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作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (総ページ数: 23ページ)
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第2章 第10話;「自分の運命を決める闘い。」 【交わした愛情。】
「日高さんッ!!日高さんッ!!」
焦ったような声、また心配を掛けちゃったなと思いながら目を恐る恐る開ける。
「―――……九条君。」
私は彼を呼ぶ。
君に伝えたいんだ、今まで苦しめてしまってごめんなさいって。
「ごめっ…………。」
「うかたんが目を覚ましたってホントなの~っ?」
謝ろうとした瞬間、続々と部屋に入ってくる。
タイミングが悪いなあ………。
「藤花ちゃんっ!」
とお母様は私を強く抱き締める。
「お母様―――……心配かけてごめんなさい。」
謝ると首を振って「いいわよ、目を覚まして会話を交わせただけで。」と涙を流しながら言う。
「藤花。俺はッ俺は―――……ッ!!!」
と大きな声でお父様まで泣き出す。
「うかちゃん、、、良かったぁ!」
小倉さんが真っ赤な顔をして言ったその時、皆が泣き出す。
「心配かけちゃってごめんなさい。心配してくれてありがとう。」
****
「穂高。」
私が部屋を訪ねると、快く部屋に入れてくれた。
「…………その顔は全て思い出したんだな。」
「うん。」
私が頷くと溜め息を吐く。
「藤花に九条の事を思い出させたくなかった。―――……でも何も知らなかったとしてもお前らは惹かれあうんだよな。運命はなかなか変わらないって本当だな。」
震えた声に私は息を呑む。
「壊したかった、藤花と九条が上手くいってほしくなかった。」
穂高は飲んでいたコーヒーをテーブルに置くと背を向けて俯く。
「ほだ…………。」
「俺はッ!それだけ、汚くてずる賢くて非情な人間なんだよッ!!」
はっきりと判った、あの穂高が大粒の涙を流していた事を。
いつでも笑っていて真夏の太陽みたいに眩しく輝いているあの穂高の泣いている姿なんて誰も見たことないと思う。
「―――穂高は人の事を想いやれて優しいよ。」
穂高の服の裾を掴んで背の高い穂高を優しく撫でると私はドアへ向かって踵を返す。
「藤花。」
涙声な穂高に呼び止められて私は振り向く。
「今までごめん、そして本当にありがとうな。」
深く一礼した穂高に私は微笑む。
「―――藤花が婚約者で良かった。」
二ッと笑った穂高は真夏の太陽のよう………ううん、それ以上に輝いていた。
****
「九条君ッ!!」
私は屋上に居た彼の名を叫ぶ。
「日高さん………?」
心配そうな九条君を私は勢いよく押し倒す。
「九条君の事をやっと思い出した………!!今までごめんなさい、そしてずっと傍に居てくれてありがとう!!」
目を見開く彼に構わず、私は口を開く。
「君が好き…………!!大切なのッ。」
というと、小さな腕に抱き込まれる。
「……本当に?僕の事を思い出したのか?」
優しく頭を撫でられる。
「僕は日高さんの事が好きだ。」
耳に囁かれ、私は恥ずかしさで溶けちゃいそうになった。
「君に渡したいものがあるんだ、手を出して。」
藤色の綺麗な箱の中には綺麗な指輪が入っていた。
嬉しさで言葉を失っていると、彼は私の指にはめた。
「ようやく君に渡せた………。」
とろん、と目を甘く瞬かせると私の手を取りニコッと微笑んだ。
12年越しの想いが、やっと届いた。
想い出した、知れた。