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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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*29*

ヤマザクラ2、【予感。】

『……で、どうだったの?合コン!!』
「えっ!!?えーと、、、、あのぅ。」
洗濯機を回しながら、私は黙り込む。
勿論、電話の相手は高嶺 千雪だ。
私の親友。
歳が離れているが助け合ってなかなかいい感じの友達関係を築いている。
しかし、昨日の事は千雪でも言えない事だった。
千雪の夢を憧れを壊してしまいそうで。

「まぁ、良かったんじゃない。」

曖昧な答えを言うと、そっかーと憧れの気持ちを持ったような声が聞こえてくる。
ほら。やっぱり、言えない。
本当は良い人もいないし、付き合う申し込みもデート約束もしてこなかった。
変な占いが得意っていう気持ちが悪い男に絡まれたり、後輩に助け出してもらったり散々だったから。
そして、心配をかけてしまうかもしれないから。
「……はぁ。」
『どうかしたの?』
「いや、授業嫌だなって。」
『クス。頑張ってね。』
うん、と返すと電話を切った。
「後輩ね――。」
“後輩”その言葉でアイツの事を思い出す。
アイツというのは笠寺 藍だ。
高校生時代の塾の友達、後輩で私と同じく悲しい恋をした男。
千雪の事を大切に想っていた。

『本当、ですよ。俺は本気です。』

冗談に決まってる、ただの慰めだ。
なのに、そう解っているのにもあの時―――私は不覚にも笠寺にドキドキした。
「……馬鹿みたい、こんな感情もったって意味ないのに。」
おでこに手をやり、私はしゃがみ込む。
「大学、行かなくちゃ。」
はぁ、と溜め息を漏らし私は大学に行く準備をした。


***

「昨日の男、彼氏?」
一色君がからかうようにニヤニヤ笑って声をかけてきた。
「ま、まさか。後輩ですけど。」
「でもさ、携帯をさっきから、過剰に気にしているのはなんで?」
「なッ!////」
図星をつかれ赤くなった私をからかう。
「ば、馬鹿にしてるでしょぉ!!////」
涙声になってしまったのは不覚だったけど、その後にキッと睨んでみせると目を見開き固まった。
「……。」
顎に手をやり、黙り込んだ彼に私は、
「大丈夫?」
とか、
「おーいっ!」
とか声をかけてみても返事がなかった。
ただ、私を見つめているだけ。
その時、携帯が鳴った。
 ピロン♪
私は携帯に飛びつくと、千雪からのメッセージがあった。

[高嶺 千雪。]
今日、バッタリと笠寺君に会ったんだ。
校門で、美麗さんの事を待っていたら声をかけられてね!!
ご飯食べようって事になったんだけど、どうかな?
  ―END―

笠寺と!!?
私は携帯を急いで、手に取り考えながらメールと打つ。
良いのかな?同窓会みたいな感じなのに、本当に千雪ってば優しいなぁ。

[桜庭 美麗。]
行く、絶対行くからっ!!

  ―END― 

直後、携帯が鳴る。

[高嶺 千雪。]
解った。
きっと、笠寺君が迎えに行くと思うんだ。
だから二人でうちまで来てね、用意しておくから。
―――では、またあとで。

  ―END― 

やったぁ!!!
こんなことで喜ぶだなんて、私らしくないと思いながらも帰りの支度をする。
その瞬間、荒々しく叫ぶ男が飛び入ってきた。

「先輩ッ!!!!!」

私が聞きたくて、たまらなかった声が響いた。
走ってきたのか呼吸が荒くなって、真っ赤な顔をしている美少年。
彼は私に目を向け、そのあとに隣に居る、一色君を睨んだ。
この人が気にかかるのかな?
「え、えっと、同級生で名前は……。」
遮るように声が重なる。
「一色 全。」
さっきまで黙っていた彼はそう自分の名前を言うと笠寺の事を見つめる。
「桜庭先輩の後輩で、笠寺 藍です。」
「君が、この大学をトップで入学して話題になっていた笠寺君?」
「えぇ……まぁ。」
なんか、敵対してる??
この二人に火花が散っているように見えるのは私だけだろうか?
「とにかく、先輩はここで失礼します。約束があるもんで。」
いつもとは違く強引に私の手頸を掴み、怒ったように顔が膨れていた。
そんな怒っている彼にクスっと苦笑してしまう自分が居た。

「……ほら、満更でもない顔してんじゃん。」

一人になった一色は悔しそうに呟いた。


***

「――――えっと、笠寺。どうしたの??」
ケーキを買い終わり、私は恐る恐るさっきから不機嫌な彼に声をかけた。
「別に。」
どうしたのかな、というか何故怒っているの?
とか、ぐるぐる考えて。
これは、、、、私が笠寺にとって気に障る事をしたからこんなにも怒ってしまっているのかな?
というか笠寺って怒ると黙るタイプなのか。
「―――……えっとごめん。」
そう謝ると驚いたように振り向く。
「なんで、先輩が謝るんですか?」
彼が離れていかないように、シャツを引っ張りながら私は言う。
「悪い事をしたかなって思って……だから、その。」
怒られ、言い訳を言っている子供のように私は俯く。
その様子を見て、呆れたように溜め息を吐かれる。
あ、なんか―――……やだなこの空気。


「…………笠寺が怒ってると嫌だから。私が気付かないうちに、気に障るような事をしたならごめん。」


そういうと、笠寺の強張らせていた顔がフッと柔らかになる。
「俺こそ本当にすみません。先輩に無駄な心配かけて、嫌な気持ちにならせて。」
笠寺は、恥ずかしそうに首を触りながら見つめる。
「なんで怒って―――……。」
「千雪が待っていますから、早く行きましょう。」
私が怒っていた理由を聞こうとすると遮るように、言う。
なんで、そんな焦ったように、いや、拒絶するように冷たい顔になるの?
どうして?
怒りに燃えたように―――……。
さっきから笠寺に対して、どうして?何で?ばっかりだなぁ。

***

 その後は、特に会話もせずお茶を飲んだり、ケーキを食べたりそんな感じだった。
あっという間に、時間が過ぎて今はもう、家路に着いている。
「笠寺。大学に出た時から、いや、来た時からなんか変だったな。」
溜め息を吐くと、あの日交わした言葉を思い出した。
 『本当、ですよ。俺は本気です。』
昨日はあんなにも胸が高まって嬉しかったのに。
今はどうだろうか?
彼に対して疑問とモヤモヤ、、、、というか不安しかない。
簡単に言うと快晴だった青空に雲がかかったみたいな感じ。







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