ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

DISSOLVE STORY
日時: 2009/12/28 21:03
名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)

二度目の小説消失しました。
今度は荒しが来た原因だと思います。
尚、バックアップ出来るので再生します。
七魔将の土属性が追加されていたので載せます。

小説の名前の提案は架凛様です。
(↓は架凛様のスレです。)
>> http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=3274


キャラクター紹介

名前「キース・アンバート」(名前提案:架凛様)
性別「男」
年齢「15」
武器「双剣→剣(サーベル系)」
容姿「赤髪に琥珀色の瞳、服装は黒シャツに灰色のズボン。」
性格「冷静・冷酷(ファーナ対面後、冷酷さがなくなっている。)」

キースイラスト>> http://image-bbs.webclap.com/practice/up_img/1260536781-73999.jpg
(イラスト制作者:菜月様)

名前「ファーナ・クレアス」(名前提案:架凛様)
性別「女」
年齢「14」
武器「(後に発表)」
容姿「セミロングの緑髪に青色の瞳、服装は青い服に白いズボン。」
性格「明るく優しい」

ファーナイラスト>>http://files.uploadr.net/554d816e21/002.JPG
(イラスト制作者:雪梨様)

名前「ミルド・シェトリス」(名前提案:架凛様)
性別「女性」
年齢「12」
武器「メイス」
容姿「腰まである銀髪に蒼色の瞳、服装は黒と紫のローブ」
性格「仲間になる以前は非常に攻撃的であったがキース達と一緒に行動するようになってから穏やかになっている。」


名前「リア・ライトネス」(名前提案:架凛様)
性別「女」
年齢「14」
容姿「桜色のお下げ髪にエメラルドの瞳、服装は黒のチュニックワンピース。」
性格「陽気で明るい。少々強気。」

リアイラスト>> http://d39.decoo.jp/data/4/46924/4b37fcd451c47.jpeg
(イラスト製作者:卍樹愛様)


名前「ゼファー・アラウンド」
性別「男性」
年齢「21」
武器「長剣(グラディウス等)」
容姿「ソリッドアッシュに青色の瞳、服装は白いコートに黒のシャツ、茶色っぽい長ズボン。」
性格「冷静で時には冷酷。」

Page:1 2 3 4 5 6 7



episode08「宗教都市レオール」 ( No.9 )
日時: 2009/12/28 21:15
名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)

宗教都市レオール 港

船が港に着き橋が降ろされると乗客達は船から降りていく。
その中でキースとファーナもいた。
二人は船を下りて都市の中へと入って行った。
都市はアルカトラ帝国とは違い、ほとんどの人間が僧衣を着ていた。
建築物はほとんどが教会で家はそれほどない。
そして何よりも初めて来た二人が驚いたのは(キースはそれほど驚いていない)数々の教会と家の先にある大聖堂だった。

「あの大きい建物は何?」
「あれはレオールの城だが、ほとんどの奴は“大聖堂”と言っている。」

何時もの様に親子の様な会話を取りながら、大聖堂へと足を進める二人。
落ち着いて歩くキース。
一方のファーナはキョロキョロと辺りを見回している。
落ち着きのないファーナを見てキースは溜息を吐く。
その時、キースは何かを感じ取ったのか目が鋭くなって辺りを見回した。

「キース?どうしたの?」

ファーナは尋ねるがキースは何かに無我夢中で聞こえなかったようだった。

「そっちか!」

キースがそう言うとファーナの腕を引っ張って西の方へと向かって行った。

「あ、ちょっとそんなに引っ張らないで〜!!」

ファーナは声を出すもののキースは走りを止めない。
走り続けるキースは家と教会の間の狭い路地へと入り、走り続けていると空き地と言える場所に着き、そこには凶暴そうな三人の男とその先には茶髪に白いローブの様な服を着た少女がいた。
男達は少女を連れ去ろうとしていたのだ。

「おい……」

キースがそう言うと男達は振り返った。

「あぁ、何だテメェは?」

先頭に立ってキースに寄る一人の男。

「俺達に喧嘩を売ってるようですぜ、兄貴!」
「こんなガキ、ボコボコにしてさっさとこの娘を攫いましょうよ!!」

あとの二人は“子分”の様で先頭にいる男にそう言った。

「そうだな、こんなガキすぐに葬って……」

男はそう言いながら腰に下げている剣を抜こうと柄に手を伸ばしたと同時にキースが素早く、腰にある双剣を抜いて一気に男達の後ろに立った。
数秒の沈黙が経つが男達はドサッと音を立ててその場に倒れた。
キースは双剣を鞘に納める。

「安心しろ、お前等の様な奴はみね打ちで十分だ。」

倒れている男達にそう放つとキースは茶髪の少女に手を差し伸べた。

「大丈夫か?」
「あ、はい……」

少女はキースの手を取って立ち上がった。
少女は服に付いている土埃を落とす。

「ありがとうございます。もし誰も来てくれなかったら誘拐されてました。」
「誘拐?誰かに狙われてるのか?」

キースの問いに少女は首を縦に振った。

「貴方は一体誰?」

ファーナが突然二人の話に口を出す。

「私は……」

少女は困った顔をしながら、キースとファーナから視線を逸らす。

「私はこのレオールの聖女です。名前はアンフィー・フォン・コンスタンツです。」
「聖女か……」

アンフィーの自己紹介にキースはそう呟いた。

「ねぇ、キース。セイジョって何?」
「聖女はこのレオール国の姫の事だ。」
「へぇ〜、アンフィーさんお姫様なんだ〜。」

ファーナの言葉にアンフィーは頷いた。

「この事をお父様に話さなければなりません。私はこれから大聖堂に行きますので失礼します。」

アンフィーは二人に頭を下げるとその場を去った。

「私達も大聖堂に行くのにね。」
「いや、それは無理だろう。」

ファーナの言葉にキースは首を横に振りながらそう言った。

「どうして?」
「大聖堂は他国では城と同じ、重要な人間でなければ中に入る事は不可能だ。」
「そうなんだ……」

入れないのだと教えてもらったファーナはガクリと首が下がった。
子供の様な動作をするファーナを見て心の中で呆れるキースは建物を見回すと酒の絵と看板にGUILDと描かれた建物が目に入った。

(GUILDか……近くにいそうな賞金首の情報があったら狩るか……金が少ないしな……)

目を細めてGUILDを見ながらキースは心の中で考えた。
考えが終わるとキースはファーナに顔を向ける。

「ファーナ、あの店に入るぞ。」
「あの店って何?」
「酒場だが、子供でも飲める物もある。行くぞ。」

キースはそう言ってファーナと一緒にGUILDへと入って行った。



一方その頃……

「聖女を誘拐出来なかったのね……」

暗くて良く見えない場所で少女の声が響く。
少女の前にはキースが倒したチンピラ達が土下座をしていた。

「す、すいません!誘拐しようとしたらガキが来て俺達を……」
「言い訳は無用。」

弁解をするチンピラの言葉が少女の一言に掻き消された。
暗くて顔は分からず、見えるのは紫と黒の混じったローブだけだった。

「最後に聞いてあげる……その男の後に誰かいなかった?」
「あ、そう言えば。緑髪で青色の瞳をした女がいましたぜ。」
「そう……」

少女はそう言うと男達の前に立つと同時に片手を前に出した。
途端、少女の掌の前に炎の球が具現する。

「さよなら、弱い人間……否、人間にもう用はないの……」
「えっ、ちょっと待ってくだ……」

男が制止の言葉を言おうとした瞬間、火球は放たれ男達の中心で爆発した。
砂煙が立ち込め、晴れると男達の姿は無かった。

「私達を開発しておきながら、奴隷の様に扱った人間達をあの方の力で人間を抹殺するわ。」

少女は笑いながら椅子に座った。
笑い声はその場に響いていた……

episode09「GUILD」 ( No.10 )
日時: 2009/12/28 21:16
名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)

「いらっしゃい。」

二人がGUILDに入ると男性がそう言った。
キースはカウンターに腕を置いて話しかける。

「マスター、ボトルを頼む。」

ファーナに聞こえない様に言うキース。
マスターは頷いてカウンターの戸棚から、数枚の紙を取り出し、カウンターの前に置いた。
紙には人の顔の写真が張られていた。
“賞金首”のリストだ。
マスターは酒場の主人だけではなく、GUILDの人間だった。

「………」

黙々とキースは紙を次々と見ていく。
1000〜4000Gといった、様々な賞金首を目にするがキースの実力ではそれ以上の額が合っていた。
と言ってもキースは実力で判断しない。
機械人は人間の奴隷であって捨てられれば、自分で金を稼がなければならない。
キースは以前アグニムの元で働いていたが今では無職であり、ファーナを連れている。
万が一にも額が低くとも稼ごうとしていた。
残り、一・二枚になった時、二枚目の賞金首に目が入った。
額は100万G……

「この賞金首はテロリストか?」
「いや、この賞金首は裏の人間でな……今では世界に手配されている奴だ。」

マスターが皿を布巾で皿に付いている水を吹きながらそう言った。
そして最後の一枚を見ると目が釘付けになる。
その賞金首の額は1億G……

「その賞金首は“七魔将”って言う千年前に暗躍した奴等の一人でな、不老不死で吸血鬼(ヴァンパイア)らしい。」
「吸血鬼(ヴァンパイア)か……」

マスターの話を聞いてキースはそう呟いた。
そう言いながら二枚のリストを交互に見る。
名前は一人はミヤビと書かれていて、もう一人はレオニードと書かれていた。

「七魔将の方なら、北国にある吸血鬼の館にいる。挑戦者が向かった情報は多数聞くが帰って来た者はいないそうだ。」
「恐らく挑戦者全員奴の餌食になったんだろうな、不老不死を持つ敵を倒そう等無駄にしか過ぎない。」

冷酷な言葉を放つキース。
二人の男の写真を見ていると肘を引っ張られていた。
見るとファーナが首を傾げていた。

「何してるの?」
「お前が知ることじゃない。マスター、ホットミルクを頼む。」
「はいよ。」

キースのオーダーを聞いたマスターは戸棚からマグカップを取り出した。
そしてミルクの入ったビンを取り出し、やかんに入れて温めようとガスレンジに置いた。

「その高額な二人に目を付けるとはな……」

100万Gと1億Gの賞金首の紙を見るキースにマスターは苦笑しながら言った。

「別に目を付けてる訳じゃない。」

そう言って二枚の紙をカウンターに置くとマスターはそれを受け取って戸棚に戻した。
そして、やかんに入れたミルクが入っているビンを手にとってマグカップに注いだ。

「ほら、ホットミルクだ。」

マスターがそう呟いて湯気を発しているホットミルクをカウンターに置いた。
ファーナは嬉しそうにマグカップの取っ手を掴んで飲もうと口に運ぼうとした。

「待てファーナ!そんなに早く飲もうとしたら……」
「アツッ!?」

遅かった。
余程の熱さにファーナはマグカップをカウンターに置いて苦しそうにしていた。

「まったく、熱いものを急いで飲んだら火傷してしまうだろう?」
「ご、ごめん……」

子供の様に落ち込むファーナ。
溜息を吐いたキースはマスターに顔を向けて指を一つ立てた。

「マスター、俺の分のホットミルク頼む。」
「はいよ。」

頷いたマスターは温めたホットミルクをもう一つのマグカップに注いでキースに渡した。
キースは軽く頭を下げて、ファーナの手を引っ張って誰もいないテーブルにホットミルクが入ったマグカップを置き椅子に座った。

「美味しい……」

飲めるほどの熱さなのか、ファーナはホットミルクを口にした途端、その言葉が出た。

「そうか……」

キースはそう言ってホットミルクを口にする。
温かく甘い。
浸っていると酒場のドアが乱暴に開かれる。

「た、大変だ!!」

甲冑を着た一人の兵士が大声で言いながら入ってきた。

「どうしたんだ?」

マスターが落ち着いた様子で突然来た兵士に話しかける。

「せ、聖女様が攫われた!!!」

兵士の言葉が酒場内を木霊した。

episode10「聖女救出依頼」 ( No.11 )
日時: 2009/12/28 21:17
名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)

兵士の言葉にギルドにいた者全員顔を向けた。

「誰に攫われたんだ?」
「邪教団だ!奴等は聖女様を誘拐して何かをしようとしている!何をするかは分からないがギルドにも助っ人を頼みたい!!」
「分かった。この依頼のボトルレベルは“ウォッカ”にしておこう。」

マスターは落ち着いた様子でそう言った。

「集合場所は都市入り口前だ。私は聖騎士団(ホーリナイツ)の隊長に報告しに行く!では!!」

兵士がそう言うと酒場を出て行った。
途端にほとんどのギルドの者が立ち上がってマスターに駆け寄った。
キースも立ち上がり、マスターに寄る。

「ねぇ、キース。聖女様を助けるの?」
「目的はそれだけじゃないがな……」

キースの言葉を聞いたファーナは首を傾げる。
そしてキースの番になるとマスターは目を細めた。

「お前さんも聖女救出依頼を受けるなんてお人好しだな。」
「別に人助けじゃない。この依頼の報酬に期待できそうだからな……」

キースの話を聞いたマスターは笑い出した。

「ははは、そうか。だが依頼を引き受けたのは3人だがな。」

マスターの言葉にキースは内心驚いた。
数十人いた筈のギルドの人間が3人しか引き受けない事に……

「まぁ、私はギルドの受付人として付き添えだけどな。それでは行こうじゃないか。」

二人はマスターと一緒に酒場を出て都市の入口の前に向かった。
辿り着くとそこには馬車と兵士、そして隣には金髪で青色の瞳、そして白い鎧を着ている男性がいた。

「ギルドの方ですね。私は聖騎士団(ホーリナイツ)の騎士隊長アルクゥです。」

聖騎士団隊長アルクゥはマスターと握手を交わす。

「それでは今回の依頼について話そう。」

握手を終えてアルクゥは依頼の説明を始めた。

「先程、兵士が言った通り。邪教団に捕らわれた聖女様の救出。」
「だが、どうしてアンタ等騎士団が隊長しか参加しない?」

赤髪で赤い瞳、そして背中に大剣を持った男がそう言った。

「大人数で侵入すれば、犠牲者も多くでる。だが少人数で侵入すれば奴等にバレる確率は少ない。」
「成程な……」
「邪教団のアジトの場所は我等聖騎士団の密偵のお陰で見つかった。後は我々が攻めるだけだ。」

アルクゥはそう言って兵士に顔を向けると兵士は頷いて前に出た。

「以上だ。何か言いたい事はあるか?」

兵士の言葉を聞いて一人の男が手を上げた。
スキンヘッドの大男……

「何故、ガキをこの依頼に引き受けさせるんだ?足手まといだろう?」

大男はキースとファーナの方に指を指しながらそう言った。

「ほぅ、外見だけで判断するとは貴様も大した奴ではないな……」
「何だと!!」

大男は棍棒を片手に持ってキースに振り下ろす。
当たる瞬時にキースはその場を消え、大男の後ろに立った。

「どうした?大きい体をしときながらその程度か?」
「ぐっ、おらあぁぁぁぁ!!!!」

キースの挑発に乗った大男は棍棒を横に振り回すがキースは避ける。
そして大きな隙が出来た途端、右手に小型剣を持って大男の首の前に出した。

「勝負あったな……」
「くっ……」

一歩でも動けば、小型剣で大男の首を取ろうとするキース。
大男は棍棒を床に落として項垂れた。

(デイブを負かすとはあのガキ、相当の実力者だな。)

赤髪の男はキースに顔を向きながらそう心の中で呟いた。

「喧嘩をするのはよくないが勝負は決まった事だ。それでは全員馬車に乗るんだ。」

アルクゥの命令で全員馬車に乗った。
そして兵士が掛け声を出すと馬達は走り出し、進みだした。

「…………」
「どうしたファーナ?」

震えているファーナに声を掛けるキース。

「あ、怖くて……」
「大丈夫だ、どんな事があってもお前を守る。」
「ありがとうキース……」

キースの言葉にファーナは微笑んでそう言った。

「…………」
「どうしたガラハド?」

キースを見ている赤髪の男ガラハドに大男デイブは声を掛けた。

「あのキースって奴が気になってな……どうもあの実力は尋常じゃねぇって思っただけだ。」
「実力は強くとも邪教団のアジトではどうなるかが問題だけどな……」
「甘く見るなよデイブ……もしかすると報酬を横取りされるかもしれねぇからな……」

キースとファーナに聞こえぬ様に会話をする二人。
その時、馬車が止まった。

「着いたぞ!」

兵士が声を出すと馬車の中にいる全員は出た。
そして邪教団のアジトを見る。
大聖堂の様だが廃墟で崩れそうな状態になっていた。

「ここが邪教団のアジトか……」

キースは邪教団のアジトを見てそう呟いた。

「聖女様は必ずこの中にいる筈だ。頼んだぞ!」

兵士がそう言うと全員入る場所を探す。
キースは扉の前を通り過ぎていく。

「キース、どうして入らないの?」

扉を開けて入らないキースに首を傾げて問うファーナ。

「こういう入口が複数ある建物は大抵罠があるからな。」
「わ、罠?」

ファーナの恐る恐るの言葉にキースは頷いた。

「だから、隠された入口を探そうとしているんだ。」
「ほぅ、アンタが俺より年下って言うのにそれほどの警戒心までもあったとはな……」

後ろから声がし、振り返る二人。
そこにはガラハドがいた。
ファーナを庇うように前に立って剣を抜こうとする。

「おいおい、そんなに怖い目をするなよ。俺は知ってるぜ、ここのアジトの隠された入口をな。」
「何だと?」

ガラハドは壁の前に立つと大剣を抜きとり剣の柄で壁を叩くと壁は粉々になり、人が一人入れるような入口が姿を現した。

「ここが奴等にとっての隠しだ。他にもあるようだがそれも罠だと思ったからな……」
「…………」
「そんなに睨むなよ。それより入るのか?」

姿を現した隠された入口の方に指を指しながら尋ねるガラハド。

「俺がそれほど人に頼る奴だと思っているのか?」
「思っちゃいないさ。ただ俺はアンタ等に報酬を横取りされたくないからな……」
「つまり、お前等は俺達を誘って盾にする気だろう?」

冷酷な瞳でガラハドを睨みながらキースはそう言った。
ガラハドは睨みを気にせず……

「行かないならいいぜ、俺はデイブの奴と入るからな……そっちは大変だろう?」

ガラハドは嘲笑するかの様に笑いながら、ファーナに一瞬顔を向けた。
ガラハドの言葉に気付いたキースは睨みを消し……

「分かった。お前等と一緒に行動しよう。」
「流石、話が分かりやすいな……おい、デイブ!」

デイブを呼ぶガラハド。
呼び声に気付いたデイブは三人に駆け寄ったがデイブはキースとファーナを見た途端表情が変わった。

「何故、ガキ二人がいる?」
「共に行動しようと思ってな……」
「何を考えているガラハド!」

否定するかの様な言葉を放つデイブ。
その時、ガラハドは殺気が混じった睨みでデイブを睨む。
デイブはガラハドの睨みに驚く。

「分かった……賛成だ。」
「それじゃあ、行こうじゃねぇか。」

四人は隠された入口へと入って行った。

episode11「邪教団アジト」 ( No.12 )
日時: 2009/12/28 21:18
名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)

邪教団のアジトに侵入する四人。
しかし、入った途端に物凄い臭いが漂っていた。

「この臭いは血と死臭だな……」
「恐らく、俺達よりも成り行きで来た奴が餌食になったんだろうよ。」

臭いの正体を言う、ガラハドとデイブ。
しかし、二人よりも先にキースの方が早くも分かっていた。
キースはファーナに顔を向けた。
ファーナは慣れない臭いと同時にアジトに充満している為、吐き気がしたのか口元を押さえていた。

「そっちの娘には待ってもらった方がいいんじゃないか?人の死体とかあるかもしれないってのに……」
「い、いい。私は大丈夫だから……」

震える声でガラハドに言うファーナ。

「ま、嫌になったら戻らせてやるさ。」
「ガラハド!俺達はそんな事をしてる暇じゃ……」

怒鳴るデイブ。
しかし、ガラハドの殺気混じった睨みによって大人しくなった。

「あの聖騎士はどうしたんだ?」
「騎士の性格によっちゃあ、ほとんどの奴が正面から通るだろうけれど、あの騎士は只者じゃねぇからな。大方、俺達と同じ隠し入り口でも探してるんだろうよ。」

キースの言葉を聞いたガラハドはアルクゥの事を話す。
邪教団のアジトに着いてからアルクゥとは一度も話していない四人。
着いた途端にアルクゥはアジトの捜索に行ってしまっていたのだ。

「む?鍵が掛かってるぞ……」

デイブが次の部屋に進もうとドアノブ掴んで開けようとするが文字通り鍵が掛けられていて開かなかった。
デイブの話を聞いたガラハドは背中の大剣を取り出した。

「デイブ退け。」

ガラハドがそう言うとデイブは離れる。
ドアの前に立ったガラハドは大剣を片手で縦に振り、ドアを斬った。

「どうせ、鍵は奴等が持ってるんだ。壊せば問題なんてねぇさ。」

そう言って壊れたドアの破片を片付けて次の部屋に向かって行った。

「ファーナ、そう言えばお前に一つ言いたい事がある。」
「何、キース?」
「あの工場でお前が俺の傷を治した力は奴等の前で見せるな。」

ガルディスと戦っていた途中、怪物との戦いで負った傷を治したファーナ。
ガルディスは治した後に“魔導”と言っていたあの力の事だった。

「う、うん。分かった。」

少し戸惑いながらもキースの言う通りにするファーナ。

「よし、あの二人に付いてくぞ。」

キースとファーナは二人の後を付いて行きながら聖女を探す。
鍵が掛けられているドアはさっきの様にガラハドが大剣で斬り壊す。
そしてやっと四人が着いたのは庭園だった。
枯れた草木や、所々にある血痕、そして何よりも見えるのは地面に散らばっている無数の骨だった。

「これは……」

流石に今まで冷静だったデイブは庭園の有様を見て愕然としていた。

「邪教団の奴も容赦ねぇな、しかしこの有様は一体何なんだ?」

ガラハドはそう言いながら噴水に近付いた。
水は出ていないが、その代わり赤黒い水が溜まっていた。

「これは本当に邪教団の仕業なのか……?」

赤黒い水溜りを見たガラハドは邪教団への疑問が出てきた。
二人が調べている時……

「あ、あぁ……」
「どうした、ファーナ?」

体を震わせながら指を指している方をキースは見た。
その先には黒い僧衣の様な物を纏った何かが倒れていた。
ガラハドはその何かに近付き、僧衣の様な服を取ると死体があった。
庭園にある様な骸骨ではなく、はっきりとした人の死体だ。

「邪教団の死体?」
「可笑しい、どうも可笑し過ぎるな。」
「ど、どういうことですか?」

ファーナは恐る恐る死体を調べているキースとガラハドに問う。
ファーナの問いに答えるかの様にガラハドは立ち上がった。

「ここに邪教団の死体が何故あるのかだ。仲間同士でやったのはどう見てもあり得ねぇ事だ。」
「邪教団が住みつき、俺達がここに来る前に誰かが邪教団を殺ったかもしれない。」

ガラハドとキースはファーナにそう答えた。

「それとまだある。」

ガラハドは腕を組んでそう言った。

「まず、何故聖女が誘拐されたかだ……邪教団は邪神を慕う宗教だ。聖女を誘拐するなら、それなりの事がある筈だが奴等は聖女を攫って何をするのか……」

一本指をファーナとキースに見せて言った。
そして話が終えるともう一つ指を上げる。

「二つは邪教団のやり方だ、通行人やそれ以外の人間が通るなら奴等は勧誘する筈だが、この庭園の現状を見れば、断然違う。」
「つまり、この幾つものの骸骨は通行人や旅人だけじゃなくて邪教教団も混じっていると言うことか?」

キースがそう問うとガラハドは無言で頷いた。
その時、ファーナは何かに気付きハッとした。

「キース!あれ!!」
「む?」

噴水の方に振り向くと赤黒い血の水溜りが泡を立て始めた。
泡は次第に大きくなっていき、そして水の柱がうまれ、赤黒い色をし、人間の皮膚を剥がした様な物体が姿を現した。

「何だこれは!?」

謎の物体にデイブは驚いていた。
一方のガラハドは大剣を抜き構えている。

「何だあれは?今まで見たモンスターより違うぞ?」
「ファーナ、下がってろ。」
「う、うん。」

キースの言葉の通りにファーナは戦いの場から逃れようと端へと走った。
ガラハドの隣に出たキースは双剣を手に取る。

「気をつけろ、コイツは普通のモンスターじゃない。」
「ヴオォォォォ!!!!」

謎の物体は咆哮を上げながら三人に襲いかかった。
子供の様な身長でありながらも落ちている石の破片を拾って投げてきた。

「ちっ!」

飛んできた石を舌打ちしながら大剣で斬り落とすガラハド。

「ぬおぉぉぉ!!!」

大声を上げて謎の物体の後ろを突いて棍棒を振り下ろすデイブ。
しかし、謎の物体は瞬時にその場に消え、噴水の上で浮遊していた。

「取った!」

キースがそう言って左手にナイフを持ち出し投げる。
ナイフは謎の物体の腕に刺さる。

「グボオォォォォ!!!!」
「これで終いだぁ!!」

苦しんでいる謎の物体に止めを刺そうと大剣を振り下ろす。
大剣は謎の物体を真っ二つにした。
血飛沫がし、ドサッと言う音を立てて床に落ちる謎の物体。
ガラハドは大剣をしまって謎の物体に顔を向けた。
謎の物体は死んだように動かない。
誰もが倒したと思った時、二つの割れた謎の物体が体をくっ付け、何事もなかったかの様に再生する。

「ちっ、本当に何なんだよコイツは!!!」
「グモオォォォ!!!」

謎の物体は咆哮を上げて両腕を床に叩きつけた。
途端、庭園に強烈な揺れが襲い、床が崩れ始めた。

「きゃあぁぁぁぁ!!」
「ファーナ!!」

ファーナの足場が崩れ、ファーナは落下していった。
キースはファーナを追いかけるように跳びながら進んでいくがもう少しと思った瞬間に足場に穴があき……

「うあぁぁぁ……!」

キースも奈落の底へと落ちていった……

episode12「暗殺者vs賞金稼ぎ」 ( No.13 )
日時: 2009/12/28 21:19
名前: はせピン (ID: 4Ru1i4kp)

「くっ……」

庭園から落ちたキースが目覚めた場所は薄暗い部屋だった。
しかし、ここも血と死臭が充満していて床や壁に血に人か獣の骨や血が付着している。

(どうやら着地に失敗して気絶してた様だな。)

自分がどんな状況なのか調べるキース。
周りを見回すと別のフロアに通じる道がある。
しかし、辺りを見回して肝心な事を忘れている事に気づく。
それはファーナの事だった。

「ファーナ!何処にいるんだ!!」

大声を出すが辺りを響くだけで返事は返ってこない。
ファーナの近くに駆け寄ったものの間に合わず、今いる場所に落ちたキース。
キースは何時もの冷静さを消して必死で通路を歩いて探し回っていた。
もし、ファーナが謎の物体に見つかったら“死”と言う末路を向かえるだろう。
危険な目に遭わせない為にキースは通路を走っていた。
走っているとある人物が何モンスターと戦っている姿が見えた。
赤髪に大剣を持った男……ガラハドだった。

「フン!!」

鍔迫り合い状態になっていながらもガラハドは余裕の表情で相手を片足で蹴って怯ませて大剣で斬り伏せた。
モンスターは血を流して倒れて動かなくなった。

「コイツも変わってやがるな……」

そう言って大剣を背中に下げてある鞘に納めようとするが剣の刃が鞘に入る寸前に止まり、振り向いた。

「ほぅ、生きていたのか……」

ガハラドが意外そうな顔をしてそう言った。

「貴様もな……」
「はは、俺はこう見えても賞金稼ぎだからな……あの嬢ちゃんはどうした?」

ファーナの事を尋ねられてキースは何も言えず、顔を下げた。
キースの行動を見て分かったのかガラハドは嘲笑した。

「あの嬢ちゃん可哀想だな……今頃ここにいるモンスターの餌になってるんだろうよ!」
「………!」

嫌な予感を感じていたキースに更なる不安が襲いかかる。
急いでファーナを探そうと走り出そうとした時……

「おっと!そうは行かないぜ。」

ガラハドが突然走りだそうとしたキースの前に立って通せん坊し始めた。

「退け、俺はファーナを探す。」
「そうは行かねぇんだ。せっかく、ここに賞金首が居るんだからよ……なぁ、キース・アンバート?」
「………!?」

名前を言われてキースはガラハドから間合いを取って双剣の柄を握った。

「可笑しいと思ったんだ。デイブは10万Gの賞金首を数人倒しているのにお前にやられてな、思ったんだよ。」

ガラハドは顔を下げて笑いながらキースの正体が分かった事を説明し始める。

「そして何よりも証拠はあの化物との戦いの時、化物の腕の神経をナイフで刺すほどの実力を持ってる奴はお前しかいないって事をな……」
「俺をここで倒すと言うのか?」

冷酷な瞳で睨みながら言うキース。
ガラハドはキースの言葉に答えるかの様に大剣をキースに向けた。

「その通りだ……俺に勝って探しても嬢ちゃんは奴等の餌になる事は変わりねぇけどな!」

そう言って大剣の重量を関係せずに跳び上がり、襲いかかる。

「でやぁ!」
「はっ!」

大剣の一撃を避けるキース。
しかし、大剣の一撃の威力は相当強く、キースがさっきまでいた足場が粉々になっていた。

「せやっ!」

速さで勝負を決めようと一気に攻めるキース。
だが、双剣の攻撃をもガラハドの大剣で受け止められた。

「無駄だぜ、早く終わらせたい気持ちは分かるが俺も必死なんでな!」

そう言って大剣を横に振るう。
キースは避けて双剣で一気に攻めるが弾かれる。
間合いを取って身構えるが同時に作戦を考えていた。

(ガラハドは強い……!今の俺の技では通用しない。)

今まで倒してきた者に通用した技がガラハドには通用しないと感じたキース。
このまま、戦い続ければファーナが危ないと思っていた。
その時、キースは突然ガラハドに向かって走り出した。

「往生際が悪いぜ!これで終わりにしてやるよ!!!」

ガラハドがそう叫んで大剣を縦に振るった。
大剣がキースに当たる寸前、キースはすり抜けるかの様に大剣を避けてガラハドにサマーソルトをした。

「な、に……!?」

サッカーボールの様に上に蹴り上げられるガラハド。
空中で体勢を整えるが目の前には腕をクロスさせたキースがいた。

「瞬影刃……」

技の名を呟いた途端、目の前にいた筈のキースの姿はなかった。
キースがいなかったと同時にガラハドの胸にクロスの斬撃と血飛沫が出た。

「ガハッ……!?」

吐血してガラハドは地面に体を打ちつけた。
キースは双剣を鞘に納めてその場を走り去って行った。

「あの野郎……俺を殺さねぇとはな……」

荒く呼吸をしながら仰向けに倒れていたガラハドは薄暗く汚い天井を見上げた。

「はっ、結局はあの暗殺者も心はあるって訳か……」

自嘲に笑うガラハド。
笑い声は辺りを響いていた。
その時……

(駄目だよ……人間を恨まないなんて……)
「………!?」

少女の声が辺りを木霊してガラハドは上半身を起こした。

(何だ、今のは……物凄ぇ殺気だ……!!)

少女の木霊と同時に体に感じた殺気にガラハドは立ち上がり大剣を片手に持ってキースを追いかけるように走って行った。


(キースとガラハドが戦っている間、ファーナは……)

「うぅ……」

体に走る痛みに目を覚ます。
目覚めた場所を確認する、木の寝床に鉄格子。
まさに自分が今いる場所は地下牢の様な所だった。

両手を鉄格子を掴んでいるとドアが開く音がした。
歩く音がし、モンスターではない事を心から祈るファーナ。
しかし前に現れたのはファーナより僅かに背は低く、腰まである銀髪の長髪に黒いローブを着た少女。

「お目覚めになったかしら、お姉ちゃん……」
(えっ……)

初対面の少女の言葉にファーナは耳を疑った。

「あら、名前を言うの忘れてたわね。私ったら一体何を考えてたのかしら……」

微笑みながら少女はファーナの鉄格子の鍵を開ける。
ファーナは牢の外に出る。
少女はファーナから間合いを取った途端、片膝を地面に付いてお辞儀をした。

「私の名前はミルド・シュトリス。姓は違うけれど妹よ。」

少女ミルドは自分の名を語る。
だが、ファーナはその名を知っても分からず、脳裏に浮かんだ言葉は……

“自分に妹はいない”と言う事だった。


Page:1 2 3 4 5 6 7