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君を想い出すその時には君の事を――。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*16*

第2章 第8話;「自分の運命を決める闘い。」 【セグレードデュエロ、開幕。不安と欲望。】

「遂にセグレードデュエロ開幕で~す!!」
アナウンスが入り、声が上がる。
やっとだ、今日で私の運命が決まる。
「勝利したものは組織のボスの座、願い事が叶えられお嬢と結婚が出来ます!!」
勝つ、絶対に勝たなきゃダメなんだ―――……!
「司会はこの川崎 千乃と三ケ谷 美湖です。よろしくお願いします~!」
私は逸る心臓を抑えながら、戦闘図を見る。
「おっ、気合入ってんじゃん。早いね~!」
「毛ガニ…………。」
「ちょっと、どきなさいよッ。ジャガイモ!」
「ふむ。」
藤谷に北小路さん、小倉さんや水無瀬君、九条君や穂高も私の周りに集まる。
「第一回戦目は―――……あっ、ひのと小倉だ。」
穂高と小倉さんは向き直る。
小倉さんはメロンパンを口いっぱいに頬張りながら不安そうに言う。
「……穂高様と勝負………?」
すると、穂高は小倉さんに対して言う。
「――……らしいな。瑠璃、お互い頑張ろう。」
コクっと頷くと準備室に行ってしまった。
「勝ち抜きか、勝ち進む程相手は強くなるって事。成清は組織のナンバー2だし最後の方か……。」
そう呟くと「元気出せ。」と私の頭を撫でた。
皆と闘いあわなきゃいけない、でも、私は勝ちたいから。

***

「あ、そうたん!やっほ~、瑠璃ちゃんとほっちゃん。殺り合ってるね♪」
会場では小倉さんと日野西が凄まじい闘いをしていた。
「どっちが勝つのか分かってるんだろう?」
僕がそう訊くとニヤッと猫月さんは笑う。
「さぁね~、視ちゃったらつまんないでしょ?」
遊びだと思っているのか―――……この人は。

***

「勝者は大剣を手にする男、穂高~!!!」
と判定されて次の勝負が始まる。
藤谷はニコッと笑って余裕そうにしていて、北小路さんは冷や汗を流していた。
始まる前に会場で会話しているようだった。

***

「紫、勝負が終わったらさ話したいことがあるんだけど。」
ジャガイモは真剣な表情でそう言う。
私は睨み付けて、
「話なんか聞かないわよ、残念でしたね。」
と言ってみると困ったように笑って言う。
「…………じゃあさ、紫に勝ったら俺の事聞いて?」
私に勝てる自信があるって事??
上等じゃあないの―――……ふつふつと湧き上がる怒りを開始とともにジャガイモに当てに行く。

***

「なーんか、北小路。怒ってんな、超コエ―。」
穂高がそう呟く。
私は北小路さんに押されっぱなしの負けちゃいそうな藤谷を見る。
『もう疲れちゃったのか、紫。』
息切れた北小路さんに藤谷は何か言っている。
それに反発してしゃがみ込んでしまっていた北小路さんは立とうとする。
藤谷はゆっくりと歩み寄って行って
『バーン、負けだよ。紫。』
人差し指を向ける。
その時、北小路さんは負けを認めたように苦笑した。
「勝者は―――……獲物を待ちわびる獣、政宗!!!」

***
「俺は、お前に勝つッ!!」
そう水無瀬君に告げられ、私は頷く。
「見てろよ、俺の能力ッ。この身をドラゴンに変えよ!!」
と呪文を叫ぶ水無瀬君は光り輝いて―――……恐ろしいドラゴンに…?
「わああああぁ!!?また失敗した、くそ~!」
と可愛らしいミニドラゴン姿に私は笑いそうになりながらもトドメを刺す。
「勝者は―――……勇敢な黒き少女、藤花!!」

***
「俺な、カッコいいトコ見せたいんだわ。頑張ろうな。」
と藤谷に言われ、私は頷く。
「動きを止めよ―――。」
美しい光に私は戸惑いながらも動きを止められる前に、足蹴りをする。
「勝者は―――……勇敢な黒き少女、藤花!!連続です!!」

***
「何で、俺達負けたんだ…………?」
藤花に負けた俺達は呆然とする。
「その理由は何だと思う~?」
甲高い声が聞こえ、俺達は振り返る。
「成清ッ!」、「猫月ッ!」
名前を呼ぶと手を振る。
「お前は、解ってるって事かよ?」
と訊いてみたら大きく成清は頷いた。
「うかたん自身が、成長して気持ちを固めて……能力と向き合ってるからだよ。」
え?と俺達は顔を見合わせる。
「んじゃ、」

***
 穂高と九条君はそれぞれの相手と闘っていた。
穂高の相手は猫月 成清。
九条君の相手はお母様。

「成清を越えてみせる!」

「貴女に僕の成長を見て貰いたいんだ。」

やはり勝ち進んでいる穂高と九条君達。
そんな二人の試合を見ている私にどこからか、不思議な声が掛かってきた。

『―――……聞こえるか、我が主よ。』


これは、私の化身の声…………?
『そうだ、我が主。封印されていたが主が記憶を大体取り戻したおかげでこうやって主と話せるのだ。』
黙っていると言ってくる。
『能力の真実を知りたければ、全てを知りたければ選べ。九条 総司か日野西 穂高か。恋する者をはっきり選べ。』
知りたい―――……でも、『選ぶ。』という事は天秤にかけるって事?
そんなの嫌だ、かけがえのない私の仲間なのに―――。
『また訊ねるぞ。』
声が聞こえなくなり、私は不安が胸に渦巻いていた。

***

「くそッ!」
俺は叫ぶ。
やはり一筋縄ではいかない成清は。ナンバー2の実力はとても強い。
俺はその時、初めて実感する。いつもふざけている成清も本当は強いのだと。
しかし、闘いながら成清との出来事を思い出した俺は、あの時、胸の内を泣きながら話してくれて闘ってくれた成清と本気を出して闘ったことで自分が能力を使えるようになったと心で俺は礼を言った。
交えていた剣を成清に吹っ飛ばされてしまった。
「どうするの、ほっちゃん。」
成清の問いかけに、俺は成清の遥か後ろに居る藤花の姿を見つけた。


「セグレード能力は大切な誰かを守る力。俺の大切な………それは――……!」


セグレード能力で剣を手元に戻し、刃を成清の喉元に突き付けた。
「見事だよ、ほっちゃん。」
誰よりも俺の成長を喜んでくれるふざけた猫の微笑み。

***

一方、菖蒲と戦っている総司の刀には迷いがあった。
姐様に刀を向けている事への迷いだった。

「それで私に勝てると思っているの!?どれだけ、甘く見ているの、総司ッ!?」
姐様に言葉と剣に追い詰められていく。
そんな姐様に心の中で、僕は自分を対等の相手として扱ってくれる事に感謝の気持ちでいっぱいだった。
それでけでなく、家族として迎え入れてくれたあの日から日高さんの家族を大切にしたいという気持ちで、両親を力で眠らせてしまった事への罪から目を反らし日高さんまで避け続けてきた。
しかし、今は違うんだ。いつか目覚める両親と共に歩いていくと決めたんだ………。
ちゃんと、自分のしたことを打ち明けて日高さんに想いを伝えたいんだ。

「覚悟!」

自分に向かってくる姐様の後ろに自分の闘いを見ている日高さんの姿を見つけた。
両親と自分がそう思えるようになれたきっかけは、

「君だ!」

鞘で姐様の攻撃を受け止め、隙をついて刀を拾う。
そしてセグレード能力を使う。

「御免!」

姐様がくらっと眠くなったのを横目に僕は、首に刀を突きつけた。

「見事な峰打ちだったわね。見せて貰ったわ、貴方の成長を―――……。」

勝負がつくと姐様は心から喜ぶ微笑みを浮かべていた。

***

「貴方の手元に戻ってくる運命だとしたら?」
受け取っていた婚約指輪を僕に手渡すと姐様はニコッと優しく微笑む。
もし、藤花が帰ってきてくれる運命なら―――……。
心に何回も刻んだ言葉を僕は言う。

「これを日高さんに渡す為、僕は必ず優勝します。」

僕は彼女に命に誓う。
僕の背後に居た穂高を見て姐様は姐様は口を開く。

「貴方達二人が刃を交えるのもきっと運命が導いた事―――……頑張ってね、二人共。」

そして、いよいよ日野西と僕の試合が始まろうとしている。
勝ったどちらかが、ボスとの挑戦権を賭けて日高さんと闘えるんだ。

「この勝負に全てが、かかっているんだ。僕は負けられないんだ。」
「それは俺もそうだ。」

お互いを睨み合うと握手する。
「僕とも約束しろ!おまえの全てを僕にぶつけると。」
「約束する!俺の全てをかけておまえを倒す!」

総司も同様に誓う。
そして一切手加減なしの二人の闘いが始まった―――……。


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