コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】
- 日時: 2018/05/13 17:29
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6quPP6JX)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=300
皆様は、学生生活を如何お過ごしでしょうか。
屋上で雨乞いをしたことはありますか?
学校の7不思議を全て解明した事はありますか?
調理実習で誰かが暗黒物質的なクソマズ料理を作ったことはありますか?
そんな現実では「ありえない」の一言で片づけられてしまうような学生生活を覗いては見ませんか?
さあ準備は整った。
始業を告げる鐘を鳴らせ。
————彼らの混沌とした日常が始まります。
***** ***** *****
我ながら意味の分からねえポエムを書いたと思います。笑えよ。笑えばいいだろ(ヤケ
ゴホン、気を取り直して。
こんにちこんばんおはようございます。スレ主の山下愁です。
ええ、このコメディライト板では何度目の出現でしょうね。数えてみてください。——いえ、やっぱいいです。
この物語は上記URLにあります『偶像劇企画』でご協力していただいた皆様が登場します。その数30名!! ありがとうございます!!
おっと、「お前に偶像劇など書ける訳がねえだろカス」と鼻で笑う声がどこからか聞こえてきますが無視しましょう。ええハイ。
さてと。この話を読むにあたって守ってほしい規則がいくつか。
その1 現実ではありえない学生生活を送る個性豊かな生徒たちによるカオスな偶像劇です。まあ当然フィクションですので絶対に真似はしないようにしましょう。言わなくても分かりますよね?
その2 なるべく皆様のキャラを丁重に扱うつもりではありますが、中には雑に扱うキャラもあるかと思います。物語上に必要な演出なので、参加者の皆様はご了承ください。
その3 キャラ崩壊があるかと思います。原型は留めようかと精一杯こちらの方でも努力をいたしますが、もし万が一キャラが崩壊してしまった場合はごめんなさい。土下座させてください。再現率を重視する読者様・参加者様方は閲覧注意です。
その4 誤字・脱字はなるべくこちらで見つけて直していく所存です。ですが直っていなかった場合はご指摘していただけると助かります。
その5 作者は社会人ですので言い訳になりますが遅筆です。申し訳ございません。
その6 荒らし・誹謗中傷・パクリはおやめください。なお、2次創作する場合は山下愁に申し出てください。
カキコで小説を閲覧するにあたって最低限の規則を守っていただければ幸いです。当然守れますよね? 守らねえよバーカなんて言ってあっかんべーする人なんていませんよね?
よし、ならよかった。
それでは始まります。皆様が少しでも楽しめるような小説を書けるように尽力いたしますので、よろしくお願いいたします。
***** ***** *****
プロローグ>>01
4月!!「桜の木の下には死体が埋まっているってほんとかな?」>>02
5月!!「クラスに馴染めない? そんなもんテンションでどうにかなるでしょ!!」>>68
6月!!「運動部の祭典である体育祭は、文化部にとって地獄でしかない」>>87
7月!!「プール掃除って意外と楽しいよ、やってみる価値あるよ!?」
***** ***** *****
お客様
大関様 アーリア様 HIRO様 はる歌世様 冬野悠乃様 Orfevre様 モンブラン博士様 俊也様 メデューサ様 purplemoon様
羽音様 オルドゥーブル様
***** ***** *****
暇つぶしSS一覧
LINEネタ>>33 >>34 >>41 >>45 >>54 >>60 >>70 >>74 >>78
榮倉桃馬【夕焼け小焼けで帰りましょう】微ホラー世にも奇妙風味>>76
八雲優羽【放課後ゲーム】>>86
***** ***** *****
NEWS!! 小説カキコ2016年夏 小説大会にて管理人・副管理人賞を受賞いたしました。ありがとうございます。
※最近我が家のパソコンの調子が悪く、タブレットからの投稿となります。読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。
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- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.82 )
- 日時: 2017/04/18 23:42
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 5/xKAetg)
ACT:8 烏丸凉
比較的真面目に授業を受ける烏丸凉だが、その日は何故か落ち着かなかった。朝からそわそわしていた。
そもそも、授業中に彼の存在がないせいだろうか。凉の視線が、ふと窓際へと移る。
窓際の後ろから二番目。吉田莉音の前の席が空白となっている。肝心の彼女は隣の席である峯木薫子となにか話していたようだが、会話までは聞こえなかった。そもそも女子の会話に興味などないのだが。
数式を書き込んでいた手が止まってしまう。言いようもしない『なにか』を烏丸凉は感じ取っていた。空白の席の主である彼に相談しようものなら、ケラケラと笑いながら「現代の侍や」と言われることだろう。まあ剣道部だからあながち間違いではないが。
「…………なにかがおかしい」
「なにがおかしいって?」
隣から不意に声をかけられて、凉は思わず椅子を蹴倒して立ち上がりそうになった。寸前で止まったが、ガタッという音はしたようで前の席である折原菜月が心配そうに「大丈夫?」と声をかけてきてくれた。視線だけで問題ないことを告げると、彼女は授業に戻る。
凉の隣席は、生徒会副会長の史岐彩だった。訝しげな視線で凉を見てくる彼女に、半眼で返す。
「別になにも」
「気になるじゃない。なにがおかしいのか教えなさいよ」
「分からない」
それは凉にも分からないことなのだ。むしろ凉が教えてほしいぐらいである。
肌で感じる異変は、言葉ではとても表現できないものだ。でも確実になにかがおかしいということが分かる。それを彩に説明したところで、果たして彼女は理解してくれるだろうか。
期待と興味に満ちた視線で凉を見つめてくる彩から視線を外すと、今度は反対隣から「分かるんだ……」なんて聞こえてきた。隣の席は榮倉桃馬、地獄耳で有名な男子生徒だ。今まで居眠りでもしていたのか、彼の目は眠そうにトロンと垂れている。
「でも確かにおかしいよ。なんか廊下の方が特に」
「だから、そのおかしいのがなんなのって聞いてるのよ」
凉を挟んで彩が桃馬に詰め寄った。彼女はまだ諦めないのか。
「でも言葉では表せないかも。予感的なものだから、きっと史岐さんは嫌いかも」
「なによそれ。別にいいのに」
「野生の堂前が仲間に入りたそうにこちらを見ている」
桃馬が指差した先には、チラチラとこちらの様子を伺っていた堂前妃がいた。桃馬に指を差されてしまった為にその存在がバレ、彩の攻撃を買うこととなった。攻撃と言ってもおちょくりのようなものだが。
絡みに行った意外とノリのいい生徒会副会長を横目に見ていると、前の席の菜月が唐突に「あ」と声を上げた。どうやら携帯を見ているようで、凉がなにごとかと眉根を寄せると、
「近くに銀行強盗がいるんだって、現在も逃走中」
「あ、それ俺も見た」
菜月の隣である宇野響が、同じようにスマートフォンを見ながら呟く。凉は菜月に、桃馬は響にそれぞれスマートフォンを見せてもらった。
ニュース記事にはこの辺りで銀行に強盗が入り、犯人たちはいまだ逃走しているらしかった。この辺りというのがまた恐ろしい。いや、もしかして嫌な予感とは。
担任の王良空華の問いかけに対して、紅河玲奈と小田原博人がマジレスとボケをかましてクラス中を沸かせた。いつの間にか史岐彩は堂前妃にちょっかいをかけることをやめて、真面目に授業に取り組むことにしたようだ。全員、この異変に気づいているのだろうか。いやいないだろう。
「……こちらにこなければいい」
「まあ、それが一番だけどな」
「……そうはいかないかもね」
凉が平和に期待し、響がそれに同調する。菜月も凉の意見に賛成だったようで、うんうんと頷いた。ところがその考えを、願いを打ち砕いたのは桃馬だった。何故か普段から白い顔を、さらに青白くさせている。
響が心配そうに「オイ、どうした?」と問いかける。菜月も心配そうにオロオロとしていた。凉だけは、桃馬の言いたいことがよく分かった。
そして、彼の嫌な予感とは的中するものなのだ。
- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.83 )
- 日時: 2017/04/30 01:20
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)
ACT:9 吉田莉音
懸命に授業の内容をノートに書き写しているのだが、どうしても綺麗にまとまらない。というか文字が斜めっているのはどうしてなのだろうか。
吉田莉音は不満げに唇を尖らせて、今まで書いていた数式を一度消しゴムで綺麗さっぱり消した。そしてもう一度書き直すのだが、なんでかどうしても斜めってしまう。嘆きたくなった。
「そんなに消してばかりだとノートが破れない?」
「でも斜めになっちゃうし」
「そもそも罫線が引かれているノートで斜めるとは、一体どういう書き方してんの」
ギャル風な見た目によらず、真面目に授業を聞いていた峯木薫子が呆れた様子で言う。
莉音だって生徒会書記の仕事を担っているのだから、字を綺麗に書く自信はある。なのに斜めってしまう。自然の摂理ですか、いいえ誰でも。意味不明な詩でも読みたくなってしまう。
朗々と担任の空華が教科書を読み上げて、懇切丁寧に分かりやすく数式の意味を説明してくれるが、莉音が何度も何度も数式を書き直すものだから授業に追いついていない。もう諦めるべきなのか。
「ほら、こいつの参考にしなよ」
と言って、薫子が見せてきたのは嫌に綺麗なノートだった。要所要所がまとめられていて、すごく羨ましいぐらいに綺麗である。誰だ、こんなノートを取ったのは。
視線だけで誰のものであるのかを問いかけると、彼女は舌を出して笑い、
「隣のガスマスク野郎」
「あー……」
莉音は納得した。今まさに、ノートがないと狼狽えている彼がいるからだ。ちなみにそのせいで反対隣にいる史岐彩に捕まってしまい、顔を覆い隠しているガスマスクを狙われるという不憫な目に遭っていた。心の底からごめんなさい。
だが、彼のノートは見やすいのである。莉音はガスマスク男子生徒——堂前妃に謝りながらも、参考にしてノートを取った。なんか気持ち的にすごく綺麗に書けた気がする。
堂前妃という少年のおかげで授業に追いつくことができたので、薫子にノートを返してあげるように頼むのと同時に、お礼を綴ったメモ用紙も渡してもらう。メモ用紙を受け取った彼は、ガスマスクの奥にある瞳を輝かせた。
「ごめんね、今まで借りてて。すごく参考になったよ」
「う、ううううん、平気平気平気」
すごくどもりながらもブンブンブンと首を振り、首が取れるんじゃないかと思うぐらいの振り、彼は再び授業に戻っていった。コーホー、とか聞こえてきそうな格好をしているが、案外いい人なのかもしれない。
しかしまあ、参考にしたところでノートは綺麗に取れていなかったのだが。もうこれは仕方のないことなのだろうか。罫線をはみ出してしまっているし。
すると、担任の呼びかけに応じるように莉音の斜め前で寝こけていた小さな女子生徒が飛び起きた。寝癖のついた髪の毛をなんとか押さえつけ、真上ののは口元を拭った。
「え、えっと、今までその、睡魔と戦ってて……?」
「のの、今聞いてるのはやーさんの行方だ。授業中に寝ていた言い訳を考えなくてもいいよ」
「え、そうなの? なーんだ」
ふう、と安堵の息をついたののは、真っ白なノートを見下ろして「おーまいごっど」と嘆いた。今まで寝ていたのだから板書を取っていなく当然である。
莉音はののにノートを見せてあげようかと口を開いたが、彼女は身を乗り出して隣の席からノートをぶん取った。彼女の隣に座っているのは堂条里琉だった。突然ノートを取られた彼は、ののからノートを奪い返そうとする。
「返せ」
「いーじゃん見せてよ。のののノートをやばいよ、ヨダレだらけ」
「うわ汚ねえ!! 汚されたくねえからさっさと返せって!! 後ろの奴にでも見せてもらえりゃいいだろ!!」
「いーじゃん。ノート綺麗だし」
奪い返そうとする里琉の魔手から逃れるように、 ののは机を離し始めた。ちらりと里琉の取ったノートが見えたが、なんか綺麗だった。ちくしょう。
「薫子ちゃん、私は書記として自信をなくしそうです」
「いきなりどうしたの」
隣のギャルにシクシクと泣きながらノートが綺麗に書けないことを訴えると、彼女は今度こそ困った顔を浮かべて「どんまい」と答えた。もうなにも言えねえらしい。
その時、ガラリと教室の後ろの扉が開いた。そういえば、やーさんを朝から見かけなかったがまさか帰ってきたのだろうか。
- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.84 )
- 日時: 2017/05/13 11:41
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)
ACT:10 強盗
その男たちは、いわゆる銀行強盗という奴だった。
金がないから銀行を襲撃し、大金を奪って逃走した。綿密に練られた計画はついに実行され、無事に成功した。大金を奪って逃走用の車に乗り、警察の目から逃げてきたのだ。
が。
日本の警察というものは非常に優秀なもので、銀行強盗という罪を働いた男たちを捕まえようと追いかけてきたのだ。しかもすぐに特定しやがった。
「あ、兄貴!! このままだと捕まっちまいます!!」
「分かってる!!」
大金が詰め込まれたボストンバックを抱えた部下の男を叱責し、リーダーたる男は目の前に見えた建物に注目した。
この辺りでは一番大きく、そして一番広くて、一番人が集まる場所——つまりは学校だ。『カキコ学園』と銘打たれた校門を突破し、リーダーの男はほくそ笑む。
「生徒どもを人質にとって、逃走経路を確保する。相手はガキだ、簡単だろう」
「さすが兄貴。そこに痺れる憧れるゥ!!」
調子に乗った部下の男を睨みつけ、銀行強盗はついに学校内へ侵入を果たした。
——いや、果たしてしまった。
危険なのはどちらかというと生徒の方ではなくて、銀行強盗の方である。
***** ***** *****
何の変哲もない校舎を、右往左往しながらようやく人質らしき教室を発見した。
ちょうど目の前に見えた教室は『2年C組』とある。どうやら授業中のようで、扉の向こうからは教員だろう男の声が聞こえてきていた。
よしよし、多少の問題はあったが計画は順調だ。このまま生徒を人質にとって、逃走経路を確保すれば完璧。近くにいる生徒を見せしめに殺してやるのもありか。リーダーの男はあくどい笑みを浮かべて、部下の男へと振り返る。
「武器を寄越せ」
「へい」
手渡された武器はロシア製のアサルトライフルである。闇の組織経由で密輸し、苦労して手に入れた今回の武器だ。銃刀法違反? 強盗をしている時点ですでに犯罪者だ。関係はない。
両手で構えて、部下の男にはボストンバックの死守と待機を命令。赤子を抱きしめるように大きめの鞄を抱きしめて、身を縮こまらせた部下の男を一瞥して、リーダーたる男は2年C組の教室へ強襲した。
後ろの扉を荒々しく開き、アサルトライフルの銃口を教室内に向ける。
「全員動くなッ!! 動くんじゃねえッ!!」
教室の中にいる生徒の人数は思ったよりも少なく、せいぜい三十人といったところか。全員して闖入者たる銀行強盗へと注目している。
というか、全員してポカンとした表情だった。例えるなら「お前じゃねえ」だろうか。期待していた相手とは違う相手が入ってきた時のような表情だった。なんだろう、この言いようもない気持ちは。
だがしかし構うものか。リーダーの男は一番近くにいた白髪の男子生徒の脳天にアサルトライフルの銃口を突きつけて、
「お前ら、こいつの頭をぶち抜かれたくなければ大人しぶぐへぁ」
リーダーの男は吹き飛んだ。背後から部下の「りりりりリーダー!!」という声が聞こえた。
リノリウムの床にうつ伏せで倒れたリーダーの男へ覆いかぶさるようにして、誰かが乗っている。まさかもう警察が!? と心臓がドキリと跳ねたが、相手は違うようだ。
「怪獣だ、手を挙げろ!! 食っちまうどッ!!」
…………ワイシャツの襟元から顔を出し、戦隊ものに出てくる怪獣の真似ごとをしている背の高い男子生徒だった。動きを止めている生徒たちへ、彼は「がーがー」などと言いながら、後ろの席に座っている生徒を手当たり次第に叩いていく。ノリが軽い。
というか、こんな男にやられたのか。
後ろから突き飛ばされたのか。
「てかなに? え? みんなどうして俺に注目してないの? 俺こんなんになってんのに?」
「やーさん、今はそれどころじゃないんだよ」
呆れたような口調でギャル風の女子生徒が諭す。
突き飛ばされたという精神的ダメージと鈍い痛みからようやく立ち上がったリーダーの男は、変な格好をした銀髪の男子生徒へアサルトライフルの銃口を向けた。
「テメェ!! 舐めた真似しやがって!!」
「誰が舐めてるだって!? 腹痛の俺に誰も構ってくれねえんだもん、これぐらいしたってよくねえ!? いいだろ!?」
思い出しただけでも涙出てくるわコンチクショーッ!! と男子生徒はおもむろに近くにいたガスマスクの少年の筆箱を引っ掴んだ。「筆箱!!」と少年が嘆くが、そんなことなどお構いなしに銀髪の女子生徒へ筆箱をパスする男子。
「べーやん、パース!!」
「任せて!!」
銀髪の女の子はおもむろに立ち上がるや、華麗な投球フォームで筆箱をブン投げてきた。
銀行強盗の頬を掠めて剛速球で投げられた筆箱は壁に衝突、柔らかい素材の壁がなんか凹んだ。ような気がした。
「ヤァコ、頭下げとけよォ」
「——え? ああああああ!!」
男子生徒が悲鳴を上げる。
銀行強盗が最後に見たものは、とても高校生には見えない大柄な男が教科書がたんまり詰め込まれた机を放り投げている瞬間だった。
視界は暗転。
銀行強盗の完璧な作戦は、ジャ〇ラのような恰好をした馬鹿によって潰されてしまった。
- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.85 )
- 日時: 2017/05/21 22:35
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: yCPJRH6h)
ACT:11 八雲優羽
ようやく腹痛から解放された優羽は、清々しい表情でトイレの個室を出た。腸の中のもの全てを捻り出し、もはや痔にならん勢いで尻を酷使したのでなんか痛みが残る。
水道で手を洗って、優羽は濡れた手を振って水気を飛ばした。壁にかけられた鏡を覗くと、銀髪碧眼の男子生徒が立っている。うん、今日もイケメン。いやいやそうではなく。
「どうしようかな。どうやって教室に攻め入ろうかな」
ビビビビビ、と水気を存分に跳ね飛ばした手でパタパタと自分の体をまさぐり、そしてピコンと閃いた。そうだ、その手があったか。
優羽はシャツの襟元をグイッと引っ張って、すっぽりと顔を嵌め込む。着替え途中で顔がつっかかりましたと言わんばかりの格好である。背中がほんのり丸見えである。
その格好は、カップラーメンの調理時間の間だけ地球を救える正義の味方に変身できる特撮アニメに出てくる怪獣のような姿をしていた。有り体に言えば、ジャミ○だった。詳しくは個人で検索してもらいたい。
馬鹿みたいな格好を今一度鏡で確認して、優羽は真剣な表情で一言。
「……せめてお面みたいなのあればなぁ」
まあいいか、と簡単に片づけて、優羽はその格好のまま廊下を歩いて教室に戻ることにした。
彼にとって幸だったことは、廊下が無人だったことだろうか。
***** ***** ******
ようやく教室に戻ってきた優羽が見たものは、全身黒づくめでアサルトライフルを抱えた男が教室に入っていく瞬間だった。
一体誰だろうか。今日って授業参観だったっけ——そこまで考えて、優羽は答えを導き出すことができた。これはドッキリか。
もしかしてて、ターゲットは教室にいない優羽だろうか。教室に入っていきなり襲いかかってくるパターンか。そうは問屋が卸さない、こちらもいたずらで対抗してやる。
ニヤリと優羽は不敵に笑み、なるべく足音を立てずに教室の扉へと近寄った。男の怒号が聞こえてくるが、どうせ演技かなにかだろう。開けっ放しになった教室の扉。優羽の視界に映ったのは、アサルトライフルの銃口を突きつけられたアルビノの少年だった。桃馬である。
「えいとになにやってんだ。いやこれも演技か」
さすがドッキリである。誰が仕掛けたのか分からないが。
優羽は助走をつけると、勢いよく教室の中に飛び込んだ。直線上にはあの黒づくめの男。優羽は男めがけて体当たりをぶちかました。
なんか脅し文句めいたものをが無様な悲鳴に掻き消されたが、ドッキリなど潰してやるのだ。
「怪獣だ、手を挙げろ!! 食っちまうどッ!!」
動きを止めたクラスメイトは、優羽に注目している様子ではなかった。なんか石化している?
優羽は「がーがー」と言いながら烏丸凉、史岐彩、堂前妃と順繰りに背後から襲いかかる。彩は本気で襲いかかることはできなかったが、その分妃は二度ほど叩いた。もちろん本気ではない。
というか、全員優羽に注目していないのだが。
「てかなに? え? みんなどうして俺に注目してないの? 俺こんなんになってんのに?」
「やーさん、今はそれどころじゃないんだよ」
呆れたような口調で薫子が諭してくる。せっかくこんな格好をしてきたのに、努力が無駄ではないか。畜生、誰だよドッキリなんか仕掛けてきた奴は。
むー、と不満げに唇を尖らせた優羽へ、ドッキリの仕掛け人である男がアサルトライフルを向けてきた。俳優さんかなにかだろうか。突き飛ばされても演技をするとは流石である。プロ根性。
「テメェ!! 舐めた真似しやがって!!」
誰もお前なんかを舐めていないし、優羽はむしろ恨みすらある。
せっかくの自分の見せ場を鮮やかに掻っ攫っていきやがって。
「誰が舐めてるだって!? 腹痛の俺に誰も構ってくんねえんだもん、これぐらいしたってよくねえ!? いいだろ!?」
思い出しただけでも涙が出てくるわコンチクショーッ!! と叫んだ優羽は、妃の筆箱を掻っ攫うとちょうど目が合った玲奈へ向かって筆箱をパスした。
「べーやん、パース!!」
「任せて!!」
なにが任せてなのか分からないが、玲奈は綺麗な投球フォームに入るや彼女の特徴である剛速球を放ってきた。優羽の横を大きく逸れて、筆箱は黒づくめのドッキリ仕掛け人の横を通り過ぎ、後ろの壁を凹ませるほどの威力を発揮した。妃はシクシクシクと机の上で突っ伏して泣いていた。あとでジャンピング土下座でもしてやろう。
すると、遠くの方で「ヤァコ」と呼ぶ声が。やーさんというあだ名で貫き通している優羽を唯一そうやって呼ぶのは、この教室でたった一人しかいない。
「頭下げとけよォ」
え、と思った時には関太郎が教科書の詰まっている机をこちらへとぶん投げてきた。
宙を舞う机。優羽は慌ててしゃがみ込み、机を回避した。
机はアサルトライフルを構えていたドッキリ仕掛け人の男へと当たると、見事彼を気絶へと導かせた。あれ、よかったのだろうか。
ポカンと机に押し潰されて気絶を果たした男を見て、それから優羽を置いて笑っているクラスメイトに、彼はどうしてもついて行けなかった。
「…………だ、誰か、説明、プリーズ…………」
あとで長門と博人から説明してもらったのだが、彼らは銀行強盗だったようだ。あのアサルトライフルも本物だったらしい。
まさかのゲストに優羽は本気で嘆いた。だったらもう少しマシな攻撃をしてやるんだった!!
- Re: 【住民参加型】カキコ学園2年カオス組!!【偶像劇】 ( No.86 )
- 日時: 2017/06/03 12:51
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: UvhXWElK)
「あ、あ、あー……あー……あ、死んだ」
「だから言ったじゃん、やーさん。『そんな装備で大丈夫か』って」
「いや、うん、確かに言われたんだけど……でもこんなに強いって思わないじゃん?」
「思って」
「ウィッス」
宮前ユカに指摘され、優羽は返事をするしかできなかった。画面の中央では茂みに埋もれるようにして倒れている自機がいる。なるべく自分に似せて作ったはずのキャラクターだが、やたらと美化されている。
するとそこへ、ユカが操作するキャラクターが敵の攻撃を掻い潜って走ってきて、うつ伏せに倒れている優羽のキャラクターに手をかざした。緑色の光が灯り、『ありがとう!!』というボイスと共にむくりと体を起こす。
現在二人がやっているゲームは『DEMONS EATER』というハンティング系ゲームである。魔物と呼ばれる敵を狩って、素材や資源などを回収して武器を作ることができる仕組みになっている。ゲーマーの間では一定の人気を誇り、現在では『DEMONS EATER 3』まで発売されている。さらにアニメ化もされたようで、九十九瑞貴嬢が「うへうへ」と涎を垂らしながらゲーム内のキャラクターを絡ませていた。
優羽もこのゲームを一作目からかなり熱心にやり込んでいた。ゲームの女帝と他クラスから噂されているユカも同様である。時折「一狩りしようぜ」ってなっては、こうして二人で難易度をわざと上げて任務に挑んでいる。
いつもは二人だが、今日はその倍の四人だった。
「つーか、おぎまゆちゃんもこういうのやるんだね。しかも射撃性能すげー的確」
「えへへ、ありがとう」
恥ずかしそうにはにかみながら、荻枝摩由が自機を操作している。広々とした画面の中央にいる可愛らしいピンク色の髪をした少女は、巨大な大剣を片手で振り回して熊のような大物に立ち向かっている。
「つかやーさんよ、さっきから死にすぎじゃね? 装備弱いんじゃねえの」
「わざと弱い装備できたのが間違いでした、愚かでした。笑えよ」
「あははははは」
「だからってゲームキャラが腹抱えて笑う動作は腹が立つなぁ!!」
野島治人が自機に腹を抱えて笑うポーズを取らせて、優羽を茶化した。次の瞬間には熊の強靭な爪の餌食となって、吹っ飛ばされていた。「ザマア」と笑ったら脛を蹴飛ばされた。
ウケを狙いすぎてまだ成長段階の武器で挑んでしまったのが間違いだった、と優羽は自機を操作しながら後悔する。ほんの少しでも体力を削り取れればいいか、と思って邪魔にならない程度にガシガシと短剣で熊の踝を削ぎ落していた。実際にやったら痛い行動である。
「あ、みんなちょっと離れてくれる?」
「ミヤさんどうした? 爆弾でも仕掛けるの?」
「ちょっとね。この前編み出した方法があるんだぜ」
ニヤリと不敵に笑ったユカに、その場にいる三人は戦慄を覚えた。
優羽は急いでキャラクターを緊急回避、熊がいる戦闘領域とは真逆の方向へダッシュする。同じように摩由のキャラクターと治人のキャラクターも走ってきて、三人揃って防御態勢に入った。
次の瞬間、画面を白い閃光が埋め尽くした。
『わー!!』
『きゃー!!』
『あー!!』
三者三様の悲鳴を上げて、防御態勢に入っていたはずのキャラクターが吹っ飛ばされた。幸いにも受け身を取ってくれたのだが、はて、一体なにが起きたのか。
熊の魔物はすでに倒れていて、『クリア』の文字がデカデカと表示されている。倒したらしい。サポーターをしてくれていた少女の声が、『お疲れ様です!!』と労ってくれている。
各々の勝利ボイスが垂れ流しになるが、優羽たち三人はポカーンとしていた。なにが起きたのか状況が理解できていなかった。
「ミヤさん一体なにやったの?」
「調合して巨大爆弾を落としたの。すごいっしょ。やーさんにも調合方法教えてあげるから今度やってみ。スカッとするから」
ニコニコと満面の笑みで語るユカを、素直に優羽は「やっぱりゲームの女帝だわ」と思った。間違いなく彼女は女帝だった。
「ねえ、次は『NEeT ANdROiD』やんない?」
「あれって確か働いたら負けゲームだって噂が流れてんだけど」
「大丈夫、大丈夫。カーチャン機械生命体相手に無双するから」
「確かこの前、ゲーム屋のテストプレイで無双してたよね……? そのプレイが見れるの?」
「てかそれ据え置き型ゲームじゃん。どこでやるの。視聴覚室?」
「あ、いいな。視聴覚室占領しようぜ。空ちゃん先生言いくるめば協力してくれんだろ」
「なんだかんだあの先生って先生って感じがしない先生だよね」
「荻枝、ゲシュタルト崩壊してねえか?」
*****
一区切りついたから小話でもと思いました。箸休めにどうぞ。
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