コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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雨の社
日時: 2015/06/05 19:29
名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: YAHQda9A)

昔話を聞いてくれる?……さぁ、座って。







はにわという者です。こんにちは。おそらく短編です。

実質2作目の作品となります。
前回は洋風の小説を執筆させて頂きました。
今回は「和」に重点を置いていく予定です。何事も挑戦ですよね。

拙い文章ではありますが、気軽に読んでいただけると幸いです。
アドバイス等ありましたら遠慮なく!



雨の音をBGMにして読んでいただけますと、少し、嬉しいです。
不定期更新ですが、とりあえずやってみよう精神で頑張ります。



>>1 【プロローグ】
   
   
第一章 【夕立】‐金平糖と娘‐  第二章 【恵雨】
>>2               >>28
>>3               >>29              
>>4               >>30
>>5               >>31
>>6
>>7




【小雨】-落涙-      第三章【××の嫁入り】

>>18              
>>19              
>>20           >>28
             >>29
             >>30
             >>31

終章【月時雨】

>>32
>>33


>>8 ※キャラシート(一旦募集停止します)  >>7 




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Re: 雨の社 ( No.31 )
日時: 2015/04/04 23:52
名前: はにわ ◆MTo6zazpiQ (ID: Bl6Sxw0v)

「……で、ここに辿り着いた、っつー分けか」
話が終わったらしい。周がその後を引き継ぐように言った。

ええ、と小町。
「いやあ、俺は小町さんがここで働くってのは知ってたけど、
 そんなとこから来てたのか、初耳だぜ」
感心する様に、身を乗り出していた。

大変だな、座敷わらしちゃんも。
「あら、そう?なかなか楽しいわよ」
そう言ってくすくす笑った後、
「……で、貴方はまだ見回りの仕事があるんでしょう?神様ならちゃんとしなくちゃ」
と、まるで子どもに言い聞かせるように、周を指差した。
……嫌な事を思い出した、という顔。

話を聞いてくれてありがとね。
手を振る小町。
へいへい。
渋々立ち上がる周。


そんな二人の様子を私は、妙な気分で見つめていました。





周の姿が見えなくなって、しばらく立ちました。


「ねぇ、やっぱり小町の正体が気にならない?」
小町は縁側に裸足で立ち、私を見下ろしました。(まぁ、私が座っていたから出来た事ですよね)

……突然どうしたのか。

「こぉんなに気づいてもらえないと、小町寂しいなぁ」
へへ、とまた照れ隠しの様に笑い、

「せめて貴方には気づいて欲しいな」
そして、顔をこちらへ近づけてきて、

目を閉じて。小町は小声で、囁きました。
自分から正体を明かそうとする化け物はいないはずで、でもこの子に常識が通じる分けもないなと思った。

仕方なく、目を閉じて、

真っ暗になった。


ああ、雨の音が聞こえる。





「開けていいよ」





——幻覚かと、目を擦って、文字通り、狐に化かされたようになりました。

彼女の瞳孔は獣のようで。
二股に分かれた、尻尾。
頭部からあたり前の様に生えた、耳。



これが、違和感の正体であったのだ。
……子どもの様な、そうでないような、何とも面妖な。

私はやっとの事で口を開きました。
「化け狐、ですね」
現世にこのような妖怪がいようとは。

「そぉ、私は九尾の狐。まだ何年も生きてないから、尻尾は少ないけど、……へへ、そうだね。立派な化け狐よ」

「……お見事です。小町様」
「えぇ、どうしたの急に、照れるなぁ……あ、そんなことより、」

狐の尻尾と耳が付いて異形となっても、未だ無邪気な笑みは、出会ったときと瓜二つでした。
そして、私にまた近づき、

——急に、抱きついて、先ほどと同じように、囁きました。

「周には、内緒ね」
「……はぁ」
「秘密っていいでしよ?何だか。小町は貴方みたいな人に正体を明かしたかったの」

——反応がとおっても面白いからね!!

……その言葉に、異様に恥ずかしくなった。
  体が、ぼっと熱くなるのが分かりました。


「……な、私はそのようなつもりでは、————小町様ァ!!」


今、鏡だけは最ッ高に見たくありませんッ……!!



そんな、私に。ああそろそろ行かなくちゃ、と言い放って立ち上がりくるりと向きを変えた。
貴方だけよ、貴方だけが私の正体を、しっ、て、る、の♪

スキップをして歌いながら、嬉しそうに。


てっきり夢のように消えてしまうものだと思いましたが——

……何事もなかったように、茶屋に入っていきました。


縁側で、手を伸ばしたままの姿勢で固まる私。
神様としてどうなのだろうか。




——案の定、帰って来た周に発見されました。






……ははぁ、狐にでも化かされたか?
  そんな顔してさ、俺鏡持ってるんだけど見てみねぇか傑作だぞうわちょっとやめろなんで手を振り回すんだ危ないだろ鏡割れちゃうだろいや本当顔真っ赤だぜどうしたんだよおいだから俺を叩くなよせ










Re: 雨の社 ( No.32 )
日時: 2015/06/05 18:06
名前: はにわ ◆MTo6zazpiQ (ID: YAHQda9A)



貴方にお礼がしたい。


私を助けてくれた貴方に。


あの時は迷惑かけちゃったかな。





同じ雨の中。けぶる景色。どうかそこで待っていて下さいね。





Re: 雨の社 ( No.33 )
日時: 2015/06/05 18:53
名前: はにわ ◆MTo6zazpiQ (ID: YAHQda9A)







で、なんだ。

「……お前が店をやっている、というのは嘘だったのか」
「あら、嘘じゃないわ」
言葉のあやってやつよ。現に、こうしてちゃんとお茶を出してるじゃない。

小町はそう言いつつ、卓袱台に人数分の——三つ分の質素な容器を置いた。


「まぁ、冷静に考えれば材料を調達する所もないですし……」
恵は当然ですとでも言うような、呆れたような視線をそれに注いでいたが。


ちなみに何故こんな所——茶屋に集まっているのか、お教えしようか。

……なんとなく、だ。神様も休暇が必要なわけさ。
  しいて言えば、聞きたいことも多くあるのだが。


はーい、注ぎ終わったよー。

間の抜けた小町の声が飛び、見ると机の前にちょこんと座っていた、あんた飲むの早くないか。そんでもって恵お前は何故それをそんなに警戒しているんだ。


二人の間で、交互にそいつらの顔を、俺は見る。
何も進展が無いことを悟った俺は、とりあえず容器に口を付けることにした……。






虫の遠くで鳴く声が聞こえて、ああもう夜なのかと思った。
まるで何かの儀式のように、鈴のような音と、深い闇がこだましている。

無心でそれをながめた後、誰といわず話しかけた。


「なぁ」


「俺って前世の記憶とかがあんのかね?」



「前……言葉にできないが、なんかこう、ふわっとした感じのよ」

懐かしい感じ?


自分のと違う声音にいきなり言葉を引き継がれ、怪訝に思って振り返ると、

——いた。頬杖を両手でつきながら、畳に寝そべっている。
  

「あるんじゃないかな?貴方が神様になる前」
……唯の人間だったのかもしれないわね。

訳知り顔の小町。それだけいうと、小さく笑って。

「……あいつにもあると思うか」

視線を部屋の奥に滑らす。わりかし長い髪が、畳に不思議な文様を描いていた。そこだけ見ると、まるで不貞寝をしている子どものようだった。



えぇ、あの子?
突拍子もない事を言われたかのように、小町は少し高めの声を上げた。

「絶対あると思うよ、貴方よりそこは人間らしいかも!」
そこは、ね。



まるで自分の子の話でもするように、あの子は、と切り出した小町の姿が可笑しくて、俺はつい、吹き出してしまった。笑いながら、


「なぁんであいつだけ”あの子”なんだよ、あの人って言ってやれよ」
「ええー、”あの子”のほうが似合うわ!見た目はふっつーの青年だけど!」

しばらくそんな感じで勝手に恵について論争をしていた。
あいつが本当に寝ていますように……と祈りつつ。



……あんたの事情には首を突っ込むつもりはないけど、……どこから来たんだ?


……へへ、人なんて必要な時にふっと現れてある日突然消えちゃうものだよ。一期一会ってやつだね。
  よかったら教えてあげようか。


……いや。





















Re: 雨の社 ( No.34 )
日時: 2015/08/28 22:09
名前: はにわ ◆MTo6zazpiQ (ID: aOQVtgWR)

「ここの、神社と同じようにね」

必要であれば巡り会うのだろうし、必要がなけりゃそのまま無視よ。
雨が降っていれば人はここを通っていけるけど、
雨が降らなくて、人が通らなくなったとしてもね。
この神社は消えないもの。確かにここにあるの。



「まあな」

小町がそのまま話し続けるのを、俺は黙って聞いていた。

「それを。その沈黙の秘密みたいなものを貴方が守り続ける」

「…………そうだな」

貴方がここにいる限り消えやしないわ。


ああ、


「そのためにゃあんたにも頑張ってもらわなきゃな、恵」
「……はっ、すみません私としたことがなんだお前か」

やはり本当に寝ていたようだ、嗄れた声がそれを訴えている——が俺ってわかった瞬間の豹変すごいな。


「……私の役目は貴方の、監視、であってだな……あぁ眠い、よくも起こしてくれたな……」


恨みの篭った、今は伏目がちの鬼灯色。何となく申し訳ない気持ちになり、すまん、と笑いながら謝った。





いつの間にか朝焼けの、白い空気。現実と虚空の狭間のような、不思議な色に染まる空。



この景色が好きだと思った。この神社が一際美しく映えるようにも。
皮肉にも、雨が降っている空よりも。


ああ、”あの子達”にもこんな景色が見せられたら。

もったいないな、俺のような神様には。


二人も、空を見つめていた。ゆっくりと白んでいく、空を。


どうだ?なかなかいいもんだろ?

これが俺の——「雨の社」なのさ。

そうやすやすと他の奴には渡さない、お前等にも……なぁんてな。









一杯いっとくか、これを肴に。

……やめろ、寝かせろ。…………ああ……

小町も飲む!


そーかそーか、いやお前は駄目じゃねぇかっておい恵ー!?

休ませてあげようよ。

くそ、逃げられた……

いいからいいから。
























Re: 雨の社 ( No.35 )
日時: 2015/11/28 16:31
名前: はにわ (ID: NywdsHCz)


お久しぶりです。はにわです。

実はこの作品、ここで一応完結となっております。
長い事最終話を書いたまま放置する形となってしまい申し訳ありません。

感想を下さった皆様、また、見て頂いた皆様、ありがとうございました!
私の励みになりました。ここまで書けたのも皆様のおかげです。

キャラが好きだという意見も聞けて、本当に執筆者として嬉しい限りです!!
私自身も、執筆するのがとても楽しかったです……!!
もしかしたらこれをリメイクしてまた新たに書くかもしれません…!!
では! 遅くなりましたが、締めの?挨拶でした。ありがとうございました!!


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