コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】
日時: 2018/05/13 17:29
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6quPP6JX)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=300

 皆様は、学生生活を如何お過ごしでしょうか。

 屋上で雨乞いをしたことはありますか?
 学校の7不思議を全て解明した事はありますか?
 調理実習で誰かが暗黒物質的なクソマズ料理を作ったことはありますか?

 そんな現実では「ありえない」の一言で片づけられてしまうような学生生活を覗いては見ませんか?


 さあ準備は整った。
 始業を告げる鐘を鳴らせ。

 ————彼らの混沌とした日常が始まります。

***** ***** *****


 我ながら意味の分からねえポエムを書いたと思います。笑えよ。笑えばいいだろ(ヤケ
 ゴホン、気を取り直して。

 こんにちこんばんおはようございます。スレ主の山下愁です。
 ええ、このコメディライト板では何度目の出現でしょうね。数えてみてください。——いえ、やっぱいいです。
 この物語は上記URLにあります『偶像劇企画』でご協力していただいた皆様が登場します。その数30名!! ありがとうございます!!
 おっと、「お前に偶像劇など書ける訳がねえだろカス」と鼻で笑う声がどこからか聞こえてきますが無視しましょう。ええハイ。
 さてと。この話を読むにあたって守ってほしい規則がいくつか。


その1 現実ではありえない学生生活を送る個性豊かな生徒たちによるカオスな偶像劇です。まあ当然フィクションですので絶対に真似はしないようにしましょう。言わなくても分かりますよね?

その2 なるべく皆様のキャラを丁重に扱うつもりではありますが、中には雑に扱うキャラもあるかと思います。物語上に必要な演出なので、参加者の皆様はご了承ください。

その3 キャラ崩壊があるかと思います。原型は留めようかと精一杯こちらの方でも努力をいたしますが、もし万が一キャラが崩壊してしまった場合はごめんなさい。土下座させてください。再現率を重視する読者様・参加者様方は閲覧注意です。

その4 誤字・脱字はなるべくこちらで見つけて直していく所存です。ですが直っていなかった場合はご指摘していただけると助かります。

その5 作者は社会人ですので言い訳になりますが遅筆です。申し訳ございません。

その6 荒らし・誹謗中傷・パクリはおやめください。なお、2次創作する場合は山下愁に申し出てください。



 カキコで小説を閲覧するにあたって最低限の規則を守っていただければ幸いです。当然守れますよね? 守らねえよバーカなんて言ってあっかんべーする人なんていませんよね?
 よし、ならよかった。
 それでは始まります。皆様が少しでも楽しめるような小説を書けるように尽力いたしますので、よろしくお願いいたします。

***** ***** *****


プロローグ>>01

4月!!「桜の木の下には死体が埋まっているってほんとかな?」>>02
5月!!「クラスに馴染めない? そんなもんテンションでどうにかなるでしょ!!」>>68
6月!!「運動部の祭典である体育祭は、文化部にとって地獄でしかない」>>87
7月!!「プール掃除って意外と楽しいよ、やってみる価値あるよ!?」


***** ***** *****

お客様
大関様 アーリア様 HIRO様 はる歌世様 冬野悠乃様 Orfevre様 モンブラン博士様 俊也様 メデューサ様 purplemoon様
羽音様 オルドゥーブル様

***** ***** *****

暇つぶしSS一覧
LINEネタ>>33 >>34 >>41 >>45 >>54 >>60 >>70 >>74 >>78

榮倉桃馬【夕焼け小焼けで帰りましょう】微ホラー世にも奇妙風味>>76
八雲優羽【放課後ゲーム】>>86


***** ***** *****

NEWS!! 小説カキコ2016年夏 小説大会にて管理人・副管理人賞を受賞いたしました。ありがとうございます。

※最近我が家のパソコンの調子が悪く、タブレットからの投稿となります。読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。

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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.72 )
日時: 2016/12/03 17:10
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)

Orfevre様>>


ら、LINEをメインにするつもりはないんだからねっ((
ごめんなさいでもLINEをメインにするつもりはないのであしからず……でもいつかやーさんと全員で絡めさせたいなという願望はあります。

という訳で。
気づけば一年が経過していました。そういえば、このくそ忙しい時期によくもまあこんな偶像劇企画を放り込んだものです。
それに乗ってくださった心優しいカキコの皆様あってのこの小説ですので、どうか最後までお付き合いいただければと思います。

ちなみにべーやん、今回出番ありますので。

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.73 )
日時: 2016/12/31 21:44
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)

ACT:2 王良空華



 王良空華がクラスの異変に気づいたのは、設問の一つを誰かに答えさせようとチョークを置いたころだった。
 教卓からは、教室全体が見渡せる。居眠りしている真上ののも、消しゴム戦争で一人を徹底的に狙い撃ちして逆に自分が狙い撃ちされていることに気づいていない野島治人も、ノートの切れ端に呪いの言葉ならぬ愛の言葉を書き綴って愛しのあの子へ届けようとしている菊川柊も、みんなみんな見えている。
 授業も思い思い過ごしている生徒たちに飽きれつつも、空華は「まあこれがC組なんだよねー」などとのほほんと構えていた。
 問題児ばかりが集まったC組は、他のクラスからも若干遠巻きにされている。むろん、担任である空華は教師陣から遠巻きにされていた。生徒からはすこぶる人気が高いのに、何故大人には遠巻きにされるのか。空さんちょっと悲しい。
 そんなことは置いといて。
 生徒が一人、この教室からいなくなっていることが問題である。窓際の一番後ろ一歩手前。吉田莉音の前の席。言わずと知れたあのカキコ学園始まって以来の問題児と称される八雲優羽だ。

「やーさんいないけど、いたずらにしに隠れたのか単にトイレに行ったのか行先を知ってる人はいる?」

 ハイきょーしゅ、と挙手を促してみるもクラスの反応はシーン。とうとう生徒からも無視され始めたか。
 空華の心の中に冷たい風がぴゅーっと吹いたところで、おずおずと挙手してくれた生徒がいた。銀髪紫眼の美少女。おっと可愛い、と思ってはいけない。彼女もまた件の八雲優羽の仲間なのだ。

「ハイ、紅河さん」
「やーさんなら朝から青い顔をしていたので、多分トイレかと」

 そういえば、と空華は今朝のことを思い出す。
 朝のHRは、学級委員の「起立、気をつけ」という号令でも優羽は机に突っ伏したままだった。死んでるのかと思った。あとでさらに前の席に座っている最上長門がぷすぷすとシャーペンを突き刺していたのだが、それにも反応しないほどだった。
 さらに手が上がる。今度は静かに。廊下側から二列目、前から三番目の席に座る彼である。優羽と一緒につるんで奇怪ないたずらを仕掛けてくる小田原博人だ。

「やーさんなら『口からなんか変なものを生みそう』と言って、匍匐前進で教室を出て行った。多分産卵だと思う」
「へー、やーさんって卵産めるんだー」

 博人なりのボケを、空華はどう処理していいか分からなかった。人間は卵を産めないはず。————あれ、産めないよな?
 いや八雲優羽という馬鹿ならいけるか……? と本気で八雲優羽の可能性について考え始めたが、結局口から産めるものなど吐瀉物ぐらいのものなので、やはり八雲優羽は八雲優羽だったという結論を自分の中で出した。うん、ちゃんと人間。
 そもそも現在、小田原博人の机には何故か大量の卵が置かれていた。それをカラフルにペイントしているのはなんだろう。イースターでもやるのだろうか。
 余計な質問はしない方が賢明である。空華は授業を再開することにした。

「じゃあここの質問を————今目が合ったから沙羅君やってくれる?」
「ふぇぇオレですか!?」

 本人としてはボーッとしていたようで、椅子を跳ね除けて立ち上がった沙羅華一に、クラス中から注目が集まる。黒板の前にきて問題を解くのはさぞ注目されることだろう。一方で彼自身は答えに自信がないようで、だらだらと冷や汗を流して混乱しきっていた。
 やばいな、これは。彼に問題を解かせると、黒板にたどり着くより前に倒れそう。

「ごめん、沙羅君。やっぱやめよう。目が合っちまったという理由でやらせるのは悪かった」

 空華が軽い調子で謝罪すると、華一は安堵の息を漏らして席に着いた。
 やはりここはオーソドックスに日付から決めた方がいいだろう。今日の何日だったっけ、と黒板を確認すると、空華の穿いているズボンの尻ポケットが震えた。
 尻ポケットにはスマホが入っている。家族と連絡を取り合うものでもあるし、仕事用にも使っているし、つまるところ空華はスマホを一つしか持っていない。

(ッたく、授業中には連絡してくるなって言ったのに)

 誰が連絡寄越してきやがった、とさりげなくスマホを確認すると、なんと送り相手は自分の弟。
 一言だけのメッセージで、『気をつけて』とだけ。なにに?
 疑問を持った空華がスマホを尻ポケットにしまって、今日の日付と同じ出席番号の生徒の名前を口にしようとしたところ、教室の後ろの扉がガラリと開いた。

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.74 )
日時: 2016/12/26 22:47
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)

メリークリスマス、でしたね。ええハイ。こう言ってはなんですが、人生最悪のクリスマスを過ごした私がここにございます。
理由ですか? 聞かないでもらえます? 心にグサッとくるので。


さて、今回もネタが思いつくまでのつなぎでLINEネタをブッ混みます。
タイトル、メリークリスマスってなに? ただのキリストの誕生日でしょ? です。



八雲優羽:めりーくるしみます

八雲優羽:ケーキ屋のバイトつらい

梓啓香:お疲れ

梓啓香:サンタ捕まえた?

八雲優羽:捕まえられたらいいのに

梓啓香:いいとこやーさんに与えられるプレゼントは悪い子の臓物だよお☆

八雲優羽:モツなんかいらない!!

小田原博人:まあまあ

小田原博人:これでも見て落ち着いてくれたまえ


小田原博人が動画を送信しました


八雲優羽:サンタが踊ってる

小田原博人:人体模型と骨格標本がワルツを踊るようにしただろう?

小田原博人:それを参考にして

小田原博人:今流行の恋ダンスを踊らせてみたよ

梓啓香:サンタが恋ダンスを踊ってるのは百歩譲っていいよ

梓啓香:むしろ千歩、いや万歩譲ろうか

梓啓香:隣にいるトナカイが二足歩行して恋ダンスを踊ってるのは納得できない

八雲優羽:ヒントは今の時間

梓啓香:深夜テンションかー

小田原博人:つい楽しくなってしまってね

小田原博人:ちなみにこの動きは

小田原博人:この前やーさんと最上君が踊っているところを撮影したものだ

八雲優羽:ちなみにどっちがどっち?

小田原博人:サンタが最上君

八雲優羽:俺トナカイ!!

八雲優羽:となかい!!

八雲優羽:となかい

梓啓香:やーさんwwww

小田原博人:そういえば既読が二つしかつかないが

小田原博人:最上君と紅河さんはどこへ?

梓啓香:そういえばいないね

八雲優羽:深夜だから寝てんじゃね?

八雲優羽:モガトは多分

八雲優羽:あ

八雲優羽:モガトから個人LINEきてた

梓啓香:うp

小田原博人:なんて?

八雲優羽:端的に言えば俺の尻が危ない

八雲優羽:(スクショ)



最上長門:サンタ×トナカイ

最上長門:この前深夜にやってた有馬記念の某六つ子アニメで

最上長門:獣姦が成立したので

最上長門:やってみた


最上長門が画像を送信しました


最上長門:ちなみに提案してくれたのは

最上長門:やーさんのお姉さんッス

最上長門:テヘッ



小田原博人:恋ダンスでトナカイをやっていたのはやーさんだったね

梓啓香:このトナカイやーさんに似てるね

八雲優羽:そろそろ本当に彫られそう

八雲優羽:助けてサンタさん

紅河玲奈:はい


紅河玲奈が画像を送信しました


八雲優羽:

小田原博人:

梓啓香:

紅河玲奈:サンタ捕まえたよ

紅河玲奈:撃ち落としたよ

紅河玲奈:あれ?

紅河玲奈:既読がつかないな

紅河玲奈:おーい?

紅河玲奈:無視されてる?

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.75 )
日時: 2016/12/31 22:07
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)

ACT:3 天利いろは



 黒板が見えない。


「……………………」

 教卓付近で担任である王良空華が授業をしているのは、なんとなく分かる。ちらちら髪の毛も見えるから、彼があそこに立っているのは明白だ。
 しかし、肝心の彼の姿が全く見えない。ついでに言うと黒板も見えない。文字が途切れ途切れになってしまっている。
 グッと体を傾けさせても、黒板が見える気配はない。原因は、斜め前に座る大男のせいである。
 二年C組で最も身長の高い男——大山田関太郎。その名の通り、ただ大きい。見た目は熊のようである。今この時は熊のように冬眠してくれないかと思った。
 身長の高い彼が前に座っているおかげで、黒板が見えないのだ。畜生、高身長め。その綺麗に剃った頭に消しゴムでもぶつけてやりたいところだ。

「……えと、その、だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。目の前の熊がすげー邪魔」

 隣の席である荻枝——確かマユとか言ったか。おどおどした口調で話しかけてきたが、いろははそれどころではないのだ。
 おそらくいろはの列はエグ○イル状態になっても完璧なノートは取れないだろう。誰だこの席順にした奴は。担任か。担任殺す。
 実際、当の本人である大山田関太郎も自分の身長なら後ろの席へ行った方がいいと判断したのか、最初の授業の時に「俺を後ろの席にしろ」と担任である王良空華に進言していたのだが、何故だか空華は「席替えはもう少しクラスに馴染めたらねー空さんが」と笑いながら却下していた。やっぱり担任のせいか畜生。
 いろはの邪悪な視線を感じたのか、それとも自分が悪いと察しているのか、関太郎は大きな図体をなるべく小さく縮こまらせてノートを取っているようだが、それでも見えない。見えないぞコンチクショウ。

「あの、よかったら、ノート見る?」
「え? 返さなくてもいいの?」

 隣からの摩由という名の天使の声に、いろはは真顔で返した。冗談ではなく本気で。しばらくノートを借りていつ返すか分からないという意味を込めて。
 摩由はさすがにそれだけは勘弁願いたいのか、苦笑いをしていた。それでも今はどこの問題をやっているのか、というところを教える為に、いろはの席へずりずりと自分の机を引きずって、ノートを自分の机と摩由の机の境目に置いた。

「えっとね、今はこの辺りをやっていて」
「ノート綺麗だね。あとで本当に借りパクしていい?」
「そ、それだけは……ちょっと、勘弁してほしいな」

 それでもノートを見せてくれる彼女の心は、なんと綺麗で優しいことだろうか。逆を言えば愚かで騙されやすい。いろはは、他人の美点を欠点としてとらえてしまう節がある。
 まあ、見せてもらえるだけでもありがたい。いろはは黒板などに集中せずに、摩由のノートに意識を注ぐ。可愛らしい小さな文字が無地のノートの上を踊り、公式と説明も分かりやすく書き込まれている。カンニングペーパーとして使いたいぐらいだ。
 やがてノートを全て書き終えて、「ありがと」と簡素な礼を述べていろはは授業を放りだす。黒板が見えていなければ話にならないから、都度摩由に見せてもらおう。

「……ちょっとすみませんね。黒板がよく見えないからノートを見せてもらえるとありがたいんだけど」
「おっと有川サン、おーけーおーけー。気持ちはよく分かるから特別に見せてあげよう」

 後ろの席である有川まよるがひそひそと声を潜めてノートを要求してきたので、摩由のノートを写した自分のノートをまよるへと手渡した。彼女もきっと同じ気持ちなのだろう。
 きっとまよるへと渡ったノートは、その後ろにいる生徒へ、さらにその後ろへいる生徒へと渡っていくことだろう。なんだろうこの伝言ゲーム。いや伝言——なんだろうか。
 すると、板書をしていた空華が突如として動きを止めた。教室中を見渡しているようだが、彼の顔は坊主頭に隠されていてよく見えない。残念。

「やーさんいないけど、いたずらしに隠れたのか単にトイレに行ったのか行先を知ってる人はいる?」

 ハイきょーしゅ、とクラス中に挙手を求めるが、行先を知っている生徒など限られてくる。いろはが知る中で、四人ぐらいだろうか。
 真っ先に手を挙げてボケるかなと思っていたのが、いろはの前の席に座っている梓啓香だが、梓啓香は机の中に仕込んだ携帯電話をすいすいと操作していた。どこかに連絡を取っているのだろうか。相手はあの八雲優羽だろうか。——まあ関係ないが。
 おずおずと挙手したクラスの美少女と名高い紅河玲奈が「多分トイレ」ということを空華に伝えていた。さらにいろはの斜め後ろに座る小田原博人が「産卵だと思う」という真顔のボケをかました。もうなにがなんだかさっぱりだ。
 早くも授業に飽きてきたいろはが退屈そうに欠伸をすると、横からニュッと自分のノートが伸びてくる。どうやら後ろのまよるが写し終ったようだ。

「ありがとう、助かったよ」
「判別できない文字とかなかった? あったとしてももう遅いか」
「返してしまったからね」

 まよるは肩を竦めて、「黒板が見えないから仕方ないね」と言う。激しく同意だ。

「それよりも、貴女は聞いたかな? 先ほど後ろの男子たちが話していたのだけど、実はこの学園に——」

 まよるが声を潜めていろはに話しかけてきたところで、ガラリと教室の後ろの扉が開いた。
 きっと担任が心配していた八雲優羽が戻ってきたのだろう。

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.76 )
日時: 2017/02/07 11:58
名前: ・スR・ス・ス・スD ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

2017年、あけましたおめでとうございます。
今年もたくさん更新ができればいいなと考えておりますが、何分これから忙しくなる身ですので更新は亀みたいに遅くなることでしょう。
どうか読者の皆様、気長にお待ちいただければと思います。

さて本編はここらへんにしておいて。
ここで小ネタを一つぶち込んでおこうかなって思います。





 夕焼け小焼けで日が暮れて。
 山のお寺の鐘が鳴る。
 お手てつないでみな帰ろう。
 烏と一緒に帰りましょう。



「……………………」

 突っ伏していた机から上体を起こせば、教室の中には誰もいなかった。
 榮倉桃馬は、ぐるりと周囲を見渡してみる。あのやたら騒がしいクラスで一番の馬鹿も、その相棒も、彼らの協力者も、不良も大人しい子も変態もなにもかも、この教室の中にはいなかった。
 それは当然、彼の幼馴染でさえも。
 窓ガラスの向こうに広がる紅蓮の空を見上げて、桃馬は「もう帰らなきゃ」と自然と思ってしまう。彼の前の席を陣取る幼馴染は、先生に捕まっているか先に帰ってしまったかのどちらかだ。行先を聞いていないのは、きっと自分のせい。

「あれ、えいと君じゃーん。どしたの、まだ居残り?」
「……ああ、八雲か」
「やーさん。お願い、あだ名で呼んで。姉貴と被る」

 突如として教室へやってきたのは、幼馴染ではなく銀髪碧眼の男子生徒だった。身長は高く、そして何故かジャージ姿。前髪だけを輪ゴムのような黒いゴムで結んでいるせいか、パイナップルみたいな変な髪形になっている。……まあ、常に馬鹿みたいに騒がしい彼にはお似合いのスタイルだ。
 口笛を吹きながら窓際の自分の席に行った生徒——八雲優羽は、鞄をリュックサックのように背負うと、いつまでも席から立ち上がらない桃馬のもとまで寄ってきた。

「帰らねえの? 夕焼けチャイムは鳴り終わったぜ」
「…………帰るけど」
「途中までは一緒だろ。あ、そうだ。うのっちが玄関の辺りでお前のこと探してたぜ」
「? 帰ってなかった?」
「実は今度のいたずらはうのっちにも一枚かんでもらおうかと思ってな」

 フフン、と優羽は笑う。
 いたずらの協力をしに行っていたのか、と桃馬は置いて行かれていなかったことにホッと安堵の息を吐く。それから自分の鞄を肩から下げて、「じゃあ行こう」と席を立った。
 桃馬と優羽が教室から出れば、今度は完璧な無人の教室と化す。窓ガラスから差し込む夕焼けが、薄暗い教室の中を赤く照らしている。


「今度はえいともいたずらに協力しろよ。噂とか色々聞かせてくれると嬉しいんだけどな」
「今は聞かせるような噂なんてないよ」

 えー、と残念がる優羽と並んで階段を下りていると、途中で黒髪セミロングの女子生徒とバッタリ出くわした。同じクラスの史岐彩だ。彼女を見ると、優羽は「うげ」と顔を顰めた。
 顔を顰めた優羽を、彩が見逃すはずがなかった。

「どうして私の顔を見た瞬間に嫌そうな表情をしたのかしら? 教えてほしいわ」
「痛い痛い痛い痛い。脇を抓らないで破れちゃう破れちゃう」

 ギリギリギリギリ、と容赦なく彩は優羽の脇腹を抓る。「破れちゃう」と連呼する優羽を無視して、桃馬は先に階段を下りることにした。彼女に捕まったやーさんに敬礼。彼は殉職したのだ、二階級特進とする。
 いまだ聞こえてくる優羽の悲鳴に小さく吹き出す桃馬の耳に、カキコ学園のチャイムが聞こえてきた。校舎内に響き渡る荘厳な鐘の音は心臓に悪いが、雄大さを感じるものだ。
 だが。


 がろーん、がろーん。


 どこか、その鐘の音がおかしい。こんな壊れかけの鐘の音ではない。
 階段を下りていた桃馬の足が止まる。何故こんなおかしな鐘の音が、校舎内に鳴り響くのか。チャイムが壊れたのか?

「なあ、鐘の音がおかしいんだけど」
「……そうね。故障かしらね」

 ようやく解放されたのか、腹をさすりながら下りてくる優羽とすまし顔の彩も同じように首を傾げていた。
 桃馬も、さすがにカキコ学園の鐘の音がたまにおかしくなるという噂は聞いたことがない。カキコ学園の情報だったら色々知っているはずなのに。——いや、もしかして聞いているけど忘れたとか?

「ま、先生とか気づくだろ。明日には修理されんじゃね?」
「修理されなかったら校長に報告ね」

 えいと行こうぜ、と優羽の声に桃馬も我に返り、階段を下り始める。
 いや、そもそもおかしいのだ。おかしいというか、この学園自体がおかしい。静かすぎる。
 部活動に熱心な学生がいるのだったら、まだこの時間でも部活に興じているはずだ。それなのに、何故こんなに静かなのか。
 その時だ。


 とた、とた、とた、とた。


 足音。それも背後から。階段を下りてきている音だ。
 桃馬はふと背後へと視線をやる。そこには無人の廊下と、上階につながる階段が伸びているだけだ。
 その無人の廊下にできた影に、人影が伸びていた。明らかに長く、そしておかしな格好をした黒い影が。
 ザッと血の気が引いていき、桃馬は急いで階段を駆け下り始めた。優羽と彩の隣を通り過ぎ、脇目も振らずに一階を目指す。

「お、オイ!? えいと!? なに一体どうした!?」
「後ろ見るな、なんかいる!!」

 ええ!? と優羽と彩の驚いた声と、その直後に悲鳴。おそらく、階段から下りてくるなにかを見たのだろう。
 二人より先に玄関へ辿り着いた桃馬は、下駄箱の辺りで携帯を弄っている幼馴染の姿を見て安心した。いや、安心はできないのだが。
 慌てた様子で玄関へとやってきた桃馬に、幼馴染——宇野響は不思議そうに首を傾げた。

「どうした桃馬、冷や汗すごいけど」
「早く行こう、早く」

 桃馬は急いで靴を履きかえると、響の腕を取って学校の扉を押す。だが、鍵がかかっているのか扉が開かない。
 鍵を開けようとするが、何故か鍵が回らない。おかしい、内側からかかっているはずなのに。

「ぎゃああああ!! なんか変なのいた!! えいと置いて行くなよ!!」
「今それどころじゃない!!」

 悲鳴と共に玄関へ駆け込んできた優羽が抗議の声を上げるが、こっちも今はそれどころではないのだ。鍵が硬くて開かないのである。力の強さには自信があるのに。
 とた、とた、とた。足音が確実に近づいてきている。今度こそやばい。これはやばい。


「オーイ、桃馬。起きろー」


 目を開くと、そこには響の顔があった。そのすぐ近くには、少しだけ制服を着崩した優羽の姿がある。どちらも心配そうな表情をしていた。
 空は夕焼け模様だが、教室にはまばらに生徒が残っているし、校舎内も喧騒に包まれている。逸る心臓を押さえて、桃馬は安堵の息を吐いた。なんだ、夢だったのか。

「帰ろうぜ。自転車暴走族になろう」
「今日こそえいとに負けねえからな!!」

 三日連続で負け続けなんて嫌だし!! と優羽が意気込んでいる。
 桃馬は額に浮かんだ汗をぬぐって、「今日も勝つから」と優羽に喧嘩を売って席を立った。


 ————そういえば、優羽と彩が見た変なものってなんなんだろう?


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