コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~
- 日時: 2016/01/16 20:59
- 名前: 逢逶 (ID: I.inwBVK)
- 参照: http://www.uta-net.com/user/poplist.html
おはようございますorこんにちはorこんばんは
逢逶(あい)です。
二作同時進行で参ります。
応援よろしくお願いします!
*First Season EPISODE*
episode0 >>1 episode10 >>11
episode1 >>2 episode11 >>12
episode2 >>3 episode12 >>13
episode3 >>4 episode13 >>14
episode4 >>5 episode14 >>17
episode5 >>6
episode6 >>7
episode7 >>8
episode8 >>9
episode9 >>10
*First Season END* >>18
*Second Season EPISODE*
episode0 >>19
episode1 >>20
episode2 >>21
episode3 >>22
episode4 >>23
episode5 >>24
episode6 >>25
episode7 >>26
episode8 >>27
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.7 )
- 日時: 2015/12/22 11:49
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode6
title 囁き
飲み会終わり。
ホテルに宿泊することになった私たち。
酔っ払い気味の誠に肩を抱かれて、部屋に入る。
それでも考えるのは成瀬さんのこと。
まだポケットの中のものを確認できていない。
触った感じは、紙。
期待しちゃだめ。
私には誠という旦那がいて、子供を産むという使命がある。
私だって子供は欲しいけれど、生まれた子供は愛されるのだろうか。
愛していない妻との子供は、誠の目にどう映るの?
義父の頼みだ。
しっかり果たさなければ。
誠の唇に私のそれを重ねる。
それでスイッチの入った誠は、私をベッドに押し倒した。
「織…」
首筋に触れる唇。
私は黙って〝子作り〟を終わらせた。
どんな感情も無意味なのだと気付いた。
誠がすやすや気持ち良さげに眠ったのを確認する。
だるい体を起こし、服を持ってトイレへ向かった。
鍵を閉めて、ポケットの中のものを取り出す。
小さなメモが入っていた。
そこには連絡先が綺麗な字で記されていた。
最後に〝連絡ください〟とだけ書いてあって、
その一言が忘れかけていた胸の高鳴りを呼び起こした。
電話しようかな…。
でも、私には夫がいる。
誠は私に関心はない。
大丈夫。
その番号にかけた。
『おかけになった電話番号は只今使われておりません』
…なんだ。
私のこと弄んだだけじゃん。
こんなにドキドキさせておいて。
ひどい人。
その紙を破り、トイレに流した。
私は舞岡誠の妻だ。
私の行動で、音楽業界を揺さぶることだってできる。
そんなことしてはいけない。
私は未来を担う子供を産むだけだ。
頬を軽く叩く。
しっかりしなきゃ。
ベッドに戻り、誠の唇にキスを落とし、眠りについた。
「ごめん。愛してる」
夢の中で誰かの囁きが聞こえた。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.8 )
- 日時: 2015/12/22 11:49
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode7
title 沈む
一週間経ち、すっかり成瀬さんとのことは忘れていた。
今日から誠は様々なレコード会社の見学に行く。
見学と言っても、大体は買収の相談である。
the SOUNDsのスローガンは〝日本音楽グループ〟。
つまり、日本全体を巻き込んだ、音楽メディアの一つの大きな流れを作るということ。
大きすぎるとも言えるその目標に挑むのは私の夫。
見学は約三週間で、その間家には帰ってこない。
社長の妻と言っても暇なのである。
友達もいない私は、食事する相手もいない。
「じゃあ、行ってくる」
「気をつけて、いってらっしゃい」
「ちょっとごめん…」
誠は私を抱き寄せた。
「…」
びっくりして声が出せない私。
「…ごめんな」
誠はぽつりと小さく呟いた。
そのまま体を離して、誠は出張に出かけた。
なんだったんだろう、今の。
頬が火照る。
久々のあたたかい抱擁を思い出し、目を瞑った。
ブーブー
携帯が鳴って、慌てて我に返る。
知らない番号が表示されていた。
不審に思いながらも、携帯を耳に当てる。
「もしもし」
『あ、どうも。俺です。…成瀬海です』
瞬間、高鳴る胸。
忘れていた人。
でも、忘れられなかった人。
「…」
『あの…、連絡…、どうしてくれないんですか?』
「その前に…、どうして番号知ってるんですか?」
大丈夫。
私は冷静だ。
成瀬さんのことなんて、なんとも思っていない。
ちょっとした知り合いってだけだ。
『待てなくて…。マネージャーを介して聞きました』
「…変な風に思われたらどうするんですか?」
『変な風って…?』
「不倫、とか…」
『別に大丈夫ですよ。マネージャーには、誠さんに連絡先交換断られたから織さんの教えて…って言いましたし。実際、誠さんは連絡先交換しないことで話は通じるんで』
テレビでは見ない、饒舌な成瀬さん。
「…連絡、しようとしたけど…」
『え…?あ、書き間違えたかも…』
「ふふ笑 意外とおっちょこちょいですね」
『すいません笑』
ミステリアスなんだけどなんだか落ち着く、ハイスペックで何でもできる、成瀬さんはそんなイメージ。
だけど、意外とお茶目なんだなぁ。
吹き出してしまうと、成瀬さんも笑っているように聞こえた。
リビングに戻りソファーに座る。
「…成瀬さんは今何してるんですか?」
『家でごろごろしてますよ笑』
「休みあるんですね」
『まぁ、壊れちゃいますから』
「そうですよね」
『誠さんもそうだと思いますよ。ケアしてあげてくださいね。俺が言うのも変か笑』
誠の名前が出てきて、思わず唾を飲み込む。
途端に頭に響く、義父と義母の子供を急かす言葉。
「…誠の話はしたくないです」
『…喧嘩しましたか?』
「喧嘩なんて、そんな距離じゃないんです。私たちは」
『そんな、』
「でも、もう慣れました。…距離より大事なことがあるんだって思うんです」
大事なのは、子供を産むこと。
ぐるぐる考えていると、成瀬さんがはっきりと言った。
『俺は今、織さんに会いたいです。もっと織さんとの距離を縮めたいです』
ずぶずぶ、音が聞こえた。
私が沈んでいく。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.9 )
- 日時: 2015/12/22 11:49
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode8
title 焦がれる
『…なんて、ね』
ちくり…
誤魔化されたことで胸の奥が痛む。
さっきの言葉は嘘だったの?!
私に会いたくないってこと?!
からかったの?!
そう責め立てられるほどの関係でもなくて。
ただ、締め付けられる感じ。
「…冗談はやめてくださいよ」
『はは、すいません』
成瀬さんの渇いた笑いが耳の奥に響く。
「じゃあ、切りますね」
『え?あ、ちょっと…』
「どうかしましたか?」
『まだ、話したいことが…、』
「はい」
『織さんが何を抱えているかわからないし、俺に何ができるかわからないけど…、話を聞くぐらいはできるので。えっと、…とにかく一人で泣かないでください』
〝一人で泣かないで〟
私は誠と結婚してから、涙を見せることを避けてきた。
だから一人で泣こうと思ったし、できる限り堪えようとしていた。
成瀬さんから貰った言葉は、確実に涙腺を緩ませて。
「…っ、どうしてっ、どうして…そんなに優しい言葉をくれるんですか」
私なんてあなたと夫の仕事でしか繋がれていないのに、そう言おうとして飲み込んだ。
『…不安定すぎるんですよ』
「…」
『織さんは会う人が一歩引いてしまう可憐さがある。…立ち振る舞いも非の打ち所がなくて。…それなのに、内面はぐらぐらしていて不安定。…織さん、何を抱えているんですか?…知ることができれば、守れるかもしれないのに…っ』
私はそで電話を切った。
そんなこと言われたら、縋ってしまいたくなる。
この広い家で全ての欲求が失われて、恋の感覚すら麻痺していたというのに。
私の中に芽生えた小さなもの。
種を植えたのは私。
自ら望んで、あなたに恋をするのだろうか。
私は…誠を捨てられるほど強い心を持っていただろうか。
全てを投げ捨てる勇気は無いのだ。
何を失い、傷つけてゆくのだろう。
私があと少しだけ冷徹だったなら、
間違いなく、誠を捨てただろう。
それほど、焦がれているのだ。
どんな関係も許されない、あなたという人に。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.10 )
- 日時: 2015/12/22 11:50
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode9
title 愛なんて
成瀬さんの言葉を反芻していたらあっという間に日が暮れた。
何も食べる気になれなくて、ごろりとソファーに寝転がったらそのまま眠ってしまった。
夜が明け、眩しさに目を覚ます。
ゆっくりと体を起こすと、寝違えたのか腰に鈍い痛みが襲う。
腰に病を抱えている私は走ることすらできない。学生の頃は体育の授業をよく休んでいた。
寝違えただけでも腰にくる負担は相当なもので、通院を余儀無くされる。
今回も、例外ではないようだ。
「もしもし、舞岡です」
『あぁ、織ちゃん。どうした?』
「…腰をちょっと」
『了解。今日は午前中は空いてるから』
「はい。毎度すいません」
『全然。気をつけて来なよ?』
「はい、ありがとうございます」
小学生の頃からお世話になっている整骨院の久志先生。
いつも申し訳ないなぁ…。
髪を軽く結って、スウェットに上着を羽織って家を出た。
家の前でタクシーを拾い、都心から外れた整骨院へ向かう。
「お客さんは何座ですか?」
運転手さんが弾んだ声で聞く。
「え?…山羊座です」
「おぉ!今日の運勢は五位です!」
「なんか、微妙ですね?笑」
「全然良い方ですよー。今日はいい日になるでしょうねぇ」
「それは嬉しいですね。…占いできるんですか?」
「いえ。朝の占い番組を欠かさず見てるんです。これが結構当たるんですよ?」
「へぇー!私も見ようかなぁ」
「えぇ、是非。あ、でも十二位だった時は一日沈んじゃいますけどね笑」
「結構なリスクですね笑」
「そうなんですよ笑 でも一位だった時の嬉しさ。これがあるからやめられないんですよ」
「依存症状ですね」
「はい、困ったもんですよ」
他愛ない会話をして、あっという間に整骨院に着いた。
また、会えるかな。
「どうした、織ちゃん。ぼーっとしてる」
「あ、すいません」
「それで、今日は…」
「いつも通り鈍い痛みで。でもちょっと違和感と言うか」
それは起きた時から感じていたもの。
ぴん、と腰が張っているような気がするのだ。
いつもは痛みだけなのに。
久志先生にそう伝えると深刻そうな顔をして、私を診察台に寝かせた。
「ここが、張ってる?」
「はい」
押されると強く痛んで、思わず顔を歪める。
「…こりゃ、重症かもね」
「え?」
「筋肉が張って炎症も起こしてる。二週間はあまり動かない方が良いね。寝違えただけじゃないね。何か腰に負担になるようなこととかした?」
「…」
そう聞かれても思い当たる節がない。
「例えば…、まぁ、言いづらいんだけど。夫婦生活の上で、そういうことがあるでしょ?」
あぁ、それか。
そういえば、この間の誠はオスの本能で私を抱いていた。
「…はい」
「二週間というか一応三週間はそういうことなしで。それで次は手加減してもらいなさい」
「はい」
…子供を作るための行為。
愛もない私に〝優しくして〟と言われても、きっと何も変わらない。
愛なんてない。
愛なんてない。
私は…
…どうなの?
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.11 )
- 日時: 2015/12/22 11:51
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
episode10
title ちゃんとした妻
あれからいつもとなんら変わらない毎日が過ぎ、あっという間に誠が帰宅する日になった。
明け方、メールが届いた。
内容は〝五つの会社を買収に持ち込んだ。今日は各社長と食事会がある。織も参加するように〟と、とても業務的なもの。
コーヒーを淹れて啜る。
いつもより苦味が口に広がった。
豆の量も種類もいつもと同じ。
なんだろう、と思ったら涙がぱたぱたと水面を揺らしていた。
「あれ、おかしいな。はは…っ」
家に響く声。
妙な虚しさでいっぱいになって俯いた。
もう、嫌だよ…。
誰か、助けて。
ぴーんぽーん
ベルが鳴る。
誠…?にしては早い。
恐る恐る玄関の扉を開ける。
深く帽子をかぶって、マスクで顔を隠しているその人。
その人はマスクを下げた。
「影山さん…」
Streamの影山さんがいた。
どうして家に…?
「今日、誠さん帰ってくるんですよね」
「そうですけど…。ここで話すのも…中で話しませんか?」
「…じゃあ、お邪魔します」
なんか、不思議。
Streamのメンバーが家にいる。
成瀬さんだったらな、って思う。
失礼だけどね。
すっかり冷たくなったコーヒーを流して、来客用のマグカップに紅茶を注ぐ。
この間の飲み会で、確か影山さんはずっと紅茶を飲んでた。
紅茶を出すと、影山さんはちょっと驚いた顔で私を見た。
「ありがとう。俺、コーヒーより紅茶派なんです」
「知ってますよ笑」
私がクスクス笑うと影山さんは顔を赤らめて微笑んだ。
「それで、話っていうのは…?」
「あぁ、」
急に真面目な顔つきになる影山さん。
思わず背筋を伸ばして影山さんの言葉を待った。
「海の話だけど…」
成瀬さんの…?
「…」
「連絡取ってるよね?」
「…はい」
別にやましいことはないんだけれど、後ろめたい気持ちがある。
「織さんは誠さんの奥さんで、誠さんはStreamと契約している会社の社長です。もし、織さんと成瀬さんが連絡していることがバレたら、契約を切られてしまう可能性があるんです」
「…ただお話ししているだけです」
「会いたいとか連絡以上のことを望んではいませんか?」
「…」
会いたい…。
会いたいよ…。
「もう連絡とるのやめてもらえませんか?」
「…嫌です」
「織さん、ちゃんと社長の妻をやってくださいよ」
ちゃんとした社長の妻に…。
私は精一杯やってきた。
でも、成瀬さんに対して抱く恋心は決して清いものじゃない。
許されるものではない。
私は誠の妻を精一杯やること以外に道はない。
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