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【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】
日時: 2018/05/13 17:29
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6quPP6JX)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=300

 皆様は、学生生活を如何お過ごしでしょうか。

 屋上で雨乞いをしたことはありますか?
 学校の7不思議を全て解明した事はありますか?
 調理実習で誰かが暗黒物質的なクソマズ料理を作ったことはありますか?

 そんな現実では「ありえない」の一言で片づけられてしまうような学生生活を覗いては見ませんか?


 さあ準備は整った。
 始業を告げる鐘を鳴らせ。

 ————彼らの混沌とした日常が始まります。

***** ***** *****


 我ながら意味の分からねえポエムを書いたと思います。笑えよ。笑えばいいだろ(ヤケ
 ゴホン、気を取り直して。

 こんにちこんばんおはようございます。スレ主の山下愁です。
 ええ、このコメディライト板では何度目の出現でしょうね。数えてみてください。——いえ、やっぱいいです。
 この物語は上記URLにあります『偶像劇企画』でご協力していただいた皆様が登場します。その数30名!! ありがとうございます!!
 おっと、「お前に偶像劇など書ける訳がねえだろカス」と鼻で笑う声がどこからか聞こえてきますが無視しましょう。ええハイ。
 さてと。この話を読むにあたって守ってほしい規則がいくつか。


その1 現実ではありえない学生生活を送る個性豊かな生徒たちによるカオスな偶像劇です。まあ当然フィクションですので絶対に真似はしないようにしましょう。言わなくても分かりますよね?

その2 なるべく皆様のキャラを丁重に扱うつもりではありますが、中には雑に扱うキャラもあるかと思います。物語上に必要な演出なので、参加者の皆様はご了承ください。

その3 キャラ崩壊があるかと思います。原型は留めようかと精一杯こちらの方でも努力をいたしますが、もし万が一キャラが崩壊してしまった場合はごめんなさい。土下座させてください。再現率を重視する読者様・参加者様方は閲覧注意です。

その4 誤字・脱字はなるべくこちらで見つけて直していく所存です。ですが直っていなかった場合はご指摘していただけると助かります。

その5 作者は社会人ですので言い訳になりますが遅筆です。申し訳ございません。

その6 荒らし・誹謗中傷・パクリはおやめください。なお、2次創作する場合は山下愁に申し出てください。



 カキコで小説を閲覧するにあたって最低限の規則を守っていただければ幸いです。当然守れますよね? 守らねえよバーカなんて言ってあっかんべーする人なんていませんよね?
 よし、ならよかった。
 それでは始まります。皆様が少しでも楽しめるような小説を書けるように尽力いたしますので、よろしくお願いいたします。

***** ***** *****


プロローグ>>01

4月!!「桜の木の下には死体が埋まっているってほんとかな?」>>02
5月!!「クラスに馴染めない? そんなもんテンションでどうにかなるでしょ!!」>>68
6月!!「運動部の祭典である体育祭は、文化部にとって地獄でしかない」>>87
7月!!「プール掃除って意外と楽しいよ、やってみる価値あるよ!?」


***** ***** *****

お客様
大関様 アーリア様 HIRO様 はる歌世様 冬野悠乃様 Orfevre様 モンブラン博士様 俊也様 メデューサ様 purplemoon様
羽音様 オルドゥーブル様

***** ***** *****

暇つぶしSS一覧
LINEネタ>>33 >>34 >>41 >>45 >>54 >>60 >>70 >>74 >>78

榮倉桃馬【夕焼け小焼けで帰りましょう】微ホラー世にも奇妙風味>>76
八雲優羽【放課後ゲーム】>>86


***** ***** *****

NEWS!! 小説カキコ2016年夏 小説大会にて管理人・副管理人賞を受賞いたしました。ありがとうございます。

※最近我が家のパソコンの調子が悪く、タブレットからの投稿となります。読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。

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Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.92 )
日時: 2017/08/19 00:05
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)

ここ最近暑くなってきましたね。
まだまだ夏は続きますが、皆さま如何お過ごしでしょうか。
夏休みはすでに後半に入り、私も色々と出かけたり用事があったりと長らく更新ができませんでしたが、本日はこうしてネタを持ってきた次第でございます。

さて皆さま。前置きは長くなりましたが、本編です。
と言っても、見たことのあるラインネタですが。
ところで皆さま、ホラーはお好きでしょうか……?




八雲優羽:しゅーやん、しゅーやん

八雲優羽:こちらを見てくれたまえ

八雲優羽が写真を添付しました

八雲優羽:これね、姉貴と一緒にじっちゃんの家に行った時の写真なんだけどね

八雲優羽:無人駅に降りたはずなのに、どうしてか人がいるんだよね

八雲優羽:向かいのホームに

八雲優羽:おかしいねー?

八雲優羽:向かいのホームはすでに立ち入り禁止になってる草ボーボーの廃墟同然な駅舎なのにねー?

菊川柊:やーさん

菊川柊:今

菊川柊:何時だか分かってんのか

八雲優羽:午前二時

菊川柊:寝ろ

菊川柊:寝てくれ

八雲優羽:無理

菊川柊:じゃあ寝かせてくれ

八雲優羽:やだよ

八雲優羽:だってこの話をする相手がもうしゅーやんしかいねーもん

菊川柊:お前の仲のいい奴らはどうしたんだよ

八雲優羽:モガトには「邪魔すんな」と叱られ

八雲優羽:あずにゃんには既読無視されて

八雲優羽:べーやんにはそもそもラインのブロックをされて

八雲優羽:ヒロには「今すぐお祓い行け」と言われました

菊川柊:今すぐお祓い行ってこいよ

菊川柊:これやばめの匂いがするよ

菊川柊:だってなんで目の前の廃墟に俯いた女の人が写ってんの

菊川柊:つか足ないし

八雲優羽:足ない人が空中浮遊してんじゃね?

菊川柊:やーさんはどうしてお化けとかゴーストとかそういう方向に話を持ってかないのかな

八雲優羽:えー

八雲優羽:これお化けなの?

八雲優羽:心霊写真か、まじかー

菊川柊:自覚を持て

菊川柊:お願いだから

八雲優羽:仕方ない


八雲優羽が春川俊樹を招待しました

春川俊樹がトークに参加しました


八雲優羽:やあトッシー

春川俊樹:なんでこのトークに呼んだ

春川俊樹:よりにもよって

八雲優羽:しゅーやんが逃げないようにする為の戦術的行動

春川俊樹:やーさんが珍しく難しい言葉を使っている

春川俊樹:もしかして代役としてお姉さんを利用しているな?

八雲優羽:そんな訳ないじゃん

八雲優羽:単語は聞いてるけど

八雲優羽:あれ

八雲優羽:しゅーやん寝落ちしたかな

菊川柊:ちょっとまって

菊川柊:なんで春川が?

春川俊樹:いちゃダメか

菊川柊:いなきゃいけない理由ができた

菊川柊:俺は意地でもここから出ないぞ

八雲優羽:まあでもトッシーが弾こうと思えば弾けるけどね

春川俊樹:ああ、そうか

八雲優羽:ところでトッシー、上の写真を見てどう思う?

春川俊樹:合成写真かなんかだろ、どうせ

菊川柊:いやでもマジっぽそうだよ?

八雲優羽:偶然撮れちゃっただけだって

八雲優羽:画像合成なんて器用なことできないよ、俺は

春川俊樹:どうだかな

春川俊樹:お前ならやりそうだよ

菊川柊:やーさん……?

八雲優羽:いやいやいやいやいや

八雲優羽:いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!?

八雲優羽:やらないから!!

八雲優羽:こんな器用じゃないから!!

春川俊樹:お前ができなくても、お前のお姉さんならどうかな

春川俊樹:こういうの得意そうだろ

菊川柊:じー

春川俊樹:観念するんだ

春川俊樹:証拠はここにあるんだぞ

八雲優羽:濡れ衣だって!!

八雲優羽;あ

八雲優羽:ごめんなんか誰かドアの向こうで呼んでる

八雲優羽:おかしーな、姉貴は隣で寝てんのに

菊川柊:おい、おい待てやーさん

菊川柊:お姉さん隣で寝てんのか!?

春川俊樹:珍しい男女の一卵性双生児でも、こんなことってあるのか

春川俊樹:あれ

菊川柊:どした?

春川俊樹:いや

春川俊樹:なあ、聞いてもいいか?

菊川柊:どうぞどうぞ

春川俊樹:この写真の女の人、顔見えたっけ

菊川柊:顔?

菊川柊:俯いてなかったっけ

菊川柊:見えなかったと思うけど

春川俊樹:だよな

菊川柊:なんで?

春川俊樹:写真をもう一回見てみたらさ、顔が上がってんだよ

春川俊樹:ほんの少しだけど

菊川柊:…………

菊川柊:本物って奴?

春川俊樹:もしかしてやーさん危ないんじゃね?

菊川柊:!?

菊川柊:やーさん、やーさん!?

菊川柊:くそ、電話してみる!!


不在着信(00:20)

不在着信(00:18)

不在着信(00:21)


菊川柊:くっそダメだ繋がんない

春川俊樹:どうすんだよ、やーさんがよからぬもんに取り憑かれてたら!!

春川俊樹:知り合いに霊能力者とかいた!?

春川俊樹:副会長とかできるかな!?

菊川柊:もちつけ早まるな

春川俊樹:ミスタイプしてんぞお前

菊川柊:おっとやべえ

菊川柊:ラチがあかないから小田原呼ぼうぜ

菊川柊:オカルトとか詳しいかどうか知らねえけど、あの博士なら任せても大丈夫だろ

八雲優羽:なあ

八雲優羽:ちょっとぴこぴこうっせーんだけど

八雲優羽:今何時だと思ってんの

菊川柊:やーさん無事!?

春川俊樹:無事かやーさん!!

八雲優羽:無事もなにも

八雲優羽:叩き起こされたんだけどこっちは

八雲優羽:なんの話

春川俊樹:覚えてねえの

菊川柊:やーさん、いちたすいちは?

八雲優羽:2

菊川柊:やーさん頭大丈夫?

春川俊樹:やーさん頭大丈夫?

八雲優羽:酷くない?

八雲優羽:つかログ見てきたんだけど

八雲優羽:写真データはっつけてあったね

八雲優羽:破損してて見れねえんだけど、俺なんかやったの?

菊川柊:ああ、無人駅の写真を撮ったんだろ

菊川柊:おじいちゃんの家に行ってて、その際に撮った奴だって

八雲優羽:それ本当に俺?

春川俊樹:お前しかいねーじゃん

春川俊樹:お前が発言してんだから

八雲優羽:俺のじいちゃんの家は東京と埼玉なんだけど

八雲優羽:東京の無人駅と埼玉の無人駅ってあったっけ

春川俊樹:聞いてもいいか?

八雲優羽:うん

春川俊樹:やーさんのじいさんの家ってどこ

八雲優羽:東京都文京区と埼玉県さいたま市

八雲優羽:片方のじいちゃんはレッ○の大ファン

春川俊樹:じゃ、なんでこの駅舎の廃墟を撮ったんだよ

八雲優羽:駅舎ってなに

八雲優羽:駅弁の仲間?

菊川柊:馬鹿だな、ほんとやーさんは

八雲優羽:つか俺が撮った奴ってなに?

八雲優羽:写真データは破損してるし

八雲優羽:お前ら宇宙人と話してるし

八雲優羽:今までのログ見た?

八雲優羽:見てこいよすげー面白いよ




???:コッチヘオイデヨ

???:コッチヘオイデヨ

???:アハハハハ

???:アハハハハハハハハハハ

菊川柊:やーさん今何時だと思ってんの

※以下同じような言葉が続く




菊川柊:これほん怖に投稿しようかな

春川俊樹:やーさん、ちなみに無人駅の写真って撮った記憶あるか?

八雲優羽:ヒロとモガトと一緒に旅行に行った時に無人駅の写真を撮ったけど

八雲優羽:変なもん写り込んでたからすぐ消したよ

八雲優羽:なんか女の人が写っててさ

八雲優羽:で、徐々にその女の人が顔を上げてくんの

八雲優羽:最後にさ











こっち へ おいで よぅ







手招きしてんだよなあ

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.93 )
日時: 2017/10/18 11:37
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

ACT:5 折原菜月



 それは数週間前のできごとだった。
 体育祭実行委員長が唐突に言い出した台詞である。

「我がカキコ学園の伝統行事という名の公開処刑である借りもの競争のお題を、『好きな男子』にしてもいいですか?」
「「「「「(どうでも)いいでーす」」」」」

 適当に答えたのが間違いだと思った。当時、お腹が空いたのでさっさと帰りたいと思っていた菜月は、過去の自分をぶん殴りたい衝動に駆られると同時に「いい判断だ」と親指を立ててやりたかった。
 そしてなんの因果か、ただでさえ個性豊かなカキコ学園の生徒たちの中でも『特濃』並みであるC組から選出されたメンバーは八雲優羽、堂条里琉、宇野響の三人だった。女子? 知らん。
 中でも第一走者である八雲優羽に『好きな男子(はーと)』が当たってしまったものだから、テント下に待機していた菜月はゴッツンと机の天板に額を打ちつけた。

「やばい……やーさんになに言われるか分からない……」
「……やーさんは気にしないと思うけど」

 隣に座っているのは同じクラスで体育祭実行委員の榮倉桃馬である。白髪に赤い瞳と色素が欠乏している彼は、紫外線が天敵である。あまり陽に焼けるのはよくないとかうんたらかんたら。
 桃馬はそんなことを言っているが、嬉々とした放送部を射殺すような目つきで睨んでいる優羽の顔を、菜月は一度も見たことがない。あれは絶対にアカン奴や……アカン奴やったんや……。
 まあでも、相手は八雲優羽と書いて馬鹿と読むほどの生徒である。もしくは、八雲優羽は馬鹿の代名詞である。ノリとテンションと勢いだけで生きているような優羽なので、きっと今回もノリとテンションと勢いだけで乗り越えるだろう。

「あ、ほら。大丈夫だった」
「本当だ」

 桃馬の言う通り、優羽は自分のクラスの待機場所へと駆け寄ると、友人である小田原博人を背負って一着でゴールを果たした。あの二人は一緒にいることが多いのだが……まさかそういう関係だったのだろうか……?
 菜月が邪推する横で、桃馬がボソッと一言。

「多分『LOVE』じゃなくて『LIKE』の方だと思うよ」
「だよね知ってた」

 畜生。
 そりゃあ一般人である優羽が『ホモォ……』な訳ないし、ましてや博人がそういう訳でもないし。
 待機場所から「エンダァァァァァ!!」「イヤァァァァァァァ!!」という悲鳴が聞こえたけれど、気にしない方がこの際いいのだろうか。菜月も胸の内側で「ウィルオールウズラビューゥゥゥゥゥゥ!!」と叫んでいたのだが。

「でも第二走者と第三走者については適当にやったけど、折原はなにやった?」
「え?」
「お題の話。なに書いた?」

 桃馬の質問に答えるべく、菜月は自分の書いたお題を振り返る。
 第二走者である宇野響が、今走り始める。ちょうど彼がお題の紙を拾ったところで、菜月は自分が書いたお題を思い出した。

「アホだったかな」

 お題の書かれた紙を凝視していた響は、すでに走り終わって観戦している優羽のもとまで駆け寄って、おもむろにその腕を掴んだ。

「やーさん、こい」
「え!? なになになに、うのっちも俺のことを好きなの!? やめて!! 俺はボインなおねーちゃんが好きなの!!」
「俺だって趣味嗜好は一般人だっつのこのアホ!!」

 優羽の頭をぶん殴って、響きが無理やり彼を連れてゴールする。他の走者はお題を探している最中なので、響が一着だった。
 一連の流れを見ていた二人は確信する。
 響が菜月の書いたお題を手に取り、それに従った結果、優羽が選出された——と。

「やーさんの代名詞に『アホ』が加わったね」
「馬鹿でアホなんだね……やーさんは愉快な人生を送ると思うよ……」

 本当にごめん、やーさん。
 菜月は謝罪をして、そしてふと思い立つ。

「そういえば、そっちはなんて書いたの?」
「無難に『騒がしい人』で書いたよ」

 二人の間に沈黙が下りる。
 第二走者の響は菜月のお題を引いた。
 第三走者である里琉も、もしかしたら——。
 すでに第三走者は走り始めていて、里琉はお題のもとまで到達していた。お題の紙を拾い上げた彼は、しばらく考えたあとに優羽のもとへと向かう。

「え、なにサトちん。サトちんも俺を好きなの? ホモなの?」
「黙れ万年お祭り男。いいからこい」
「いーやー!! 助けてー!! おーかーさーれ——グホォッ!!」

 ぎゃあぎゃあと騒がしい優羽に里琉のハイキックが決まり、そのまま襟首を掴まれてずるずるとゴールまで連行されていった。
 どうやら桃馬のお題は、里琉が引いたようだった。

「……馬鹿でアホで騒がしい人か。本当に愉快だね、やーさんは」
「むしろやーさんが静かになる日がきたら、世界が滅亡するんじゃないかな」

 ゴールを果たした里琉に、雑な扱いで放り捨てられた優羽へ憐れみの視線を向ける菜月と桃馬だった。
 愉快な借りもの競争は、優羽の八面六臂の活躍によって幕を閉じた。

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.94 )
日時: 2017/09/16 15:51
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)

ACT:5-A 烏丸凉



 なんか知らないが巻き込まれた。


「それでは裁判長、開廷の宣言をお願いします」


 かたわらに控えているのは、面白そうな匂いを嗅ぎつけてにやにやとした笑みを浮かべている野島治人だった。そもそも、しばらく競技がないからじっと座って待っていたら、何故か彼に「緊急事態だから協力してくれ」ときたものだ。
 なにごとかと思ったら、椅子のみを使った即席の法廷に裁判長として参加させられる始末。治人は自称『裁判長の秘書』らしい。
 どちらが検察でどちらが弁護士か分からないし、この即席の法廷にはなんと被告が存在しない。一体なにを裁判せよというのか。

「それでは第一回、『体育祭での公開処刑競技はパン食い競争か飴食い競争か!?』」
「!?」

 驚くほどしょうもない理由の裁判だった。今すぐ放棄したい。
 凉の向かって右側に小田原博人、反対側に史岐彩が静かに椅子に腰かけている。二人の間に言いようもできない緊張感が漂っていた。漫画だとおそらく二人の間にバチバチと火花が散っていることだろう。
 裁判長の椅子から動けない凉は、もうポカンと彼らの様子を見ているほかなかった。自分ではこの場を収束できない。

「ちなみに傍聴席の記者役として佐々木宗近さん、裁判の様子を絵に描く人に十五夜康介さんをお呼びしています」

 なんというか、司会役が板についてきた治人は、朗々と傍聴席らしき立ち位置にいる二人の男子生徒を紹介した。カメラを装備した佐々木宗近は、意気揚々とボイスレコーダーなんかも取り出している。隣に座っている十五夜康介は無理やり押しつけられただろうスケッチブックに、飛び立つ鳩の絵を描いていた。言葉には出さないが、彼らしい平和を促すやり方というか。
 どうにでもなれ。
 凉は淡々とした口調で、「……開廷」とだけ告げる。
 そもそもこの議題がおかしいのだ。なんだ、体育祭の競技の中で公開処刑に当たるものはって。そんなことを言ったら今行われている借りもの競争だって公開処刑ではないか。
 C組で一番の馬鹿だとされている八雲優羽は進んで処刑台に上っていったが、彼に巻き込まれる形で宇野響と堂条里琉が処刑台へと送り込まれた。これを公開処刑と言わずしてなんとするのか。凉は静かに合掌した。南無三。

「えー、まずは飴食い競争が公開処刑だとおっしゃる史岐彩さんからどうぞ」

 用事は済んだとばかりに治人がノリノリで司会進行するので、凉は静かに傍観を決め込むことにした。なんなんだろう、この茶番。
 指名された彩はスッと立ち上がると、凛とした声で自分の主張を述べた。

「女子にとって飴食い競争ほど公開処刑に当たる競技はないわ。何故ならあの競技は白い粉の中から飴を探すのよ。顔を上げたら白粉を塗りたくったように、顔面が真っ白になります。中には顎だけ白い、額だけ白いといった一部分だけが中途半端に白いというパターンも存在します。これは立派な公開処刑です」

 そもそもパン食い競争と飴食い競争ってなんだろう。どちらもカキコ学園の種目にはなっていなかったような気がする。

「異議ありだ」

 小田原博人が挙手して反論した。パン食いVS飴食いなどという不毛な争いを率先してやっているということは、なにか意味があるのかないのか。

「たかだか粉に顔を浸すぐらいで恥ずかしいだと? 情けない。その点、パン食い競争は女子だけではなく男子にも該当する公開処刑だ」
「パン食い競争如きが公開処刑になるとは考えにくいわ」
「考えてもみたまえ。日本男子の身長は小柄に分類される。身長の低い男子が目の前に吊るされたパンを取る為に懸命にぴょんぴょん飛び跳ねているのだ。その光景を公開処刑と称さずになんとする? 『うわ、あいつ背が低いから取るのに苦労してるぜプークスクス』とか周囲は思っているに違いない」
「それは違うわ。きっとそういう子に限って、周囲は応援してくれるはずよ。飴食いの方が男女ともに恥ずかしい思いをするわ。やーさんだって飴食いの方が恥ずかしいって言うに決まってる」
「どうだろうか。やーさんは自ら白い粉の満たされた桶の中に顔を突っ込み、顔面どころか胸元まで真っ白にして、さらに鼻の穴まで真っ白にするだろうさ。私が保障しよう」

 この場にはいない問題児の名前まで出して議論は白熱していく。
 傍聴席側にいる佐々木宗近は瞳を輝かせて「いいぞー、もっとやれやれー」などとヤジを飛ばしている。一方で十五夜康介の方は早々に飽きているのか、それとも最初から興味がないのか、自作漫画の扉絵を描き始めた。相変わらず絵が繊細過ぎて上手い。
 パン食いだとか飴食いだとかそういう単語が飛び交っていると、自然とお腹が空いてきた。お昼までだいぶ先だが、どちらかというと凉はパンが食べたくなってきた。飴だと腹の足しにもならない。
 すると、そんな白熱した議論を展開させる二人の間に、銀色のなにかが割り込んだ。

「ヒロ、一緒にきてくれ」
「どうした、やーさん。私はそういう考えを持っていないのだが?」

 どうやら借りもの競争で、『好きな男子(はーと)』と出てしまったらしい優羽は、博人を連れていくことにしたらしい。まさかそういう関係だとは。
 ところが優羽は珍しく頭のいい発言をした。

「『LOVE』じゃなくて『LIKE』も好きだろ。俺、ヒロはそっちで見てるつもりだけど?」
「どうした、やーさん。珍しく頭が回るではないか」
「姉貴の朝飯を食ったからかな」

 そんなこんなで、博人は優羽の背中に乗せられてゴールへと連行されてしまった。
 残された法廷(仮)は、一応裁判長としての責務を果たす為に凉が静かに告げる。


「いったんCMです」

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.95 )
日時: 2017/10/08 10:33
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7pjyJRwL)

ACT:5-B 佐々木宗近


 きっかけは些細なことに過ぎなかった。
 ただ宗近は気になっただけだった。

「借りもの競争が公開処刑だって言うけど、実際はなにが公開処刑なんだと思う?」
「知るか」

 宗近の質問を一蹴したのは、体育祭の謎めいたプログラムの隙間にちみっこいキャラクターを落書きしている十五夜康介だった。デフォルメされたキャラクターが意外と可愛い。中には文字を持ち上げてプルプル震えているというキャラクターもあった。
 宗近がちらりと康介のプログラムを覗き込むと、彼はじろりと宗近を睨みつけてきた。射殺さんばかりの視線である。めっちゃ怖い。
 ちなみに康介の手は正直な様子で、プログラムの隙間に描かれた小さな女の子が頬を赤らめて「恥ずかちい……」なんて吹き出しがあった。あ、これ恥じらってるのか。

「足が遅い奴にとってはもう全体的に公開処刑だし、借りもの競争だって公開処刑だし、玉入れも公開処刑じゃね?」
「どうでもいいが、何故体育祭の競技が公開処刑になる」

 やはり康介はこちらに視線を向けずに、こう言ってきた。プログラムに描かれた次なるキャラクターは怪獣だった。口から火を噴いている。おおよその名前は『ジュウゴジラ』だろうか。
 宗近が性懲りもなくプログラムを覗き込むと、やはり康介はじろりと睨みつけてきた。手は「やめて……」と涙で瞳を潤ませたデフォルメの女の子が生産された。なにこの子、逆にすごい。

「いやー、よく考えてみたら体育祭の競技って全体的に恥ずかしいモンばっかじゃん。公開処刑じゃん?」
「処刑ではなくて凌辱の方がいいんじゃないのか」
「どっちでもいいよ。処刑の方が殺される感があるから処刑の方がいいわ」

 そうか、と適当な返事をして落書きに戻る康介。投げキッスをしているテルテル坊主の絵に吹き出しを添えて、「荻枝ァ!!」とあった。そして我に返ったらしく、康介はプログラムの端をぐしゃりと握りつぶしていた。
 その一連の動作を静かに観察していた宗近は、今度荻枝の写真でも売りつけたら高く売れるんじゃないかと考えだす。恋をしている奴ほどチョロイものはない。
 その時だ。

「話は聞かせてもらった」
「話は聞かせてもらったわ」

 別方向から二人同時に声が叩きつけられた。
 え、なに、と宗近が顔を上げると仁王立ちをしている小田原博人と史岐彩の姿が——。
 あ、やばいこれは地雷を踏んだか。宗近は張りつけた苦笑の裏で、後悔の念を吐き出した。康介は我関せずと、ひたすら落書きに徹している。

「私が思うに最も恥ずかしいと思える競技は——」
「私が思うに最も恥ずかしいと思える競技は——」

 仲よくハモった二人は、

「——パン食い競争だ!!」
「——飴食い競争よ!!」

 違う答えを宗近へ突きつけた。
 これは戦争になる予感だ。宗近の瞳がきらりと輝き、潜ませておいたデジカメを装備する。
 案の定というべきか、博人と彩は互いに睨み合う。やーさん曰く、『彩姐さんに絡んだヒロはめっちゃ怖い』とのことだ。バチバチと二人の間に紫電が弾ける。

「これは——」
「——決着をつける時がきたようね」

 こうして始まったのが、パン食いVS飴食いの不毛な争いである。
 二人は大真面目に討論していたが、宗近にとっては最高のネタだった。巻き込まれた康介は平和的解決を求めて鳩の絵を描いていたが、リアルすぎて逆に気持ち悪かった。

Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.96 )
日時: 2017/10/18 11:46
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)

 カキコ学園の体育祭は混沌としているが、今年はさらに混沌としているようだった。
 なにせ体育祭のプログラムが読めないのだから。なにこれ、宇宙語? 誰か翻訳しておいてくれない? というレベルで。

「随分と体育祭実行委員も捻ってきたわね」

 有川まよるは難読な体育祭プログラムに視線を走らせながら、薄く笑った。おおよそ女子高生が浮かべるようなものではなく、まるで魔女のような微笑だったのだが。
 安っぽいパーティの招待状のようにデコレーションされたプログラムを適当に片づけて、まよるは現在行われている競技へと視線を投げた。
 コース上に折り畳まれた紙が設置されただけの競技——借りもの競争である。カキコ学園では公開処刑とも揶揄されている競技に、C組からはカキコ学園きっての馬鹿が参加していた。参加者を決める際には残り二名を巻き添えにしていたのだが、まよるにとっては関係ない。

「やーさんは一体どんな波乱を見せてくれるんでしょうねえ」

 楽しみだわ、と妖しく魔女は笑う。すぐそばでは何故か「最も恥ずかしい競技は云々」と生徒会副会長と八雲優羽のいたずらに加担している科学者が熱い議論を展開しているのだが、どちらも食べ物がかかわってくるものなのである。正直な感想は「食いしん坊なのか?」だった。
 ——とまあ、こんなことを言っているがまよるは一ミリも興味を示さず、適当に議論を白熱させていればいいのではないだろうかと自己完結したところで、別のところから気持ちの悪い声が。
 なんというか、犬の吐息にも似ているが……いや、これは間違いなく興奮した人間が発する呼吸というか……。

「……はぁはぁ、い、いっそ男子の借りもの競争のお題が『好きな男子(はーと)』という展開にならないかな……!? いいいいや、そんな漫画のような展開が望めるの……!?」

 饅頭のように丸まって眠っている小鳥遊夢人——がもちろんそんな変態的な荒々しい呼吸をしている訳がない。そんなことをしているんだったら見ている夢の内容を疑うし、もしかしたら悪夢を見ているかもしれない。
 興奮した様子でプログラムを握りしめ、はぁはぁと借りもの競争の行く末を見守っている九十九瑞貴が「ああっ」と空を振り仰いだ。

「そんな展開が起きて、まさかやーさんがあんなことをしたら……!! いやもうこれは叫ぶしかない、私の渾身の叫びを上げるしかないッ!!」
「……なにを興奮しているのか分からないのだけど、とりあえずその可能性も捨てきれなくはないと思うわよ……?」
「ハゥア!?!!」

 まよるが背後から声をかけたのが原因か、瑞貴がびょーん!! と驚いた猫のように飛び上がる。隣で寝ていた夢人は、可哀想なことにその衝撃で叩き起こされた。寝癖がついた髪を無理やり手櫛で落ち着かせようとしているが、変な体勢で寝ていたことが要因となってぴょっと触角が生まれてしまっていた。
 夢人が恨めしげに瑞貴を睨みつけるが、瑞貴は瑞貴で恐慌状態となってしまっていた。警戒する野良猫のようである。
 まよるはやれやれと肩を竦めると、

「突然話しかけてしまったことには謝るわ。そんなに怖がらないで」
「……すす、すみません。ちょっと興奮していて、その」

 もじもじと恥ずかしそうに頬を赤らめて、瑞貴は定位置へと戻った。ぐしゃぐしゃに握りつぶしてしまったプログラムを丁寧に広げつつ、

「で、その可能性も捨てきれないというのは……?」
「……ああ」

 瑞貴の神妙な声音に、まよるは合点がいった。彼女はまよるの台詞である『その可能性も捨てきれない』の真意について問い質しているのだ。
 ここはカキコ学園だ。面白ければ、瑞貴の妄想が現実になりうる可能性が非常に高い。体育祭実行委員にまともな生徒がいれば話は変わってくるが、少なくともこのカキコ学園にまともな生徒などいる——のだろうか?

「常識外れしかいないカキコ学園の生徒が、そんな面白そうなことをしない訳がないでしょう?」
「それもそうか……ッ!! 盲点だった……ッ!!」

 ガカァッ!! と全身を雷にでも打たれたかのようにショックを受けた様子の瑞貴。もしかして、彼女は自分が「まともである」とでも勘違いしているのだろうか。
 すると、ぼんやり競技の行く末を見守っていた夢人が「始まるよ」とまだ眠たげな声で瑞貴へと教えてくれた。食い入るように競技の行く末を見守る瑞貴を一瞥し、まよるも第一走者のレースを観戦する。
 第一走者は八雲優羽だった。他の生徒をあっという間に抜き去り、お題の紙のもとまで辿り着く。
 ——だが、お題の紙を拾い上げた彼の横顔に、殺意のようなものが滲んだ。

『さて、第一レースの借りものは全員同じ「好きな男子」!! 喜べ腐った女子と野郎ども、仲よく手を取り合ってゴールする野郎どもが見られるぜ!!』

 ガタッ!! と瑞貴が立ち上がりかけたが、夢人がなんとか両肩を引っ掴んで無理やり座らせていた。「大人しく見てろ」と眠たそうな視線が物語っている。
 嬉々としてアナウンスする放送部をぶち殺してやろうかとでも言っているような雰囲気を醸していた優羽だが、なにを考えたか彼はC組のもとまでやってきたのだ。まさか、このクラスに好きな男子がいるとでも……ッ!?
 彼がご指名したのは、白熱した議論を展開していた小田原博人だった。まよるはそれだけで、「『LOVE』じゃなくて『LIKE』の方ね」と察したのだが——。
 颯爽と博人を背負ってゴールする優羽へ、瑞貴は我慢しきれずに雄叫びを上げた。

「エンダァァァ————————!!」
「イヤァァァァ————————!!」

 同じことを思ったのか、最上長門まで叫び出した。
 瑞貴はふるふると肩を震わせて、

「ここ、これは、いいネタ、いい材料です!! キタコレ!! 科学者鬼畜攻めですよ!!」
「今度の裏ルートに流す本はこれで決定だね」

 瑞貴と夢人はがっしりと固い握手を交わしていたのだが、まよるは心の中で優羽へと合掌を送るのだった。
 可哀想な、やーさん。


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