ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- DISSOLVE STORY
- 日時: 2009/12/28 21:03
- 名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)
二度目の小説消失しました。
今度は荒しが来た原因だと思います。
尚、バックアップ出来るので再生します。
七魔将の土属性が追加されていたので載せます。
小説の名前の提案は架凛様です。
(↓は架凛様のスレです。)
>> http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=3274
キャラクター紹介
名前「キース・アンバート」(名前提案:架凛様)
性別「男」
年齢「15」
武器「双剣→剣(サーベル系)」
容姿「赤髪に琥珀色の瞳、服装は黒シャツに灰色のズボン。」
性格「冷静・冷酷(ファーナ対面後、冷酷さがなくなっている。)」
キースイラスト>> http://image-bbs.webclap.com/practice/up_img/1260536781-73999.jpg
(イラスト制作者:菜月様)
名前「ファーナ・クレアス」(名前提案:架凛様)
性別「女」
年齢「14」
武器「(後に発表)」
容姿「セミロングの緑髪に青色の瞳、服装は青い服に白いズボン。」
性格「明るく優しい」
ファーナイラスト>>http://files.uploadr.net/554d816e21/002.JPG
(イラスト制作者:雪梨様)
名前「ミルド・シェトリス」(名前提案:架凛様)
性別「女性」
年齢「12」
武器「メイス」
容姿「腰まである銀髪に蒼色の瞳、服装は黒と紫のローブ」
性格「仲間になる以前は非常に攻撃的であったがキース達と一緒に行動するようになってから穏やかになっている。」
名前「リア・ライトネス」(名前提案:架凛様)
性別「女」
年齢「14」
容姿「桜色のお下げ髪にエメラルドの瞳、服装は黒のチュニックワンピース。」
性格「陽気で明るい。少々強気。」
リアイラスト>> http://d39.decoo.jp/data/4/46924/4b37fcd451c47.jpeg
(イラスト製作者:卍樹愛様)
名前「ゼファー・アラウンド」
性別「男性」
年齢「21」
武器「長剣(グラディウス等)」
容姿「ソリッドアッシュに青色の瞳、服装は白いコートに黒のシャツ、茶色っぽい長ズボン。」
性格「冷静で時には冷酷。」
- episode18「戦いへの恐怖 ミルドの勇気」 ( No.19 )
- 日時: 2009/12/28 21:26
- 名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)
アルカトラル帝国行きの船に乗って帝国に移動する三人。
ガラハドの手紙の通りに帝国のギルドの長に情報を聞く為だった。
しかし、キースは帝国に行くと二人に言ったが少々不安があった。
それは……
(帝国に行くとしたら第三都市に近づかないようにしよう……アグニムに見つかったらどうすればいいか……)
キースがいた場所、第三都市ムガルにいるアグニムの事だった。
ファーナとミルドは何処の国で作られたかが不明であり、ファーナはエスタ帝国で保存されていたがガルディスの言葉が脳裏に浮かぶ。
『研究所から抜け出すなと言った筈だろう?』
その言葉にエスタ帝国の半機械人ではないのではないかと思っていたがガルディスがエスタ帝国付属ではない事も有り得ていた。
帝国に着いたらアグニムに知られずにギルドに行く方法を考えていると後ろに気配を感じ振り返る。
そこにはミルドがいた。
「どうしたんだ?」
「相当、アルカトラルに行く事を悩んでいるようね。無理もないけれど……」
キースの考えがお見通しだった。
ミルドはキースの隣に立って大海原の景色を眺める。
数秒の沈黙が経つとミルドの口が開き……
「あの時は有難う……私を《剣帝》って人から助けてくれて……」
顔を赤らめて小声で言うミルド。
「何か言ったか?」
「な、何でもないわよ!」
人間を恨んでいたミルドはあれから人を見ても睨みや殺気を一切しなかった。
姉のファーナに注意されたのか、それとも二人の心に打たれたのか……
「アグニムはアルカトラル帝国の第三都市にいる訳を教えてやろうか?」
「一応、聞いてみたいわね……研究者達もアグニムの話をしていたし……」
キースの突然の言葉にミルドは首を縦に振った。
「アグニムは第二都市で爆破事故を起こしてな……大量の死者を出した。」
キースは大海原を眺めているミルドにアグニムの過去を語る。
「皇帝や評議会はアグニムのやった事をテロだと感じて犯罪者として第三都市に送られた。その後、アグニムは国の政府に対して憎しみを持ち、俺やゼファーを作った。」
「ゼファーの代わりとして生まれたのよね貴方は?」
複製機械人(コピー・ヒューマノイド)として生まれたキース。
ゼファーが死んだ時に代わりとされていた自分はこの世界に存在していいのだろうかと一瞬感じた。
「ゼファーの言葉が本当なら、俺は奴の身代わりだったんだろうな。」
目を瞑って言うキース。
その場を去ろうとすると音がし、上を向く。
見えたのは球型の体に短い両腕にはガトリング砲、そして頭の上にはバズーカ砲を身に付けた機械。
その機械を見てキースは驚いていた。
(あれは自律機動型……!?アグニムの技術はゼファーの様な強化機械人だけじゃなかったのか!)
アグニムの技術に驚いていると上空にいた機械は船の上で着地した。
船は大型船で甲板はかなりの大きさである。
自律機動型はキースに体を向けると黄色い目玉の様な部分が光りだした。
「TARGET確認!これより任務を遂行します。」
自律機動型から声が出る。
そして両腕のガトリング砲をキースに向けて無数の弾丸を放った。
キースは素早く転がり避ける、と同時に掛けてあったサーベルを片手に取って構えた。
「ミルド!あの力で援護……!」
場にいるミルドに叫ぶが返事が返ってこない。
振り向くとさっきまでいた筈のミルドがいなくなっていた。
「ちいっ!」
舌打ちして襲い来る自律機動型を睨むキース。
一方、ミルドは船内の端で体を震わせていた。
その時、ファーナがミルドを見つけ、ミルドの様子を見て駆け寄る。
「どうしたのファーナちゃん?」
「わ、私は……戦えない……」
「えっ……?」
震えながら涙声で言った言葉にファーナは目を大きく見開いた。
「上でキースが戦っているの……だけど、私は戦いが怖くなった……あの時のようになるんじゃないのかなって……」
ゼファーとの戦いで目を抉られた事で戦いに恐怖を覚えるミルド。
また、体の部分を失うのを恐れて戦いを拒んだ。
体を震わせていると肩に手を置かれた。
それはファーナの手だった。
「ミルドちゃんの気持ちは私もわかるよ。キースがゼファーさんにやられそうになった時に戦おうとした。だけど、あの時ゼファーさんが剣を振り上げた時、私は恐怖を感じたの……」
「お姉ちゃん……?」
ゼファーとの戦いで倒れたキースを庇うかの様に出たファーナ。
剣を振り上げた時、ファーナは戦いの恐怖を一時覚えたのだ。
「それでも私は退けなかった。キースを失ったら私は悲しいから……誰かが死ぬと言う事は嫌だから……」
「………」
「だから、ミルドちゃんも勇気を振り絞って……!」
ファーナに励まされてミルドの頭に過ったのは仲間の死が嫌だと言う事だった。
研究所で拒絶反応を起こして死んでいった仲間、人間の八つ当たりの道具として死んでいった仲間を思い出して、漸く自分がすべき事を思い出す。
「お姉ちゃん、私頑張る……キースを助けに行こう!」
「ミルドちゃん……うん!」
勇気を出したミルドに微笑んで頷くファーナ。
そして二人はキースを援護しに甲板へと向かった。
「ハッ!」
ガトリング砲を避けると同時に数本のナイフを投げるキース。
しかし、ナイフは自律機動型の鋼鉄の機体に敵わず床に落ちる。
「機体に異常なし、戦闘時間が10分経過!早急に遂行する為、最善行動します。」
自律機動型からの声と同時に背中のホバーに火が噴き、空中に浮遊する。
そして進む大型船の前に止まると頭上のバズーカ砲で照準を定める。
定まった途端、砲口から光が漏れ発射される寸前に自律機動型の周りに電撃のサークルが囲む。
「稲妻の網よ!敵を捕らえよ!」
聞き覚えのある声の正体に気づくキース。
後ろを振り向くとそこにはミルドとファーナがいた。
「サンダーネット!」
囲んでいたサークルから網状に変わり、自律機動型を捕らえる。
そして、攻撃が終わったと思いきや、ミルドは再び詠唱を始めた。
「サンダーボルト!!」
そう叫ぶと自律機動型の真上から稲妻が落ち。
落雷は自律機動型を貫く。
ホバーの火が消えて海に落ちる。
「ミルドちゃん、やったね!」
「魔女の瞳無しで……勝てた。」
満面の笑顔で褒めるファーナ。
魔女の瞳を失いながらも戦いに勝った事に驚くミルド。
上がってくるのではないかと心配しているのか自律機動型が落ちた方を見るキース。
ファーナははしゃいでいると船の先端を見て気づく。
「キース!アルカトラル帝国だよ!!」
ファーナの言葉に気づき、先を見る。
そこには幾つものの建物と城が見えた。
そこはまさしくアルカトラル帝国だった。
- episode19「ギルド探し」 ( No.20 )
- 日時: 2009/12/28 21:27
- 名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)
アルカトラル帝国に到着する三人。
帝国のギルドを探す為に街中の人々に聞いてみる。
しかし、街の人々は全然知っていなかった。
見つからない一方、三人は喫茶店の屋外で椅子に座っていた。
「ガラハドの手紙だと相当有名なギルドだと思っていたが、そうじゃないようだな。」
「いや、ただ有名だけじゃないかもしれないわよ。」
「どういうこと、ファーナちゃん?」
首を傾げてミルドの言葉に疑問を尋ねる。
「ギルドって言うのはね、たまに義賊の様な仕事をやりかねない所もあるの、それだけじゃないわ。」
説明が終わったと思いきや、まだ話は続く。
「帝国の法にはギルドを建ててはいけないと言う法案が決まったのよ。」
「結構詳しいんだな。」
アルカトラル帝国出身ではないのに帝国の法を知っているミルドに顔を向けるキース。
「法の事は研究所で調べてたからね。ほとんどの事は覚えているわ。」
「しかし、そうなると帝国のギルドって言うのは隠しギルドらしいな。」
両手を頭に持って寛ぐ体勢をするキース。
その時だった。
「ねぇ、知ってるかしら?」
後ろ側から三十代後半の女性の声がした。
後ろに休憩している人がいるのだろう。
「最近、貴族の金品やお金が盗まれてるらしいわよ。」
「まぁ!どうりで帝国兵達の警備が厳重になったのもそれが原因ですのね!」
二人の女性の話に耳を傾けるキース。
帝国に盗人はほとんどいるが貴族だけを狙う盗人は対していなかった。
貴族や僧が住む《第一都市》では警備はほぼ厳重と言える程であって、下手な盗人ならすぐに捕まってしまう。
しかし、第一都市で一人も帝国兵に捕まっていない。
相当な盗人なのか、それとも……
「どうしたのキース?」
後ろに耳を傾けていて聞いていたがファーナに声を掛けられ我に返る。
「いや、何でもない。」
何事もなかったかのように返事をする。
そして、休憩してからもその後、第二都市の人々に尋ねるものの誰一人も知っていなかった。
そして夜を迎え、三人は宿屋に泊ることにした。
時間は深夜1時、ファーナとミルドが寝息をたてて眠っている中、キースは起きて静かに部屋を出た。
女性の話が気になって盗人を見つけようと外に出た。
しかし、表に出るものの帝国兵達が片手にカンテラの様な物を手にしている。
見つかって盗人と間違われると面倒になると感じたキースは昔の様に屋根に上る。
屋根の上は帝国兵達の視界に入らない。
まさに移動にもってこいだった。
待機していると向こう側の家の屋根に人影が見える。
影はキースの方を見るとそのまま他の屋根を伝って行く。
(あれだな……!)
人影が向かった方へと屋根を伝うキース。
音を立てずに忍者の如く伝う。
そして辿り着いた場所は貴族の館だった。
窓は開いていて、中から音がする。
キースはサーベルの柄を持つと一気に中へと入って行った。
そこには金庫に入っていた金品を袋に入れていた16歳近くの少女がいた。
「誰!?」
キースが入ってきた事に驚く少女。
少女は袋を閉じると物凄い速さで窓から出て行った。
「待て!」
キースは少女を追うかの様に屋敷の窓から出る。
少女の方が早いのか既に見失ってしまっていた。
キースは冷静に屋根を伝っていると人影を見つける。
しかし、人影の周りには二足で立っている狼《ウェアウルフ》が少女を囲んでいた。
一匹のウェアウルフの腕が少女へと振り下ろされる寸時にキースは一気にウェアウルフを全員八つ裂きに切る。
ウェアウルフ達は散り散りに消えていき、少女の前にキースが現れる。
少女は自分を助けたキースを見て……
「何故助けたの?」
そう尋ねた。
するとキースは……
「気紛れだ、ただお前の様な子供を見ると見捨てずにいられなかったからな。」
「ふふふ、義理堅いのね……」
キースの曖昧な言葉に少女は笑う。
少女はその場を去ろうとするが屋根を伝おうとした時、振り向いた。
「一つ教えてあげるわ。もし私に会いたければ共同墓地にある老人に『EMPIRE』って言って、言えば入れるわよ。」
そう言って少女はウインクするとその場を去って行った。
少女の言葉にポカンとするがすぐに我に返る。
そして少女が何者だと言うことにキースは感づいた。
「成程な、アイツが動いている所は……」
そう呟くと帝国兵に見つからぬ様に宿屋に戻り、眠りについた。
- episode20「帝国ギルド」 ( No.21 )
- 日時: 2009/12/28 21:28
- 名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)
共同墓地
キースが少女を助けてから翌日、三人は共同墓地にいた。
数々の墓石があるが貴族・平民の墓の違いは外見で分かる程だった。
貴族の墓には花束の様なものがあって、墓はまるで食器洗いで何度も磨かれたかのようにピカピカだ。
一方、平民の墓は貴族よりは綺麗ではないがお供え物が置いてある。
その共同墓地を探索していると墓石の前で箒で掃いている一人の老人を見つける。
「あれか……」
キースは老人に近づく、ファーナとミルドは何をするのか分からず首を傾げる。
老人はキースの気配に気づいて掃いているのをやめてキースに振り向いた。
「EMPIRE。」
キースが放った言葉に後ろにいた二人は首を傾げたままである。
老人は頷いて目の前にある墓石をずらした。
そこには地下へと続く階段があった。
「入りなされ。」
老人が呟いた言葉にキースは頷いて階段を下りていく、二人もキースと共に下りていく。
その時、ファーナはキースに尋ねる。
「ねぇ、キース?この階段を下りたら何処に着くの?」
「帝国のギルド……隠しギルドだ。」
キースの答えに二人の目は大きく見開いた。
「この地下に帝国のギルドが?アグニムの罠かもしれないわよ。」
「罠ならば、こんな暗号を言う必要はない筈だ。」
ミルドの言葉を軽く流すキース。
そして階段を下りた先に着いたのは薄暗く広い所だった。
水が流れる音が三人の耳に入っていた。
着いた場所は下水道なのだろう。
三人の前に一人の老人が現れる。
「ようこそ、隠されたギルド《EMPIREGUILD》へ……」
カンテラを持ってお辞儀をする紳士的な老人。
三人は無言でお辞儀をする。
「付いて来てくだされ……長の所へ案内しますので……」
老人の後を付いていく三人、薄暗い下水道の中で見るのは汚れた水に所々に浮いているゴミ、そして鼠の鳴き声が聞こえた。
そしてしばらくするとドアの前に辿り着き、老人はドアを開けた。
「ここが《EMPIREGUILD》です。」
三人は入るとそこには数人のギルドの者がいた。
身軽そうな服装をした男性や女性が数人いる。
「客人の様だな。」
辺りに響く男の声。
ギルドの人々は道を開ける。
三人の前に現れたのは白髭に筋骨隆々、老人とは思えない程の体をしていた。
「アンタか、この隠しギルドの長は?」
「あぁ、ワシはこの《EMPIREGUILD》の長のツカイフ・ディアスだ。」
《EMPIREGUILD》の長ツカイフは三人に自分の名を名乗った。
「ガラハドの手紙で俺達はここに来たのだが……」
「知っているとも、だが今入った情報に悪い話が入っていた。」
「悪い話?」
ツカイフの言葉にファーナは首を傾げた。
「実はお前さん達がここに来る間に部下から連絡が来てな……宗教都市レオールの事なのだが……」
ツカイフが口にした宗教都市レオールに三人の目が見開く。
「ハロルド教皇が亡くなった。そしてそれが原因で内乱が起こり、今ではウィンダム司祭が教皇を名乗っている。」
ツカイフの悪い情報の話を聞いて三人はある事を思い出す。
それはレオールの姫であるアンフィー・フォン・コンスタンツの事だった。
「ハロルド教皇に娘はいるか?」
「あぁ、名前はアンフィーと言って優しく気品のあるお嬢さんだがハロルド教皇が亡くなってから、どうなっているのか分からない。」
ツカイフは首を横に振りながらそう言った。
「ねぇ、キース。一度レオールに戻らない?」
ミルドはキースに顔を向けてそう言った。
しかし、キースは首を横に振った。
「いや、それは無理だ。」
「ど、どうして?」
否定をするキースに驚いて尋ねるファーナ。
「ウィンダムはレオールの軍事国家派でな、今は教皇になっているから、内乱の情報を聞き洩らす事を恐れている。」
「成程ね……だから他国の者や自国の者を決して国から出したり入れない訳ね……」
ツカイフの話を聞いて理解したミルドは手を顎に当てて言う。
「どうしてもレオールに侵入する方法はないのか?」
「姫様の事がとても心配の様だな……」
「当然です……」
ファーナが両手を胸に当てて言った。
ツカイフはファーナの様子を見てフゥと溜息の様に吐いた。
「皇帝陛下に船の手配を頼む。だがワシは城に行けない。だから……」
ツカイフはそう言いながら懐から紙と鉛筆を取り出し、書き始める。
数分で終わり、紙を折ってキースに渡した。
「ありがとうございます。」
キースに代わって礼をするファーナ。
「皇帝陛下はワシの事を知っているがギルドを表だしにしない。ワシの手紙なら恐らく聞き入れてくれる筈だ。」
「分かった……行こう。」
キースは手紙を懐にしまい、二人を連れて城へと向かった。
アルカトラル城前
宮殿の様な城の前に三人は訪れた。
三人は門番に近づく。
「すいません。」
「何でしょうか?」
「皇帝陛下に面会をお願いしたいのですが……」
何時もは敬語は喋らないキース。
しかし、皇帝陛下に会う為に敬語を使う。
兵士はキースが取りだした手紙を取る。
差出人を見て兵士は……
「こちらへ……」
兵士の後に付いていく三人。
そして兵士に付いていくと王のいる間、謁見の間に辿り着いた。
「皇帝陛下!面会客です!!」
頭を下げて前にいる玉座に座った男性に言う兵士。
玉座に座っている男性を見て三人は目を疑った。
二十代後半で褐色の肌に金髪のブロンド髪をした男性だったからである。
三人の予想では国の偉い者で王はほとんど老人か中年の男性かと思っていながらもアルカトラル帝国の皇帝は二十代の男性だった事に十分驚いていた。
「客人にしては変わっているな……」
「この手紙をお読み下さい。」
頭を下げていた兵士は皇帝に駆け寄り、手紙を渡した。
皇帝は手紙の封を開けて読む。
差出人の相手の名が分かったのか表情が少し変わった。
「ツカイフからか……レオールのハロルド教皇が死亡……軍事国家派のウィンダムが教皇か……」
手紙に書いてある内容を見て言葉を出す皇帝。
読み終えて手紙を兵士に渡した。
「船の手配はしておこう、それとウィンダム氏の暴動を止める為に兵を挙げよう。」
「へ、陛下!」
兵を挙げる事に驚いたのか兵士は声を掛ける。
「ウィンダム氏の暴動を全国に伝えれば、連合は奴を止める筈だ。それだけじゃない。連合評議会なら他の輩よりもコンスタンツ氏を推薦する。」
「わ、分かりました。直ちに優秀な兵を連れて参ります!」
兵士は敬礼をしてその場を去って行った。
ポカンとしているファーナは我に返って尋ねる。
「陛下の名前は何でしょうか?」
「私の名前か……いいだろう、私の名前はな……」
皇帝は自分の名を出そうとする。
三人は生唾を飲む。
「私の名前はロジェー・F・ジェイトリスだ。」
- episode21「絶望と化した宗教都市」 ( No.22 )
- 日時: 2009/12/28 21:29
- 名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)
アルカトラル帝国の皇帝ロジェー・F・ジェイトリスが手配した軍船に乗って内乱化している宗教都市レオールに向かう三人。
しかし、街の様子を見るものの三人の心には不安があった。
それは街に暗雲があり、今にも雨が降りそうだからだ。
そして港に着いた頃には雨がポツリポツリと降っていた。
冷やかな空気が寒気と化している。
「これがあの宗教都市レオール……?」
人は一人も外におらず、荒れている道路を見て呆然としながら口にするミルド。
活気があった街が内乱で一気に失ってしまったのだ。
街の様子を見ていると一人の男性が三人の前に現れた。
見た事のある衣服、それは《EMPIREGUILD》の人間だった。
三人の前に現れた男性は膝を折ってお辞儀をするかのように頭を下げた。
「ツカイフ様の伝令で貴方方にこの街の情報を渡します。」
「ありがとうございます。」
男性に頭を下げるファーナ。
「この街に民衆が一人もいないのはウィンダム派に反抗しているからでございます。」
「ウィンダム派?」
「実は次期教皇は誰も決まっていなかったのです。ハロルド教皇が遺した遺言状ではコンスタンツ家の次男であるトーマ様を推薦したのですが……」
男性の説明は途中で止まる。
何か悪いことがあるのかと三人は思っている。
少しすると男性の口が開く。
「トーマ様が新教皇になる寸前にウィンダム氏がコンスタンツ王家長男のセルゲイ討伐指令を出して現在セルゲイがいる砦で戦が行われているようです。」
「アンフィー姫はどうしたんだ?」
「聖女様はこの街にある学校の暖炉をお確かめ下さい。これを……」
男性は懐から鍵を取り出しキースに渡した。
「学校の鍵です。合鍵ですが使えますので……」
「すまないな。」
礼を言うキース。
男性は再びお辞儀をしてその場を去って行った。
「キース、学校に行こう。」
「そうだな。」
キース達はコンスタンツ家の長女(?)アンフィーのいる学校へと向かった。
道を歩きながらも男性の言葉通り、民衆の誰一人いなかった。
学校に辿り着き、男性にもらった鍵を使って中に入る。
幼児だけが通う学校なのか、小さい机と椅子が数個あった。
「5歳児の子が座れる椅子ね……」
机と椅子を目にしてミルドは呟く。
「あの男の言ってた通りに……」
キースは暖炉の中に入って壁を蹴る。
壁はドアの様に横に開く。
三人は暖炉を潜って、歩き続ける。
しばらくすると明りが見えてトンネルの様なっ道を抜ける。
そこは部屋になっていた。
「あ、貴方達は……!?」
聞き覚えのある女性の声。
三人は声の元に振り向く、そこには茶髪の長髪に白いローブを着た女性。
その人物は三人は知っている。
そう、コンスタンツ家の長女(?)アンフィーだった。
「聖女様!!」
ファーナはアンフィーに駆け寄って両手を握った。
「貴方達がここに来ることを信じてました!でもどうやってここに?」
「アルカトラル帝国の皇帝の軍船でここに来た。」
アンフィーの問いにキースは答える。
キースの言葉を聞いたアンフィーは愕然とした。
「ロジェー皇帝がですか……?」
アンフィーの言葉に三人は首を縦に振った。
「そうでしたか、三人はこの街の様子に既に気が付いていますよね?」
「えぇ、以前とは違って活気が無くなってるわね。」
「知っての通り、父上がお亡くなりになってからこの国の不幸は始まりました。弟のトーマが新教皇になってからウィンダム氏の横暴で兄のセルゲイを討伐しようと兵を挙げています。」
ハロルド教皇との死が始まってからこの国の不幸の始まりを三人に話すアンフィー。
「兄のセルゲイは今でもウィンダム氏や弱味を握られて協力している重臣達の兵達と戦っています。しかし、このままで兄は彼等に敗北してしまいます。」
話し終えたと同時にアンフィーは三人の前で土下座をした。
身分を分かっていながらも現在の状況を考えて……
「お願いします!どうか、私達に力を貸してください!!」
「頭を上げてくれ……」
土下座するアンフィーに近づいて顔を上げるキース。
「力を貸す、だから俺達は何をすればいいか言ってくれ。」
「キース様……分かりました。」
頷いて立ち上がるアンフィー。
「兄のセルゲイを助けて下さい。南門に魔物(モンスター)が掘ったトンネルがあります。そこを通れば兄のいる砦に辿り着く筈です。」
「魔物がトンネル?どう言うことだ。」
アンフィーの依頼で魔物の話を聞いたキースは眉を顰めた。
「実は密偵に頼んだ所、ウィンダム氏は“七魔将”と手を組んでいる模様です。七魔将が魔物と関係しているかはどうかは判りません。」
(ウィンダムは七魔将と手を組んだ……?もしかしてこれは……)
「キース!早く南門に!」
ウィンダムが七魔将と手を組んでいる可能性があると聞いたキースは考えるがファーナに声を掛けられ、考える暇がなかった。
「あ、あぁ、そうだな。」
「気をつけてください。」
三人はアンフィーの兄でありセルゲイを助けに行く為に南門へと向かった。
一方、兄のセルゲイのいる砦の周りにあるウィンダム軍のテントでは数百人の兵士が城を囲んでいる。
その軍勢の中心にレオールを絶望と化した人物ウィンダムがいた。
しかし、後ろには黒いローブを纏っている者がいた。
顔は陰で見えないものの、水色の髪がローブから出ていた。
身長は140㎝前後だ。
「武勇に優れているコンスタンツ王家の長男セルゲイ。かなり有能な人物の様ね。」
黒いローブを纏った者から出た声は少女だった。
大臣の様に前にいたウィンダムは頭を下げる。
「申し訳ありません、チャーム様。セルゲイはあの砦の主であり、大勢の軍でもあの砦を崩すのは難しいのです。」
ウィンダムはローブを纏った少女の名を言う。
少女は振り向き……
「まぁ、いいわ。私はしばらく海の主を探しに行くわ。時間を掛けてもいいからレオールを完全に支配するのよ。」
「はい、もしコンスタンツ王家を滅したら“永遠の命”をくれるんですよね。」
恐る恐るチャームと言う少女に話しかけるウィンダム。
チャームは後ろを向いて歩き出すが数歩で止まる。
「そうね。レオールを支配したら考えてあげる。」
そう言ってチャームは水色の粒子と化し消え去った。
隠れて見えない顔に不敵な笑みを浮かべて……
- episode22「砦へ……」 ( No.23 )
- 日時: 2009/12/28 21:31
- 名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)
コンスタンツ王家の次男であり、一番下であるトーマが新教皇に偽り、長男のセルゲイ討伐指令を出したウィンダム。
砦で元重臣達と戦うセルゲイを援護する為に魔物が砦に向かって掘ったトンネルを進むキース達。
しかし、トンネルの中には見張りをしていた魔物達がいて戦いながら砦へと進んでいた。
「これで……終わりよぉ!」
ミルドが大鬼(オーガ)に向けて掌に具現された赤い魔術の方陣から炎の球が放たれる。
ゼファーに“魔女の瞳”を奪われながらもミルドの力は対して変わっていなかった。
火炎の球を喰らったオーガは燃え尽きて灰も骨も跡形も残さず消えてしまっていた。
最後の魔物を倒した途端にファーナは腰を抜かしたかの様に地面に座った。
「こんなに魔物が出るなんて思ってなかった……」
荒い息をしながら言うファーナ。
隣にいたキースは額の汗を拭ってサーベルを鞘に納めた。
「ここからが本番だ。ウィンダムはそろそろ突撃するかもしれないからな。」
「気を引き締めた方がいいわね。」
トンネルの魔物を片づけても外に出れば、ウィンダム率いるセルゲイ討伐隊がいる事は確かである。
どちらにせよ戦闘は避けられなかった。
三人は急いで外に出ようと走り出す。
しばらくすると明りが見えて出口だと分かり、遂に外に出た。
「何とか、兵士達はここを回ってないようだな。」
周りを見て誰もいないことを分かって安堵の息を吐くキース。
しかし、三人の目の前には高い絶壁があった。
「ここがセルゲイさんが守っている砦……」
あまりにも高い絶壁に目を点にして驚いているファーナ。
「セルゲイの兵士にこの書を渡せば、砦を捨てて都市に向かう筈だ。」
懐から取り出した封のある手紙を取り出すキース。
それは行く前に聖女アンフィーからもらったセルゲイ宛ての手紙であった。
「これを届けるにはどうすればいいの?門番には一人もいない筈よ。」
首を傾げて問うミルド。
その時、キースは手に取っていた手紙をしまい。
二人を腕の中にやる。
「ちゃんと捕まっていろよ……」
「え、ちょっと!キャアァァァ!」
ファーナの悲鳴と共にキースは砦の絶壁を飛び越える。
砦の中に入り、地面に着地すると二人を放した。
ファーナの悲鳴に気づいたのか三人の周りに兵士が囲む。
全員武器を構えて今にも襲いかかりそうだった。
一人の兵士が剣を振り上げて襲いかかろうとしたその時……
「待てっ!」
砦内に響く声と共に兵士の動きが止まる。
兵士の間を通って三人の前に現れたのは青髪で緑と白の服を着た男性だった。
「お前達は何者だ。まさかウィンダムが派遣した傭兵か?」
「違う、俺達はアンタの妹アンフィーに頼まれて来たんだ。」
「アンフィーに?全員武器を収めろ!」
自らの妹の名を聞いて男性は自軍の兵士達に命令する。
どうやら、この男性がセルゲイなのだろう。
キースは懐から手紙を出してセルゲイに手渡す。
もらった手紙を読むセルゲイ。
「砦を捨ててレオールに戻れか……」
困ったかの様に首を横に振りながら手紙を懐にしまう。
「すまないが、アンフィーの言葉には従えない。この砦を捨ててしまえば、ウィンダムは必ず追い打ちを掛けてくる。」
「確かに砦を捨てて都市に逃げれば、追い打ちを掛けられるかもしれないな。だが、そうしないと妹の隠れ場所が分かってしまい殺されてしまうかもしれないぞ?」
「くっ……」
キースの言葉を聞いてセルゲイは拳を強く握る。
砦を捨てることは自らの敗走となる。
逆にここで戦えば、キースの言うとおり妹アンフィーが隠れている場所が見つかり殺されてしまう。
セルゲイにとってはどれも大切だった。
敗走か妹の死か……
「私はどうすればいいんだ……」
「セルゲイ様!アンフィー様の為にここは我々に任せてセルゲイ様は都市へ向かってください!!」
迷っているセルゲイに差し伸べたのは兵士達だった。
「お、お前達……」
「この砦は決してウィンダム氏に占領させません!だからセルゲイ様はアンフィー様の元に!」
「す、すまない!」
兵士達の言葉にセルゲイは涙目になっていた。
そして三人の前に立って……
「行こう!」
そう言って後ろの門を開けて砦を去って行った。
その頃、ウィンダム軍は……
「ウィンダム様!セルゲイが砦から逃げました!!」
「よし!全軍!!砦へ突撃だ!!!」
ウィンダムが剣を砦へと向けると兵士達の叫び声と同時に砦へと向かって行った。
「ウィンダム軍が全軍突撃!」
「絶壁の上の者は矢と岩を!他の者は門が破られるまで待機だ!!」
ウィンダム軍の動きに感づいたセルゲイ軍も本人がいなくとも戦闘準備を始める。
そして二つの軍隊の戦いが始まった。
自軍がウィンダム軍の戦っているのを気付きながらも都市レオールへと向かった。
三十分前後に着くが相変わらず暗いのは変わっていない。
後を付かれていないか見張りながらアンフィーのいる学校を目指す四人。
学校に着き、隠し部屋へと入る。
「お兄様!!」
「アンフィー!無事だったか!!」
お互いの無事を確認して安心する兄妹。
「お兄様、これから私達は大聖堂にいる弟トーマ救出してウィンダムを倒しましょう。」
「あぁ、そうだな。」
トーマが捕まっているレオールの城『大聖堂』。
セルゲイは三人に顔を向ける。
「もう一つの仕事を引き受けてくれないか?大聖堂に攻め込むには君達の力が必要だ。」
「そんな必要はない!!」
セルゲイの言葉を掻き消して突如現れた声。
部屋にいる全員が辺りを見回す。
その時、暖炉から出てきたのは……
アルカトラル帝国皇帝ロジェーF・ジェイトリスだった。
「こ、皇帝が何故ここに……!?」
セルゲイはロジェーに顔を向けて言う。
「君達を援護する為だ。私達はウィンダム氏の暴動を知った。連合にこの事を話したらウィンダム氏は七魔将と協力している事が判明した。」
「私達を助けてくれるのですか……?」
恐る恐る問う言葉にロジェーは首を縦に振った。
「あぁ、既に我々帝国兵は待機している。後は君達が我々の援護を必要するかどうかだ。」
「も、勿論、力を貸して下さい!」
頭を下げて頼み込むセルゲイに対し、ロジェーは微笑んだ。
「分かりました。すぐに兵に大聖堂突入準備をしましょう。」
ロジェーはそう言ってその場を去って行った。
「まさか、皇帝陛下が我々に力を貸すなんて……」
アルカトラル帝国の援護を借りるコンスタンツ王家。
それは現在兵力が少ない状況で助けに来ることはまさに仏の様な存在だった。
「キース殿、我々に力を貸してくれないか?」
「勿論、力を貸す。」
「有難い!」
「それじゃあ、俺達も先に行ってます。」
キースはそう言って二人を連れて大聖堂突入準備をし始めた。
そしてコンスタン王家の兄妹とレオール兵が集まった事で大聖堂突入とトーマの奪還が始まろうとしていた……

