ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- WINGS
- 日時: 2009/09/23 02:09
- 名前: SHAKUSYA ◆wHgW10l3Y2 (ID: jYd9GNP4)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10976
こんにちはー、前の話が完結して嬉しいSHAKUSYAですー。
上の参照が私の小説です。
今回は魔法などの便利物を一切廃止し、銃と人間の小説を書いていきたいと思います。つまり、ファンタジーではなくただのヒューマンノベルになるわけで。
ここで注意。 必読!!!!!!
この小説はグロになると思います。なるべくそんなことは無いようしていきたいですが、心して閲覧を。
銃がよく出てきます。分かりにくいので細かな銃種の説明はしませんが、このあたりの事も心して閲覧願います。
荒らし、宣伝のみコメント、中傷、ギャル文字の乱用、雑談、喧嘩、その他、他の方々や主に迷惑のかかる言動はお控え願います。
この小説は時間軸や場所軸が変わった時にしか改行や空行を行っておりませんが、コレは主、基私の「面倒くさい精神」と「勿体無い精神」の表れだと思ってください。勝手で申し訳ありません。
現在試行錯誤段階ゆえ、改行、空行等の指摘はなるべく詳しくしていただけると助かります。
ただし、「ケータイでの読みやすさ重視」を目的とした、ケータイ小説のような極端な改行、空行の類は受け付けておりません。(改行する度に一行行をあける、時間軸が変わるごとに五〜六行以上の行をあける、など)
感想やアドバイス、誤字脱字報告は受け付けております。ありましたらお願いいたします。
ここではタメ口OKです。
しかし、私に対して極端な馴れ合い(「友達になろう!」発言、「○○持ってる?」発言、「どこ住み?」発言など)を求めたり、別の読者様と雑談をする事はお止め下さい。非常に迷惑です。
質問のある場合は一つずつ聞くのを繰り返すのではなく、なるべく一つにまとめ、一度にお願いします。そちらも方が此方としても楽ですので。
以上のことをよく守り、尚且つネットでのマナーなどを守れる方は、この小説をどうぞお読み下さい。
九月二十三日 注意事項を若干改正。少し詳しくしました。
同日 改行、空行に関する注意を緩和。何か改行や空行事項について言いたいことがありましたらどうぞ。
- Re: WINGS ( No.1 )
- 日時: 2009/09/19 11:01
- 名前: SHAKUSYA ◆wHgW10l3Y2 (ID: jYd9GNP4)
- 参照: 第一翔
戦争は喧嘩?
息をつく間もない。息をついたら、そこで私は挽肉どころか焼肉になってしまう。
森林の広場に敵を引き込めたのは幸いだった。などと、分析しているその瞬間にも銃弾は荒れ狂う。私は一番太い木の幹の後ろに身を隠し、暴れる銃弾の獣の突進を何とか避けながら、受信送信をかねたイヤホンの回線を一班、二班、三班の兵士たちにつなぎ、声を上げた。
「第一班、第二班、第三班、敵のA−1ブロックに向かって斉射」
返事はなし。無くて当たり前だ、向こうは受信専用なのだから。だが、命令はきちんと伝わったらしい。敵の集まっている部分へ向かって、木陰からの銃弾の嵐が踊る。突然の奇襲——突然するから奇襲なのだが——に対処できなかった敵はあっさり銃弾の嵐に引き裂かれ、血肉の山と化した。
私はその様子を見て束の間の安堵の溜息をつきながら方向転換。大仰な機関銃を手に携え、たった一人で百人以上の敵の中に飛び込んでいった。いつ考えても危険な賭けだと思うが、別にどうでもいい。
生き残ること。それが今一番考えるべきものだ。……などとは、考えていない。戦場でそんなことを考えても何の役にも立たない。どうせなら、生きて帰ってきた後のことを想像したい。
例えば夕食のメニューとか、メニューとか、メニューとか。……嗚呼、食のことしか考えられないとは。
ごちゃごちゃと考えながらも私は息を止め、三百六十度全方位に居る敵の、真正面だけに構える。
「なめてんのか? ああ?」
チャラチャラしたヤンキーのような声が私の背後から飛んでくるが、それは無視。あんな奴等、銃を構えなくても勝てる相手だ。だが、数は力。このままでは危険かもしれない。
それでも私は食の事を考えながら、引き金を引いた。十秒間に数十発。あっという間に正面の敵は破砕。敵の層は案外薄かった。一段しか敷いていないなど、どこまで私を舐めていやがる。と、一斉に敵が襲い掛かってきた。機関銃で対処してやろうとも思ったが、弾が勿体無いので格闘技を使ってやる。機関銃は地面に置く。撃った後直後の機関銃は火が付きそうなほど熱いが、知ったことか。火がついたら逃げてくればいいのだから。
まず襲い掛かってきた、金髪茶眼の男——多分後ろからチャラチャラした声をかけてきたであろう者——の顎をハイキックで粉砕、そのままの体勢で両側から襲ってこようとした黒髪黒眼の男二人を両拳で沈める。そして背中を大きく反らせて中断回し蹴りを回避すると、手を付いて大きく脚を振り上げる。恐らく正面にいたであろう人物が、呻き声を上げた。鼻でも粉砕されたのだろうか。だが、今は気にしてやらない。そのまま腕力だけで少し跳躍し、手を攻めようとした目的なのであろう下段蹴りを避ける。隙が出来たところで脚を掴み、元の体勢に戻りつつ後ろの二人を蹴り飛ばし、足を掴んだ茶髪碧眼の男を思い切り投げ飛ばす、と見せかけ、ジャイアントスイング。周りのむさくるしい男達をなぎ倒す。短い悲鳴を上げて倒れていく男達は、まさに滑稽。
最後、私に飛び掛ってきた大柄な男を急所の蹴り上げでノックアウト。ちょろいものだ。
「もっと精進すべきだな。今回はここまでにしてやろう」
薄く笑みをたたえた顔で言い捨て、地面に置いた機関銃を担ぐ。久しぶりに格闘技を使ったために若干鈍っていたが、上々だ。私は笑みをたたえたまま、その場を軽快な足取りで去っていってやる。
途端、猛烈な空腹を感じた。激しく動いたせいで糖分が足りない。糖分不足のせいで頭がくらくらしてきて、私は近くの木の幹に身を預けた。途端に気配を感じ、私はベルトに挟んだサバイバルナイフを手に握る。一瞬の時間の後、私は木の幹に深くナイフを突き刺した。……正確に言うと、洞の中に。
「うぶぅ」不快な悲鳴。やはり、木の幹の中に隠れていた。何ともへたくそな隠れ方だ。私は「馬鹿」と一言吐き捨ててナイフを引き抜くと、それについてきた、赤黒い物体を払う。くらくらする頭を抱えて歩く。
途中でふと思い立ち、イヤホンの回線を一班、二班、三班に繋ぐ。そして言った。
「レイ・ラングス総司令官だ。引き上げていいぞ。これ以上の喧嘩は疲れるし、馬鹿らしい」
受信機能しかないはずの向こうの失笑を、私は聞いた気がした。
続く。
- Re: WINGS ( No.2 )
- 日時: 2009/09/19 22:30
- 名前: SHAKUSYA ◆wHgW10l3Y2 (ID: jYd9GNP4)
- 参照: 第二翔
翼の筆頭は休みを知らず
私は、軍本部二階の広すぎる廊下を歩いていた。祖父から受け継いだ土地なのだが、如何せん施設が古いくせに立派過ぎる建物を受け継いだものだ。相続税を払うのが大変すぎる。だが、まあ払えたのでそのあたりは別にいい。一応設備は私が自腹を切って揃えた。総額は考えたくない。だってすごいから。
「つか、総司令官って何者?」
私の噂が流れてきた。視線を向けると、やはりあの金髪翠眼の青年からだ。噂をすれば影がさす、と言う諺どおり、出てきてやろうと思う。実際に出て行ってやった。
「何者って、この者だ。私は君達が“若い”だの“堅そう”だの“無謀”だの言っているような人物でもないが?」
「うわうわわああ!」オーバーに驚いてくれた。私は口の端に笑みを浮かべ、「ま、頑張りたまえ」と言って青年の肩を叩いてやる。そして、何の追求もせずに私は去った。頭は別の思考にふけっていた。
この青年の名は、私の率いる軍“翼達(ウィングス)”第一班の新米、セレイ・ミオル。よく私に関する陰口を叩くが、私本人が現れたときはこんな風にオーバーなリアクションをとってくれる。だから、私はセレイに言わせたいままにしておくのが常だ。だが、慣れたら楽しくないから怒ってやろう。面白そうだから。
「も〜、総指揮の神出鬼没さには驚かされるなあ……」
ひ弱な声が廊下の後ろから流れてきて、私は苦笑いを浮かべてやった。
廊下には私の足音だけ。やがて私は足を止める。欠伸を噛み殺し、“総司令官室”と大仰な飾り文字で書かれた木のプレートの前に立つ。木の扉を開けて、私は一直線に右の机へ向かった。
いつものとおり、私の机には裁決を待つ書類の山。頭を抱えつつ、父からの譲り物である蒔絵万年筆を手に取る。相変わらず太い。私は扱いにくさを無視しながら一番上の書類を手に取れるだけ取る。一応目は通しておいた為、後は署名していくだけ。目を瞑っても書ける署名を延々と続けながら、とりあえず私と言う存在が分からなくなってきたので整理してみる。
私の名前はレイ・ラングス。男。二十三歳。“翼達(ウィングス)”と言う軍の総司令官で、書類に苛まれる毎日を送る。容姿などは、某神話の自分に恋をした男ではあるまいし言いたくない。だが、一応言っておくなら茶髪に灰眼、右目は潰れている。追記するなら不幸か、彼女居ない暦二十三年。
何だか鬱な展開になってきたため、自己整理をやめる。と同時に、掴んだ束の署名が終わった。だが、まだまだ山ほどある。これを一日で署名するのは……。
私は全てを投げ出したくなった。椅子の背もたれに思い切り寄りかかり、ペンを投げ出す。ついでに取り忘れたイヤホンを耳から外し、ポケットになおす。そのまま机の上に足を投げ出し、溜息をついていると、赤髪茶眼の女性が紅茶を持って入ってきた。
「総司令官、百分の九十九は終わっておりません。手を休めるのは程ほどに」
このやけに堅苦しい女性が、私の補佐官のミオ・レンゼル。有能な事は有能なのだが、如何せん固すぎて私の性には余りあわない。迷惑をかけているとは分かっているものの、私の疲労も少しは察してくれないのか、と切に願う毎日。勿論彼女は取り合ってくれる気配なし。仕事を手伝ってくれるのは、私が酷い怪我をして手も足も動かせない状態のときか、病に臥せって動けないときか、私が死んだときだけだ。それ以外ではいくら私が疲労している姿を見せ付けても、自分の仕事しかこなさない。憎い部下だ。
「それは分かっているが……あまり急かさないでくれないか。こっちは疲れているんだ」
「ええ、心中お察ししております。では、一週間後まで期限は伸ばしますゆえ、お早めに」
……前言撤回。
期限明日と期限一週間後では心の余裕が違う。私は微笑み、署名をするために書類に手を伸ばした。途端、猛烈な眩暈を感じ、私は机に倒れかけた。畜生、そういえば何も食べていなかったんだった。低血糖の症状が出るまで自分の体をほったらかすとは、私も随分軍人気質になってきてしまったらしい。軍人は一週間絶食して待ち伏せする、と言う事もザラではないのだ。私だけは染まらないと思っていたが、染まっていた。
思考を頭から追い出しつつ立ち上がる。途端に脚が縺れ、書類の山に崩れ落ちそうになった。何とか机に手を付いて堪え、私は椅子に座りなおした。この調子では全く持って何も出来ない。こんな所で餓死してたまるか。暫く周囲に視線をめぐらせた私は、目の前に紅茶のカップが載っていることに気付いた。そうだ、ミオ補佐官が入ってきたとき、紅茶を持ってきていた。私は思い切り口に流し込んでやる。——温ッ、甘ッ!
「あい、あいつ、砂糖何杯入れたんだ。温いのはいいが、甘いのは勘弁してくれ……」
あまりの甘さに涙が出そうになった。これも一種の心遣いなのだろうが、甘い物が苦手な私にとっては嫌がらせでしかない。それでも私は全て飲み干す。幾らか気分はよくなったが、口の中が甘いせいで落ち着かない。
額に手を置いて天井を凝視。口の中の気持ち悪い味を追い出し、再び署名作業に戻る。
単調な署名作業は中々骨が折れる。途中で万年筆では手が疲れてきて、ボールペンに持ち替える。が、インク乗りが悪いので今度は鉛筆を使うも、ペンでないといけないので結局のところは万年筆になった。
いくら一週間後に期限が延びたとはいえ、こう言うことは早く終わらせたいのが私だ。必死で山の様に積まれた責務書や報告書、権利書、手形、その他の書類の署名事項を埋めていく。
「あ〜……」だるさに思わず声が出た。万年筆を机に置き、書類を脇に退けて突っ伏す。また声が出た。 「誰か代わってくれる人間がいたら、立場を交換しに行きたい……」
「ちょりー。独り言が聞こえたんで来てみたでー」
私の苦労などひとっかけらも知らない呑気な声。苛々しながら前を向くと、そこには黒髪黒目の男。空軍第四班の班長、日本人の皇汪都(すめらぎおうと)。私よりも年上で、妙な訛り言葉がある。そして唯一私に敬語を使わない。それは別に構わないが、こんな時に来ると苛々する。ええい、もうヤケクソだ。
「何なんだ。私を愚弄しに来たのか? だったら笑え、この醜態を! そら、滑稽だろー!」
「おうおうおうおう、ちっと待てや。わいは空軍の奴にこれを頼まれて、渡しにきたんやっちゅうねん。ま、ちっとぐらいなら手伝うても構へんで」
汪都が慌てて声を返してくる。私も馬鹿らしくなり、これ以上の言葉は慎んだ。私はわざと言葉を無視し、署名に戻った。また汪都が慌てだす。そして大声。
「ちょ、わいの話を聞かんかい!……ぇええい、もうええわ! レイ総司令官、これ置いてわいは帰るで!」
机に汪都は何かを叩きつけ、そのまま地団太の様に床を踏みつけながら去って行った。これでうるさい奴は居ない。と、汪都の置いていった物が目に入った。……捜し求めていた、細いボディの万年筆……。
「おぉう……」思わず情けない声を上げてしまった。ちょっと感動。私は早速その万年筆に持ち替えると、更に署名作業を進めていった。ああ、ペンが軽い。
丸一日署名をし続け、手が震えて動かなくなった頃に、やっと全ての書類の署名が終わった。我ながら良くやったと思ってしまうほどの量だ。一息ついて外を見る。幾つもの星が闇夜にちりばめられ、その空の真ん中に一際輝く月。既に夜だった。この月の出の遅さからして、推定時刻は二時。傍に備え付けられたデジタル時計を見る。二時。ピッタリだ。そこまで動作をすると、急に睡魔に襲われた。
揺れる頭を抑えることが出来ず、机に突っ伏す。すぐに、束の間の安息時間、眠りがやってきた。
鳴り響く緊急招集の音に、一瞬で目を覚ました。時刻は午前六時、私にしてはよく寝たほうだ。
私は椅子の背に掛けていた濃緑色のジャケット——一応これがここの軍の制服である——を右手に引っつかみ、一階にある緊急会議室へ駆けた。総司令官室は二階にあるから、行くのは簡単。
扉を開けると、既に陸、海、空、それに特殊部隊の連中までもが広すぎる室内に勢ぞろいしていた。全員緊迫した面持ち。すると、ミオが静かに私へと近づいてきて、耳打ちした。
続く