コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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剣を失くした剣士の国‐Justice of the lia‐
日時: 2013/02/03 10:05
名前: 紅雨 (ID: t/W.CWd9)

———偽りの正義でも、無いよりマシだ。



いくつ小説作れば気が済むんでしょうかこの馬鹿は←
はいども、紅雨です!!紅雨ですy((殴

大丈夫、更新ちゃんとするから(・ω・`;)
頑張るので見て行ってくれると嬉しい←
コメントとかは大好物ですw


【オリキャラ募集用紙】

名前:(西洋風の名前で)

性別:
年齢:

容姿:
性格:

戦闘:(するかしないか)
武器:(戦闘する場合のみ)

立場:(陽の国、月の国、星の国の従者王族以外で。
   他国だったら従者でも王族でも可。)
属性:(土、風、火、水、闇、光、無)
所属:(どの王国か)

備考:(一人称も書いてくれると嬉しいです)
サンボイ:

 
【国】※所属の欄にはこの中から選ぶ

グラジェ《陽の国》
・明るく、穏やかで活気的な剣士たちの国。
・お話の中心。
バニファ《月の国》
・物静か、伝統を大事にする魔導師達の国。
・グラジェとは同盟国。隣国。
レトワール《星の国》
・友愛と宗教の国。作物が豊か。
・グラジェとは同盟国。隣国。
ドラード《大帝国》
・魔術や武術に長けた、帝国。
ヴァレイ《雨風の国》
・海を越えたところにある。よそ者嫌い。
リファル《玩具の国》
・おとぎ話で良くあるような、玩具の国。
・メルヘン←

王族が絶大な人気! 有難う御座います!!
というわけで、【全ての国の王族は募集を終了します。】
本当にたくさんの方々有難うでした!

†追加

ヴァレイにする時は、基本瞳は青系でお願いします。

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Re: Swords of deceit【キャラ募集です!】 ( No.26 )
日時: 2012/11/18 14:17
名前: 紅雨 (ID: /axthyqa)

〈09.暗き未来と天上の光〉  ———ユマ



昔から知識が大好きだった。
何も知らず、無意味な時間を生きていく大人達が大嫌いだった。
努力もせず、ただ大人達に甘えるだけの子供達が大嫌いだった。

友人なんて不要だから、もっともっと知識が欲しい。
優しさなんて要らないから、もっともっと時間が欲しい。
ある意味で、賢い子供。
ある意味で、暗い子供。
他人からの評価はそれだけで、それに対して思う事もない。
いつだって、他人に関心は持たなかった。

とりあえず、話しかけられたら椅子を投げる。
とりあえず、誘われたんならば燭台を投げる。

そんな子供に近寄る物好きも中々居なくて、それすら僕には幸いで。
孤児院から引き取られた大きな貴族の館で、
働けと言われたけどそれは死刑宣告であり、
でももっと最悪な状況に陥ってしまってから今の今までそのままだ。
長い悪夢がそろそろ終わりになるかという時期。

本来飛び上がって喜ぶべき事実なのに、問題が一つある。
それは、———その事実がちょっとだけ悲しいこと。

「おい、ユマ。そんなに大量の紙を買ってどうするんだ?」
「使うの。やりたい事がある」
「何に使うんだか知らんが、ちょっとは時間あけとけよ」
「…うーん、考えとこう」
「必ずあけろ。少なくとも、俺の成人の儀までに一日は」
「それは嫌だなあ。やりたい事がたくさんあるから」
「おい」

成人の儀。《月夜の祝福》。
僕の隣に今現在いる、クラッツェの15歳の誕生日。
公爵家の息子である、彼の正式な貴族の仲間入り、あと———。

「クラッツェ。もう従者は決めた?」
「…決めてある。大分前にな」
「そっか。誰なんだろうねえ、割と君が選ぶ人が見てみたいよ」
「割とかよ」
「当たり前。見てる暇あったら本を読むから」

正式な従者と契約する日。
僕は、クラッツェの執事として今側に居る。
同い年だから、って理由で特に有能でもないのに強制的に。
僕の長い悪夢、それはクラッツェの執事としての日々だった。

ちなみに従者はあらかじめ、父親から三人の候補が準備された。
何だっけ、ごつい有能な男の人が三人だった気がする。

後はクラッツェが、成人の儀の前に契約するという事実を伝える。
そして儀式で特殊な魔術をかけ、主従とする。
何て面倒くさいんだろうね。ただ単に言葉だけでいいと思うけどなあ。

「そういうとは思ったけどな。時間は絶対あけろよ」
「しつこいったら」

実際、僕は成人の儀の前に屋敷を出る気でいた。
大量の紙は、置手紙に使用する予定だ。
成人の儀までは、あと一週間。それまでに準備がある。

「いいから」
「そうは言うけど、クラッツェは従者に契約を伝えなきゃだし、
 式の準備もあるでしょ。君の父親から、聞いてるよ」
「俺の勝手だろうが…」

クラッツェは金髪をがしがしと掻き、疲れたように首を振る。
青い目にはありありと、『面倒くさい』と書いてあった。

「僕、執事長から、式の前には会うなって言われた」
「命令だ。問題ない」
「いやあるでしょ。明日から君は、屋敷に籠って式の準備だよ」

そこまで会話した所で、クラッツェは納得したのか押し黙る。
僕としては好都合。
屋敷にクラッツェが缶詰にされてる間、自由な時間は山ほどある。

賑やかな商店街を抜け、学院の門をくぐる。
貴族で構成された、ヴァレイの名門学校モエニウムの門を。

早く寮に戻って休もう。
明日は早朝に、屋敷へと出発しなきゃならない。

Re: Swords of deceit【キャラ募集です!】 ( No.27 )
日時: 2012/11/20 17:25
名前: 紅雨 (ID: qWu1bQD1)


〈10.優しさの意味は〉



「…ここがヴァレイかあ」
「綺麗ですよね。海が間にあるので、中々来れませんけど…」

わたしの呟きに、ルーシェが楽しそうに、後半は苦笑交じりに応じる。
わたしも初めてだ。本当に綺麗。

澄んだアクアマリン色の海、白を基調とした繊細な作りの建造物。
道に供えられた花壇に咲き誇るのは、色とりどりの珍しい花。
そして、何より道行く人々の瞳。まるで海のような青ばかりなのだ。
青といっても微妙な違いはある。けどどれも本当に綺麗!!
抉って持ち帰りたいぐらいだわ!!

「青の眼か…そういや、クレイもだよね」
「あ、そうですね」

わたしはこの場には居ない、クレイの名前をふと上げる。
ルーシェは応じた後、「父と同じなんです」と付け加えて笑う。
だとするとルーシェは母親と同じなのかな?
でも、必ず両親と同じになるわけでもないのか。どうだろ?
何せ、わたしも父と、似顔絵の母とは髪も目も違うんだもんね。

あまり大勢でも意味ないし、という王子の言葉により、
この場に居るのはわたし、ルーシェ、シリウス、王子、ヴァン、
———そして、メイドのフェナ=ファレットさんだった。

「…いや結構大勢だよね!?」
「気にしたら負けでしょ。とっとと行きますよ」

相変わらずのやる気の無い台詞を吐いて、道を示すヴァン。
船が予定通り着いたため、時間には余裕がある。
会議は午後かららしいし、四日の船旅の疲れをとりたいなあ…。
まさか、船があれほどキツイとは…。

「そうしよ…。あれ、宿ってどっち?」

進もうとして、足を止める。聞いてない。
何故なら朝たたき起こされて、問答無用で連れて来られたから。

「聞いてないんだけど…」
「当たり前です。教えてないから」

きっぱりと言い切り、ヴァンはわたしを無視して歩き始める。
皆もそれについて行くようなので、わたしも一緒に歩いていく。
いや、説明足りないよね。何気についてってるけどさ。
『ついて来て下さい』ぐらいは言おうか、ヴァン君。

「…ん?」

視線を感じる。…まあ、王族やらと一緒だから目立つ…よね。
だけど、視線はだんだんと強くなり、周囲がざわつき始める。
…これは普通じゃない!!

「な…何だろ。寒気がする…」
「ああ。ヴァレイはよそ者嫌いの、殻に閉じこもった王国だ。
 それなりの歴史はあるんだろ。どう見たって僕達は国民じゃないし」
「そだよ、レイヌちゃん。ボクが言うのも何だけどさ。
 気にしない方が良いと思うよ。…危なくなったら、止めるから」
「…う、うん」

アレン王子とシリウスの言葉を受けて、わたしは押し黙る。
良く見れば、羨望や興味の視線じゃない。これは———侮蔑?
よそ者嫌い、かあ…。

少し悲しくなる。
こんなのは偽善だと分かってもいるし、わたし個人の考えだ。でも…。
よそ者だって、自分たちと変わらない、一人の人間だよ?
『それなりの歴史』とは言うけれど、それは拭い去れないものなの?
この国だって、初めからこうだったわけじゃないはず。
その頃に戻せたら、いいな…。

「レイヌさん」

そんなことを考えていたら、いつからか横に居たフェナさんが笑う。
涼やかな笑いには、落ちついた雰囲気があった。

「気に病むことはありませんわ。きっと、いつかは消え去るもの。
 古い傷跡を忘れさせるほどの、新しい希望が見えた時に」
「……」
「それでも、駄目な時は…自分の力で正せば良いのでしょう?
 …わたくしは、きっと変わって下さると思いますわ」
「…そうだね」

無理に考えを押し付けるのは優しさでも正義でもないと思ってる。
それはただの自己満足に他ならないんだ。
押し付けるんじゃなくて、ちゃんと『渡せる』ようになるまでは…、
これはわたしが首を突っ込んでいい問題じゃない。

「着きましたよ」

ヴァンの一言で、無意識に動かしていた足を止める。
白い、どうやら相当に古いだろう建物。ここが宿屋だろう。

ふと空を見上げれば、晴れ渡っていた空に、雲がかかり始めていた。

Re: Swords of deceit【キャラ募集です!】 ( No.28 )
日時: 2012/11/20 18:31
名前: 紅雨 (ID: qWu1bQD1)


〈11.例え異端だとしても〉  ———精霊



「…雨ですかー」

ぽつり、ぽつりと、空から雫が落ちて来るにつれて、
枯れ葉が音を立ててその雫を受け止めていく。
少女はそれを見ながら、天を仰ぎ、呟いた。

小柄で、どこかふんわりとした、童顔の少女だった。
桃色とベージュを基調とした、スカートと上着、ブーツといった
出で立ちで、髪は下の方で二つにまとめてある。
彼女が動くたび、ふわりと動く柔らかそうな髪は緑色だった。
白と混ぜ合わせたような、柔らかな若葉の色。

そして、その瞳。左目は、紫と桃色が混ざり合った不思議な色。
右目は、青みが強い紫色。だが、そこに異変があった。

普通の人間ならば、白いだろう眼球の部分。
彼女は、そこが濃い灰色で、可憐な容姿に不吉さを感じさせる。
それは両目ではなく、右目のみだが、逆にそれが恐ろしい。
人間の様でありながらも、一部分のみ人間ではない容姿。

「厄介ですねえ。パンが濡れたらどうしましょう〜?」

天を仰ぐのをやめ、少女は枯葉を踏みながら歩みを進める。
彼女が腕から下げたバスケットの中から香ばしく漂う香りは、
彼女が口にした食べ物、パンのものだった。

少女の名はユメル=グラーディア。
シェビルにあるパン屋、《魔法瓶と涙の雫》と言う非常に長い、
それでいて微妙にズレている店名の店で働く少女だ。

「…あれー」

ユメルはふと足を止める。灰色のブーツが水を弾いた。
彼女の目線の先には別の少女が横たわっていた。ユメルは首を傾げる。

長い銀髪の少女だった。閉じているので瞳の色は分からない。
かなり整った顔立ちをしているが、纏っているのは野獣の服だ。
優しく大人しそうな印象を受ける。
その手には槍を、さらに腰には刀を吊るしていた。
ただ、その白い肌には血の気が薄い。

「ああ、このお嬢さん、《漆黒の獅子》にやられたんですね〜。
 まだ情報もないですし、何も知らなかったら対処できないですよー」

ユメルは少女に駆け寄り、唇に手を当ててほっと息を吐く。
まだ、生きている。呼吸は浅いが…。
彼女は自分が羽織っていた薄茶色のケープを少女にかけた。
顎に手を当てて、考えるしぐさを見せる。

「よく生きてましたねーこのお譲さん。結構、腕は立つみたいです。
 さて、どうしましょうねえ」

ユメルは淡々と言い、目を閉じて穏やかに考える。
見た目こそ穏やかだが、彼女は二つの思考の狭間で揺れていた。
別に、店に連れて行っても、ご主人も皆も怒ったりしないだろう。
けど、自分のこの右目を見たら、怖がってしまうかもしれない。

だが、秋とはいえ肌寒い。雨も降っている。
考えている暇などなかった。

バスケットを放り投げ、ユメルは少女を腕に抱える。
痩せた少女でも、小柄なユメルが抱えて動くには無理があるはずだが、
ユメルは軽い足取りで少女を抱え走って行く。

中立都市、シェビルへ。

Re: Swords of deceit【キャラ募集です!】 ( No.29 )
日時: 2012/11/25 10:04
名前: 紅雨 (ID: LsxQHR/F)


〈12.運命の銀時計〉



「うわ…。あんまり綺麗じゃないね」
「そうですわね〜。掃除致しましょうか?」

着いた宿。
二人で押し込まれた形になるこの個室ははっきり言うと、汚かった。
それでも、個室になった分だけ有難いと、わたしは首を横に振る。
フェナさんの暖かい申し出を断り、改めて部屋を見渡した。

一人でもやや手狭だろうという広さに、ベットは一つしか存在しない。
部屋の隅には綿ぼこりが溜まり、
窓も磨かれていないのかすすけてしまっている。

何だこの宿。わたしが住んでたボロ家でも、まだマシだったよ!?
とてもじゃないが、休めそうにない。

「観光でもしよっかなあ…」
「付き合いましょうか? 一人で歩くには危険ですし」

確かに、そんな感じはすると納得する。
「有難う」と返事を返して、すばやく荷物を放り投げた。
お金の入った皮袋だけを取り出す。



「服とか見たいなあ。民族衣装とかレアだろうし」
「…変わった趣向ですわ」

そんな会話を繰り広げつつ、宿を後にする。
ヴァン達とも歩いた、人通りのない道を歩き街に出た。
案の定、視線は集まりざわざわと周囲が殺気立つ。
き、気にしてやらないもんね! と謎のツンデレ決意を胸に抱いた。

「フェナさん、何処から見る———わっ?」「あ…」

フェナさんに語りかけようと後ろを向くと、人とぶつかった。
恐らく年下だろう少年。
漆黒の髪の下から覗く同じく漆黒の瞳に、一瞬魔法陣が浮かぶ。
———ヴァレイの民じゃない?

「…すみません、不注意で…」
「え? うん、こっちこそゴメンね。後ろ向いてたりして」
「あ、ああいや…。で、では……」

たたっと走り去る少年の背を見ながら、わたしは首を傾げる。
旅人かな? 随分と大荷物だけど…。

「不思議な子だなあ」
「あら。レイヌ様、そちらの時計は…?」
「え」

言われて、フェナさんの視線を追い足元を見る。
そこには、時計が一つ、ことりと落ちていた。

「綺麗な時計。さっきの子の、かな」
「銀の時計ですわ。随分と美しい細工ですわね」

綺麗な銀細工の懐中時計。
ぱかっと中を開くと、時計の針は止まったまま、動かない。

「壊れてるのかな——あ!?」
「きゃあっ」

一瞬、時計に魔法陣が浮かび、グルグルと針が激しく動き出す。
わ、何だこりゃ!? 壊れたか!

「この時計、何!?」
「さあ…」

一度、懐中時計を閉じる。
薔薇が巻き付いた、お城と、ウサギの銀細工の時計…。

「フェナさん」
「…レイヌ様」

「「帰りましょう」」

これぞ以心伝心。わたし達は宿に逃げ帰るのだった。
しっかりと、銀時計を手に握って。

Re: Swords of deceit【キャラ募集です!】 ( No.30 )
日時: 2012/12/28 17:54
名前: 紅雨 (ID: OMeZPkdt)

〈13.壊れた玩具箱〉  ——精霊



「君は実に愚かだな」
「ひっ」

くすくす、くすくす。上品な笑い声、良く通る凛とした話し声。
その振る舞い、その容姿、全てが王族と言われるのに相応しい。
宝石が散りばめられた王座に、足を組んで座る少年。
その青紫と緑のオッドアイには、静かな侮蔑の色が浮かんでいた。

「何故、裏切るのか。それは僕に言わせれば自殺に等しい行為だが。
 まあ、ばれるとは思っていなかった様だがね」
「シェナード。恐らく人は、ばれると思えば行いませんよ」
「ふふ、それはそうか。ああ君、怯えないで楽にしてくれたまえ」
「それは一般人の精神では不可能です」

シェナードと呼ばれた少年。彼は実に壮大な態度で、足を組み替えた。
後ろに控えた従者、ゼノは仮面の下、全くの無表情。
そんな二人の共通点。それは倒れ伏す男への凄まじい殺気だ。

「ふふっ、安心したまえ。別にとって食おうとしてる訳じゃない。
 ただちょっと人類の限界に挑戦しようとしてるだけさ」
「シェナード。彼が怯えています。オブラートに包んで下さい」
「ああ、失敬。人類に限界は存在しないね」
「意味不明な事言わないで下さい。そして彼は泣いています」
「泣くなよ。希望はあるさ」

個性が強すぎるその会話に、男は泣くしかない。恐ろしい。
服の合間から見える肌には鞭で打たれたような傷が多く目立つ。
男は自分の未来に絶望しか無いことを知っていた。
《青薔薇の王子》と、《残虐な無感情》を敵に回したのだから。

「シェナード。どうしますか。彼は泣き止みません」
「おや。よほど怖がっていた様だね。もう大丈夫、安心したまえ」
「私が意見しますと、貴方が居る限り不可能です」
「酷いね。泣いている人は苦手なんだ。そうだ、毒でも飲むかい?」
「シェナード。彼は死んだ魚の眼をしています」
「ああそれじゃ——Can you drink the poison?」
「シェナード。意味が同一です。そして彼は笑い始めました」
「凄いね。泣きながら笑っているよ」
「貴方の所為です。もう少し優しく接してあげて下さい」

もはや地獄へのルートをエンドレスに説明されていると同じだった。
男は笑うしかなかった。
ああ、あれは綺麗なお花畑。アッハハハハ、と笑い続ける。
シェナードの顔が微妙に歪む。

「酷いな。精神的な傷だろうか」
「シェナード? 彼も首を振り乱し始めました」
「もって何だい」
「貴方と会話した人の末路でしょう」
「酷いな」

シェナードが王座から立ち上がる。男は獅子舞を披露する。
それはもう、文句のつけようもない完璧な獅子舞だったと言えよう。
若干、奥に控えていたメイドが引いたほどだ。

「さて、本題に戻ろう。ええと、毒は好きかい?」
「シェナード。戻ってません。彼は虚空を見つめ始めました」
「そういえば虚空を見ているね。君、どうしたんだい」

コツ、コツコツ、と。磨き上げられた床をシェナードの靴が進む。
そして、倒れ伏した男を見下すように立つ。
ゼノも歩き、シェナードの一歩後で控える。
二つの殺気は収まらず、男の精神は崩壊しきっていた。

「愚かだなあ。やはり、下等だね」
「…シェナード。彼の血涙で床が汚れています」
「構わないさ。ねえ君、目を見て話をしようよ」

話など出来る訳がない。男はただ静かに、血の涙を流す。
そして、彼の人生は終わる。

「はあ…。放心状態、か」
「これでは彫刻となんら変わりませんね。哀れです」
「まあ、そう言うなよ。さて——」

コツ、コツコツ。シェナードはゼノと共に、男の横を通り過ぎる。
一言。まるで死者への同情の如く。シェナードは微笑んで告げる。

「悔い改める事すら、叶わないのはどんな気分かな」

パタン、と扉が閉まる。扉が閉まる瞬間、シェナードとゼノの耳に。
コトリ、と。
人間が倒れた音ではない、微かな音が届く。
絶望の続き。それは、シェナードが下す最高で最低な罰だった。
後悔しても、もう遅い——。


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