コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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微妙な短編集【リクエスト募集中!】
日時: 2016/02/01 20:57
名前: ガッキー (ID: okMbZHAS)

微妙な短編集です。大体一話か二話で終わります。面白かったら「良いね」とか「YES」とかいっていただけたら続き書きます。自由にやります。
もう一度言います。微妙です。
あと、更新が遅かったり、誤字脱字がある時あります。笑って許して!
頑張ります(‾+ー‾)

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Re: 微妙な短編集【リクエスト募集中!】 ( No.19 )
日時: 2016/02/13 15:34
名前: ガッキー (ID: l1OKFeFD)

視界には、真っ白な天井。
鼓膜には、カチャカチャと金属音が。
鼻腔には、消毒液特有の刺激臭。
口内には、切れた傷口からの苦い血の味が。
身体には、柔らかい毛布。ついでに言えば、ボクはベッドの上で寝転んでいる。寝込んでいる。
善人、土手・帰路に助けられた(らしい)ボクは彼に礼を言い、自宅に帰ろうとしたのだが、彼はそれを許さなかった。
「俺の家に来てくれ。手当をする」
有無を言わせぬ、と言うか返答をする暇さえ与えられずに、ボクは彼に背負われて家に連れ込まれた・・・そして、今。
言葉通り彼は、ボクを手当する為に今奮闘していた。
昨今の男子はそういう家庭的な事は、からきしだと思っていたのだが・・・彼は手際良くボクに処置を施していた。これが、今流行りの〜系男子という奴だろうか。
「痛くないか?」
「・・・少し沁みるけど、我慢出来ない程じゃない。続けてくれるかな」
「了解だ」
わざとボクは偉そうに言ってみる。彼が嫌いだから、嫌な態度を取るのではない。
寧ろ逆。
彼の事を好ましく思っているから、このような行動を取っているのだ。
だってそうだろう?
片や、クラス中の人望を集める人気者。
片や、クラス中から疎まれる日陰者。
そんな二人が、明日から普通に話していようモノなら、他者から変な目で見られる事は明らか。
だからこその、あの言動。
考え過ぎかな?いいや、それ位しないと、勇者時代のボクが許さない。
短絡的な行動ーーそれによって、昔と今で変わる事は、
身体的な死。
か、
社会的な死。
それだけだ。
「それにしても、何で中原は怪しい集団にリンチされてたんだ?」
相手にどんな事をしたんだ?という余計な詮索よりかは、どうしてそんな状況に?という単純な疑問を孕んで彼はボクに問うてきた。
「昔の因縁だよ」
嘘を吐いても(別に吐いても構わないのだが、念の為)しょうがないので、内容を少しばかり暈(ぼか)して伝える。
彼はボクの答えを聞き、数瞬間手を止めた。
「・・・そうか」
何かを考えているようだが、当然の如くボクには内容は分からない。
それからすぐに、
「よし、手当は終わった」
と言った。その時に腕をポンっと叩かれたのが地味に痛かったけれど、リアクションをするのは恥ずかしいので黙っておいた。
「ありがとう。君には幾ら感謝を言っても言い切れないよ。本当に助かった。では、お邪魔しました」
そんな感じに。当たり障りの無い御礼の言葉を並べて退散しようとした時、彼が
「待ってくれ」
とボクを引き止めた。
「・・・何かな?」
何だろう。明確な理由も根拠も無いけれど、嫌な予感がする。
そんな予感と共に、鼓動が段々と早くなる。
「送っていこう。一人じゃ危ないからな」
案の定、彼は余計な事を言い出した。
それに対する返事とばかりに、凄い嫌な顔をしてみる。
「そんな顔をするな。現にお前は、先程襲われたばかりだろう」
「うっ・・・」
そこを突かれると、ボクは何も言い返せなくなってしまうのだが。
ボクが黙り込んだのを彼は見逃さず、すかさず追い討ち。

「な?土産にケーキもやるから」

ハンッ。
彼の言葉にボクは、心の中で鼻で笑った。追い討ちとしては落第点なその台詞に。
ケーキだって?おいおい、土手・帰路君。流石にそれはボクをナメ過ぎではないかな?確かに、ボクは女子だ。所謂(いわゆる)JKというヤツにも当て嵌まる。スイーツ大好き自撮り大好きパジャマパーティー大好きなJKである。だけれど、だからと言って、全ての女子がケーキを好んでいるのか?と問われれば、答えはNOだ。甘いのが苦手な人だって、少なからずいる筈だ。ボクだって、自撮りはしないしパジャマパーティーだってしない(一緒にする相手もいない)。
そんな、【魅惑の体脂肪率加速食品(スイーツ)】如きに釣られる訳がないだろう。ボクを侮るな。
ボクは、彼を見下すような表情と顔の角度で、勇者時代を思わせる最高に格好良いキメ顔で、彼に言ってやった。

「チョコレートケーキで頼むよ」

Re: 微妙な短編集【リクエスト募集中!】 ( No.20 )
日時: 2016/04/25 23:56
名前: ガッキー (ID: Xr//JkA7)

と、まぁ。こんな感じで。これから先は予想して頂ける通り、ぐだぐだと仲を発展させて行ってしまう訳だけれど。終いには、彼から『親友』と迄言われる程の仲になってしまう訳だけれど。
出逢いの場面は、これで終わり。あとは、作者に委ねようじゃないか。後々何かを書くなり、他の作品で登場させるなり好きにしてくれれば良い。
締まらないエンディングになったけれど、それで良い。この結末が意味を成さなくても構わない。
恐らく、いつかまた、君達と会う事になるだろうからねーー









と、格好良く終わらせた訳だけど。え、何?再開が早過ぎやしないかい?
ふむふむ・・・、・・・・・・はぁ?
ボクに、これから先の物語の簡単な導入の部分をやれって?
いやいや、馬鹿か。幾らこの『微妙な短編集』の作者だからって、登場人物に導入をやらせようなんて・・・。大体、もう誰かがやっている使い古された手法じゃないのかい?・・・でもやるって?
・・・分かったよ。どうせボクに逆らえる訳無いんだしね。
それでは、読書の皆様。次回からボクが物語の導入を務めさせてもらうとするよ。



全く、『口調がそれっぽいから選んだ』って・・・。

Re: 微妙な短編集【リクエスト募集中!】 ( No.21 )
日時: 2016/04/26 22:06
名前: ガッキー (ID: fMHQuj5n)

いやはや、まさか本当にボクを採用するとはね・・・。
どうも、こんにちは。
と言っても、『おはよう』の人もいれば『こんばんは』の人もいる事だろう。ボクもそこまで考えて発言していないから、気にしなくても構わない。ただ言い易かっただけだ。
突然だけど、貴方は誰かに悩みを相談した事があるかい?
いや、どちらでも構わないよ。そこは大して問題ではないからね。
問題は、『誰に相談したか』という事だ。何も、見ず知らずの人に自分の悩みを相談する人は居ないだろう?
今回は、悩みを解決する家系に生まれた主人公が、見ず知らずの人から相談を受けて解決へと導く物語だ。
では、今回も微妙な世界をお楽しみあれ。

Re: 微妙な短編集【リクエスト募集中!】 ( No.22 )
日時: 2016/04/26 22:07
名前: ガッキー (ID: fMHQuj5n)

僕の名前は青鷺・銀(あおさ・ぎん)。ちょっと変わった高校に通う高校二年生だ。そこで、お悩み相談的な事をやっている。
誰にでも悩みはある。
誰にも言えない悩みがある。
そんな悩みを解決へと導くのが、僕の仕事だ。
見ず知らずの人に、悩みをそう易々(やすやす)と話せるか?という疑問に対しては、僕はこう答える。
入学してから今迄培ってきた《信頼》と《実績》。それが、悩める彼等が僕のいる相談室への扉をノックする切っ掛けになっているのだーーと。
まぁ、僕自身こんなに繁盛するとは思わなかった。せいぜい、数ヶ月に一度誰かの相談に乗れればなぁ〜と思っていた次第なのだけれど。
やはり、最初の《お悩み》が印象強かったのだろうか。解決した翌日には、もう僕と依頼者の存在は全生徒に知れ渡っていた訳だし・・・。
うん、そうだね。ここは、僕が初心に戻るのと、貴方がた読者様に説明する意味も込めて。
まだ僕が、今よりも『お悩み相談』に苦戦せていた頃の話ーー始まりの話をしようか。




僕が通う高校は、同海倫(どうかいりん)学園という名称の私立校だ。
この学校が普通の私立校だったなら、この物語は『ただのお悩み相談日常コメディ』に成っていたのだけれど。
そう甘くは無い。
この物語は『命懸けお悩み相談コメディ』だ。笑いあり血の涙ありの青春コメディだ。
僕が中学一年生の頃に創立した同海倫学園は、世界中どこを回っても目にする事が無い先進的で革新的な制度がある事で有名だ。僕も受験シーズンに、この制度をしっかりと目にした時、大いに仰天したのは今でもよく覚えている。

《人類と異人の共学化》

簡潔に言うならば、こういう事だ。
異人。
人とは異なるモノ。
ほら、よくゲームとかで魔人とか聖人とか義人とか出てくるでしょ?
つまりはそういう事。
僕達人類と、ここではないどこかに存在する異人の方々を一緒の教室で勉強させ、互いに異文化を学び合おうーーという事なのだ。
この出来事は世界中に、何週間にも渡って様々なメディアに報道された。そして、世界中の受験生が、同海倫学園への入学を希望した。何せ、異人である。

前例が無いのなら、せめて自分が最初にーー
異人と友達になれたなら、自慢が出来るーーゲームの世界に、是非自分も仲間入りをーー

そんな下心を持った受験生はこぞって同海倫学園に志願書を提出した。しようとした。
しかし。希望者なら誰でも貰える『入学のすすめ』の最後に書かれていた一文を読んで、七割以上の生徒が志願書の提出を取り止めた。
その一文とは、こうだ。
《同海倫学園の敷地内にて起きた死亡事故に関しては、本校は一切、その責任を負い兼ねます》
と。
当たり前だ。この世界、国と国の間だけでも文化が違うのだ。
種族間を越えて同じ室内で勉強させるという事は、大きなリスクを孕む。
適切な例を挙げるならば、生死に関する関心の違い。
言わずもがな、この世界では人殺しは犯罪である。
なら、彼等異人にとって、人殺しとは?
勿論、僕等人類と同じように、人殺しを良しとしない種族もあるのだろう。
しかし、皆そうではない。
害虫を殺すように、同族を殺せる種族もある。
断言しよう。必ずある。
『入学のすすめ』の最後の文を簡易化すれば、《殺される危険性がありますが、本校はその責任を一切取りません》という事だ。
冗談じゃない。そう思った人が殆どだったと思う。中学校迄普通の生活を送っていた人達がーーそしてその親が、そんな危険な高校への入学等認める訳がない。

かくして。世界中から注目を集めながらも、不思議と入学希望者が定員人数以下という不思議な高校が誕生したのであった。




青鷺・銀(あおさ・ぎん)ことーー僕は、窓を眺めながら溜息を吐いた。窓際の机に座って悩まし気に空を見上げる様は、人によってはとても絵になるのだろうが・・・僕は生憎平凡な生徒だ。異人でもなければ偉人でもない、ただの男子生徒だ。
僕が吐いた溜息は、期待を外された時に吐く、落胆の溜息だった。理由としては至極簡単。
この高校に入学したのは良いが、目的が果たせないからである。
勝手に目的を作り、自分のせいにも関わらず勝手に落胆するというのは、酷く滑稽なモノだがーー僕も人間。加えて、数ヶ月前までは中学生だったのだ。若さを理由に、どうか許してほしい。
目的と言っても、友達作りや文武両道とか、そんな理由じゃあない。話す程度の友達は教室内にいるし、文武の武に当たるモノを僕はやっていないし。勉強ならほどほどに得意だ。
そうではなくて、別の事。
『お悩み相談』である。
は?いきなりどうした?と感じた貴方。貴方の反応は正しい。僕だって正直馬鹿げてると思っている。
しかし、事実。
僕の家の家系は、代々悩みを解決する家系なのだ。小さな事から大きな事迄ーー物探しから難事件の捜査協力迄。悩みを抱えた人の依頼なら何でも解決する家系なのだ。
『お悩み相談』という軽めな字面に反して歴史は意外に深く、僕で四代目。
僕の前に三代もある訳だから、僕の代から勝手に路線を変更するのは賢い選択ではない。三代も続けていられるのだから、それなりに需要があるという事だ。
親にも、僕が小さな頃から「継いでくれ」と言われてしまっているし、特に将来の夢がある訳でもない僕もそのつもりだ。
という訳で、僕は『お悩み相談を受ける事』を目的にこの高校に入学したのであった。
しかしながら、どこで間違えたのかーーそれとも需要が無いのかーーはたまた世代によるモノなのかーー僕の下へ『お悩み相談』をしに来る生徒は誰一人として現れず・・・、僕はこうして溜息を吐いていたのだ。
そんな時、ガラガラっと教室のドアが開いた。
「まだ残ってたの・・・?暇ね」
「・・・・・・暇なのは確かだけどさ、もうちょっとオブラートに包んで話さない?」
ドアを開けて、すぐに僕の姿が目に入ったのだろう。僕のクラスメイトーー白井・真和(しらい・まお)は呆れた調子で僕に話し掛け、近付いてきた。黒のツインテールが、本人が歩くと一緒にひょこひょこと躍動している。
近くに立たれても、着席している僕とあまり目線が変わらない。白井さんを語呂良く表すならば、
小さな身体に大きな態度ーーと言った所か。
「無理よ。私は正直なの」
「・・・・・・」
正直な人は、果たして自ら『正直』だと公言するのだろうか。そんな視線で白井さんを見詰めてみる。
が、白井さんは僕の視線には構わずに話を逸らした。
「で、最近どう?誰か相談しに来たの?」
「誰も」
僕は首を横に振った。
こうして話している事から分かる通り、僕と白井さんは仲が良い。というのも、入学した最初の座席表の位置において、僕と白井さんの席が隣だったからだ。
それだけなら、僕と白井さんが知り合う事の無い未来になっている可能性もある。
しかし、僕は入学して最初のホームルームが終わった直後に、隣の席だった白井さんにいきなり話し掛けたのだ。

『何か悩みとかない?』

と。
恐らく、緊張と目的へのプレッシャーで焦っていたのだろう。今思い出しても、あの時の僕はスマートじゃなかった。

『・・・いや、無いわよ』

数秒固まってから、白井さんはこう返して来た。彼女の目に映る僕は、果たしてどんな男だっただろう。もしかしたら、怪しい占い師とでも思われていたかも知れない。
会話終了。第一印象最悪だと、この時の僕は思っていたのだが、しかし次の日から白井さんは僕に話し掛けてきてくれたのだ。
理由は問うていないので定かではないが、恐らく『変な奴』だと思われて興味でも湧いたのではないだろうか。
とまぁ、今の関係に至る経緯としてはこんな感じ。
「数ヶ月経ったんだし、もう誰も来ないんじゃない?」
「いや、僕はまだ諦めないよ」
「・・・まだ続けるの?」
「うん」
ここで、少し会話の間が開いた。その間があまりにも長過ぎたので、白井さんの様子を窺おうと顔を見ると、白井さんは溜息を吐きながらこう言った。
「仕方無いわね・・・」
「?」
「私が青鷺に相談してあげるわよ」
と。一般的に考えれば、恐らく相談する人としては相応しくない大きな態度で、僕の前の席に腰掛けたのだった。そして身体だけ反転させ、僕と対面。
「・・・え、は?」
いきなり過ぎる展開に脳を混乱させていると、白井さんがあまりない座高を精一杯伸ばして僕を見下(そうと)した。実際出来ていなかったけど。
「このままじゃ、見てて可哀想だもの」
「えーっと、『お悩み相談』なるモノを行っていて、数ヶ月経っても誰も相談しに来なくて困っている僕が言うのも何なんだけどーー悩み何かあるの?」
毎日楽しそうだけど。
「失礼ね」
と、ぴくぴくと眉を引き攣らせながら白井さんが。
「ご、ごめんよ。・・・・・・話を戻そう。じゃあ、僕は白井さんの相談に乗らせていただきます」
手をささっと出し、『内容を話してどうぞ』のジェスチャーをする。
視線をあちらこちらへと彷徨(さまよ)わせ、咳払いをしてから白井さんが切り出した。

「私を、魔王らしくしてほしいんだけど」

Re: 微妙な短編集【リクエスト募集中!】 ( No.23 )
日時: 2016/05/09 23:23
名前: ガッキー (ID: CejVezoo)

「・・・・・・え?」
僕は、白井さんの口から放たれた相談の内容に耳を疑った。思わず聞き返す。
「だから、私を魔王らしくしてほしいんだけどって言ってるの!」
魔王らしく?
魔王っぽく。ではなくて?
魔王っぽくだったら、衣装なり口調なりを工夫すれば『っぽく』は出来るのだが。
『らしく』となると、そうは行かない。
いや、そもそもーー
「魔王らしくって・・・白井さんってまさか」
「魔王よ」
「ハァ!?」
「何よ、そんな驚く事でもないでしょ。だってこの高校は人類と異人がごちゃ混ぜになってるんだから」
それはその通りだ。僕は混乱する頭を、半ば無理矢理気味に冷やした。因(ちな)みにこれは、親から教わった『相手がどんな相談を持ちかけてきても、冷静に話が聞けるようにする技』だ。
「ほら、私って魔王らしくないじゃない?」
「え、・・・うーん、そうなのかな」
苗字にも魔王のイメージとは正反対な『白』が入っているし、名前も真実の平和って書いて真和(まお)だし。
言われてみれば、確かに魔王らしくはない。しかしまぁ、親から授かった名前はどうしようもないのだが。
白井さんの名前についてはこの際置いておいて。
「まさか、知り合いが魔王だ何て思わなかったよ」
「何だと思ってたのよ」
「小さな身体に大きな態度ーーって痛い痛い!指の可動域が広がっちゃう!」
最後迄言う前に、机の上に放っていた手を白井さんの小さな手に掴まれ、指を反対側にぐいっとやられた。僕が声を出したからすぐに離してくれたものの、もう少しで指の関節が増える所だった。
「言葉に気を付けなさいよ。何て言ったって私は魔王なんだから」
「全然そうは見え」「あァ?」「ます!もう魔王にしか見えません!!」
もう一度指を握られたので、慌てて言葉の軌道を修正。
僕は二重の意味で目を細めて見る。太陽の光を浴びて髪を輝かせる白井さんーーそして、自分が魔王であると告白した途端、こんな暴力的になった白井さんを。

閑話休題。

教室にて、机を挟んで向かい合う態勢で話を再開する。
「・・・で。『魔王らしくする』って言ったって、具体的にはどんな事を望んでいるのかな?」
「そもそもの話なんだけど」
僕の問い掛けには答えず、白井さんは話をズラしてきた。
「何かな?」
「この学園に魔王がいるって聞いた事ある?」
「・・・あ、あるよ」
入学して暫くしてから小耳に挟んだ、とある噂を思い出した。しかし、その噂の内容を思い出して返答時に少しラグが生じた。
「話してみなさい」
「いや、とても言い辛いんだけどなぁ・・・」
「構わないわ」
本人からの了承が得られたので、僕は思い切って言ってみた。
「運動神経が滅茶苦茶悪くて、ちっちゃくてオーラも威厳も何も感じられない可愛い自称魔王が居るらしいーーみたいな感じの」
ナンテコッタ!白井さんの表情がみるみるうちに無に変わっている。
このままだと先程の二の舞なので、僕はすかさずフォローに回る。
「でも、その時はまさか白井さんが魔王だなんて思いもしなかったなぁ。だって、白井さんって成績優秀だし、クールなイメージがあったしさ」
「そ、そう?何か照れるわね・・・」
僕が自然体を装ってさりげなく白井さんを褒めると、白井さんはツインテールの毛先を弄りながらニヤニヤと満更でもなさそうにするのだった。僕が先程吐いた『小さな身体に大きな態度』発言の事等すっかり忘れて。
可愛いので、話の続きを促さずに眺めてみる。
数十秒という長い時間を掛けて、ようやく白井さんが気付いた。「何見てんのよ!」と顔を赤くしながら僕を睨む。また攻撃されてはたまったモノじゃないので、それについての弁解はせずに話を戻した。
「つまりは、どういう事なのかな?」
僕の言葉で話の本筋を思い出したのか、バンッと僕の机を両手で叩いて白井さんは立ち上がった。
「私は、それを改めたいのよ!!」
ビシィッ!!と僕の眼前に人差し指を突き付け、そう言った。
「・・・・・・えーっと、つまりは?」
「学園内の全ての生徒に分からせたいのよ!私は運動神経抜群で、ちっちゃくなんかないしオーラもバンバン出てて威厳もバリバリで格好良い、何でも出来る学園最強の魔王なんだって!」
成る程、つまりはこういう事か。

学園内では、ひ弱であまりイメージの良くないーー魔王らしくない噂が流れている。幸いにも、白井さんが魔王だという事は周囲に知られてはいないが、それも時間の問題。
どうにかして、魔王の悪いイメージを払拭し、『魔王らしく』しようと僕に相談した訳だ。

「その心掛けはとても立派だと思うよ。僕も全力で相談に乗ろうと思う」
「本当!?」
「でも、」
相談してきた時の傲慢な態度とは打って変わって喜びの表情を見せた白井さんを牽制するように、僕は右手を白井さんの前に突き出した。
「言葉で言う程それは簡単じゃない。取り敢えず、白井さんが考える『現在の魔王のイメージを変えるプラン』を教えてもらえるかな?」
「分かったわ」
胸を張って、白井さんが立ち上がった。目を閉じて、嬉しそうに語り始める。

「青鷺が知り合い数人連れて私の元に来て。私がその知り合いの前で青鷺を思いっ切り殴るから、青鷺はそれに合わせて思いっ切り吹き飛んで」

「・・・・・・・・・え、冗談だよね?」
「そう聞こえた?」
嘘であってほしい。
「って言っても、私も自分が相談している身なのは分かってる。このプランはボツね。・・・プランは全部青鷺に任せる」
「ーーいや、それで行こう」
僕の言葉に、少しの間ぽけーっと間の抜けた表情を見せた白井さん。
なるべく、相談者の意に沿うのが僕の流儀何でね。白井さんのプラン、僕が叶えよう。



という訳で、あれから数日後。
そしてその放課後。
白井・真和プレゼンツ『真和(まお)を魔王らしくしよう作戦』は決行されようとしていた。




「・・・んで、その可愛い魔王ってのはどこにいるんだ?」
適当に集めた僕の知人の一人である赤石・南人(あかし・みなと)は、魔王(白井さん)の元へ案内する途中、僕にそう問うてきた。
「屋上だよ。この前たまたま見掛けたんだ」

『魔王に会ってみない?』

そんな突拍子も無い提案に二つ返事で乗ってくれる程の友達は、僕には居ない。
だから、僕は上の言葉に少し付け加えた。

『会って、倒しちゃおうよ』

と。
彼、赤石くんは自分に自信を持っている。中学の頃に格闘技を習っていたのも相まって、誰に対してもーー異人に対しても平等に強気な態度を取る事で有名だ。
そんな彼だからこそ、学園中で噂になっている魔王の存在は、あまり好ましくは思っていなかったのだろう。
噂の存在を倒せば、自分が噂される。
そんな思いを抱いた赤石くんは、簡単に僕の策略に嵌ったのであった。
本当は、もう二〜三人探さなければならなかったのだが、赤石くんと仲が良い(悪く言えば『赤石くんの取り巻き』)中田(なかた)くんと谷川(やがわ)くんも一緒に付いてきてくれた。
これで、僕を入れて四人。
屋上へと近付くにつれて、少しずつ緊張してきた。僕の一挙手一投足によって、白井さんのこの後の学園生活が決まるのだ。赤石くん達に顔がバレるので、今迄みたくはならない。顔と噂が一致されてしまえば、これ迄通りの生活は送れない筈だ。何かしら、悪い方向に転がっていってしまうだろう。
僕の『お悩み相談』の誇りに懸けて、必ず解決へと導かなければならない。


そうこう考えていると、いつの間にか屋上へ出るドアの前に立っていた。
因(ちな)みにこの学校は、屋上が開放されている。休み時間なら、誰でも利用が出来る。
「おい、魔王はどんな奴なんだ?やっぱ筋骨隆々の化け物だったりすんのか?」
赤石くんが、僕の肩を叩いて聞いてきた。
あまり関係無いが、赤石くんは根は良い人だ。別け隔てなく人と接する事が出来るし、そのお陰で友達も多い。ただ、強い人に会うと戦いたがるのが・・・ね。
そんな話は置いておいて、僕は赤石くんからの問いに返す。
「それは、見てからのお楽しみという事で」
「何だよ、だったら早く行こうぜ」
「う、うん」
ドアノブに手を掛ける。
上手くやってくれよ・・・!
僕は、誰に向けたものでもないその言葉を、心の中で発したのだった。






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