コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~
日時: 2016/01/16 20:59
名前: 逢逶 (ID: I.inwBVK)
参照: http://www.uta-net.com/user/poplist.html

おはようございますorこんにちはorこんばんは

逢逶(あい)です。

二作同時進行で参ります。
応援よろしくお願いします!


*First Season EPISODE*
episode0 >>1 episode10 >>11
episode1 >>2 episode11 >>12
episode2 >>3 episode12 >>13
episode3 >>4 episode13 >>14
episode4 >>5 episode14 >>17
episode5 >>6
episode6 >>7
episode7 >>8
episode8 >>9
episode9 >>10

*First Season END* >>18

*Second Season EPISODE*
episode0 >>19
episode1 >>20
episode2 >>21
episode3 >>22
episode4 >>23
episode5 >>24
episode6 >>25
episode7 >>26
episode8 >>27

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Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.2 )
日時: 2015/12/01 06:47
名前: 逢逶 (ID: Ft4.l7ID)

episode1
title 日常

「ただいま」

「…おかえりなさい」


夫の脱ぎ捨てたジャケットをハンガーにかける。
夫、舞岡 誠は日本音楽業界を支えるレコード会社〝the SOUNDs〟二代目社長である。

「飯用意してるよな」

「はい」


八時を回っていたので私はすでに食事を済ましていた。
一人で食べる夕飯は味気なかった。


私はソファーに座って本を読む。
誠は食事をする。


いただきます、ごちそうさま、はない。
ただ時計の秒針の音が響く。


「あ、そうだ。…母さんから電話があったから」


「わかりました」

私は携帯を取って、リビングを出た。


義母に電話をかける。


「もしもし。先ほどお電話をいただいたと思うんですが」

『あぁ、織さん。あなたいつ子供ができるの?』




「すいません」


謝るしかできない。
私と誠は確かに付き合っていた。
優しい誠がとても好きだった。
でもそれは私と早く結婚するための仮面だった。
子供を早く産ませるために優しくして、私を夢中にさせて、地獄のような生活を味あわす。

『謝るんじゃなくて。早く…ね?』


「…はい」


『排卵日とか、調べて…、その日に誘うとかあるでしょ』


「…わかりました」


『それじゃあね』


「はい」



電話を切ると一気に力が抜けて行った。
その場に座り込み、必死で涙を堪えた。


これが私の日常。
逃げ出すことが出来ない、辛い毎日。

Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.3 )
日時: 2015/12/05 12:29
名前: 逢逶 (ID: rBo/LDwv)

episode2
title 暗闇

朝目覚めると、一気に体が重くなる。
これから一日が始まる。

隣で気持ち良さげに眠る誠を起こさないようにベッドを出て、朝自宅をする。

テーブルにはメモが置いてあった。
誠さんが書いたもの。
口で伝えればいいのに。…そう思ったけど私も口ではっきりと誠に何も言えない。

〝今日、契約しているグループと飲み会がある。〟


飲み会か…。

愛されていない妻は肩身が狭い。


朝食を作って、誠を起こす時間になった。


「誠、起きてください」

軽く肩を叩くと、誠は目をこすりながら起き上がった。


「おはよう」


「おはようございます」



久々に二人で朝食を食べる。
結婚してもう、三年。
距離は離れて行くばかり。


「今日の飲み会は何時ですか」

「12時には家を出よう」


「出勤しないんですか」

「今日は休みだ」


「…わかりました」



結局、会話はそれだけだった。



掃除や洗濯をして、あっという間に12時になった。
高級車に乗って、家を出る。


最近、助手席に乗ることに違和感を感じている。
子供を早く作れない私が、誠の隣にいていいのだろうか。



「織」


「はい」


「今日は失礼のないように。俺の後ろにいるだけでいい」


「…はい」

隣ではなく、後ろ。
何気ない一言がいちいち辛い。



また暗闇が広がる。

Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.4 )
日時: 2015/12/08 14:27
名前: 逢逶 (ID: lQjP23yG)

episode3
title 飲み会


飲み会、と言っても居酒屋なんかではなく、セキュリティーのしっかりしたホテルで行われる。





ホテルマンに案内されて会場に入る。


会場内には見慣れた顔ぶれが揃っていた。
人気グループが勢揃いしている。

席は…、

大人気アイドルグループStreamと一緒。



誠の後ろをついて行く。
Streamは立ち上がってキラキラのアイドルスマイルで誠を迎えた。



飲み会が始まった。




私は黙っているだけ。


ブーブーブー
ポケットで携帯が鳴った。

「ちょっと出ます」

誠が頷いたのを確認して私は立ち上がる。
会場を出て、電話に出る。
義母からだろう。


「もしもし」

『私だ』

…義父だ。


「あ、お久しぶりです」

『あぁ。…ところで今日は飲み会だったな』

「はい」

『会場をわざわざホテルにしたんだ。今日、誘いなさい』

「…わかりました」



そこで電話は切られた。
私はその場に座り込み、無心で涙を流し続けた。



「織さん?」

「…」

「…どうしたんですか?!」


確かこの人は…、Streamの成瀬 海。
最年長で、私と同い年。

「とりあえず、移動しましょう?!」


私は成瀬さんに抱えられ、誰からも見えない廊下に来た。


「どうしたんですか」

私は尚も涙を流す。

「…」








「あの…、抱きしめていいですか」


この時、彼を突き放すべきだったと今は思う。

Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.5 )
日時: 2015/12/22 11:47
名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)

episode4
title 星々


私が返事する暇もなく、成瀬さんに抱きしめられた。

「泣かないでください…」


私ははっとして、突き放した。


「ごめんなさい…」


「織さん…」


「…産まなきゃ」


「何をですか…?」


「ごめんなさい…」



私は涙を拭って会場に向かった。

飲み会では、人気グループが歌を披露していた。


「どこ行っていたんだ?」


「お義父様から電話があって…」


「…そうか」



きっと誠は話している内容はわかっている。
踏み込んで来ないのは、私に対して愛情がないから。


私が戻ってから少しして成瀬海は戻ってきた。

一瞬目があって私の方から逸らした。


私は舞岡誠の妻。
飲み会で失礼がいないよう十分注意した。


「では、二次会へ向かいましょう」

四時を過ぎた頃、誠が言った。
全員立ち上がり、会場を後にした。


向かうのは同じホテルの最上階のパーティー会場。
バーのような創りである。


「これからは好きに飲んでください」


誠の声に、一斉にバーカウンターに足を運ぶ人たち。
私、凄いところにいるなぁ。



私は誠から離れて、展望デッキに向かった。
今日は夜風が涼しくて気持ちいい。


夜景を眺めていると足音が聞こえて、ふり返った。


「どうも」

そこには人気バンドKISSTILLの山田蒼とStreamの影山秀、そして成瀬さんがいた。


「こんばんは」

私は平静を装って返事した。


「お酒は飲まないんですか?」


「はい。旦那から止められているので」

「そうですか。いい旦那様ですね」


「…はい」


表面上いいえとは言えない。
必死で気持ちを押し殺す。


夜空を見上げると無数に星が散らばっていてその綺麗さに、余計に涙がこぼれそうだった。

Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.6 )
日時: 2015/12/22 11:48
名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)

episode5
title 秘密

「織さんと誠さんの馴れ初めは?」


「…職場恋愛です」

若干照れ臭くて、俯く。


「ほうほう。織さんモテたでしょ?」

山田さんの容赦のない質問に影山さんが割って入る。


「セクハラですよ、先輩」

「すいません。よくメンバーからも言われるんですよ」

山田さんが笑って言う。
メンバー同士仲良いんだね。

あ、そういえば山田さんって…。


「山田さんは…奥さんとの馴れ初めは?」

私が質問すると山田さんは顔を真っ赤にして慌てている。
その様子がどうも面白くてつい吹き出してしまった。

「あ、笑われた。ま、いっか笑 …うーん、馴れ初めねぇ。…俺が担当マネに失恋してそれで落ち込んでる時に行ったバーで働いてて。超いい子で。結構長い間通って色々話してたら好きになっててね。告白したらokもらえて、って感じかなぁ。…ちなみに担当マネってのはメンバーの伊藤の奥さん」


みんな幸せを手に入れている。
私はどうだろうか。
幸せなのだろうか。

山田さんも辛い失恋を乗り越えて、幸せを掴んでいる。
結婚してしまえば離婚するまで失恋などない。
私は逃げ出せずに、もがくこともできずに、ただ苦しんでいる。



「泣きそう…?」


あ、いけない。
ついしんみりしちゃった。


「全然、泣きそうじゃないですよ」

必死に笑顔を作った。
成瀬さんはさっきのことを気にしているようで私とは話そうとしない。


「織さんはお子さん欲しいって思ってますか?」

影山さんの質問があまりにも辛くて。
私は笑顔を向けることができなかった。


「…どうしました?」

「あ…、子供は欲しいです」


「やっぱりそうですか。誠さんと織さんのお子さんならきっと可愛いでしょうね」

「ふふ。ありがとうございます」


私がやっと笑えた時、成瀬さんの黒髪が風に揺れて…
いい香りが漂って来た。

私が視線を移すと、成瀬さんのすっと整った顔がこちらへ向いた。
澄んだ瞳に吸い込まれてしまいそうで思わず目を背けた。

あまり高くはない背丈で、だけどスタイルは良くて。

全てが魅力的に映るのは、私の弱いところを見た人だから。



「織!」


誠に呼ばた瞬間に
また暗闇に引き戻される。


「では行きましょうか」

山田さんと影山さんが前を行く。

嫌だ、行きたくない。


咄嗟に、影山さんの服の袖を掴んでいた。




戸惑う瞳が私を高ぶらせる。
成瀬さんは誰にも見られないように私の手をぎゅっと握ると、何かを私の手に忍ばせた。



誠の方に向かって行く途中、ポケットの中にそれを隠した。






私と彼の秘密が始まった。


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