているのかを知ってた。応援させて、俺は二人の仲を引き裂こうとは思ってない。むしろ、良くなって付き合ってほしい。」
なんで、皆。
私の気持ちに気付いちゃうんだろう??
とても、恥ずかしい。
「……俺、その事知ってて千雪の事を好きになった。泰陽にね千雪に罪悪感があったんだと思う、でも抑えられなかった。ごめん。しちゃって。」
藍君は悲しそうに、目を伏せながら言う。
「藍君、私こそごめんなさい。――――私、綾瀬君の事を振り向かせたい。」
「……うん。頑張れ。」
綾瀬君の事、頑張りたい。私、頑張る!
「頑張ってくるっ!!」
私はそう言い、学校に向かって走り出した。

「おはようっ!!」
私は教室の皆に向かって大声を出した。
すると。
皆が驚き、こちらを見る。
「……ご、ござい、ま、す。」
恥ずかしい。
「――――おはよ。高嶺!」
優しく温かい声が頭の上から聞こえた。
!?
綾瀬君が私の頭に手をのっけてにかっ微笑んでた。
「……あぁ、ううううう!――お、おは……よう。」
恥ずかしいあまり思わず、私は髪を梳く。
「え、あぁ。おはよ。」
「ち、千雪~~~!!!!!会いたかったよう!!」
綾瀬君をドンっと押して抱きついてくる。
「苺香っ痛った!なんで、押すんだよ!!」
「ねぇ千雪!!大丈夫、……ん?なんか嬉しそう?」
うん。
だって、面白いんだもん。
「――――高嶺さん、お久しぶりです。苺香ちゃん、おはようございます。」
穏やかな声が聞こえると苺香ちゃんはビクッと肩を揺らして真っ赤な顔で挨拶をしている。
嬉しいな、みんなと一緒に普通におしゃべりして……。
「ただいま。」
「―――おかえり。」
綾瀬君のボソッとした声が聞こえて私は驚いてから微笑んだ。

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