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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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10~ 20~ 30~

*20*

Epilogue 1、それぞれの道


 「……このように充実した時間を過ごすことが出来たのは、ここで出会ったかけがえのない友人たちのおかげにほか、なりません。」
静まりかえった講堂に、私の声が淡々と響く。
皆と目が合い、目頭がジーンとする。
これまでの出来事が一気によみがえってくる。
「私達は今日、この佳き日に、共に泣き笑った、この学び舎を後にしますが、ここで得た想いを胸に、新たな一歩を踏み出すことを誓います――――卒業生代表 高嶺 千雪。」
よどみなく読み終わり、一礼をすると、拍手がおきた。
胸に赤い花をつけた卒業生の中に、大好きな顔が見える。



***


 「高嶺さん、写真撮りませんか?」 
三年で同じクラスになった奏君に声をかけられ、私は振り向く。
中庭で卒業証書の筒を持った三年生達が、グループごとに集まって別れを惜しんで泣いていた。
「卒業論文、すごく良かったですよ!胸がジーンとしました。」
笑顔でにっこり言う奏君。

「良かった―――褒めてくれてありがとう。」

返事を言うと、明るく優しい声が響く。
「―――お、おいっ!!助けてくれよ、苺香が大泣きしながら抱きついて離れないんだっ!!」
「だ、だぁってぇ~!?」
大泣きして言い訳を言う苺香ちゃんに呆れた顔で言う藍君。
「泰陽、太田さん。こんな時ぐらい静かに校舎を眺めてようよ。」
綾瀬君に苺香ちゃんに藍君。
―――大好きな人達の顔。
「も~苺香ちゃん、離してあげて下さい!!」
「はいっ!!」
怒られるとすぐに離れる苺香ちゃん。
クスッと笑ってしまう。


「――――凄く、良かった。」


心の底から感動しているような藍君の声が優しく響く。
「ありがと。」
「どうも。」
 クスクス……。
二人で笑い合っていると怒ったような拗ねたような声が後ろから聞こえてきた。


「……彼氏を置いて他の男と笑い合ってるなんて妬けるんだけど。」


え、と声を上げるとニヤッと綾瀬君は不敵な笑みを浮かべる。
「―――千雪。」
突然、自分の名前を呼ばれ胸の鼓動が早くなる。
不意打ちがずるすぎてたまらない。
「……お願い、千雪。俺の事、名前で呼んで、君はつけないで。」
と、優しい目で言われたって……と思っても負けてしまう、悔しい。

「た、泰陽……。」

恥ずかしくて声が小さくなる私に向けてカッコよく笑う。
それは心にしみ込むようなとっても素敵な微笑みだった。

「――――なんか、この辺暑くない?」

苺香ちゃんのおどけた声が聞こえ、さらに私は赤くなった私を皆が見てドッと笑いがこぼれた。



――――これから、私達は春から大学生1年生になる。

 私は学校の教師になる為、教師の育成大学に行く。
藍君の学校は私の大学の隣に位置している。
私を支えてくれた先生達みたいな立派な教師になりたい、私みたいな子を幸せにしたいな。

 藍君は超難関大学に行く。
将来は小児科医師になりたいそうだ。
超難関大学の医学部にトップで現役合格しちゃうって流石だと思う。

 苺香ちゃんは、デザイナーになる為にデザイナー専門学校に行く。
モデルになる夢も叶え、来月からは上京し芸能界入りだ、そうだ。
凄いなぁ、夢に向かって芸能界に入っちゃうって……。

 奏君は家の花屋を継ぐが、まずは、デザインの事を学ぶというかことで苺香ちゃんと上京し同じ学校を通うことになっている。
――――良かった、二人一緒で。
2人で同時に受かったと知らされたときは苺香ちゃんは嬉しくて涙を流していた。

 た、泰陽君は保育士になりたいという事で地元の学校に通う事になっている。
……うん。似合っていると思う、人を照らすのが、笑顔にするのが得意な泰陽君には天職かもしれないよね。

 そして、去年卒業した桜庭先輩は藍君と同じ学校に通っていて春からは大学2年生になる。
前のようにライバル同士ではなく友達同士になって苺香ちゃんと3人で時々、恋バナやショッピングに行ったり、話したりする関係になった。



――――――――それぞれの道が決まり、私達は夢に向かって歩き出していた。
この高校の思い出を胸に―――――――。


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