コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- TRUMP
- 日時: 2016/03/20 16:00
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
彼女は、唐突に私の目の前に現れた。
「よし決めた!君を魔法少女として歓迎するっ!」
...魔法少女なんて幻想が、現実になりました。
***
初めましての方は初めまして。
そうでない方も一応初めまして←
鈴と申します。
今回はファンタジーものになっております。
ただ、何しろ書いたことがないので拙いものになるかと思います。それでも最後までお付き合いいただけたら幸いです。
それでは。
- Re: TRUMP ( No.21 )
- 日時: 2016/04/29 20:46
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
変な人だ、とは思ったけど、それ以上何も追求せずについていく。
そして数分後。
「...ついたよ」
何故か、再び震え声でリーナ先輩は告げた。
【魔法学園】オリエンティア・ザーブ・アッセンブリ—。
もともとザーブと言う名の神様が造ったらしい。
「ここが魔法学校だ...はぁぁぁ...」
「せ、先輩大丈夫なんですか...?」
「...大丈夫、大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫だいじょ...う、ぶ」
「吐きかけてますよね!?ていうかデジャヴ!」
ついさっきも見た光景を再び再生しつつ、リーナ先輩は魔法学校を睨み付ける。
「言っとくけど...あたし、ここにはいい思い出が無いんだよ」
「そんな感じがします」
「だろうね。あと、ここには、その...あんまり、あたしに関して、良い噂も流れてなくて」
「...?」
「えっと、まあ...とにかく...どんな目を向けられても、耐えて」
「はあ...はい」
よくわからない説明を受け、学校内へと足を踏み入れた。
***
さっきの説明の意味がよくわかった。
『...あの人さ、もしかして...』
『え、マジ?...うわ...』
そんな声は、すべてリーナ先輩に向けられていた。
今わたしたちは廊下を歩いて校長室に向かっていたが、行きかう女の子———同じような恰好をした魔法少女たちの視線は軒並みこちらに集められ、一度驚いたような顔をしてはひそひそと何かを呟きあっている。
『あの横にいる子...新人...』
『...災難だね...』
その隣にいるわたしにも、そんな声が向けられた。
何でそんな風に言われるかはわからない。わからないけど...。
わかるのは———
『可哀想だね』
「—————」
わたしに何か言葉が向けられるたび、リーナ先輩の顔がまた青白くなっていっていること。
冷や汗のような、脂汗のような、それとも涙のような、なにかわからない液体がだくだくとリーナ先輩の顔や首をつたって流れ落ちていること。
なるべく聞かせまいとしているのだろうけど、それでも荒い息をしていることがわかるほど呼吸が速いこと。
つまり、リーナ先輩が、また何か苦しんでいるということ。
「...せ、先輩」
「.........?」
もはや何も言わずに、首をぎりぎりと不自然に回して顔だけこちらに向ける先輩。
「校長室って、そこの角を曲がって真っ直ぐ行けばあるんですよね」
「.........」
無言で頷く先輩。
...よし。
「わかりました」
「!!?」
びっくりして目を剥く先輩にも構わず、その手首を掴んで走り出した。
- Re: TRUMP ( No.22 )
- 日時: 2016/05/14 21:48
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
数秒後。
「バカなの?」
角を曲がって真っ直ぐ行った先の部屋で、リーナ先輩に睨まれた。
部屋の中は無人だ。校長室というプレートが確かにかかっていたので、場所は間違いない。校長先生はいないみたいだけど、いつ何時もいるってわけじゃないだろうし、まあ問題ない。
問題は。
「廊下を全力疾走してっ!生徒にも何人かぶつかったし!あろうことか校長室に駆け込んで!超大きい音で扉閉めたりっ、すんな!」
小声でありながら鬼気迫る表情で怒鳴る先輩。目は合ってないものの、先輩がなにかすごく、すごく...焦っている?のは、わかった。
「えと...でも、その、先輩...辛そう、でした」
「そりゃそうだ...あたしにここに行けって命令したラヴ様マジ鬼畜」
ぶちぶちとラヴ様への文句を言い始めたリーナ先輩に、つっかえながら、おずおずと理由を説明する。
「だから。その、早めに、人の目につかないとこに、って」
「わかってる」
「え?」
わかってるなら、どうして怒ったり?
なんて安っぽい質問を先輩は斬る。
「わかってるよ...けどね、駄目だ...そんなことすんな...」
「え、その...」
「感謝はするよ、けどもう駄目だ」
「...はい」
余計なことするな。
そう言われ、何も言えずに押し黙ってしまった。
リーナ先輩も顔を背け、明後日の方向を向いた。
濃密な沈黙が落ちる、と言えば少しは綺麗に聞こえるのかな、と変なことを考えてしまう。気まずいにもほどがある静寂に、どうしたものかと迷っていると、
「誰かしらぁあ、勝手に校長室入ったのは?いや全然大歓迎だけどね、新入りちゃんかしら!?『先輩』には誰がなったのかしら、楽しみね———あ」
バンっと扉を開け放って突入してくる、ないすばでぃな女性。ラヴ様にも勝るほどのスイカッp...いや、なんというか豊満な胸部...気まずい沈黙が一瞬にして間の抜けた沈黙に変わるくらいにはすごい身体つきの女の人が入ってきた。
「うわぁああ!?...り、リーナ...かしら」
「———はい」
「久しぶりね、ていうか、よく来れたわね...?」
「...ええ」
そしてそんな女の人は、リーナさんを見て無駄に大きいリアクションで驚き、おずおずと話しかけた。
「で?その子の先輩に、なったの?」
「まあ、はい」
「先輩になったのね...いつから?」
「今日です」
「あらまあ」
「...あらまあ、って」
「ラヴも大したものね、リーナに任せるとは...まあ、大丈夫よ、リーナなら」
「駄目ですできませんほんとは今にも放り出したい」
「相変わらずね...」
その人はため息をつき、そしてこっちに向き直った。
- Re: TRUMP ( No.23 )
- 日時: 2016/06/27 22:16
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「で、貴女は...名前は?」
「あ...えと、かしわg「アリス」...あっ」
危うく自分の本名を言ってしまうところだった。あれだけ言うなと、本名を晒すのはタブーだと言われたのに。リーナ先輩が焦ったように訂正してくれなければ、今頃...今頃、どうなっていたか、わからない。
ナイスバディな女性は、そんなわたしたちの様子を見て「ふふふ」と笑った。
「アリス、か...まあ、私様にかかれば本名を見抜くのは容易いけれどね、そういう問題じゃないわよね」
「そうなんですか?」
「...あら、ラヴに聞かなかったのかしら?」
「え...はい」
そういえば、詳しい説明は何もされなかった。何で本名を言っちゃいけないのかも教えてもらっていない。
というか、この人、自分のこと「わたしさま」って言うのか...ていうか本名をすぐ見抜けるって、この人何者...?
なんて疑問をよそに、女性は喋り続ける。そういえば名前も教えてもらってない。
「じゃあ教えてあげるわ。...リーナ」
「はい?」
「本名、借りるわね」
「はいぃ!?」
軽々とそんなことを言い出した。先輩の顔がサッと蒼白になる。
「その様子だと、まだ本名教えてないんでしょう?先輩後輩の間柄になったら、普通は真っ先に教えるのにね」
「それはっ...あ、アリスがドジっぽかったから、やめたんですっ」
「.........」
軽く凹んだ。
それを見透かしたかのように、女性はまたふふふっと笑って言った。
「そんなこと言ったら落ち込んじゃうじゃない、もっと考えなさい?じゃあ、まあ、貴女の本名は勘弁してあげるわ。代わりに、本名を晒しちゃいけない理由、ちゃんと教えてあげなさい」
「...はい」
先輩は負けたようにうなだれ、女性をキッと一睨みしてからわたしの方を見ずに、女性に確認するように、しかしわたしに向けて喋り出した。
「...本名には、自分の、現実世界での情報と感情が詰まってる。自分の情報を盗まれるのも大概だけど、感情を操作されるのはもっとマズいから...自分の本名を知られることは、自分の現実での情報と感情を知られるに等しいから、言っちゃダメ。ここでは魔法が使えるから、本名から情報を解析して把握するなんて、Lv.2以上には容易いこと...こんな感じだ」
「んー、まあ合格点はあげようかしら」
検定するかのようにリーナ先輩の説明を聞いていた女性は、微妙な顔でそう言った。
本名...柏木 未帆...。
- Re: TRUMP ( No.24 )
- 日時: 2016/07/14 22:49
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
自分の名前だ。
ナイスバディな女性は続ける。
「わかりやすく説明しなおすわ。要するに、個人情報の宝庫なのよ、本名は。ただし、現実世界での、ね。本名にはそれほど大きな意味があるのよ...さっきリーナも言ったけどね、Lv.2以上の魔法少女になると、解析魔法を使って貴女のことを何もかも探り当てられるわ」
それはがまずいことだというのは、わたしでも理解できた。つまり、ネットに自分の家の住所と携帯の番号が載るようなものだろう。
女性はまだ続ける。
「Lv.5とかの、そうね、リーナレベルになるとその情報を操作もできる。...操作っていうのは、難しいから、説明は簡単にするけど...つまり、書き換えられるってことよ。気が付いたら現実世界での記憶が無いとかいうことになりたくなければ、本名は迂闊に晒したりしないことね」
最後の一言はにこっと笑いながら言ってくれたが、本気で念押しするような厳しい口調で、まったく笑えなかった。
そして、女性は一息つき、仕切り直すように———今度は本当ににっこり笑って言う。
「そういえば自己紹介がまだよね。私様の名前は、ザヴィアよ。この学園の創始者、ザーブは私様の古い名前だから、そろそろ学園の名前も変えたいのだけれど...ま、面倒だし、保留のままでも構わないと思ってるわ」
『オリエンティア・ザーブ・アッセンブリ—』、と学園の名前は聞いていたけど、もしかしたら『オリエンティア・ザヴィア・アッセンブリ—』になるかもしれないという、結構重大なことを聞いた気がした。
...が、リーナ先輩が「それだいぶ前から言ってますよね...」と嘆息していたから、そう重大な話でもないっぽい。
「私様たち神の名前は、神としての位が上がると変わるのよ。より長い名前にすることで、更に力や権威が増すのね。メリアにはもう会ったかしら?」
「は、はい」
「まあ、魔法少女になったんだから当たり前ね。チア、ラヴ、ウィズ、メリアの順に名前の位が上がってるの、わかるかしら?ちなみに大文字は小文字より、濁点や破裂音は普通のものより力を持つわ」
「あ...なるほど」
なんか、ラヴ様よりもこの女性...改めザヴィア様(何気に神様だった)から教わることの方が多い気がする。
「だから私様は、この前ザーブからザヴィアに改名したのよ。5年前とかだったかしら」
さらっと5年の月日を「この前」呼ばわりしたのはさておき、大体のことは納得した。
「で...まあ、ここの学園のことを説明しなきゃならないわね。ていうかここまでがなかなか長かったわね、いや、面白いからいいのよ!?」
「はっはいっ!?」
いきなりザヴィア様が叫んだから勢い余ってわたしまで叫んでしまった。...なんか情緒不安定な神様だった。
- Re: TRUMP ( No.25 )
- 日時: 2016/12/10 12:39
- 名前: 鈴 (ID: Zodo8Gk0)
「この学園は、一言で言って『育成所』ね」
ぴんと人差し指を立てて話し出すザヴィア様。
「ここには、Lv.1〜2までの魔法少女がいるわ。学年は1〜4まで。魔法少女たちがLv.3になるまでの間、ここで面倒を見るのよ。…いえ、魔法少女たちをLv.3まで育て上げるって言った方がいいかしら?」
「は、はい」
「それで…ええと、貴女のマジックカードを見せてちょうだい」
「へ?は、はい…」
そういえばそんなもの渡されたっけ、と、ごそごそ服のポケットをあさると、弱々しくも不思議な光を放つカードが見当たった。
—————
アリス
Lv.1 HP:10 MP:10
—————
「まあ、新入りちゃんは決まってこうよね。じゃあリーナ、貴女のカードを見せてちょうだい」
「…はい」
—————
リーナ
Lv.5 HP:310 MP:220
【TRUMP】アリシア・ニーナ・リーナ
詠唱式:ニーナと結びし約束の力は難事にも勝り汝に勝る
友のために走れ 友のために飛べ 友のために砕け散る覚悟で挑め
SPスキル:弓連射
発動条件は能力特化具の使用、制限は威力と稼働時間
—————
「さすがはLv.5…といったところかしら。まあ、ちょぉっとMPが足りないとは思うけど…それはリーナ、貴女が1番わかってるわよね、ええ。…さて、アリス」
「はい」
「ここ。これ、【TRUMP】。今のアリスには無いものよ」
「は、はい、そうですね」
「この【TRUMP】は、自分が窮地に陥ったときに発動される、『必殺技』なの。これはLv.1の魔法少女は持ってないわ。【TRUMP】が発動して初めて、Lv.2になるのよ」
「へぇ…」
「自分の中にある苦境を乗り越えて、ひとつ成長することで、自分の強みを手に入れるのね。それから、これ。SPスキル…スペシャルスキル」
そこまで説明して、ザヴィア様はリーナ先輩を振り返った。
「リーナ、やってみて」
「はい?」
「だから、やってみて!遠慮は要らないわ!」
「え、いや、え…は、はい、わかりました」
そう言うと、リーナ先輩はサッと手を横にやり、空中にかざして、なにやら唱え始めた。…魔法だろうか?
「スィスタグァラ、アーチェ、ピアラ」
リーナ先輩の手に光が集まり始め、やがて弓と矢の形をつくり、実体化した。それをリーナ先輩はガシッと握り、少し周囲を見渡してから…校長室内に一列に並べて飾ってある、オブジェやらトロフィーやら賞状やらの、一番端っこにあった水晶らしきものに照準をあてて、構えた。
「レイ」
言うが早いか、構えた弓から連続して放たれる矢。…速い。ビュンビュンいってる。片っ端から破壊していく。ガシャンガシャン凄い音がしてる。矢継ぎ早ってこういうことなのかな…とかアホな事思った。
《ガシャン!グシャッドゴォッ、バリンパリンドガッドシャン、ガッシャァァン!》
「……………」
凄い音立てながら次々に破壊していくのに、表情一つ変えない先輩。なんか怖い。
「さて見た通り、リーナのスキルは、自分の弓を呼び出して矢を連射するものよ。威力と稼働時間は注ぎ込む魔力によって左右されるから…あ、もう止まったわね」
「そんなに魔力使うわけにはいきませんし」
「だそうよ」
「な、なるほど」
そうやって説明し終えたザヴィア様。ていうかこの破壊された物品どうすんのかな…と思ったら、「リフィア」と唱えて、瞬く間に修復してしまった。なんだか魔法が使われる瞬間を見るのに慣れてしまった。…非日常すぎるのに、なんか馴染んでしまう。
「さて。このSPスキルが発動するとLv.3になるのよ。そうしたら、ここは卒業」
「なるほど…」
「そこで、新たに魔法少女になった貴女は、新入生。そこで私様から贈り物よ」
「贈り物?」
ザヴィア様は、「スィスタグァラ、ユンフォ、ピアラ」と唱えて、手元に何かを呼び出した。
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