コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 私には、みんなには視えないものが視えている
- 日時: 2015/12/22 21:49
- 名前: 未来 (ID: vRkRh/tL)
この小説は、”孤独”を抱えた少年少女が仲間や友達を見つけ、温もりを知り、新しい感情を芽生えさせ、過去・現在と向き合い、未来へと進むことをテーマに執筆しています。
【挨拶】
初めまして。未来と申します。
拙い文章ですが、きちんと最後まで完結させられるように頑張ります。
途中で投げ出さず、この作品と向き合っていくのが、今の私の目標です。
超スローペースですが短編集と掛け持ち中です。短編集のキャラを出す予定もあります。
試行錯誤し、ちょくちょく修正したりもします。
どうか、温かい目で見守ってください。
《お願い&意気込み》
感想や意見など大歓迎です。嬉しさできっとにやけます。
私の詰め込みたい気持ちや要素をいっぱい詰め込めるよう、私のつくりあげている世界を丁寧に伝えられるよう、日々精進していきたいです。
一週間ペースで更新を目標に頑張ります。最近全然出来ていませんが、これを目標に頑張りたいです。
荒らすような発言等はご勘弁願います。
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〜来てくださったお客様〜
せいや様
一匹羊。様
てるてる522様
雪兎様
シロマルJr.様
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—目次—
<第一章>
No 0 プロローグ >>00
No 1 転入生 >>01
No 2 犬猿の仲 >>02
No 3 嘘つき >>03
No 4 アンクレット >>04
No 5 変化の始まり >>05
No 6 阿部海斗の秘密 >>06
No 7 差された光 >>07
No 8 祓い人 >>15
No 9 優しさ故に >>16
No 10 幸福の一端 >>17
No 11 大切な人 >>18
No 12 二人への願い >>21
No 13 抱える思い >>29
No 14 噛み合わない言葉 >>32
<その他>
お知らせ >>08
キャラ設定① >>26
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No 0 プロローグ
数十年前まで、人は”妖怪”や”幽霊”といった存在を認識していた。中には、共に共存しようとする人すらいた。
そういった『視える』人がいることが珍しい訳ではなかった時代は、技術や科学の発展の影響によって終わりを迎え、人間にとって不気味なそれらは”非科学的”なものとして片付けられ、その内視える人間もほとんどいなくなっていった。
しかし中には、妖力や霊力に長けてそれらが視えていたり、家庭的な事情などにより、生まれながらにして否応なく妖や霊と関わりを持たざるをえない人も少ないながらに存在した。
だがそれもほんの一握り、いないも同然といった少数人だけである。
幽霊や妖怪だけでなく、視える人や己の視える能力にまで恐怖と嫌悪を覚えた時の流れの中で生まれた、一人の少女の物語が幕を開ける。
「…どうして私は、みんなと同じ世界が見れないんだろう」
- Re: 私には、みんなには視えないものが視えている ( No.1 )
- 日時: 2015/03/31 16:52
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
No 1 転入生
「神崎未優です。よろしくお願いします」
美しい黒髪を風になびかせながら挨拶した新しいクラスメイトに、教室内のほとんどの人間が見惚れた。
誰もが興味津津となる噂などの情報収集に長けている偵察係から「すごい美人」と耳にしていたが、予想以上の清廉で儚げな美しさに、男子だけでなく女子ですらも一瞬でノックアウトした。
「神崎さんの席は、窓際の一番後ろが空いているので、そこを使ってね」
担任の言葉にはいと短く返答して、1−1の転入生———神崎未優は着席した。
そうして、かつてなく騒がしい一日が始まった。
****
「神崎さん神崎さん!私、相田真美!よろしくね!
困ったこととかあったら何でも遠慮せず言ってちょうだい!」
「あ、うん。ありがとう。
席も私の前だし、色々頼ることがいっぱいあると思う…よろしくね。
あっあと……未優、でいいよ…?」
初めは淡々と返してきたが徐々に恥ずかしそうに尻すぼみとなっていく言葉。可愛いものが特に大好きな相田真美は、凜としたイメージから打って変わってもじもじし始めそうな眼前の美少女に思わず抱きついてしまった。
「あああああ〜〜〜〜〜っ!なんでこんなかわいーの未優!?
あっ私も真美でいいからね!?改めてよろしくねー!
やったー私未優の友達一号だよー!!」
激しいスキンシップとうなぎ登りのテンションの真美にしばし呆けて戸惑っていたけれど、次第と笑顔になっていく未優に周りの生徒も話しかけていき質問攻めの休み時間となった。
慣れていてもやっぱり混乱するな、と思った。
****
「みーゆー!一緒にお昼食べよ!」
「う、うん…!誘ってくれてありがとう、真美」
お弁当タイム。自称友達第一号の真美は数人の友達を連れて未優に声を掛けた。
「この子が噂の転入生だよね?
初めまして、私真美の友達の柏木玲奈。よろしく」
「斎藤優香でーす!よろしく!」
「よ、よろしくお願いします」
「なーに同級生に敬語使っちゃってんのよ未優!
よろしくでいいのよよろしくで!」
よろしくと言い直した未優は、戸惑いつつも若干顔が赤い。
玲奈はそれに少し違和感を感じた気がしたが、食事場所を探すため動き始めた三人を見て、それは無視することにした。
(この学校では、みんなに変に思われないようにしないと。普通の人でいないと。)
新しい学校での新しい友達に心底嬉しく思いながらも、緊張と恐怖で体が強張るのを抑えることは出来なかった。
そんな自分を見ていた二人のクラスメイトに、私が気付くことはなかった。
- Re: 私には、みんなには視えないものが視えている ( No.2 )
- 日時: 2015/03/31 21:30
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
No 2 犬猿の仲
「男女ペアを作って、この2時間は調べ学習にしたいと思います」
お昼時間後の授業。先生のこの一言に、地味にだけど私は困った。
なにしろ今日本日転入してきたばかりなのだ。まだクラスメイトのことすらほとんどわかっていない。
せめて性別関係なく好きな人とペアを組めたのなら、真美に頼んで私のペアになって貰えたんだろう。
私は真美以外の人とまだ、自然と話すことは出来ないと確信していた。だから緊張で固まってしまった。
「かーんざきさん!」
びくっと肩を震わせながら、悩ましげに伏せていた顔を上げる未優。
声の主はにかっと笑いながら続けた。
「オレ、阿部海斗。やーっと話すことができたな〜!それで、調べ学習のペアになってくれない?」
「あ、えっと、私でよかったら……よろしくお願いします」
気さくな笑顔で話しかけてくれたところをみると、きっと阿部君はクラスのムードメーカー的存在なのだろう。
正直とてもありがたい。まだクラスに馴染めていない私なら尚更、阿部君のようなタイプの人は話しやすい。
こっそりと阿部君の顔を窺いながら、図書館へと向かうクラスメイト達の波に続いた。
****
「…まとめるのも調べるのも速いし上手いな神崎さん…オレ役に立ててない気が…」
「いやいやそんなことないよ阿部君!」
「またまたぁそんなけんそんしなくても〜」
与えられたニ時間の内半分の一時間で十分課題をこなしてしまった未優と海斗は、先生の許可もあり読書しながらお喋りしていた。
「神崎さんってもしかして優等生?頭いいでしょ!」
「いやそんな…頭いいってほどじゃないよ。普通だよ普通」
調べ学習で協力して作業したことによりいつの間にか海斗と打ち解けていた未優は、気付かぬ内に自然に彼と話すことが出来ていた。
「ところで神崎さん、何読んでんのー?」
「…っ」
「……妖怪図鑑?」
読んでいる本を覗き込まれたことに思わず息を詰めてしまった。
(大丈夫、落ち着け。焦らなければ、なにもおかしなところなんてない。)
「…うん、そう。面白そうだなーって思って」
「…へぇ〜…」
邪気の感じられないまっさらで明るい笑顔から一変して見せた冷たい笑みに、未優は驚愕して固まった。
震えを悟られないよう図鑑の妖怪を凝視していたが、海斗はそんな未優の内情を見据えているかのように図鑑と未優の顔に視線を行き来する。
一体どうしたんだろう、なんでこんなに様子が変わってしまったんだろう…?
この場から立ち去りたい、それかこの空気が変わってほしい
「…お前、大丈夫か?」
「………え…」
いつの間にかいていた冷や汗に気を留める余裕もないまま、ゆっくりとぎこちなく顔を上げた。
「顔色悪いけど、具合でも悪いのか?」
「いや…その…」
向かい合って座っていた阿部君の嫌悪の表情に更に驚きながらも、心配して声を掛けてくれたのだろう、まだ名を知らないクラスメイトの男子を見上げた。
「大丈夫…何でもないから」
「…そうか」
彼は睨みつけてくる海斗に臆せず同じように睨み返して、その場を離れた。
「……神崎さん、大丈夫?具合悪い?」
「っあ、え…と、大丈夫だよ本当に」
あの冷たく恐ろしかったオーラがなくなり、元の気さくな阿部君に戻っていた。
そのことに心底安堵しながら、数秒前の阿部君と声を掛けてくれた彼の様子を思い返した。
あれは———お互いに、心底嫌悪している眼ではなかっただろうか。
****
気になって気になって、訊こうか訊くまいか迷って悩んで、意を決した時には六時限目終了直前。
「阿部君……さっき私を心配して話しかけてくれた人のこと…嫌いなの?」
「…仁科のことか。あいつのことは話したくない。大っ嫌いだ」
「っ、そう、なんだ……ごめん。変なこと訊いちゃって…」
私は転入してきたばかりで、二人の間で何があったのか、一切知らない。きっと何か、お互いにお互いを嫌いになってしまう出来事があったんだろう。
でも、人が人を嫌っているのを見ると、心が痛い。
沈み込んだ気持ちで図書館から出た瞬間、私に聞かせるつもりで言ったのではないのだろう、小さくか細く呟かれた一言が、私の耳に届き、脳裏に沁み込んだ。
「———あいつは、嘘つきだ」
その声音には、憎しみだけでなく、悲しみも混じっていた気がした。
- Re: 私には、みんなには視えないものが視えている ( No.3 )
- 日時: 2015/04/01 11:32
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
No 3 嘘つき
———嘘つき、とはどういうことだろうか
「…なんでこんなに気になるんだろう。昔よく言われたから?」
ずっと、よく言われた言葉。浴びせられた、嫌な言葉。
”嘘つき”
だからだろうか。
もし彼———仁科君も、私と同じように、嘘をついていないのに誤解されているのではないか———そんな考えが頭を巡って止まらない。
きっとこれは、私の望みであり、否定出来はしないはずの可能性の一つでもあり、都合のいい想像でもある。
でも、心配して声をかけてくれた彼の言葉。表情。周りの様子に目敏く気付き心配出来るあの優しい仁科君が、嘘つきとは思えなかった。
阿部君は、仁科君が嘘つきだから嫌っている。
では、仁科君は?
仁科君のあの瞳も、阿部君と同じ嫌悪…考えたくはないがそれ以上の感情、憎悪で満ちていた気がする。
考えても考えても、勿論答えは出てこない。
彼らの間で一体何があったのか。
「…明日、真美に訊いてみよう…」
今日一日を振り返り、一時間も物思いにふけっていたことに気付き驚きながら、消灯して未優はベッドに飛び込んだ。
****
———その夜、幼い頃の嫌な夢を見た。
『へんなのー。体が青いよー』
『…未優ちゃん。どうしたの?』
『この人、体が青いよー?なんでかなぁ?』
『……何言ってるの?この人って誰なの?』
『えっ?ここにいるよー!なに言ってるの先生?』
戸惑う小学校の時の担任の先生。
その頃の私はまだ自分と周囲の世界の違いに気付いてなくて。
『…未優ちゃん、変なことばかり言うのよ。何かの遊びなのかしら?』
『何それ…どういうことなの?』
『この前は、体が青い人がいる、みたいなこと言ってて…誰もいないのに…』
『気味が悪い子ね…』
『そこまで言うことないじゃない。未優ちゃんはまだ低学年でしょう?』
聞いてしまった先生達の言葉。すごく戸惑った。
確かに体が青い人なんて中々見ないけど、と見当違いなことを考えながら、何で先生はあの時私の目の前にいたその人に気付かなかったんだろうと不思議に思った。
時は流れていき、小学校高学年辺りになると、周囲から私は非難され始めた。
『お前変なことばっか言うよなー!
誰もいないのに小さな子供がいるとか、ろくろ首がいるとかうそついたりするし』
『うそなんかついてないよっ!みんなこそなんで変なこと言うの!?
あのとき小さな子供がうずくまってたし、ろくろ首だってほんとにいたのに!!』
『なに言ってんだよ神崎!ろくろ首とかお化けなんているわけねーだろ!』
『いるよ!私見たもんっ!!
ろくろ首もから傘お化けものっぺらぼうもぜーんぶほんとにいるよ!』
ああ止めて私。
みんなには見えてないんだよ。
誰も分かってくれる人はいないんだよ。
信じてくれる人なんていないんだよ。
見えているのは、見えていたのはいつだって、私だけ。私だけだったんだから。
****
「……っ、はあっ、はあっ…ぅあ…」
最悪の目覚めだ。
怒りと悲しみと寂しさとやるせなさで渦巻いている感情。
でも、窓から差し込む日光が、早鐘のように鼓動を打つ私の体に安心を届けてくれた。
「…昔の、夢か…」
まだ脈は落ち着かず、バクバクと鳴り響いているのが胸に手を当てなくても感じられる。
しかし、そろそろ起きなくてはいけないだろうし、何かしていないとまた不安に囚われてしまいそうだったから、ゆっくりと立ち上がり伸びをする。
「未優ちゃーん、起きてるー?」
「はい、起きてまーす!」
「朝ご飯できあがるから、降りてきてー!」
「はい、今行きますー!」
階段を下りながら、すでに頭は阿部君と仁科君のことでいっぱいになっていた。
****
「真美ー、ちょっと訊いていいかな?」
「なになに未優?」
「えっと…阿部君と仁科君って、何かあったの…?」
瞬間訝しげな表情になった真美に、未優は訊いてはいけなかっただろうかと思い気まずく感じた。
「どうしたの未優。いきなりそんなこと訊くなんて」
「あぅ…えっと…昨日の調べ学習の時間、私、阿部君と一緒にやったんだけど、仁科君と仲悪いような様子見て、気になっちゃって…」
居心地悪い空気に耐えられなくなったのか俯いてしまった未優とは対称に、真美は合点がいったような表情でぽんと手を打った。
「あーなるほどねぇ〜。話しておくかー」
「えっほんと!?」
聞こえた言葉にぱっと顔を上げた。
すると真美はあまり周囲の人に聞かれたくないのか、私に体を近付け、小声で話し始めた。
「えっとねぇ、これはあくまで噂なんだけど、阿部君と仁科君って、最初はそんなに仲悪くなかったんだって。
あ、二人とも中学も一緒だったらしくて、特別仲がいいわけじゃないけど、仲が悪くもなく、至ってふつーだったんだって」
でも、中学二年のときの仁科君のクラスメイトが、たまたま二人が言い争っているところへ居合わせたらしくて、そのとき二人は『嘘ついてたのかよ!?』とか『お前の方こそ…!なのに何で見えないんだよ!!』とか、よく分からないことで言い争ってたらしいよ。
どうしようか困ってたら、阿部君が仁科君に掴みかかってそのまま殴り合いに発展しそうだったから、慌てて止めに入って大事にならずに済んだらしいけど、それ以来二人は傍から見てもすっごく険悪な雰囲気で、正に犬猿の仲って言葉が相応しいくらいだってさ。
「はっきりとした原因は分からないんだけどねー…これでいいかな?」
「うん、ありがとう」
話を聞いた限りでははっきりしないけれど、私が考えていた、願っていた可能性がありえなくなくなってきたと思う。
あとは二人に話を聞いてみるしかないかな。
…これはお節介なのだろうか。
もしかしたら二人からしたら、すごく迷惑なだけかもしれない。
でも、それでも。そうだとしても。
「私がどう思われようと、もう慣れっこだし構わないけど。
でも…人が人を嫌いでいるのは、悲しいことだもんなぁ…」
授業開始のチャイムの音を耳にしながら、私は晴天の青空を見上げた。
- Re: 私には、みんなには視えないものが視えている ( No.4 )
- 日時: 2015/04/02 10:20
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
No 4 アンクレット
「仁科君!ちょっと時間いいかな?」
「…いいけど」
放課後図書館に寄ってみると、幸運なことに仁科君がいた。
人がほとんどいないうえ、ただっ広い図書館は、誰かに聞かれることもなくゆっくりと話す場所にうってつけだった。
この機を逃す手はないとばかりに、私は仁科君に声をかけた。
「え…っと、調べ学習の時、心配してくれて、ありがとう」
「いや、別に。具合が悪そうだったから、気になっただけだ」
「でも、びっくりしたよ。
転入したばっかりの私を気にかけて心配してくれて、嬉しかった。
本当にありがとう」
「…大したことはしてない。そんなに礼を言うことはないと思うが」
あまり表情を変えることはしないけれど、彼の戸惑っている様子が伝わってきて、未優はちょっとおかしかった。
でも、本題はこれからだ。お礼を言いたかったのは勿論のことだけれど。
「それで…変なこと訊くけど、不愉快にさせてしまったら、ごめんなさい。
何で……阿部君と仲が悪いの…?」
「っ!…悪いが、あいつのことは話したくない」
一瞬にして嫌悪を露わにした仁科君を見て、やっぱり不愉快な気持ちにさせてしまったことを悟った。
「そう、だよね……嫌なこと訊いちゃって、ごめん…ごめんなさい」
「何でこんなこと訊くんだ」
低く冷たい声音に、未優の中で恐怖と罪悪感が募っていく。
それでもなんとか、答えるために声を振り絞った。
「阿部君と仁科君、見るからに仲悪いし、友達から話を聞いて…
何でこんなにお互いを嫌っているのか気になって……
———阿部君は仁科君のこと、嘘つきって言ってた」
「あいつ…っ!」
苛立ちを露わにした仁科君に焦りながらも、どうにか私の気持ちを伝えようと、言葉を探して続けた。
「仁科君。仁科君が阿部君に嘘つきって言われてるのを聞いて、仁科君に私を重ねてた。
私、嘘ついてなかったのにずっと、嘘つきっていっぱい言われたから」
「…!?神崎…?」
「…だからもしかしたら仁科君も私と同じように———
本当のことを言っているのに誤解されて、
信じてもらえなくて、
嘘つきって言われてるんじゃないかって…思わず考えてた」
息苦しい空気が、和らいだ気がした。
仁科君の表情も穏やかになっていた。
「…お前、お節介焼きだな」
「えっ…うぅーん…そうなのかな…」
「…優しい奴だな」
「?何か言った?」
「いや、別に」
何か言っていたような気がするけれど、気のせいだろうか。
でもそんなことを考える余裕はなかった。
ふと時計を見るといつの間にか閉館時間が迫っていて、思いの外時間をとってしまっていたことに気付いたからだ。
「あああ仁科君…!
変なこと訊いちゃっただけじゃなく、こんなに時間とってしまって本当にごめんなさい!」
「いや、大丈夫だ。気にするな。
俺も冷たい態度をとってしまって悪かった」
———結論からすると、ほとんど成果はなかった。
唯一わかったのは、予想通り仁科君も阿部君を同じように嫌っていることだけだ。
でも話してみるとやっぱり、仁科君は嘘つきじゃないと何故か確信している自分がいた。
****
図書館を後にしようと二人して歩き始め、数歩歩いたところで仁科君は立ち止まって振り向いた。
「俺も可笑しなことを訊くが……左足首に、何かつけているか?」
一瞬、頭が真っ白になった。
頭を鈍器で殴られたような衝撃とは、このことだろうか。
「………なんで…わかるの…」
震えた声でなんとか紡いだ言葉は、随分と弱々しかった。
心底驚愕していた。本当に衝撃的すぎる発言に、つい仁科君を凝視していた。
「驚かせて悪い。何て言えばいいのか…
神崎の左足首に違和感があるというか…不思議なオーラを感じるというか…」
その言葉に私は見開いていた両目を更に見開いた。
靴下で隠れているはずのアンクレットの存在に気付いたうえ、さらに何かを感じ取ったと言うのだから。
驚くなという方が無理な話だった。
幼馴染からもらった、大切なアンクレット
引っ越し直前の時のこと、優しい言葉を思い出す。
『お守りだ。ちゃんと左足につけておけ。
俺の代わりにお前を守ってくれる。
…馬鹿野郎、泣くな。
大丈夫だ。きっとまた、すぐに会えるから。
だから、泣くな。笑っていろお前は』
…これのおかげで、私はどれだけ助けられたか———
「…ざき、神崎」
「あ…な、に?仁科君」
過去へと思いを馳せてしまったけれど、仁科君の声で現実へと意識が戻った。
「悪い……普通驚くよな。こんなこと言ったら。驚かせてしまってごめん」
「う、ううん!私こそ、変に驚いちゃって!大丈夫だから!」
お互いに気まずい気持ちは残ったけれど、仁科君にさよならと挨拶をして今度こそ私は帰路へ着いた。
驚きすぎてドキドキとまだ高鳴る胸を、押えながら。
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