コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。
- 日時: 2016/04/03 00:00
- 名前: スプリング (ID: P.nd5.WZ)
初めまして、スプリングと申します。
これから長編小説を執筆させていただきます。ジャンルは恋愛。高校生が繰り広げる物語で、王道の青春を目指しています。
はっきり言って筆者には文才がありませんので、それでも読んでくださるという方は心構えのほどよろしくお願いします。
▼注意事項
・本作は、初心者が書いた駄作です。
・更新は亀さんペースです。
・所々、誤字脱字があります。
・感想やアドバイスは大歓迎です。
・荒らしやなりすましはお断りです。
▼目次
プロローグ >>1
#1 >>5 >>8-15 >>18-26
▼お客様
こん様
てるてる522様
あかり様
では、スタートです。
- Re: そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。 ( No.22 )
- 日時: 2016/03/24 20:35
- 名前: スプリング (ID: P.nd5.WZ)
茶色なのだけれど全体的にやや黒みを帯びた色で、線のように真っすぐなストレートの、腰まで伸びた長い髪。
つり上がった眉尻と切れ長の目が凛々しく、漆黒の瞳には落ちついた大人らしさが宿っている。
入学式だからか正装で、紺色のスーツに身を包んでいた。そのスーツというのがシンプルで、それでいて地味に見えない。きっと着る人に品があるのだろう。
首元のネックレス以外に着飾ったアクセサリーはない。それがまた上品さを醸し出している。
薄い唇には薄紫色の口紅が塗られていたり、日焼けのない肌は心配になるほど白かったり、体型は驚くほどスリムだったり……、笹木先生からは生気を感じられない。
ただ、目鼻立ちは整っているし、背も高めだし、先ほども述べたけれどスリムだし、先生は言うところの美人なのだと思う。きっと、平凡な男子生徒や男性教師は、一目見ただけでハートを射抜かれる。
そんな先生は、見た目からも感取できるけれど、怖い。
まだ若いように見えるのに、貫禄がある。そこらの男性体育教師よりも圧倒的な威厳に満ちているかもしれない。
この先生がこれから一年担任なんて……。
──私、大丈夫だろうか。
先ほどまで、桜の木や澪やショーちゃんに出会ったおかげで安心できていたけれど、今また急激に不安になった。先生が大丈夫かどうかというわけじゃなくて、厳しそうな先生に私ついていけるかどうかと思ったのだ。
今までにない困難に出くわして、私はその困難を乗り越えられるだろうか。それ以前に、真っ正面から立ち向かえるだろうか。
こんな、そこそこで生きてきた私に……。
前を見据えて突っ走ることなんてできるだろうか。
「では、皆さんがこれから充実した高校生活を送るために重要な、今後の話をします。まず……」
挨拶して早々、授業や新しい教科書についてなどいろいろ説明を始めた先生を見て不安が募り、胸が塞がる。
「はあ……」
憧れの高校一年生になった今日このとき、これ以上ない喜びを感じる反面、私はまだ見ぬ壁に苦しみ悩まされるのだった。
- Re: そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。 ( No.23 )
- 日時: 2016/03/24 22:28
- 名前: スプリング (ID: P.nd5.WZ)
隣に桜が植えられている、校門の前。
在校生、桜とともに記念写真を撮る入学生やその保護者など、大勢の人がごった返すこの場所で、私は澪と談笑していた。というのも、澪は入学式に一緒に来た両親と入学式後に体育館で別れて、ここで待ち合わせているらしい。
私はそんな澪につかまって、暇つぶしの餌になっていた。
「人、多いねー」
「入学式だからね」
あまりの人混みに、事務員や先生方が校舎を出て声を張り上げている。
車や人を誘導したり、警備したり、と実に大変そうだ。
私は、澪の他人事みたいなのほほんとしたセリフに、鋭くツッコミを入れる。
「おばさんたち、身動きできないんじゃね?」
そしてなぜか、この場にショーちゃんがいる。いや、ショーちゃんも帰らなければいけないわけだし、“なぜか”というのはおかしいのかもしれない。
けれど、帰るのならさっさと帰ればいい。いつまでもここに、しかも私たちがいるところにいる必要はないのではないか。
おまけに、ちゃっかりこちらの会話に加わっている。
「ショーちゃんなに? なんか用? さっきからなんでいるの?」
思わず、私は切り込んだ。
我慢の限界というか、スルーすることができなかったのだ。
「んだよ、悪いかよ」
「ごめんねー、葉子。実はショーちゃん、うちと合同で来たの。多分ショーちゃんママたちもうちの両親と一緒だから、待たなきゃなんだよねー」
お昼もこのまま二家族合同で食べに行くはずだからさー、と頭の後ろを掻いて澪は言う。
澪とショーちゃんは家が近所同士で、ご両親も仲がいいのだという。
「ショーちゃんといるの、葉子も嫌だと思うけど仕方ないんだー。ほんとごめんねー」
両手を合わせて、すまなさそうに謝る澪。
それを横目で睨みつけるショーちゃん。
「嫌だと?」
それなら俺だって心底嫌だね、と吐き捨ててそっぽを向く。
「──それにしても遅いなぁ」
見事なまでにショーちゃんを無視して話題を変えた澪は、目を凝らしてきょろきょろと辺りを見回す。
桜吹雪の舞う中長い時間親を待っている澪は、待ち合わせしたのに〜と口を尖らせていた。
- Re: そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。 ( No.24 )
- 日時: 2016/03/28 22:28
- 名前: スプリング (ID: P.nd5.WZ)
「あ、そだ! 写真撮らない?」
私は、制服のポケットにケータイ電話を入れていたことを思い出して言った。
今ならちょうど時間もあるし、場所も校門と桜の前というちょうどいいスポットだし、入学の記念写真を撮るにはベストなタイミングだ。
澪と二人、友達になった記念としてカメラに収めるのも悪くない。
「二人の初ツーショットかー、いいね!」
撮ろ撮ろ! と、ケータイを撮影画面にするべく操作している私を急かす澪。
目だけはケータイに集中しつつ、意識を澪に向けて「まあまあ、そう焦らないで」となだめる。
「オッケー、準備できたよ」
カメラのレンズを内側にして、画面を見ながら二人がきれいに入るように調整する。
澪は、ケータイを持っている私の、ケータイを持っていないもう片方の腕を自分の腕と絡ませた。そして、私が持つケータイに向かってピースをする。
そのあまりの密着度に、やっぱり澪ってフレンドリー……と実感させられる。
私だからいいものの、これが人見知りな人を相手にしたらどうなるだろう。きっと澪は一発で距離を置かれる。
「……じゃあいくよ」
かわいそうだけれど自業自得だ。
私はそんな様子を想像して、すぐに振り払った。
自分から言い出した上に自分のケータイを使っているわけで、どう考えても私がこのケータイカメラのシャッターボタンを押さなければならないのだ。
澪に対して少しばかり失礼でもあるこんな想像、している場合ではない。
「はいっ、チー……」
「ちょっと待って!」
シャッターを切ろうとしたら、その直前で澪に止められた。
私はぎくっとして、ボタンに触れる寸前の指先をとどめる。
「ねえ、龍がいるよ。龍とも今日友達になったんだし、一緒に写真撮ろうって誘おうよ!」
私の制服を引っ張って、人波に紛れる龍の頭を見つけて指さす澪。
彼を見つけることができたのは、きっとあの特徴的な髪のせいだろう。
他と際立って目立つアッシュグレーが、どんなに小さくても、どんなにわずかでも、どんなに掻き消されそうでも、すぐに目につく。
特に探していたわけでもないのに見つけられたのは、澪の視力のよさではない。その髪のおかげなのだ。
その髪が、徐々にこちらへ近づいてくる。
それは意識的なものではなくて、自然な流れのようだった。
完全に人に流されてるじゃん……。
そう見て取れたので、私は一人苦笑する。
澪の方はどうやら、なにも気がついていないようだった。ただひたむきに、久倉くんと記念写真を撮ろうと意気込んでいた。
「早く来ないかなー? スリーショットなのにっ」
彼の意思は関係なく自分の希望だけで、彼と写真を撮ることは決まっているようだ。
澪の瞳は、やる気で熱く燃えていた。
- Re: そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。 ( No.25 )
- 日時: 2016/03/29 21:14
- 名前: スプリング (ID: P.nd5.WZ)
「あっ、来た来た!」
澪は大きな声で嬉しそうに言う。
そうやってはしゃぐ澪に、訝しげな視線を向ける人々。
それでもなりふり構わず、澪は私を見て今にも飛び跳ねそうなほど歓声を上げた。
「早く撮りたいねっ!」
楽しそうでなにより……。
私は若干白けた気分で、自分とは正反対のハイテンションな澪の横顔を眺めた。
澪のおかげで、無関係であるはずの私まで注目を浴びてしまっている。
一方、最も澪からの被害を被っているであろう久倉くんは、もう私たちの目の前まで来ていた。
いや、“来ていた”ではなく“流されていた”というのが、最適な言葉だろう。
立て込む人の流れに身を任せ、すっかり波と化していた。
「龍、こっち!」
久倉くんがちょうど私たちの目の前を通りすぎようとしたので、澪は久倉くんの腕を掴んでこちらまで引っ張ってきた。
問題の久倉くんはなんの抵抗もせず、ただただ引っ張られて連れてこられた。
その顔は無表情だし、なにを思っているのか分からない。
いや、彼のことだ。なにも思っていないのかもしれない。
まるで感情のない道具のようだ。
「さ、葉子映してー」
右手で久倉くんの二の腕を握り、左手を私の肩に置いた澪は、さも当たり前のように言う。
ちゃんと久倉くんにこれからなにをするのか説明して、許可を取った方がいいと思うんだけれど……、と私は思ったが、彼の無抵抗な様子を目にして、口にするのは諦めた。
彼は別にどうでもいいと思っているのだろうし、澪だって簡単に引き下がるはずがない。
私も、なるがままにするよ……。
一人密かに息をついて、私は明るい声で呼びかけた。
「じゃあ撮るよー」
私は自分の手に握りしめていたケータイ電話を高く持ち上げて、シャッターボタンに指先を運んだ。
「はい、チーズ!──」
──パシャ。
小さくシャッター音がして、一枚の写真がケータイに保存された。
「撮れた!」
澪が写真の確認を急かし、私は大急ぎで保存された写真を開いた。
それを澪は、横から覗き込む。
──刹那、写真を確認した澪の表情が凍りついた。
- Re: そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。 ( No.26 )
- 日時: 2016/04/03 00:00
- 名前: スプリング (ID: P.nd5.WZ)
「み、澪……? だいじょぶ……?」
はたから見ても分かるほど一瞬にして硬直しきった澪を真正面から目にして、私は心配になった。だから、おずおずだけれど声をかけた。
それでも無反応だったので、彼女の肩にそっと触れてみた。万が一驚かせてはいけないので、ゆっくりと優しく叩く。
「──!」
すると、我に返るように澪は体をぴくんと震わせた。一度だけ、小さく。
実際、澪は我に返った。この世に戻ってきてくれた。
先ほどの反応は、その合図だったようだ。
「……えっと、なぁに?」
自分の肩に置かれた私の手のひらを見て、現在のこの状況が理解できなかった澪は、ぽりぽりと頬を掻いて私に問うた。
その質問を聞いて、私は呆れる。
「何? はこっちのセリフだよ」
私は、片手のケータイを自分の顔の横に持ってきて澪に見せ、今が大事な記念写真撮影中であることを伝える。
さらに澪の隣で退屈している久倉くんを指さし、人を待たせたいることまで伝えた。
高校生にしては幼げな彼女に、きちんと伝わっただろうか。
「……あー!」
そういえば確認してる途中だった! と澪は頭の後ろを掻く。そして、ごめんねー……と謝る。
ちゃんと謝罪をするので、叱る気にも憎む気にもなれない。
澪は実に得な人物だ。
「龍もごめーん」
すまし顔の久倉くんにも謝る、律儀な澪。
素直で心優しい子だ。
「たまにこーなるんだよ、こいつ」
急に男物の声がしたので振り返ると……。いつの間にか私たちのすぐ後ろに立っていたショーちゃん。
澪の性質について、ショーちゃんは私に教えてくれているようだ。
「脳ミソが幼稚園児止まりだから、幼稚園児が理解できないような内容は、こいつの頭が吸収しないんだよ。意思と関係なく体が勝手に拒絶する、みたいな。昔からの病だから、持病だな」
そうなんだ……。
なんか気の毒。心はいい子なのに、思うように頭が動いてくれないなんて……。
病名とか治療法とか、分かっていないのだろうか。
きっとこの病は、正式な病気ではない。だから、どうすれば治るのか、そもそも本当に治るのか、分からない。不治の病でなければいいけれど……。
「──ってそーだ、ショーちゃん!」
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