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作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (総ページ数: 23ページ)
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第2章 第7話;「自分の運命を決める闘い。」 【反逆の僕。】
確かめなきゃ、確かめたい…………こんなの嘘だって言ってほしい。
九条君は違うって嘘は吐いてないってお願いだから言って?
ピンポーン。
震える手でインターホンを押す。
「はい。」
九条君の声だ。
私はホッと安心する。
「――――……日高さん。」
気が付くと目の前には九条君が居た。
髪は少し濡れていて眼鏡を掛けていた。
「その様子だと無事だったんですね。」
怪訝そうな顔で私のことを見てくる。
「あ、ごめんなさい。約束が守れなくて…………急に穂高が来てやむを得なかったの!」
と理由を説明して今までどこに居たかを言うと、ますます、九条君の顔は険しくなった。
「日野西との事を僕に謝罪する必要はないと思う、そもそも婚約者同士だしな。それとも、、謝罪するほど満更ではないのか?」
「な、なんで、そんなわけッ!」
私が反応して睨むとクスッと鼻で笑う。
「では日高さんは無意識に、男に気を持たせるのがとても上手なんだな。」
気を持たせる?私がいつ?
約束を破ったのは私、悪いのは解っているでも――――私を侮辱するにも程がありすぎる
「…喧嘩を売っているの?」
と訊ねると
「まさか。僕は日高さんの味方だ。護っている日高さんの手を咬むことなど、あり得るか?」
これは明らかに私の事を咬んでる。
お互いを睨みあっていると九条君は私の手を掬い取って言う。
「覚えておく事だ、日高さん。この指を契約を交わしたことを。」
指を絡めてにこっと怪しく笑った。
「例え何があったとしても。日高さん自身が僕を、拒んだとしても、だ。」
君が―――私と一緒に今までいたのはこの為なの?
聞けない、聞きたくない。
どうして隠して、私の事を脅すのかと。
ずっと約束を気にしていたのに、帰りたかったのに。
こんなにも想っていたのに。
無遠慮な言葉が悔しくて、哀しくて。
「ふざけるのも大概にしろ!!」
私は手を振り払って踵を返した。
口ではこんなことを言っているけどそれでも、どうしようもなくそんな気持ちになってしまう、そんな自分の心の根底にあるものに気がついて。
私は、九条君の事が―――……好きなの………?
目から涙が溢れ出した。
「―――……っ!」
騙されているって解ってても君の事を想っている、という事か。
我ながら馬鹿すぎる。
****
「話さないで頂くことは出来るか?僕に出来る事ならば何でもするから―――……。」
僕は躊躇なく日野西 穂高に向かって跪く。
その僕を見た日野西はフッと声を漏らして手を突き出す。
「だが断る!!!」
断る―――……?
「何故だ。君にとって不都合だからか?」
「それはお前の方だろうが。」
図星をつかれ、僕は黙り込む。
「―――……生憎のところ、もう藤花には種明かしをしてしまった。」
「お前!!」
僕は剣をに抜き、日野西もケラケラ笑いながら剣を振る。
剣を何度も交えていると、
ピンポーン!
エレベーターの音が鳴り響く。
「おっと、ようやく来たな。」
まるで待ちわびていたように言うと僕に目をやり不自然に笑う。
…………ようやく来た―――?まさか!?
「やめてッ!!」
長い二つに結った黒髪、焦った声―――……日高 藤花が居た。
「おはよう、我が婚約者。」
と、日野西が挨拶を言う。
僕も続いて
「おはよう、日高さん。」
挨拶を言うと
「いらない、挨拶なんか―――……その手を離して。」
と苦い顔をしてそっぽを向く。
僕達は交わしていた剣をしまい日高さんに歩み寄る。
「マンションの中、自分達を傷つける行為は止せ!」
心配そうな顔で救急箱の中から絆創膏を丁寧に貼ってくれた。
****
「日高さん、僕は―――……!」
打ち明けようとすると、日高さんは目をギュッと伏せて耳を塞ぐ。
「聞きたくない!―――……心の準備ができたらちゃんと、聞くから。今は、やめて……。それと、私も話したいことがあるの。」
と手を掴まれ、日高さんは小さく「ごめんなさい。」と呟く。
「―――さてと、明日、デュエロ開幕日だ。お互い最善を尽くそうぜ。」
日野西は強引に話をすり替えて日高さんの頭を
「元気出せよ、藤花。」
と言って撫でると日高さんは泣きそうになって小さく頷いた。
僕の奥底に眠っている猛獣。
嫉妬という獣―――……昨日は嫉妬に乗っ取られて理性というものがなくなっていた。
遅くまで日野西といた、他の人もいたのに。
それだけで嫉妬し、日高さんの事を傷つけた。
脅して騙して、侮辱して―――……僕は最低だな。
僕は右手を握り締めた。