コメディ・ライト小説(新)
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- 死神と、少女と。
- 日時: 2019/07/26 01:47
- 名前: 赤ずきん (ID: 1CRawldg)
あたたかい。
赤い。
あたたかい。
血がとまらない、血がとまらない。
とまらない血が、私の手を染めていく。
睫の先についた血が、月までも赤く見せていた。
赤く染まった月。
「ぅああぁああぁああぁああああぅぁああああぁぁぁぁああ!!!!!!!!!」
誰かの泣き叫ぶ声がする。
痛い、痛い。
「愛してるよ」
- Re: 死神と、少女と。 ( No.24 )
- 日時: 2019/08/26 15:39
- 名前: 赤ずきん (ID: 4xvA3DEa)
「…遅い…」
リビングにつくと、ソファに寝そべりキッチンの方を指さした塁がいた。
嫌な予感がして、キッチンの方に視線を移す。
「ここ…キッチンですよ、ね…?」
食器棚のお皿はほとんど床に落ちて割れており、コンロに置いてある鍋やフライパンには黒い液体がぐつぐつと煮だっていた。
シンクの中は、汚れた食器たちが盛り重ねられてあり、異臭が漂っている。
「お前が倒れたせいで晩飯、ろくなの食べれなかったじゃねーか!!」
突然怒鳴ったかと思うと、佑磨は片手でありすの両頬をつまんで自分の方へ向かせる。
「しょ、しょんなこと言われましゅても…(そ、そんなこと言われましても…)」
頬を掴まれて口がタコのようになっている為、きちんとした日本語が喋れていない。
思ったよりもすぐに解放された頬をさすり、ギロリと塁と佑磨を睨む。
ありすが怒らない優しいヒロインだと思ったら大間違いである。
「…皆さん…。私がこちらにお世話になる前の家事等はどうなさっていたのですか…。こんなに汚くして………片付けないとですね」
ありすは大きく溜息をつくと、気合を入れて袖をまくった。
これは結構時間がかかりそうだ。
「俺は寝る」
欠伸をしながらリビングから出て行こうとした塁のパーカーの帽子をありすは素早く掴んだ。
「…は…?」
「睨まれても離しませんよ。散らかしたら片付ける!これ、基本です!」
「…」
「無視されても離しません…」
すると、それまで黙っていた塁の瞳が閉じられる。
すぐにゆっくりと瞼が開かれありすを見下ろした。
見られただけなのにありすの全身に鳥肌がたつ。
「お前」
ゆっくりと迫られて後ろへ下がるが、壁で遮られてしまう。
顎を持ち上げられ、目が合う___【逃げられない】。
「俺に口答えか…」
反射的に身体が激しく震える。
「まるで、生まれたての小鹿だな」
塁は可笑しそうに口角を上げると、ありすの耳元に唇を寄せた。
「離れねえよ」
「え?」
耳元で囁かれた言葉は意外ものだった。
「…寝る」
呆気にとられているありすを背に、塁はリビングを出て行ってしまった。
- Re: 死神と、少女と。 ( No.25 )
- 日時: 2019/08/28 18:29
- 名前: ヨコ (ID: UTD1KPPl)
毎回 読ませてもらってます どんどん話がこなれてきて面白くなって更に楽しみです いやでも、最初から文章が正確なので 読んでいて気持ちの良い文でしたよね 応援しています。
- Re: 死神と、少女と。 ( No.26 )
- 日時: 2019/08/31 11:56
- 名前: tornado (ID: vmgUvrMg)
誰が本命で 誰が間男マオトコなのかまだ分からない。気になりますなー。つか品が良くて強いヒロインとか良いね~
- Re: 死神と、少女と。 ( No.27 )
- 日時: 2019/09/02 23:07
- 名前: 赤ずきん (ID: 1CRawldg)
〒_ヨコ 様
いらっしゃってくださり、とても嬉しいです^^
この度も読んでいただき、コメントもありがとうございます。
文章のみで表現するのはとても難しいですね(汗)
そのようなことを言っていただき、きちんと伝わっていることが分かりました。
ありがとうございます。
また来ていただけると嬉しいです。
読者様は赤ずきんの活力であります^^
何度もしつこいようですが、コメントありがとうございました。
_赤ずきん
〒_tornado 様
また来てくださり読んでくださったこと、とても嬉しいです。
ありがとうございます。
間男で少し、ふふ…っと微笑んでしまいました^^
大丈夫ですよ。
ありすは誰とも結婚しておりませんので、選び放題というわけです。
筆者が言うのもなんですが、羨ましいヒロインですね。
人生にはモテ期が3回来るといいますが、今まさにありすはその時期なのでしょね(違う)
後々、登場人物の過去にも触れていくので、また来てくださると嬉しいです^^
ありがとうございました。
_赤ずきん
- Re: 死神と、少女と。 ( No.28 )
- 日時: 2019/09/02 23:13
- 名前: 赤ずきん (ID: 1CRawldg)
「ふぁ…」
登校中、ありすは口元を手で隠し大きな欠伸をしていた。
ありすの目にはくっきりとパンダのような隈ができている。
昨夜のキッチンの片付けは朝の五時まで続いていたのである。
結局ありすを手伝ったのは梓だけで、梓は片付けが終わると七時まで仮眠をとっていた。
一方ありすは寝ていない。
五人分の朝食の準備やお昼のお弁当準備があったため寝ることができなかったのである。
梓は朝やお弁当の準備も手伝うと申し出たのだが、住まわせてもらっている自分が家事をするのは当たり前だからと梓を部屋に押し込み断ったのだ。
「……っいけない、いけない」
こくりこくりと何度も意識が飛びそうになるのを、自分の手の甲を抓りなんとか意識を呼び起こす。
五人分のご飯を作るのには手間と時間がかかるのだ。
ありすはゆらゆらと塁達の後ろを追う。
「ありす、大丈夫?」
心配になった梓が首を傾げありすの顔を覗き込む。
その姿は男性の姿になっても【梓ちゃん】だった時と重なり、とても可愛らしい。
「大丈夫」
眠気が酷く返答するのも怠い状況だが、ありすは笑顔を梓に向けた。
「…ちんたら歩いてんじゃねーよ、のろまっ!」
強い力で佑磨の腕がありすの肩に当たった。
その反動でありすの身体がよろめく。
「おい!佑磨!」
咄嗟に梓がありすを支えた為、顔面がコンクリートにぶつかるような大惨事は免れた。
「…」
佑磨はありすを見下ろし、学校の中へと一人で入って行ってしまった。
「わ、私何かしてしまったのでしょうか」
あんなにはっきりとした嫌悪を表に出されてしまうと、誰でも傷つくものだ。
「…ガキ」
塁は佑磨の後ろ姿を見つめ、そう呟いた。
「ありす。佑磨はいつもあんな感じだから、気にしないで?」
「………」
四人は大体いつも一緒にいる。
しかし、誰一人自分以外には無関心だ。
一人一人に越えてくるなと無言の高い壁がある。
簡単には壊れない固い壁を自分で建てている。
「まるで『独りでいい』って言っている…」
「え…」
三人の視線はありすへと向く。
ありすは佑磨の後ろ姿を見つめていた。
『寂しい』
「寂しい…」