コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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一瞬またたき。
日時: 2011/02/04 19:25
名前: 蒼莉 (ID: DKs/wtA1)

                 
    



welcome 。



New . 8/18







Story .


 双子、が舞台。

 好きな人が姉。の冬花 touka と
 
 付き合っている、冬花一途の 祈 inori 。

 自殺未遂をくりかえす"真実"を知る

 冬花 の姉の 夏月 kazuki と

 そんな 夏月 に何かを求める

 祈 の兄、 望 nozomu 。

 ある日、夏月は望に告られ

 付き合うことに。

 けれど望の秘なる想いを夏月は知っていた。

 そんななか、抑え込んでいた

 冬花の夏月への想いが

 ジリジリと追い詰める夏の暑さと共に

 つめよっていた。

 そんな時に望と祈と冬花のもとに

 ある事実が——。

 シリアス、っていってもなんかちがう。

 切ない系?イメージは夏の中の青。

 ていう小説。わけわかんね。



目次。


人物、>>27
関係、>>30
0、>>1
1、>>2
2、>>3
3、>>8
4、>>9
5、>>10 >>13
6、>>19
7、>>20
8、>>21
9、>>22
10、>>23
11、>>24
12、>>28
13、>>35
14、>>37
15、>>38
16、>>42
17、>>43



番外編1、(なぜか1年後)>>25





 夏月は望まれてうまれてきたわけじゃないみたい

 冬花は母さんの好きな花が冬の花なんだって。

 その花の花言葉、「いのり」。

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Re: 一瞬またたき。 ( No.20 )
日時: 2010/08/01 20:37
名前: 蒼莉 (ID: ykFYs.DE)

7.思い出 a memory



頬を伝う雫の冷たさか

それとも車の中にいても

聞こえる声のせいか

私は閉じていた瞼を

ゆっくりと開けた。

車の独特の匂いが鼻を擽って

私は鼻をゴシゴシ、と擦る。

すると同時に濡れていた頬に気づき

私は腕の服の袖で

涙を拭った。

——冬花…。

胸がつん、と痛くなって

私は見覚えのない痛みに

胸をギュ、と抑えた。

そして皺ができたその場所を

私はしばらく、眺めていた。





「——…〜、ったのかしら、——で」





車の外から、聞き覚えのある声が

聞こえてきて、

私はハッ、と顔をあげた。

少し曇った窓ガラスの向こうを

見つめると、そこには大好きな姿が

二つあった。

私は思わずドアを開けて二人に

会いにいこうと思い

ドアに手をかかえた——


…あかなかった。





「…やっぱり、あのままでは
 
 いけなかったのよ

 ……やっぱり…、そのまま子供達を

 交換して——」


「そのまま交換できたと思うか!?」





——びくっ


初めて聞くお父さんの強い声に

私の心と体が

強く震えた。




「俺は夏月を自分の娘だと思い

 育てようと思ったんだ。

 いまさら——、…いや、あのとき

 そんな心に決めた誓いを、

 ……そんな、簡単に…」


「咲斗…」




言っている意味が、分からなかった。

——私を本当の娘だと思って…?

私は、

本当の娘じゃ、

ないの?




「…けどこれから、隠しきれると思うの?

 …これから、二人は大きくなって、

 大切な人もできて…

 っ夏月なんか、子供も産むのよ!?

 それで、隠し切れると……」


「俺だって、信じたくないよ、








 自分の子供と、他人の子供を

 育て間違えるなんて。」








"…夏は、思い出がいっぱいある"

"……そうなの?"


"…ああ。まあ、体弱かったから

 人並み以下だけど"


"…ああ、よく倒れたわね。 

 男のくせに、なさけない"


"うるせえな、しょうがねえだろ

 生まれつきなんだから"


"ふふっ、……そうね"







思い出。

夏の、思い出。

風を頼りに、あなたを探しにいったこと。

あなたはジッ、と空を見上げながら

私を待っていたわ。

…思い出。

匂いを頼りに、あなたを探しにいったこと。

あなたはひとりで、私の喜ぶ顔を、

青広がる海の浜で

探していたわ。

嬉しかった、

嬉しかった。

私の思い出は、

冬花、あなた一色だった。

あの、

真実をしった夏も、


あなたのことだった。

Re: 一瞬またたき。 ( No.21 )
日時: 2010/08/03 20:48
名前: 蒼莉 (ID: 3lsZJd9S)






家の近くにある

大きな海。

青、青、と呼んでいたその綺麗な海に

私は今、

沈んでいたかった。






「かーづーーっ!」





そんな深い深い夢を、壊したのは、


耳にくる、高い声。

芯のある声だけど

私にはちょっと、高めかしら。




「……うるさいわ、彌其 Misore 。」

「だって、やっと4時間目の途中にやっと

 学校来たと思ったら、途端に寝ちゃうん

 やもん。私、気になって気になって」

「……あっそ」



表情をなにも浮かべない私を見て

彌其はニコニコしながら

私を見る。

その顔がなんだか私には眩しくて

私は思わず顔を逸らした。




「弟クン、なんだか元気なかったよ」


「……」




——冬、花…に、


……元気がない?



私はチラッ、と彌其を盗み見する。

するとその視線に気がついた彌其が、

私をニヤニヤと見つめた。




「…やっぱり、好きやね、冬花ちゃん」


「……」




いまさらだが、

彌其はエセ関西弁だ。





Re: 一瞬またたき。 ( No.22 )
日時: 2010/08/07 21:26
名前: 蒼莉 (ID: 3lsZJd9S)





彌其とは高校で知り合った。

私は友達とか作るつもりはなかったけど

彌其が入学式のときに私に声をかけ、

何故か(彌其の一方的)に

仲良くなってしまったのだ。

私は最初、彌其のエセ関西弁に驚き、

「関西にすんでたの」と聞いたことがある。

しかしそのとき彌其は

「ううん」としか答えなかった。

私はその反応から、あまり聞かれたくないことなんだ

ということと、

エセ関西弁だということを知った。



…それだけ、

それだけだ、彌其について、私が知っているのは。




「……じゃ、私帰るから」


私はひとつ、溜息をつくと

バッグを肩にかけ席をたった。

すると彌其は慌てて席をたち、

私のあとを追おうとした。



「えっ、まじ!?じゃ、私も——




「夏月」

「…望 Nozomu 」




クラスが微かにざわめく。

そりゃそうだ、イケメン美女で有名の双子の片割れ、



水上 望が来たんだから。



Re: 一瞬またたき。 ( No.23 )
日時: 2010/08/07 21:52
名前: 蒼莉 (ID: 3lsZJd9S)
参照: ぬるぬるの関係を思いついた!

10



望はひとり、教室のドアに重心をかけて

立っていた。

その姿は堂々としていて、

誰もが一瞬は見惚れる。

180あるかないかの身長に

顔というフィールド上、

美しく並びすぎたパーツ

すっ、と伸びた鼻梁に

艶やかな色気のある薄い唇が

フィールドを品よく飾っていた。


——望……



望はいつも、私を向かえにくる。

それに対して何も思いはしないけど

……、なんだろう、この心のざわめき。




「夏月」




優しいテノールが

私を包む。

ほぅ、と囁かれた気になって

私は恥ずかしさに頬を染めた。




「……じゃ」




私は側でボーッとしている

彌其にそう呟くと

何もこれといった表情を浮かべない

望のもとへと向かった。












「弟クン元気なかったよ」




太陽の光が私を射す。

私は眩しさに目を細める。

隣では、望がニコニコしながら

私を見る。





「気持ち悪いわ」




私は望をにらむと

私を優しく見守る青空に

誰にも見つからないように

微笑んだ。



何故だか今、とても気分がよかった。

私の頬を擽る風が

心の中にも、優しく吹いていた。





「気持ち悪いとか言わないでよー。」



「気持ち悪いんだからしょうがないじゃない」

「……だけどさぁ〜…」




いつもダルダルとしゃべる彼に

私は何度うんざりしただろうか。

もうちょっとはっきり喋ってくれ、お願いだから。

そう願ったのも、何回だろうか。



望は、この喋り方同様、

中身はダルダルした男だ。

だから、何を考えているのかもわからない。

ふと見せるまじめで無表情の顔にも

どう反応していいか、わからない。




「…弟クン、元気なかった。

——それに、祈も。」










——ゾクっ





電撃のような寒気が背筋を襲った。




祈、とは彼の最愛の妹だ。

彼は祈のことになると、

いつもこの表情をする。

何もといっていいほどの、

感情を浮かべていない表情を。



——私は知っていた。

彼がそのような表情をするワケを。







「またやったのか」


「…ええ、まあね」






また、やったのか。


何をやったかと言えば、

自殺未遂だ。

私は高校に入ってから、

何度も何度も自ら死のうとする。

私がこの間死のうとしたのは、

祈ちゃんの誕生日。

そして、望の誕生日。



その日、冬花は祈ちゃんとデートをしてた。

…楽しく、楽しく。

そんなときに私が自殺しようとしたことが

冬花の耳に入ったんだろう。

冬花は私を探しにいった。

祈ちゃんを置いて。




祈ちゃんに元気がないのも、

きっと、そのせいだろう。




Re: 一瞬またたき。 ( No.24 )
日時: 2010/08/12 21:50
名前: 蒼莉 (ID: 3lsZJd9S)

11




「…ごめんなさい、って言っておいて」

「ん?…ああ」




望はチラッと私を横目でみやると、

私の頭をスルリ、と撫でた。

私の黒く艶やかな髪を

ゆっくりと通って行く彼の長く白い指を

私はボーッと眺めながら

ゴクリ、と息を呑んだ。



心臓が尋常じゃない速度で動いていく。

体中がボウッ、と熱くなり、

血液が体中をめぐっているのを

何故か側に感じられた。

そして私はホウ…、と小さく息を吐く。




「夏月」





甘ったるい望の声が

私の肌を、

のどを、

手を、

包み込む。






「つきあって」






一瞬、なにを言われたか、わからなかった。








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