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宮廷物語〜試練時々恋愛〜
日時: 2013/08/21 20:57
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

初めまして。音です。
初心者なので、変なところもたくさんあると思いますが、頑張って行きたいと思っています。
感想等、いただけたら嬉しいです。

暗くするつもりは無いのですが、初めの方に暗めなところが多々あります。……が、そこメインではありません。
他は、面白くなるようにつとめていますので、よろしくお願いします。

*目次*
お知らせ >>169  2013/8/12 更新

登場人物紹介 1>>1>>17>>20
登場人物イメージ>>31

序章 1.2.3>>2-4>>9
第一章 1>>10>>16>>21
第二章 1>>27>>32>>34>>43>>46 6.7.8>>51-53
第三章 1.2>>72-73>>76>>81
第四章 1>>110>>119>>134>>136>>144
第五章 1.2>>173-174

ルト 1>>11>>13>>15
エリ 1.2>>23-24>>149
ショウ 1>>25>>61>>63
カエ 1>>26>>66>>145

〜参照200記念番外編〜
○この番外編の説明>>87
カナエ×ショウ Ⅰ>>88>>92>>97>>100 Ⅴ.Ⅵ>>103-104

〜参照500記念番外編〜
○この番外編の説明>>150
♪カナエ×ルト Ⅰ.Ⅱ>>155-156>>161
☆エミリ×ショウ Ⅰ.Ⅱ >>167-168

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Re: 宮廷物語? ( No.21 )
日時: 2013/05/17 22:58
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第一章 *3*

「これからは、しばらく宮廷で暮らしてもらうよ。カナエ様」

 …………

「へっ?」

 はあ。宮廷暮らしになるんだ。
 じゃなくて!

「だーかーらー」
「ち、違くて。お母様、病気なの?」

 それがずっと聞きたかった。

「マジか。今更そこ聞くか」

 ルトは呆れているというかなんというか、微妙な表情だけど、正直今までの話、あまりちゃんと聞いてない。
 なんか、宮廷音楽家として宮廷に行くらしいということは分かったよ?
 ——とりあえず。 質問したから、ね。

 でも、お母様の状態は全く分からない。さらっと言われただけだから。
 重い病気だったらどうしよう……

 ポンっと頭に何かが乗っている感覚がする。

「そんな顔すんなって。笑ってた方が可愛いんだから」

 それがルトの手で、私の頭を撫でているんだと認識するまで、時間が必要だった。

「エマ様は大丈夫だよ」

 そう言ってにっこり笑うルト。
 かっこいい、のかな?

「今までの疲れがたまって、ちょっとした病気になっただけらしいから。でも、しばらくは入院していた方が良いみたい」

 そうなんだ。ちょっとした病気なんだ。よかった。

「じゃあ、お母様は大丈夫なの?」
「そう言ったじゃん」

 そう言って、私の顔を覗き込むルト。

「っ!」

 ルトは、昔と違ってかっこよくなっていた。
 ただ、その笑顔には昔の面影があって、なんだか懐かしかった。

「ルト相手に、赤くなる日がくるなんて思わなかった」

 私がそう言うと、ルトはむっとした。


「じゃあ、大事な物だけもって」

 ちょっとふてくされながら言うルト。やっぱり、かっこいいじゃなくてかわいいだな。

「今から宮廷に行くから」

 そんなことを考えてると聞こえた言葉に確信がもてなくて、

「え? 今から?」

 と、聞き返してしまうのは当たり前だよね?

「うん」

 素っ気ない。さっきの、怒ってるのかな?

「みんなは?」
「カエ達は、エマ様が退院したら連れて帰る」
「ショウとエリは?」
「今日はゆっくりしてられないから。手紙を書いて置けば?」

 なんか、ふれてほしくないみたい。厳しめな口調だけど、微妙に目が泳いでる。

「早く」
「あっ、うん」

 私は、少し出掛けてきます。と手紙を書いて置いといた。

「よし。じゃあ行くか!」
「ちょっ」

 体がふわっと浮いた。

「ぅわあっ!」

 ルトにお姫様だっこされた

「お、降ろしてよ!」
「やだ。さっきの仕返し」

 さっきって?

「ぁ……」

 ルト相手に——のくだりのことか。

「やめとけば良かった」
「もう遅いよ!」

 やっぱり、かわいい!
 今、私ニヤニヤしてるんだろうな。
 ルトが怪訝そうに見てるもん。

 私は、そのまま宮廷に向かった。

Re: 宮廷物語? ( No.23 )
日時: 2013/05/17 23:02
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

エリ *1*

「ちょっとー。姉ちゃんまだ起きないの? 姉ちゃんのストラップが一番売れるんだけどなぁ」

 椅子に座り、足をバタバタさせながら言うカコちゃん。まだ、幼なさが残っている感じがする。

「珍しいね。姉ちゃんが朝遅いなんて。ショウ兄ちゃんもいないよ?」

 寝転がりながら、少し心配そうに言うカエ。こっちは大人び過ぎる。

「うん。熱でもあるのかな? ちょっとみてくるね」

 心配になってきたし、みてくることにした。

 今まで、カナエが遅い事なんてなかった。
 いつも、誰よりも早く起きて朝食を作ってくれていた。
 前なんか、38度も熱があったのにふらふらしながら朝ごはんを作ろうとしていた事もあった。
 ちゃんとマスクを三重にして、みんなにうつらないようにしていた。
 まあ、効果があるかどうかは別として、ね。

 カナエの部屋のドアが開いていた。
 中を覗くと、紙切れを持って立ち尽くしている少年がいた。

「あれ? ショウ?」
「エリっ、これ」

 いつものほほんとしているショウが、青い顔で焦っている。

「何、これ……」

 あたしは、思わずショウを見てしまった。

 手紙には、少し出掛けてきます。と書いてあった。
 ショウは、父親をはやくに亡くしていて、ずっと育ててくれた母親は、これと全く同じ内容の手紙を残して帰ってこなかったと聞いている。

 あたしがここに来た頃は、もうショウはいた。

 ショウは、カナエ達が来てから明るくなった。

 あたしが来た最初の頃は、いつもぼーっとしていた。

 あたしはショウに、まだお母さんは生きてるんでしょ。だったら帰ってくるよ。とかずっと言ってた。

 それでも、あんまり仲良くなかった。

 でもカナエはここに来てすぐにショウの様子を見て、あの子のご両親は? ってあたしに聞いた。そんな話し方をする人は初めてだったから戸惑ったけど、教えた。

 すると、カナエはショウの所に行き、手を握り目を合わせてこう言った。

『こんにちは。私はカナエです。よろしくね。いきなりで悪いんだけど聞いてくれる?
 ショウ君は、お母さんに捨てられたと思ってる?』

 いきなり凄いな。と思った。
 ショウも顔をあげてカナエを凝視していた。
 すると、院長まで、

『カナエちゃん、何言い出すのかね?』

 と言った。

 カナエは全て無視して続けた。

Re: 宮廷物語? ( No.24 )
日時: 2013/05/17 23:08
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

エリ *2*

『ねえ、答えてくれる?』

 カナエは厳しめな口調だった。ただ、ショウの目をしっかり見ている。
 正直、この時あたしはカナエのこと好きになれそうに思えなかった。

『だったら——』

 ショウはカナエの手を振りほどき、勢いよく立ち上がった。

『だったらなんだよッ! なぐさめなんていらないッ! みんなそろって、お母さんはいつか帰ってくるよ。とか、まだ生きてるでしょ。とか……』

 あたしはこの時、はじめてショウの声をしっかり聞いたと思う。
 語尾がだんだん弱くなり、涙声になるショウ。

『私は、なぐさめるつもりなんてないよ』

 え? 何言ってんのこの子? と思った。

『は?』

 ショウも怒りを忘れたようにぽかーんとしている。

『私は、捨てられたと思ってる? って聞いたんだよ?』
『なっ』

 さっきの勢いが弱くなり、何も言い返せないショウ。
 カナエはそんなショウに全く構わず、話し続けた。

『捨てられたっておもっちゃだめだよ。確かに、両親を亡くした人にとったらまだ生きている分、幸せだと思う。でも、捨てられたって思うと辛いよね』

 最初の冷たさが消え、代わりにとても優しそうな笑みを浮かべていたカナエ。だけど、どこかさみしそうにあたしには見えた。

『お前に何が分かるっ!』
『なんにも分からないよ。でもショウ君は、また、誰かと仲良くなって捨てられるのが怖くて自分の殻にこもってるんじゃないかなぁ。と思ったの』
『そ、そんなことっ……』

 図星? なの?
 まだ会って数分だったのに、カナエはもう、ショウの心をしっかり考えて、傷をだんだん癒している。

 ——あたしには、出来なかったこと……

『でもね、私も、あそこにいるエリちゃんも、私の弟のカエも、妹のカコも、院長さんだってショウ君のこと、捨てないよ。だって、喧嘩しても、何か事情があって離れる事になっても、心はつながってるって私は信じてるから』

 満面の笑顔だった。
 好きになれそうにない。何言ってんの? って思ったことが間違えだったことが分かって、同時にそう思ってしまった自分が、とても恥ずかしくなった。

『あっ、なんか、偉そうに——』

 えっ? 急にどうしたの?

 とても気まずそうに困った表情になったカナエ。
 声もだんだんとか細くなり、最初の時のきびきびとはっきり自分の意見を言っていた様子が嘘だったようになった。

『ごめんなさい。じゃ、じゃあ私、そろそろお部屋に行かせていただきますね……』

 めっちゃ丁寧な口調っ!
 え? 何? どこかのお嬢さ、ま……あ。そっか。
 金髪がまざった髪の人は、王族の人だけだ。
 カナエ達はみんな金髪がまざっていた。

『ごめんなさい。姉ちゃん、スイッチが入ると性格が——』

 とか言いつつ、カエはニヤニヤしていた。状況をかなり楽しんでいたよね? 今思うと。

『いらないこと言わないでよ。行こ!』

 カナエは困ったように言いながら、カエを引きずるようにして歩いていく。

『待って!』

 ショウが初めて自分から話しだした。
 びっくりしたなぁ。
 そして、かなり気まずそうに言った。

『名前、聞き逃しちゃって……』

 カナエは振り返り、少しの戸惑いも見せずに笑顔で言った。

『カナエです』

 その笑顔は、とてもまぶしかった。

Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.25 )
日時: 2013/05/17 23:11
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

ショウ *1*

『でもね、私も、あそこにいるエリちゃんも、私の弟のカエも、妹のカコも、院長さんだってショウ君のこと、捨てないよ。だって、喧嘩しても、何か事情があって離れる事になっても、心はつながってるって私は信じてるから』

 少し出掛けて来ます。
 その置き手紙を見た時から、俺の思考は自動的に過去に飛んでしまった。

 少し出掛けて来る。そのカナエの言葉を信じたかった。だけど、どうしても信じることが出来ない。

 あの日のカナエの言葉が、どれだけ俺の心に響いたか。
 あの日のカナエの真剣な目が、どれだけ俺の心を見抜いてくれたか。
 あの日のカナエの手が、どれだけ温かかったか。
 あの日のカナエの笑顔が、どれだけ俺の心を癒やしてくれたか……

 だからこそ、カナエが俺達に何も言わずに消えてしまった。別に俺達のことなんてどうでもよかったんだ。と思ってしまうと、どうしようもなく辛く、そんな風に考えて、カナエをイマイチ信じきれていない自分が、とてつもなく嫌になった。


 ふと隣をみると、エリが自分を凝視していることに気が付いた。

「大丈夫。カナエに捨てられた、なんて思わないから」

 エリは、とても心配そうに俺を見ていた。
 不自然な笑顔にならないように気を付けながら、優しく言った。

「えっ、あっ……」

 図星だな。耳たぶをつまんでいるのは動揺している時のエリの癖だ。

「カナエ、すぐに帰ってくるよな」

 自分に言い聞かせるように言った。
 エリは、どうしたら良いのか分からない。という感じの顔をしている。

「行こう」

 カナエのこと、信じたい。
 ——いや、信じてやろうじゃないか!
 発想を変えてみた。このほうが楽だしな。

Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.26 )
日時: 2013/05/17 23:14
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

カエ *1*

 ——なんか暗いな。

 姉ちゃんが急に居なくなっただけで、こんな暗くなる。
 あのエリ姉ちゃんまで、今日は家事に身が入ってないというか、チラチラと窓の外を見ている。
 ショウ兄ちゃんの状態は、言うまでもなくというか予想通り、ぼーっとしていて失敗ばかりしている。

 やっぱり、心配だよな。

 姉ちゃんは凄い。尊敬する。
 いつも馬鹿っぽいけど、頭の中ではきちんと物事を分析してるし、何より優しくて、見ているとかなり癒される。

 ——こんなこと、本人の前では絶対言えないけどな。

 やっぱり俺も、動揺しているかな? 姉ちゃんのこと凄いって思うなんて。いや、確かに凄いんだけど、認めたくないっていうか……
 あーっ! もう! 調子くるうなー。

 実は、姉ちゃんが何処に行ったか、予想はついてるんだよなー。みんなには言ってないけど。だって、予想だし?

 昨日、町である人物を見かけた。
 びっくりしたなぁ。あと、あり得ないと思った。背、高かったし。





 でもあれは——

 絶対に泣き虫のルトだ。

 間違える訳ない。


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