コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ???〜おまけやってます〜
- 日時: 2011/11/30 06:49
- 名前: 栗田 和紀 (ID: lmEZUI7z)
はじめまして。
栗田和紀と申します。
一応の完成です。
でも、気に入ってないのでちょくちょく書き直します。
あと、身を置く場所を間違えました。超シリアスです。
おまけを書き始めました。良ければ読んで下さい。
おまけが本気だったりします。
シリアスにも出没しているので、そちらも是非。
感想を求めています。
一言でも頂けたら嬉しいです。
本編はno.6から始まってます。
↓
- Re: ??? ( No.12 )
- 日時: 2011/06/01 12:36
- 名前: 栗田 和紀 ◆d6U.RXJi8k (ID: yjY9NVuD)
心当たり、といってもそうある訳じゃない。
まずは弟の家に行くことにした。
「っえ!!」
「・・・・・・何か不満でも?」
「べ、つに」
明らかに動揺している弟に私は怪訝な表情を向ける。
それから理解した。
「・・・・あぁ、大丈夫ですよ。貴方の部屋は見ませんし、入ったとしていかがわしい本やビデオが出てきても気にしませんから」
無修正なら話は別だが。
「って、違うわ!!勝手に決め付けんな!!」
「あぁ、でも先輩が持ってたらどうしましょう・・・・あの見かけにいつも騙されてしまいますが、先輩だって十八の男・・・」
「人の話を聞けぇーーーーーーーーーーっ!!」
とりあえず見つけたら「後輩物」のジャンル以外を捨ててしまおう、と結論付けている私の肩を弟が必死に揺さぶっている。
と、眩暈がした。
「うわっ!・・・・・悪い、揺すりすぎた。大丈夫か?」
「ええ。少しよろけただけです」
咄嗟に支えてくれた弟に、私はそう言って一人で立つ。
すぐ横にある弟の顔を見上げると、ふと目が合った。
真っ赤になって顔を背けた弟に私は言う。
「行きましょうか」
「・・・そうだな。行くか」
こうして私たちは弟の・・・・・ばにら先輩の家へと入った。
全体的に薄いクリーム色が包みこむように広がっていた。
子供サイズとしか思えない星柄シーツの小さなベッドには、大きなリボンのテディベアが行儀良く座っている。
アダルトな匂いなど微塵も無かった。
「え・・・・ここ、空き部屋だったのに・・・」
私の後から入ってきた弟も驚愕の表情を浮かべていた。
ベッドを指差して私に言う。
「・・・・・・俺には”兄貴”が居たんだよな?」
「あのサイズで間違いありません。貴方のお兄さんです」
あのベッドばにら先輩の香りがするのだろうか・・・・
フラフラとベッドに近づく私を弟の手が止める。
「・・・・・なんですか」
「ちょっと待て。何でベッドに行く」
「・・・・・・私は、ばにら先輩に・・・もう14時間32分56秒も触れてないんですよ!!止めないで下さい!!」
「秒刻みかよ!?怖えぇよ!!てか一体何する気だ!!」
「枕にふすふすしたり、シーツに頬擦りしてみたり、あわよくば・・・」
「却下!!」
しっかり猛反発を食らった。
「それより早くしろよな!お袋が帰ってくる」
「ちぃっ・・・わかりました。今回は諦めましょう」
「次回はねぇぞ」
人が諦めてやったのにしっかり釘を刺す弟。
やっぱり先輩には似てない。可愛くない!
「・・・・?」
大人しくベッドから離れようとした時、ベッドの横に備え付けられていた机の上に小さな手帳が置いてあるのが見えた。
私はそれを手に取る。
小鳥がプリントアウトされたソレは年代物のようで、草臥れてはいるがどこも汚れていないところを見ると大事な物なのだろうという事が分かった。
私は引き込まれるようにページを開いた。
どうやら日記のようだ。
そのページを何度も開いたのだろう。跡が付いてしまったのかぱっかりとあるページが開いた。
*がつ*にち
きょうはお母さんとおでかけしました。
あしたはぼくのお誕生日だから好きなものを買っていいよ、って言われてすっごくすっごく考えたけど、やっぱりよくわかんなくて、困ってたらお母さんが「じゃあ、明日お母さんが内緒で買ってくる」って言ってくれました。やっぱりプレゼントは内緒のほうが楽しいよね!
明日がとっても楽しみです。
幸せそうな文面だ。
ばにら先輩がまだ本当の家族と一緒に暮らしていた頃の物だろうか。
次のページには何もかかれていなかった。
「?」
おかしいな。
私は日記をパラパラとめくってみる。
すると、罫線を無視した殴り書きの文面が現れた。
おうちに帰りたいよ
どうして?
どうして、おかあさんもおとうさんもむかえにきてくれないの?
たすけて
たすけて!!
「・・・・・・・・・」
何があったのだろう。
その文面だけでは詳しい情報は分からないが、苦しい叫びが聞こえてきそうだ。
と、私のケータイが震える。
「!?」
私の電話番号を知ってるのはばにら先輩と弟だけだ。
表示を確認するとやはりばにら先輩の名前が・・・
急いで電話に出る。
「ばにら先輩っ!!今どこに・・・」
「見つけたわよぅ、塩崎ばにら」
電話口から聞こえたのは自称科学者の声だった。
私は一人で科学者が告げた場所に向かった。・・・それが科学者が出した条件だった。
弟には近くで待機してもらっていて、呼んだらすぐに助けに来る手はずになっている。
(・・・別にいいと言ったが、絶対行くと言って聞かなかった)
「か・・・のん、ちゃん・・・」
そこにはボロボロになったばにら先輩が科学者と対峙していた。対する科学者は無傷でニヤニヤと私を見ている。
「っ先輩!!」
私が駆け寄ろうとすると先輩は一歩後ろに下がった。
・・・・・先輩が、私を拒んだ?
「さ、あなたが持ってるソレをとっとと渡してくれるかしら?」
「やだ」
キッと科学者を睨み付けた後、先輩は毒々しい血の色の箱を科学者に翳した。
「僕に近づいたら消しちゃうよ!!」
あれが、アカシックキューブか。
心なしか先輩の手は震えていた。
科学者は気にした様子も無く微笑む。
「あなたにそれが出来るのぉ?彼女、眩暈起こしてたみたいだけど」
「!!」
先輩が青ざめていくのがわかった。
「先輩・・・・?」
「あなたもよくやるわよねぇ。あなたの生活を壊したの全部この子じゃない」
科学者は私を指差して微笑む。私は首をかしげた。
・・・・私が、先輩の生活を壊した?
「やめて!!違うよ・・・歌音ちゃんが悪いんじゃないの・・・っ」
「あらぁ、だってあなたは」
「言わないで!!」
先輩は私に駆け寄ると、小さな手で必死に私の耳を押さえた。
柔らかくてふわりと甘い香りがくすぐったい。あぁ、半日ぶりの先輩だ・・・。
・・・・でも、先輩の手は何も隠すことは出来なかった。
「あなたが楽園に連れて来られたのはその子のせいでしょ」
その言葉は私の耳に届いてしまったから。
「どういう・・・・ことですか」
理解、出来なかった。
・・・したくなかっただけかもしれないが。
科学者は続ける。
「そのまんまの意味よぅ。塩崎ばにらは孤児なんかじゃない。立派に家族がいたわ。ちゃんと健在してるわよ・・・・今は一緒に住んでるんだからあなたが一番よく知ってるわよねぇ、ばにら君♪」
「・・・・・っ」
「本当の家族に”他人”として迎えられるのはどんな気分だったのかしらぁ?」
私は呆然とばにら先輩を見つめた。
先輩は私を見て苦しそうな顔をしている。
「先輩・・・・?」
「・・・・・歌音ちゃん・・・」
「今の話、本当ですか?」
先輩は少し迷った後私に言った。
「・・・・うん。駆汰と僕は本当の兄弟だよ。塩崎の家は、僕の本当のおうちなの・・・・」
「・・・・どうしてそんな・・・」
私の疑問にすかさず科学者が答えた。
「あなたを作るためよ」
「・・・・・・・」
「あなたが不完全だったから塩崎ばにらが必要だった」
科学者は両手をいっぱいに広げて笑った。
その瞳には何も映っていなかった。
「楽園はねぇ、人間の未知の力を引き出すための実験場だったの。その力を私は”スキル”と呼んだわ。スキルは大体の人間が幼少期に持っていて、大人になるにつれ消えていくの。私はその力をコントロールする研究をしてた。建前は孤児院として子供たちを集めてね」
「・・・・」
何かの実験、とは思っていたがそんな絵空事みたいな物のためにあの子供たちは命を落としていたのだろうか。
「でも研究は不完全だった。成長すればみんな消えちゃうのよ。具体的に決まっている訳じゃないけどある程度育つと消えちゃうの。でも、打開策はあったわ。そこのばにら君みたいに薬で成長を止めちゃえばいいのよ」
「!!」
先輩の小さな肩がびくりと震える。
私は先輩の手を握った。
「まぁ、それより先にあなたが生まれたんだけどね」
「・・・・・私?」
「そう、あなた。歩振が”1から作り上げればコントロールの利く人間を生み出せるかもしれない”って。研究の過程で生み出したアカシックキューブまで使ってあなたを作った。でもそれも不完全だった」
科学者は先輩を指差して微笑んだ。
「だから連れて来たのよ。”感覚共有”である彼を」
「感覚・・・共有?」
「文字通り感覚を共有するのよ。痛覚や感情をリンクできるの。まぁ、簡単に説明すれば”人の痛みが分かる子”ってとこかしら?もしくは”感受性が豊か”、ね。ちっぽけで特に価値のあるスキルじゃないけどあなたに関してはそうは言えなかった。・・・・あなたは感情を持たないから」
「!!」
「そう。全てはあなたのためよ」
私は先輩を見つめる。
先輩は目を背けた。
「あなたに欠落しているものが感情だと知って歩振が半ば人攫いみたいに連れてきたのよ。アカシックキューブで家族の記憶を消して」
おうちに帰りたいよ
ふと日記の文面が浮かぶ。
たすけて
たすけて!!
きっとあれは擦り切れそうな程傷ついた幼い先輩の心。
悲しみの、声。
「そのおかげであなたも感情らしきものを少しばかり持つことが出来た。でも、まだ足りないの」
「・・・・?」
「歩振は何かを見つけたみたいだったけど、聞き出す前にあなたが殺しちゃったし。私もあなたの完成に興味あったけど歩振がいない今研究の続行は無駄。だからアカシックキューブだけ回収に来たのよ」
「うそつきっ!!」
先輩は叩きつけるように叫んだ。
私の手を握り返す手が震えている。
「アカシックキューブだけじゃない・・・歌音ちゃんも連れて行こうとしてるくせに!!」
「人聞きが悪いわね。私が欲しいのはキューブだけよ。勝手にリンクしてるその子が機能停止したって私には何の問題も無いわ」
「!?」
それは初耳だ。
私のその表情を汲み取ったのだろう。科学者は意地の悪い笑みを浮かべた。
「あらぁ、言ってなかったかしらぁ?アカシックキューブはあなたの心臓とも言えるもので、あなたの機能停止を避ける為にばにら君が私から逃げ回っていた事」
先輩は、私の為に・・・・また全てを失ったのか。
折角帰ってこれた家も家族も友達も全部居なくなって。
「絶対渡すもんか!!」
キューブをしっかり握り締めて科学者を睨み付けた先輩に、科学者は呆れた様に笑う。
「無駄よ。そんな怪我じゃもうちょこまか逃げらんないでしょ?子供の体力と大人の体力じゃ性別が男だって勝てやしないのよ」
先輩は悔しそうに顔を歪ませる。傷が痛むのかもしれない。
・・・・今度は私が頑張る番だろう。
「先輩」
私は気付けば先輩を抱きしめていた。
「私のこと、好きですか?」
ずるい聞き方だと思う。
だが、先輩は訝しげに首を傾げた後、しかしはっきりと答えた。
「大好きだよ」
私は先輩の掌ごとアカシックキューブを握り締めた。
途端、キューブが輝きだす。
「っまさか!!」
私が最後に見たのは、悔しそうな科学者の顔だった。
- Re: ??? ( No.13 )
- 日時: 2011/06/03 12:45
- 名前: 栗田 和紀 ◆d6U.RXJi8k (ID: yjY9NVuD)
次に目を開けたとき、私たちは廃墟と化した建物の前に立っていた。
その場所を見て先輩は息を呑む。
「・・・・・ここ、楽園(エデン)・・・?」
そこは、私達が出会った楽園の残りかすだった。
「わぁ・・・・この部屋まだ残ってるんだぁ・・・」
少し嬉しそうに施設を見て回る先輩に、私は笑みを溢した。
先輩は甘えたように私の手を引っ張る。
「ね、ね、歌音ちゃん。お外行こ、お外」
「はい」
私は元気よく返事をすると、先輩の後を追った。
外に出ると、大きな樹が朽ちもせずに立っていた。
なんて名前かは知らないが、大きな枝振りの大木だ。先輩が呟く。
「・・・・・びーちゃんのお墓、だね」
「はい・・・・そういえばほったらかしでしたね、ここ」
死骸を埋めたであろう箇所はすでに雑草で埋め尽くされ判別できなくなっていた。
「ねぇ、歌音ちゃん」
「はい」
「・・・大好き」
・・・・・・っ!!この人私をキュン死させるつもりだろうか。
「・・・・・・・・・だいすきだよ・・・・」
壊れ物を扱うかのようなやさしいその告白に、私はそっと目を閉じた。
そのまま先輩の唇を塞ぐ。
「っ」
最初はびっくりしていた先輩もゆっくりと目を閉じて、しばらくの間そっと重なり合っていた。少し顔を離してからどちらともなくまた口付ける。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・っ!!ちょ、ストップ!歌音ちゃん!!」
途中先輩がうっとりしていたので今ならいけるかなと思って服に手をかけたが、しっかりストップがかかった。
くそ、あともうチョイだったのに!
「〜〜〜〜っもう!!歌音ちゃん、えっち!」
顔を真っ赤にした先輩はどうやら私がしようとした行為を理解しているらしい。前に挑戦したときは気づいてなかったようだが・・・・・そりゃ、キスからの流れなら気づくか。
相変わらずぷりぷり怒っている可愛い先輩を、後ろから抱きしめて先輩の髪に顔を埋めた。
「先輩・・・・・」
「うん?」
「先輩はどうして私と一緒に居てくれるんですか?」
私が先輩の立場なら、きっと一緒に居てこんな風に穏やかな気持ちにはなれない。
私には家族が居ないからよく分からないが、それをばにら先輩に置き換えて考えると分かりやすい。
要は私がばにら先輩を失ったとしてその原因となった人物を好きになれるか?ということだろう。答えはノーだ。
「・・・・僕には、分かるから」
「・・・え?」
「歌音ちゃんが感じてない歌音ちゃんの”気持ち”、僕には伝わってくるの・・・・感覚共有だから」
なんか不毛な話だ。
本人にも分かってない”感情”を理解してしまうことで、先輩は優しいが故に憎めなかったのだ。
「でも、僕この力があってよかったなぁって思う時もあるんだよ?」
先輩は空を見上げる。
空は徐々に色を失い、闇に染まろうとしていた。
「この力のおかげで苦労もいっぱいしたし、嫌な事も沢山あったけど・・・」
それから先輩は私を振り返った。
その瞳はきらきらと輝いていて、綺麗だった。
「歌音ちゃんに会えて幸せだったから」
その日の夜は、二人で身を寄せ合って眠った。
先輩の体は温かくて心地よくて、私はその温もりに引き込まれて深い眠りについた。
ごちゃごちゃになった本棚や乱雑に置かれたよく分からない書類の数々。
みんなの記憶を消して後、塩崎ばにらは霧島歩振の研究所を調べていた。
鍵は閉まっていなかったので小さく「おじゃまします」と言ってから中に入ったばにらは懐かしい故人の香りに泣きそうになった。
ここにならあるかもしれない。
歩振が死ぬ直前に言っていた、歌音を機能停止させることなくアカシックキューブを無力化させる方法が。
・・・歩振はよくアカシックキューブが失敗作だと言っていた。
「歌音を活動させる為の装置として生み出したと言うのに、私の仲間が妙な事を言い出しおってな。世界がどうのとか、科学がどうのとか」
訳が分からん、と溢していた歩振はばにらの頭を優しく撫でて言った。
「私はあの子をちゃんとした人間にしてあげたいんだ」
ばにらは歌音が大好きだった。
それと同じくらい歩振の事も好きだった。
・・・ちょっと変わっているけどとても優しくて、歌音のことを考えている時の歩振はお母さんの顔だったから。
前に自分は子供が産めない体なのだと歩振は言っていた。
だから歌音を作ったのだ、とも。
それは本当に日常の1つにしか過ぎなくて、何の変哲もない、一日のはずだった。
「ばにら!!聞いてくれ、ついに見つけたんだ!!アカシックキューブに頼らずに尚且つ歌音の体が人間として機能する方法を!!」
「本当!?」
歩振先生はぼくの両手を握ると優しく笑って言った。
「あぁ、本当だ。だけどそれにはお前の協力が必要でな。手伝ってくれるか?」
「もちろん!何でもするっ!」
ぼくはすごく嬉しくなった。
やっと歌音ちゃんの笑顔が見られるんだ。
泣いてる顔や怒ってる顔なんかだって・・・
(・・・・・だめだ、想像できないや)
一人でくすくす笑っていると歩振が楽しそうだな、と微笑んだ。
「それで、ぼく何したらいいの?」
「目をつぶってそこに立っていてくれ。それだけでいい」
そう言われてぼくはふと誕生日の事を思い出した。
誕生日の日はよく目隠しをされて、お父さんがいいよって言って目隠しをとると目の前におっきなケーキがあったりした。プレゼントの時もあった。
ぼくはうきうきしながら目を閉じる。
小さな物音がごそごそと鳴った後、歩振先生の気配がぼくの目の前に来た。それから喉元がひんやりして・・・・・。
「何をしているんですか!!!?」
近くから聞こえた歌音ちゃんの鋭い声に、僕はびっくりして目を開けた。
そこにあったのはケーキでもプレゼントでもなく、歩振先生がぼくに突きつけた白銀のナイフだった。
「っこれだ!!」
闇雲に机を探っていたばにらはプロジェクト・エデン”霧島歌音”と書かれたファイルを見つけた。早速開いてみるが専門用語の羅列ばかりで理解できない。これでは方法を探すのなんて到底無理だ。
ばにらは半分諦めかけて適当にぱらぱらとページをめくる。
その時”結論”の文字が飛び込んできた。
(ここ、読める・・・・)
その部分は幸い簡素な言葉で書いており、1行程度の文字なのですぐに読み取る事が出来る。
「な、んで・・・・?」
長い時間をかけて、その一文を理解した後
・・・・ばにらは震える声で、独り呟いた。
- Re: ??? ( No.14 )
- 日時: 2011/06/03 13:52
- 名前: 栗田 和紀 ◆d6U.RXJi8k (ID: yjY9NVuD)
「・・・・・・・先、輩」
「おはよ、歌音ちゃん」
眩しい笑顔のばにら先輩が目に入るなり、私は飛び起きた。
「わ!ダメだよ歌音ちゃん、そんな勢いよくおきたら頭がぐわんぐわんしちゃうんだよっ」
可愛い顔でめっ!と叱られても顔がにやけるばかりであまり効果がない。私はくすくす笑って立ち上がる。
「大丈夫ですよ。別になんと・・・も・・・」
立ち上がろうとしたのに体は言う事を聞かず地面にへたりと座り込んでしまった。ばにら先輩が駆け寄って来る。
「歌音ちゃん!!」
「平気です、なんか寝ぼけたみたいで・・・・」
「・・・・・・・違うよ歌音ちゃん」
心配させまいと思っていったのだが先輩にはお見通しらしい。
・・・・私も分かっている。昨日、科学者から逃げる時にアカシックキューブを使ったから余波が来たのだ。
「ねぇ、歌音ちゃん」
「はい」
「僕のこと、好き?」
「はい」
考える事までもない。私は即答した。
ばにら先輩はきょとん、とした後爆笑しながら「早すぎだよ、もう!」と私の肩を叩いた。
「そんな僕からなぁんとプレゼントがあるのです!!」
「もしかして先輩の脱ぎたて靴下とかですか?」
それなら喜んで頂きます!
「靴下なんかもらってどうするのっ・・・違うよ、もっといいもの」
「いいもの?」
「うん。たった一つしかなくて、とっても大事なもの」
「・・・・・いいんですか?そんなものあげちゃって」
1つしかないなら、替えが利かないだろうに。
「いいの。歌音ちゃんが大好きだから、あげる。歌音ちゃんだから特別にあげるんだよ?粗末にしちゃやだよ?」
「私が先輩からの贈り物をないがしろにする訳ないじゃないですか」
私がそう言うと先輩はそれもそうだね、と満足げに微笑んだ。
「じゃあ、おめめつぶって」
「はい」
一体何をくれるんだろう、と胸を躍らせながら目を閉じると、先輩の気配がそっと近づいてきた。それから軽く唇に触れると、ポツリとささやいた。
「バイバイ、歌音ちゃん」
なんだか嫌な予感がして目を開けると、先輩はアカシックキューブを持っていた。私と目が合った先輩は今度は逸らすことなくにっこり笑ってめっと口を動かすと、その鋭利な角を喉に押し当てて、流れるように自分の喉を切り裂いた。
生暖かい血が私の体に降り注ぐ。
「あああああぁああぁぁっ!!」
なんだこれは。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
胸が苦しい、目の裏が熱い。
これが・・・・・悲しい?
「にはは・・・・歌音ちゃんが、泣いてる・・・」
息も絶え絶えに、先輩は呟いた。
崩れ落ちた先輩の体を、私は必死に抱える。
結論:霧島歌音は”感覚共有”塩崎ばにらの命をもって完成となる。
歩振の研究所で、あの一文を読んだときから
ばにらは歌音に命をあげる事を、決めていた。
「よかったぁ・・・・失敗だったら、どう・・・しようかと・・・・おもったけど・・・」
「せんぱ・・・・先輩、なんで・・・」
「実はねぇ・・・・アカシックキューブって、何・・・でも、出来るけど・・・お水に・・だけは・・・弱いんだって」
先輩の血で真っ赤に濡れたキューブは元の光を失っていた。どうやら、機能停止したらしい。
「もし・・失敗・・・だったら、歌音ちゃんと・・・心中・・かな・・・とか・・思ってたけど、にはは」
先輩は私の頬を優しく撫でると、にっこり笑った。
「ごめんね・・・・僕も歌音ちゃんと・・・・一緒に・・・笑ったり、泣いたり・・・してみたか・・・・たんだけ、ど」
「やだ・・・・嫌です・・・・!!」
「歌音ちゃんはねぇ・・もう・・・僕がいなくても・・・泣いたり笑ったり・・・できるんだよ・・・普通の女の子として・・・生きていける・・・幸せに、なれるの」
「・・・先輩が居なきゃ意味が無いじゃ無いですか!!
先輩の居ない幸せって一体何なんですか!!そんなのわかりません、分かりたくありませんっ!!」
「か、のん・・・ちゃん」
少し困ったように微笑んだ先輩に私は消え入りそうな声で告げる。
「・・・・先輩の居ない世界なんかで・・・生きてたくないです」
すると先輩はちょっと怒ったみたいにぷくっと膨れた。
「さっき・・・・大事にしてくれ・・・るって言った、でしょ」
「でも・・・・・」
「僕の全部を・・・あげる。だから、歌音ちゃん、はいっぱいいーっぱい楽しい事して・・・沢山お友達作って・・・辛い事とか、乗り越えて・・・ちゃんと・・おとなになってくの・・・」
幸せに満ち溢れたごく普通の日常。
それはきっと、先輩の夢で。
「にはは・・・も、だめみたい」
力無く呟いた先輩の瞳から徐々に光が失われていく。
「おやすみ・・・か、のんちゃん・・・・・だいすきだよ」
肩で息をしながら泣き虫な先輩は最後まで泣かなかった。
微笑んでさえいた。
私は動かなくなった先輩を引き止めるように抱きしめる事しか出来なかった。
- Re: ??? ( No.15 )
- 日時: 2011/05/28 20:21
- 名前: さーさん (ID: QpYqoTPR)
あえてこっちに感想を書く←
シリアスとコメディが入り交じってて
さくさく読めて楽しかった!
楽しかったが何だこの超展開。
絶対シリアスorダークだと思うんだ。
最後に叫ばせてね。
せんぱあああああああいいいいいいいい!!!!!
続き楽しみにしています☆
- Re: ??? ( No.16 )
- 日時: 2011/05/30 09:58
- 名前: 栗田 和紀 ◆d6U.RXJi8k (ID: yjY9NVuD)
さーさん。
さーさん、さーさん、さーさん!!!
ほんっとにありがとう・・・・・。
アナタが感想書いてくれたおかげで
僕、続き書く勇気が沸きます。
こんな駄文読んでくれてありがとう・・。
あんなに気に入って下さってたばにら殺してごめんなさい。
ハッピーエンド目指します。←今更www
この掲示板は過去ログ化されています。