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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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Epilogue 2、HAPPYWEDDING

 小さなモダンな雰囲気を漂わせるカフェの扉に「本日貸し切り」の札がかけられている。
コーヒーメーカー、コーヒー豆が置かれているテーブルの隣にある休憩スペースで、若い女性が一人、黙々と働いていた。
折り紙を繋いで作ったチェーンを壁に張り巡らし、テーブルに白いシーツを敷いて花を飾り。
 どうやら、パーティの準備をしているようだ。
女性の髪は短くふんわりと切ってあり、清潔感溢れるスーツを着ていた。

「よし。」

私は、最後の飾りをつけ終え、腰に手を当てて、ぐるりと辺りを見回した。
「綾瀬 千雪――――か。」
新しくなった自分の苗字を言い終え、にま~っと笑いがこぼれる。
「わぁっ!!?主人公が自分のパーティの準備してるっ!」
焦ったように飛び込んできた3人が悲鳴を上げた。
「い、苺香が!買い物に時間をかけすぎるから!!」
「ええぇぇえ、美麗さんだって!!」
「ごめんなさいっ高嶺さん……じゃなくて綾瀬さん!!あ―もう、終わっちゃったんですね?!」
あちゃー、と、頭を抱えるスーツ姿の男は―――奏君だ。
眼鏡を外しコンタクトに変えたことで一気にモテてしまったと苺香ちゃんが嘆いていた。
華やかなパーティドレスで両手に紙袋を抱えた苺香ちゃんと美麗さんに、私は微笑みかける。
「――――やりたかっただけだから、ね?」
「相変わらず、千雪……優しいぃいい!!――大好きっ?」
苺香ちゃんが私に抱きつくと奏君が苦笑いをした。
やがて、ドヤドヤと、他のメンバーも現れる。
高級スーツに身を包んだ藍君。それから、美麗さんのお友達の雛絵さん。
お兄ちゃんが、カフェの制服に身を包みニコッと微笑んでいる。

そして、最後に――――ゆっくりと泰陽君がやってくる。
腕に花束を抱えて。
綺麗な太陽のような向日葵と菫色の小さな星のようなブルースターの花束が風になびいている。

テーブルの上に、お兄ちゃんがケーキを運んでくる。
『HAPPYWEDDING』と書かれた、大きなケーキ。

何か挨拶して、と言われた泰陽君は恥ずかしそうに頬を赤く染めてマイクに声を吹き込む。
「え――この度、妻の高嶺 千雪と結婚しました幸せな男、綾瀬 泰陽です。」
なんだよ、ノロケかよっ、と、やじが飛ぶが泰陽君は構わず続けた。
「人生で不幸、幸福は決まっているらしく俺はこのことを知り、思いました。皆さんと出会えたことが、最も高嶺の花だった容姿端麗、成績優秀、頭脳明晰な彼女と結婚したことは俺の人生の中で一番の幸福でありとても、大きいものだったんだな、と思います。」
「おぉお……!!」
メンバーがざわめく。
私も、感慨深く、泰陽君を、そして周りの仲間達の顔を見回した。
思い出す。あの頃の色々な事を。
 英単語、数式、歴史年表とだけ過ごしていた自分を、孤独で何度も死のうと苦しんでいたあの事の自分を、全く違う場所へ連れ出して行ってくれたのは、今、隣に照れくさそうに立っている、この太陽のような。陽だまりのような泰陽君にほかならない。
「皆さんに出会えたことを感謝します。―――――これからも、俺と千雪をよろしくお願いします。」
泰陽君の言葉に拍手がわきおこった。

「さあさあ、まずは食べて食べて!!!」
お兄ちゃんの言葉に、皆がわっとテーブルに群がる。

―――――こんな素晴らしい日にもっとを言ったら彼はどんな顔をするのだろう?
「ねぇ、泰陽君。」
私は、そっと泰陽君の耳に囁く。
「なんだ?」
「あのね、泰陽君に秘密があったの。」
貴方に可愛い子供がいるって言ったらどんな顔をするの?
「泰陽君にね、可愛い子供がここに居るの。」
「は?」
私はお腹をさすりながら、言うと何を言っているんだ!!と、ギョッとした泰陽君に私は笑いかける。
「――――う、嘘だろ?!」
「私が嘘なんて吐く理由なんてないでしょ。」
カッと耳まで赤く染めて私のお腹に耳を当てるとギャーっと叫ぶ泰陽君を見て皆が笑う。
そこへ、チャロを連れたお母さん、お父さん、苺香ちゃんのお母さんが大きなドーナッツショップの箱を抱えて、やってきた。
チャロがご飯の前に座って、んがぁ!!と、鳴いて、皆がどっと笑う。


花束の花はこれから大きく根をはり、綺麗な花を咲かせていくだろう。
きっと、これからも、ずっと。

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