コメディ・ライト小説(新)

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カオスヘッドな僕ら【連載終了】
日時: 2022/10/17 18:15
名前: 夢兎 (ID: gzz.lbul)
参照: www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode=view&no=18233

 「なにがどうしてこうなった…………」


 ****

 こんにちは。夢兎、またの名前をむうと言います。
 簡単なプロフィール! 高2女子、以上!

 ちょっと個性強めの妖怪幽霊たちが繰り広げる、怪異コメディです。
 怖い要素は(多分)ないので、楽しく見て下さると嬉しいです。


 おかしな仲間に翻弄されながらも成長する(かもしれない)主人公。
 そして彼らとの出会いは一体何を生むのでしょうか?
 カオスヘッドなキャラたちが繰り広げる怪異譚、始まります(いつ終わるかは分かんない!←)

 【注意】
 ●私情により未完の作品です。(ここ大事)
 ●完結小説の一覧に登録しましたが、未完です(二回目)
 ●荒らしや中傷行為はご遠慮くださいませ。
 
 【キャラクター】>>11 
 出てこないキャラもいますがお楽しみに! ちょくちょく追加予定。


 【単語紹介】>>49
 本編の中で出て来た単語や設定を、詳しくまとめたページです。
 コメディなのにやたらと用語が多い物語ですスミマセン。

 
【Special Thanks】

・美奈様>>15 りゅ様>>46 閲覧をしてくれた皆様。
 又とあるサイトでアイディア参考をさせていただいた皆様。


 【感謝】
 2021年夏☆小説大会にてコメディ・ライト版 銅賞入賞。
 感謝ぁぁぁぁぁぁ(涙)>>40にコメントを記載しました。

 【その他作品】
 ろくきせシリーズ↓
 〈鬼滅の刃 会話文短編集〉
 〈鬼滅・花子くん 短編集続編 六人の軌跡〉
 〈ろくきせ恋愛手帖〉
 
 ********************

 【目次一覧】

 一気読み>>01-
 ↑ここからすべてお読みいただけます。

 ★キャラクター別情報File★
 百木周&百木朔>>22 クコ>>25 紗明>>31 栗坂八雲>>40
 

 □第1章 リスタートする人生>>01-12
 
 第1話「僕が死んだ理由」>>01
 第2話「クコと言う名の少女」>>02>>03
 第3話「やらかしてしまったので」>>04
 第4話「栗坂八雲」>>05>>06>>07>>08
 第5話「黒札と白札」>>09>>10
 第6話「そして物語は始まる」>>12

 □第2章 札狩life始めました!>>13-50

 第7話「デスメタルでアタック!」>>13>>14
 第8話「僕たちの非日常」>>17-20>>23-25
 第9話「カオスヘッドな僕ら」>>26-28
 第10話「僕たちの作戦会議?」>>29>>30>>33
 第11話「刺客」>>34-39 >>41
 第12話「秘められた力」>>42-48
 第13話「室長室にて」>>50

 □第3章 from天界管理局!

 第14話「ネートル室長を探せ」>>51>>52>>54>>55
 第15話「お説教、みたいな」>>56>>57
 
  ………………………………

 ※あとがき的な>>58
 
 

 
 ☆記録ログ☆

 2020年7月下旬 スレ立て、執筆開始
 2020年9月上旬 2カ月間の休載後、再び執筆開始。
 2020年9.22 イメージ曲を選曲。
 2020年9.23 キャラ紹介作成。
 2020年9.24 改稿作業完了。
 2021年2.08  高校合格。再び執筆開始。
 2021年9.04 我、帰還也。(三カ月間来なかったってマジか)
 2022年3.02 我、またまた帰還也(お前どんだけ失踪するんだ)
 2022年10.2 連載再開。
 
 




 
 
  

Re: カオスヘッドな僕ら ( No.38 )
日時: 2021/09/16 22:08
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: DkL3srzs)


 皆さんこんばんは。カオ僕の可憐なヒロイン(?)栗坂八雲くりさかやくもです。
 広島生まれ東京育ちのごくフツーな生活を送っていた私は、ある日道端に倒れている謎の男を見つけ。
 このまま死なれたら困るわと家に呼び(!?)おにぎりを食べさせてあげたのが全ての始まりでした。
 
 まさかその男が死神で、札狩ふだかりっていうカッコいい仕事をしてる割に馬鹿で、どうしようもなくめんどい奴なんて考えてもなかった。
 そしてそのまま時が過ぎ、現在私はなぜか。



 空を飛んでいます。
 それも、スマ〇ラみたいにバビュンッと光の速さで……というわけでもなく。
 いうならばタンポポの綿毛が子孫を残すべく風に身を任せるような感じで、フワ~~ッと浮いている。



「………バァァンッってバクハツさせる言うてたやん……あれ嘘だったん?」


 背中に生えたちっちゃな羽根を必死に動かして飛んでいる相棒の死神・紗明さあきの表情を盗み見ると、彼は何とも言えないような苦い表情で目をそらした。


「なんか、いざやってみたら『あれ? できねえな? およ?』と思いまして……」
「……………………………馬鹿なの?」
「いや、そんな訳ないと思うっスけどねぇ」


 十分バカなんだよ。だいたい、術の風力で自分の身体&主人の身体を持ち上げるなんて不可能だ。
 まぁ、非常に亀スピードではあるが着実に目的地へ向かっている点だけ、ある意味助かったかもしれないけど。

 眼下に広がる街を眺めながら、どこかにターゲットであるさくくんの姿がないか確認。
 だがしかし、ミニチュアのような細々とした風景で人を探すのはかなり難しい。
『人がゴミのようだ』で有名な某映画の悪役の気持ちが分かった気がする。

 人間の三十倍目がいいという死神にサーチを任せ、私は決して乗り心地がいいとは言えない彼の背中の上で小さく伸びをする。


「天界の学校では、次席を取るくらい頭ベリー良かったんすけどね」
「嘘つけぇ!」
「嘘じゃないですもん! ホント―ですもんッッッ!!」


 心の底からそれはないと思った。その気持ちの強さが叫びに変わり、否定された紗明はムッとして言い返す。

「クコの方がはるかに俺より劣ってましたね! だいたい俺とクコとユルミスだったら、クコ<俺<ユルミスの順で頭いいんすよ」
「あんた次席ってさっき言ったじゃん!!!」


 一番じゃないやん!
 そもそも年下のユルミスちゃんに負けてるじゃん。絶対嘘。認めない。絶対嘘だ。


 と、ガヤガヤと言い争っていると、紗明がなにかを発見したようだ。
 話を止め、ある一点をじっと凝視する。目を凝らしてみると、ファミマの駐車場にゴM……(ゴホンゴホン)男子二人の姿があった。朔くんと、噂の男の子のようだ。


「……どうします? 右ストレート決めて逃げます?」
「せんでいいから、とりあえず着地して」
「アイムワカッタ」
「あんたの英語どうなってんの?」


 フワ~~。


 着地の際も、スーパーヒーローみたいに高いとこから土ぼこりを立てて……というのではなく、あくまでフワリと、後遺症も着地の衝撃も全く気にしなくていい、超超安全な降り方でした。保険料もかかりません。


 ストッッ。


 背中から地面に降りた私は、急いで辺りを見回す。
 入り口付近で、朔くんと例のおモチくんの友達(自称)・享介きょうすけくんがコーラを飲んでいる。ときどきお互い談笑したりと、仲睦まじい様子である。


 ………勘違いだったのだろうか。
 今の今まで亨介くんが、黒札を狙う敵だと思い込んでいたけど、本当におモチくんの友達なのかもしれない。ただ普通に家に行きたいから声をかけた、ただそれだけのことかもしれない。


 ちょっぴり肩透かしを食らったような、何とも言えない虚無感を抱いた。
 突き出した右手は何も掴むことなく空を切る。



「あ」


 と、こちらに気づいた朔くんが視線を向ける。来てくれたのかと、連絡してよかったというような、ほっとした顔で。
 そして、隣の亨介くんを窺う。さっきまで穏やかだった彼の口元は、きつく結ばれていた。目つきは鋭くなり、目の奥の光が消える。

 明らかに数秒前とは異なるオーラに、私も、そして紗明も無意識に肩に力を込めた。
 彼を直視できない。全身から放たれる圧に、心臓がおびえているんだ。


「あぁ……朔くんのお友達ですか? お世話になります」


 礼儀正しく腰を折った亨介くんの言葉は、どこかざらついていた。言葉にできない恐怖があった。

 大きく深呼吸をして、必死に私は冷静を装う。
 今まで紗明につき合って退治してきた霊たちとは明らかに違う。現時点でのラスボスは、この子だと確信する。


「なんでそんな、幽霊でも見たような顔をしているのかな? ………ひょっとして」



 僕が怖いのかな?
 と、ぞっとするような低い声で囁く。
 

 ヒュッと口から変な息がもれた。
 いつもは殊勝な紗明でさえ。いつも明るい朔くんでさえ、その声を聞いた途端血の気がスッと引いた。

 固まる一同を一瞥して、ポケットに手を突っ込み亨介くんが目の前にあるものをかざす。
 良く知っているそれは、朔くんの頬にもついている、悪霊をおびき寄せる札、黒札だ。



「………………ごめんけど、君たちには邪魔されちゃ困るな」
 

Re: カオスヘッドな僕ら ( No.39 )
日時: 2021/10/11 12:09
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: AzYdFFfX)

 〈朔side〉

「ごめんけど、君たちには邪魔されちゃ困るな」


 突如、気配が変わった亨介に、俺は警戒心を崩すことなく数歩下がって距離を取る。
 彼が顔の前に掲げた物、それは、俺の頬にも貼られてある黒札くろふだだ。

 悪霊を簡単におびき寄せてしまう、天界で流通しているグッズ。
 非常に粘着力が強く、一度人の身体や物に貼りついたら、札狩ふだかりという悪霊退治を行うものでなければとることは出来ない。

 
「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 俺は両手を広げて、亨介に叫ぶ。
 いくら自分を狙いに来た刺客だったとしても、俺はこいつと戦いたくはない。
 だって、目の前に居るのは人間だ。下手に手を出して、怪我をさせたくなかった。


「なんか理由があるんでしょ!? 理由があるから俺を狙ってる、そうだろ? どんな理由かは知らないけど……。悩みなら聞くし、こう見えてもけっこう相談とか受けるの得意なんだ、だから……」


 しかし、そんな言葉に対して亨介は態度を変えることはなかった。
 厳しい目つきのまま、俺を斜めから見やる。その視線の鋭さに、ゾッと背筋が凍った。


「理由……? 言うわけないじゃん。馬鹿なの? もしかして、一緒に仲良くできるとか思った?
安上がりもいいところだね」

「ッちょっと、それは言いすぎ……ッ!」


 俺の横で話に耳を傾けていた八雲ちゃんが、眉間んにしわを寄せて怒鳴る。
 なにも自分に言われたわけじゃないのに、自分のかわり怒ってくれる優しい性格の八雲ちゃん。
 でも、そんな少女にも目の前の敵は容赦ない。


「言ったところで君らに何ができる? 君らは札狩で僕はヴィンテージだ。お互いに対立する立場なんだよ。いくら手を差し出されたって、仲間になんてなるものか」


 ヴィンテージ……。前にクコちゃんに聞いたことがある。
 札狩をよしとしないものの総称だ。
 ヴィンテージの中には、彼みたいな人間もいるのか……? 自分の意志で、こんなことをしてるのか……!?


「あなたはそれでいいの? そんなことをして、それで幸せ?」
「うるさいな。幸せを連呼する暇があるなら、…………攻撃でも避けてみろッッッッ!!」



 享介が腕を振りかぶる。黒札はヒュウッと風に舞い、黒い靄へと変化する。
 その靄から、大きな黒い何かが………。


 な、なんだあれは……。
 大量の悪霊。映画とかでよく見る、貞子みたいなものよりもっと醜い。
 まるで、ドラ〇エのスライムのような。どこが手足でどこが眼なのか、それすらも分からないような悪霊たちが、どうっとコンビニの駐車場を埋め尽くしていく。


「ウガァァァァァァァァァァッッ」


という奇声をあげて。



「馬鹿じゃないのかっ! 結界もなにも貼ってないとこでこんなことしたら、人間どもらみんな死んでしまうぞっっ」

「別にいい。人間なんて所詮、限られた歳月の中でしか生きられない無力な生き物だから」


 だからって、こんなこと、許されるわけないだろ!
 そう反論したかったけど……。
 ガシッと俺の右足が悪霊スライムの中に埋もれてしまって、そのままステンと尻餅をついてしまう。


 ドスンッッ


「う゛ッ!」


 お尻が痛い。大分派手に打ち付けてしまった。
 いや、痛みに悶絶しているバアイじゃない。今はまだ通りやコンビニ店内に人がいないからいいけど、そのうち店員さんや客が来てしまったら。多分きっと、このスライムの餌食にされてしまう!


「……八雲ちゃん、紗明! 早くしないと……!」
「わかってるっ! とりあえず、こっちの駐車場は私と紗明で何とかするっ! 朔くんは人が来ないか見張るのと、おモチくんに連絡して!」
「わかったっっ!」


 八雲ちゃんの適切な指示を聞き、俺は慌てて駆けだす。
 しかしスライムのせいで、なかなか足が動かない。
 もどかしい気持ちを抑えながら、必死に足を動かす。

 いつもは使えない(と言ったら失礼だけど)紗明も、今回ばかりはグダグダしてはいられない。
 今までなぜ本気を出していなかったのかと思うくらい、迅速なスピードでスライムに拳を入れて行く。


「アルジ様、早く結界を貼りましょうっっ! 呪文教えたの忘れてないっすよね!? おいゴキブリ弟! なにボケっとしてんだ、さっさと行けぇ!」


 この、鬱陶しいスライムめっっ。お前らなんか、ゲームのなかでは強さなんてザコなのに!
 なんでこんなに強いんだよっ。俺の足がそんなに好きなのかっ。
 ベタベタ触ってくんな、出るとこ出たら有罪だぞ!?


「あ゛ぁぁぁぁぁもうっっ。うっっざいんだよ! スターバスト!!!!!」


 
 バァァァァァァァァァン!!
 

 呪文を唱えると同時に、凄まじい威力の爆風が身体から解き放たれ、目を開けた時にはさっきまで俺の足にまとわりついていたスライムは灰へと化していた。


 ………マジか。強すぎるだろ、「スターバスト」。
 ユルミスの体液を飲まされて、言われるがままに契約をしちゃったけれど……。
 ありがとうユルミス!!!


 目の前が一気に明るくなる。
 進路をふさいでいた敵も、呪文一つであっという間にピチュンとはじけ飛ぶ。

 走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れっ。
 俺がみんなを助けるんだっ。俺がチカを守るんだっ。
 こんな俺でも!黒札の資格者になった俺でも! やるときはやるんだっっっ!


「ズ・ポモ・ア・デレ・エネ・ワオ!!」


 八雲ちゃんが呪文? 見たいなものを唱えると、白い光が発生し、幕のようにコンビニを包んだ。
 恐らくこれが結界だろう。よかった、これで関係ない人たちが襲われるリスクは減る。


 ズボンのポケットに手を突っ込んで、携帯を取り出す。
 電話帳を急いで開き、「百木周」を開き……。


「ウガァァァァァァァァアァァ」
「だぁぁぁぁもう、電話くらいさせろよっっっ! おらっっ」


 携帯を持っている右手の上に、スライムが乗っかってくる。
 そんなに俺の手が好きなの? なんかいい匂いでもするのかな!? 可愛い奴め。
 ……なんて思うわけなく、遠慮なく俺は左ストレートをスライムにお見舞いする。


 ボキッッッッッッ


 凄い音がした。普通ポヨンとか、そういう可愛い音がするんじゃないっけ。
 ボキッッって。なに、俺まさかスライムの大事な部分を破壊してしまったとか……?


 おそるおそる自分の左手を見ると、小指があり得ない方向に曲がっていた。
 じんじんと痛み出す。ちょっとでも力を加えると、激痛が走った。


「…………………マジかよぉおおおおぉ!?? 」
 

Re: カオスヘッドな僕ら ( No.40 )
日時: 2021/09/28 19:55
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Wg4W7im6)

 ☆キャラクターFile 栗坂八雲☆

 
栗坂八雲くりさかやくも

 性別:女
 身長:152㎝
 種族:人間

 誕生日:10月9日
 誕生花:ホトトギス
 花言葉:「永遠にあなたのもの」
 
 血液型:O型
 年齢:12歳(中1)
 家族:兄(大学一年)、妹(小4)、父

 座右の銘:振り向くな、後ろには夢がない。
 趣味:映画鑑賞、アニメを観る、漫画を読む。
 特技:紗明を手なずけること
 
 好きな食べ物:プリン。カラメルがあるとさらによし。
 嫌いな食べ物:しいたけ
 きのこの山派? たけのこの里派?:たけのこ。チョコがいっぱいあるから好きらしい。
 

 作者から

 八雲ちゃんには感謝しても仕切れないところがある。
 唯一の常識人。弱気な主人公のチカと、めんどくさい紗明を優しくサポートしてくれる頼もしい子。 好きだよ、八雲ちゃん。。



Re: カオスヘッドな僕ら ( No.41 )
日時: 2021/10/02 20:22
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Wg4W7im6)

 〈クコside〉


「すごいで百木くん! ほらもうこのサイトに名前が載ってるやん!」
「……なに? 今忙しいんだけど……」


 シュコー………。
 ブロロロロロロロ………。

 狭い室内に掃除機の音が響く。

 八雲ちゃんたちが家を留守にしている間、うちと百木くんは八雲ちゃんの代わりに家事をしたり、町内をパトロールしたりして着々と仕事をこなしていた。

 そんななか、ついに今日、札狩で高収入を収めた人の名前が記載されている天界のサイトに、〈Angel・Hunters(エンジェルハンターズ)〉に、百木周の名前が記載されたのだ。

 
 興奮してアイパッドを突き出すも、掃除中だった百木くんは掃除機片手に渋い顔。
 眉尻をさげて、触れたくないものに触れた時のようにシッシと右手を払う。


「どうせロクなもんじゃないだろ。クコのことなんだから。分かってるって」
「なんや! だいたいうちがいなきゃ、あんた今頃悪霊に食べられとんねんで! ちょっとはこの可憐な美少女に感謝しィやっ!」

 最近の百木くんは言葉遣いがなっとらん。
 外見こそこっちの方が年下に見られがちやけど、こちとら300年以上生きとる天使様やで。
 まあ少々ポンコツなのは認めるけど、そんな簡単にあしらっていいような相手じゃないんや!

 鼻息荒く憤慨すると、彼は謝るどころかしかめっ面になり、プイッと顔を背ける。
 猛烈に腹が立ったうちは、慌てて彼の肩をつかまえると、その顔にぐいぐいとパッドを突きつけてやった。


「むぐぅ! もぉ何だよっ!」
「ちゃんと見てみい! 百木くんはこの一週間だけで20万も稼いでんのや! これは人間で言ったら登録者0人のYoutuberが一週間で登録者1万になったのと同じなんや。……多分」

「………マジ?」
「ほら、ここ! ここ!」

 指で指し示した収入比較の表の一番下に、きちんと自分の名前が書いてある。その横には「20万」とも。

 ようやく現実を認めたのか、百木くんの眼がキラキラと輝きだす。
(しょせん幽霊とはいえお子ちゃまやな)とうちは心の中で溜め息を一つ。


「ほんとに快挙。チカはすげーって思う! そしてそれはパイセンも同じことです!」
「まあなー。うちにかかればこんなもんよ。えへへへへ」

 
 なぜか八雲家に居候している朔のパートナー、ユルミスの甲高い声が隣の部屋から聞こえて来た。
 その後に、陽気なRPGのBGMも。
 どうやらこの悪魔、所有者がいないのをいいことに勝手にゲームで遊んでいるらしい。

「ま、ここまでくれば、あの口うるさい室長もなんも言わんやろ。どう思うユルミス?」
「……その通りだと思います。ネートルお爺は昔っから、パイセンたちには甘いですもん」

「そんな、お孫大好き爺ちゃんみたいなことにはならないだろ……」
という百木くんのコメントをあっさりスルーし、盛り上がる会話。


 うちが所属する天界管理局……いやゆる人間界で言うところの市役所のようなもんやな。
 そこの室長…つまり一番のお偉いさんのネートル室長は、怒るとただでさえおシワが多いのに、血管まで手首に浮き上がらせて怒鳴ってくるから嫌なんだよな……。

「そういやユルミス。あんた、アカシックレコードの管理しとったやん。あんな精密機器ほったらかして、こんなところに居ってええん?」

 アカシックレコードは、宇宙のあらゆる情報が記されている記憶媒体だ。
 巨大な水晶の形をしていて、過去・現在・未来、すべての物事をこの水晶によって調べることが出来る。
 とてもデリケートなものなので、普段は優秀な『守人もりびと』と呼ばれる管理者が管理している。ユルミスはその管理者の一人で、室長のお気に入りでもあるのに……。


「………減俸(げんぽう)ですよ、減俸。それと、勘当かんどう

 部屋に入ってきたユルミスが、きまり悪そうに頭をかく。
 減俸というのは、お給料が減ること。勘当とは、部屋から追い出されること。
 ………なにをしたんや、一体。うちは、開いた口が塞がらない。


「室長の指示でパイセンの元へ向かう前に、ちょっと寄り道をし過ぎて、つくのが遅くなったのがバレたのと……あと、ヴィンテージの件で色々」
「………ヴィンテージ?」


 ヴィンテージとは、札狩をよしとしないものの総称だ。
 なんでも、昔は天界に住むものたちでチームを組んでいたようだけど、最近では人間と協力して活動しているっていう噂も聞く。

 
「ヴィンテージがアンタとどう関係が?」
「………ヴィンテージの幹部って、誰か知ってますか?」

 斜めからうちを見上げる後輩は、どこか泣きそうな顔をしていたように思う。日の反射の具合で、はっきりとした表情はわからんかったけれど……どことなく疲れたように見えたんや。


「幹部? 確か………プリシラ・ローズベリやろ。ヴィンテージ以外にも、様々な事件をおこしてるって有名やん。そんな子が取り締まるんだから、ヴィンテージも大した奴はおらんのやろな」


 発した言葉に対して意味はなかった。
 類は友を呼ぶということわざのように、反札狩の集団が問題を犯しているというそれだけのことだと考えとった。別にユルミスを傷つけようとか、そんなそぶりはない。だけど。


「…………そ……………っかぁ」


 ユルミスは笑った。泣きたい気持ちを噛み殺しながら笑ってるというような、そんな感じの痛々しい笑顔だった。
「そっかそっか」と彼女は明るく頷くけど……なんでそんな苦しそうなのか、馬鹿なうちはわからんかった。……考えようとしなかったんや。


 早くに気づくべきやったんやと思う。そしたら多分、ヴィンテージのこともユルミスがなぜ勘当となったのかということも、短時間で解明できたのに。


Re: カオスヘッドな僕ら ( No.42 )
日時: 2021/10/04 21:58
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: evOUbtyP)

 こんばんは、むうです。毎日投稿目指して頑張ってます。
 ついでにお勉強も頑張ってる今日この頃です。
 
 ********

 〈チカside〉

 しばらく20万だの30万だのと浮かれていたけれど、数分も経てば舞い上がっていた気持ちもすっかり落ち着いてきた。いや、落ち着いた……というよりは、実感がわかないと言った方が正しいのかな。

 それこそ、ユルミスの減俸の話の方が胸に残っていた。クコと紗明が口をそろえて『天才』と称する悪魔の少女。
 聞いてみると、アカシックレコードの管理業に就職するには筆記試験に合格する必要があるらしい。その難しさは、最難関レベル。綿密な水晶を扱うが故、己の機動力や判断力も重要になってくる。


 ユルミスは毎回学年首席だった、と紗明が言っていた。
 運動も勉強も、全てが周りの人より良くできていた。いわば文武両道ってやつだ。クラスメートの中には、彼女に嫉妬して嫌がらせに走ったものもいたらしい。ユルミスが陰口を言われたりするたび、紗明が犯人を特定して抹殺したらしい。


「てことは今失業ってこと、だよね。……大丈夫なの? いつから?」
「………一カ月前から」


 当人がなんてことない調子で、ソファに寝そべり呟くものだから、反応に迷う。
 彼女にとっては、大したことないことなのかな。それか、無理に笑っているのかもしれない。僕や、先輩であるクコに迷惑をかけまいと。


「なんで黙ってたんや。言うてくれたら、うちだって管理局へ戻れたのに……」
「大丈夫ですよ! そのうちいいとこ見つけます。なんならパイセンと一緒に札狩したりとか」
「………まあ、別にえぇけど………」

 天界にも学校や役所など、人々の居場所がある。人間と同じように働いて、お金をもらって、ためたお金で小さな贅沢をする。
 天使だろうが悪魔だろうが、それぞれに色んな悩みがあって、それぞれに苦しみながら頑張って生きていることを知った。

 無神経でマイペースで、S気質のクコ。毎日明るく振舞っているけど、多分彼女にも悩みは尽きないよね。
 天界へ僕を連れて行くという大事な任務に失敗した。上司からは解雇するぞと口酸っぱく言われている。「姉ちゃんはうちのことを馬鹿とかアホとか言う」と前に聞いたことがある。


 紗明だってそうだ。二重人格なんだから、自分が一番苦労しているだろう。どこまで自我を保てるのか分かんないけれど、周りに迷惑をかけているとはうすうす気づいているんじゃないか。
 でも、そうしようもないんだ。そういう風にしか生きられないから。

 それでもあの天使は、あの死神は僕たちに笑いかけてくれる。尽くしてくれる。休みの日は一緒の場所に集まって、他愛のない話をして、ときに口論をして、また仲直りして。


 ………僕は彼らの足手まといじゃないだろうか。
 幽霊になって、札狩をするようになって。そりゃあ自分が死んだという事実は悲しかったけど、友達もできたし双子の弟とはまだちゃんと話ができる。
 あのままクコと一緒に天国へ行っていたら。多分今の僕はここにはいない。八雲にだって会えてない。朔も暗い表情のままだったかもしれない。


(あれ………。僕、すごい得してるじゃん………)


 こんなんでいいのか? これで本当に許されるのか?
 なんでお金に目をくらませてるんだ。なんであんな偉そうな口をきいたんだ。自分が恵まれていることも知らずに。虚勢張って。余裕ぶって。


『きみ、百木くんか。百木くんは目に見えない。声もかけてもらえない。永遠にボッチや。ざまあ』

 身体が透けているから、そのままコンビニでおにぎりを買ったりということはできない。
 ちゃんとご飯が食べれているのは、八雲のお兄さんが毎食作って食べさせてくれるから。人目に付かず眠れているのは、八雲が僕を家に呼んでくれたから。

 ボッチになる可能性だってあったんだ。それなのに。
 それなのに自分は。思わず膝に顔をうずめる。胸の中に苦い何かが混じった。

「………………自分が嫌になる………」


『チカは優しいんだよ。俺は馬鹿だからさ。チカがいないとなんも出来ないじゃん。でもチカは一人でも大丈夫じゃん。だから凄いって思うよ』


 ちがうよ朔。一人になるのは怖いよ。しかも死んだらその孤独は一生ついて回るんだ。
 僕は優しくなんかない。偽善者ぶってる馬鹿野郎だよ。


 虚ろな目で床を眺めていたものだから、急に鳴った携帯に思わず肩を震わせる。軽く三十センチは飛んだ。バクバクと高鳴る心臓。大きな地震でも経験したのかというくらいのオーバーリアクションだった。

 
  プルルルルルルルルルッッ


「チカ、電話鳴ってる」
「う、うん」


 慌てて着信画面を開くと、『百木朔』とある。
 今は午後四時過ぎ。朔は午前からずっと学校に行っていたので、もうそろそろ帰る時刻だ。どうしたんだろう。コンビニで何か買ってほしいものはないかとかかな。


「もしもし朔? どう……」
『ブッ ザーザーザーザーザー』


 砂嵐。滅多に聞かない不快な音が、耳の裏を撫でる。
 携帯が壊れているのか……? 念のため、もう一度画面の向こうにいるだろう弟に呼びかける。


「も、もしもし? 大丈夫? どうしたの!?」
『チッ………チカ…………!』


 良かった、応答してくれた……と普通ならここで胸をなでおろすところだろう。でも、その行動に出れる状況ではなかった。
 悲痛な叫び。何かを必死で耐えているようだ。それに、ところどころ騒音が聴きとれる。その正体を知りたいのに、車のエンジン音のせいでかき消されてしまっている。


「今どこ!? ねえ、どうしたの!? どういう状況なの?』
『小指が折れた………ッ』
「………は??」


 小指!? そんな……、一体何をしたら骨なんて折るんだ!? 交通事故? なんなんだ?
 焦り、怯え、不安。色んな感情が頭の中でグルグルと渦を巻く。目の奥が心なしか熱い気がする。


『……ヴィンテージが来たんだ……俺の黒札を狙って……悪霊を沢山、おびきよせて攻撃してきた……! 万が一の場合に備えて八雲ちゃんと紗明を呼んでおいたんだけどッ……俺、弱いからさ………なにも、出来なくて……』
「謝らなくていいよ! 今行くから!! すぐに行くから!!!」


 ヴィンテージ。札狩の敵。悪霊。小指骨折。
 詳しいことは分からないが、一大事だということは確かなようだった。

 クコとユルミスに電話の内容を説明するのも忘れて、僕は一目散に部屋から飛び出した。
 もどかしさをこらえながら玄関の扉を開けて歩道に出る。
 息を切らしながらただただ足と手を動かした。助けなきゃ、助けに行かなきゃ。

『………ごめんねチカ……。俺、ほんとーに弱虫でさ……う゛ッ』
「………違う。弱虫は僕だ」


 いつも守られてばっかりだった。生前も。死んでからも、ずっと誰かの力に頼って生きていた。
 どこかで勝手に相手を見下して、変なマウント取っている自分がいた。
 許せない。誰だそいつ。いますぐ陰から引きずり出して、一発決めてやりたい。


 自分がどうしようもなく愚か者だって気づいたら、とたんに泣きたくなった。死にたくなった。もう死ねないのに。実態もないのに、誰かによしよししてもらいたかった。
 

 百木周。自分の不注意で車にはねられた、どうしようもなくバカな人間。
 今までの経歴。悪魔と天使と死神に頼って生き、さらに弟に甘えて努力をしない愚か者。
 ……もしウィキペディアにプロフィールが記載されたら、きっとこんな文面なんだろう。


 さすがにそれじゃ、カッコ悪すぎるだろ。


「だから、今行くよ、朔ッッッッッ!!!」

 

 


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