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私の好きな、あいつ。 《参照1500突破感謝》
日時: 2016/08/08 14:40
名前: こん (ID: 3dpbYiWo)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=41461

皆様、こんにちは。
作者のこんと申します。
クリックしていただき、ありがとうございます。

この作品はカキコで私が初めて投稿させていただく物となります。
至らぬ点があるかとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。

コメントは大歓迎です。
荒らしやなりすましはご遠慮ください。

なお、上記のURLはこの小説のpast storyやanother storyをまとめた「私はあの時恋をして、あいつはそのときこう思う。」のものとなります。
もしよければご覧頂けると嬉しいです。

《スレッド設立日》
2016.02.07

《作者の他の作品》
・気まま自由な短編小説
・空腹キケンちゅういほう
・私はあの時恋をして、あいつはそのときこう思う。
・君を想って三万里



-prologue-

今から思い返せば。

あの時、私は恋をしていた。




誕生日が一緒で、

背の順が隣で、

あんまり勉強は得意ではなくて、

走り回るのが好きで、

太陽のように笑う、

あいつが好きだった。




小学校を卒業して6年。

中学・高校を通過して、いつの間に大学1年生。


背が伸びた。

中学の最初は小さい方だったのに、高校を卒業する頃には後ろから数えた方が早くなった。


でも、

きっと。


あいつはもっと大きくなってて、

見上げなきゃならないのかもしれない。




今、何をしているのだろう。

今、どこにいるのだろう。

今、どういう風な見た目だろう。


色々と変わっているだろう。

もしかしたら、昔の面影なんて残ってないかもしれない。




でも。


絶対に変わっていないものがある。


それは。





あいつと私の、

生まれた日。

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Re: 私の好きな、あいつ。 ( No.1 )
日時: 2016/02/07 19:40
名前: こん (ID: KVjZMmLu)

-1-


なんで香織は彼氏作んないの。


ここ3年くらい、色んな友達からそう聞かれる。


大学1年の5月。

大学生活に少し馴染んできたところで、またこの質問をされた。



「香織ってさあ、顔はキレイ目だし、スタイルは抜群だし、優しいし、その気になればすぐに出来そうなのに。」

昼休み、友達の沙耶とご飯を食べている。

「そんなことないって。私、沙耶みたいに男子とたくさん絡んでないし。」

私はあんまり男子と話すのが得意ではない。
なんというか、男子のテンポってよくわからない。

「えー、でもさ、高校の時とか告白されたりしなかった?卒業式のときとかさー。」

沙耶はここの食堂のラーメンが本当に好きだ。
今日は味噌ラーメン。
おいしそうに麺とつゆを口に運ぶ。

そんなことを考えながら私がラーメンを見ていると。

「ねえ、聞いてる?」

沙耶が私の顔を覗き込む。

「あ、あー、えーと。」
「私のラーメンがおいしそうに見えるのはわかるけど、ちゃんと聞いてよね。」
「…ごめん。」

沙耶は笑って、もう一度同じ質問をした。

「高校の卒業式とか告白されたりしなかった?」
「卒業式?…ああ。」

私がすぐに否定しなかったので、沙耶は目をキラキラさせて身を乗り出した。

「されたの?え、どういう人だったの?なんでオッケーしなかったの?」

本当に彼女はこの手の話が好きである。

「されてないよ。」
「え?」
「されそうになったから逃げたの。」
「はああああ?」

意味わからなーい、と言って沙耶は椅子の背もたれに寄りかかる。

「どんな状況だったの。」
「教室に忘れ物取りに戻ったら、外から『告ってくる!』って声がして。男子が1人入ってきたの。」
「ほうほう。」
「で、私の方に近づいて声かけてきたから、急いでるって言って逃げた。」
「ええええええ。」

絶対に告白されるやつじゃんよ、それー、と言って私の方にまた身を乗り出す。

「その人の写真ないの?」
「写真?…あー、クラス写真に写ってると思う。」
「みして!」

スマートフォンで高3のクラス写真を出し、その人のところをズームする。

「この人。」

本当は勝手に人の写真を見せていいものではないが、まあいいことにした。

「うわあ!ちょーイケメンじゃんよー!」

沙耶は興奮して箸を落としてしまった。

「あ。」

私は笑ってスマートフォンの電源を切る。

「皆んなはかっこいいって言ってたけど。私はあんまりぴんとこない。」

沙耶は箸を拾ってから私の顔を真剣に見る。

「誰がどう見たってイケメンだよ。かっこいいよ、その人。」
「ふうん。」

私が気の抜けた返事をすると、沙耶はやれやれ、という感じでため息をついた。
そして思いついたように私に言ってきた。


「今日の合コン、香織もおいでよ。」

Re: 私の好きな、あいつ。 ( No.2 )
日時: 2016/02/26 22:29
名前: こん (ID: XURzUbRL)

-2-

うちの学部は女子部と男子部に分かれている。

だから出会いを求めてる人たちは、女子部と男子部の間で合コンをする。

今日の合コンも、同じ学年の男子部とのものだった。


「なんかサークル入ってんの?」

自己紹介を終えた後、とりあえず男女交互に座った。

男子5人、女子5人。
カラオケボックスに収まっている。

主催者である由乃はすごい面喰いで、今日の合コン相手は選りすぐりのイケメン達らしい。

私は1番端に座っている。

左隣の男子が私に話しかけてきた。

「入ってないよ。…あー、ええと。名前もっかい聞いていい?」

背が高くて、笑顔が優しい人だった。

「大木直斗。たしか須藤香織ちゃんだよね?合ってる?」
「合ってる。…ごめんね、名前覚えるの遅くて。」

うそ。

自己紹介、全然聞いてなかった。

合コンなんて慣れてない私は、沙耶の横で固まっていた。

「大木君はサークル入ってるの?」
「男子バスケ部なんだ。」
「へえー。」

なんかイメージにぴったりだ。

「マネージャーがさあ、全然足りてないんだ。」
「そうなの?」
「そう。男子1人、女子1人。」
「男子?」

私が首をかしげると、大木君は後ろ頭をポリポリ掻いた。

「あー、男子っていうと怒られるんだった。」
「?」
「おかまなんだ。」
「ああー。」
「でもさ、はっきり言って、女子マネージャーよりも性格が可愛い。」
「へえー。そうなんだ。会ってみたいなー。」

そう言ってジュースを口にする。

慣れないところにいるせいか、ドリンクバーで持ってきたばかりのはずのジュースが、もう底をついてしまった。

「香織ちゃんはうちのマネージャーになる気ない?」
「ごめんね。家遠いからサークルは入らないことにしてるんだ。」
「そっかー。じゃあ試合とか観に来てよ。マネージャー紹介したげる。」
「ありがとう。」

なんだか話しやすい人だな、と思った。

「ジュース取ってくる。」と言って立ち上がると、大木君も一緒について来た。



「うーん。」
「どうしたの。」
「アイスコーヒーか、アイスティーか。」

氷を入れたグラスを持って悩んでいると、大木君が笑う。

「そんなに迷うものなの?俺がどっちか選んだげようか?」
「うん。」
「じゃ、アイスコーヒー。」
「分かった。」

コーヒーのボタンを押す。

少し入れ過ぎた氷に当たって、コーヒーが横に飛んでしまった。

「あっ。」

ボタンから手を離して横を見る。
氷をグラスに入れている、同い年くらいの男の子がいた。

「す、すみませんっ!」

謝ると、その男の子はちょっと頭を下げた。

「いや、大丈夫です。」
「いや、でも…。服、シミになったりとか…。」

男の子の着ていた、黄色のパーカーを見る。

「本当に、大丈夫だから。」

顔を上げると、そこで初めて目が合った。

「…。本当にすみませんでした。」

もう1度頭を下げてから、6分目くらいまでしか入っていないグラスを持って大木君と一緒に部屋に戻った。


「まあ、ジュース入れる時って結構跳ねるよね。」

大木君は歩きながらそう言った。


私はジュースが跳ねてしまったことよりも、あの男の子が気になっていた。




あの人、どこかで見たことがある気がする。

どこだろう。

思い出せない。



でも、



なんだかすごく懐かしく感じるのはなんでだろう。

Re: 私の好きな、あいつ。 ( No.3 )
日時: 2016/02/10 15:50
名前: こん (ID: II6slNHe)

-3-

目が合った瞬間に。


心臓が脈打ち、

血液が身体中を巡り、

何か衝撃を感じて、


すぐに目を逸らしてしまった。


もう少しきちんと顔を見ればよかった。


後1秒。


もう後1秒だけでいいから、

目を逸らさなければ良かったのに。





「じゃあねー!」
「バイバイ!」
「また大学でー!」

合コンは和気あいあいとした感じで4時間が過ぎ、駅で解散となった。

今回のメンバーはみんな意気投合し、気がついたらグループチャットが立ち上がり、またこのメンバーで遊ぼう、ということになった。

合コン、というよりも、いつメンで遊んでいる感じだった。


その駅には2つの電車が通っていて、まずはそこで6人と別れた。
そちらには今日、私が最も仲良くなった大木君がいた。

「じゃあね。今度マネージャーさん、紹介してね。」
「うん。オッケー。チャットするね。」
「うん。」
「じゃ、また。」

手を振って別れた。

良い友達になれそうだな、と思った。


その後改札口を抜けたところで方面の違う2人と別れ、沙耶と2人で同じ電車に乗った。

「なんか今日のさあ、合コンって感じじゃなかったね。なんていうかー、うん、いつメンで遊んだー!って感じ。」
「あはは。」

私がさっき思った事だ。

合コン3度目の沙耶が言うのだから、本当だろう。

「今日のメンバーは、今後またつるみそうだよね。」
「ねー。」

そんなことを話している内に、沙耶の乗り換え駅に着いた。

「じゃあね、沙耶。また月曜日。今日は誘ってくれてありがとう。楽しかった。」
「うん、また誘うね。香織に彼氏が出来るまで。」

笑って手を振る。

「バイバイ。」
「バイバイ。」

沙耶が電車を降りた。


私も3つ先の駅で乗り換えだ。

そこで乗り換えて終点まで行く。


遠いな。


大学の近くで一人暮らししたいが、親が許してくれなかった。



乗り換えの駅で降りる。

そこそこの数の人が一斉にエスカレーターに向かう。

私は空いている階段を選んでそちらへ歩いて行った。

階段を上り出す。

自分の体が重いことに気付く。

意外と疲れてるなぁ、自分、と思いながら上の方に顔を上げた。

すると。

階段の上の方にいる、黄色のパーカーが目に飛び込んできた。



きいろのぱーかー?



それを身につけた男の子はもう階段を上りきってしまった。



あ、待って。



黄色のパーカーを着ている人なんてそういない。

私は衝動的に階段を駆け上がり、改札口を抜け、次に乗る電車の改札口の方へ走り出していた。

黄色のパーカーを追いかけて。


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