ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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-妖狐と魔術の交差点-
日時: 2010/02/09 19:08
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

御挨拶〆
こんばんは、更紗@某さんです。
何故か消えたので、早速復活させました。
やってしまいました、ついにやりたかった妖怪×魔術をやってしまったのです。
九尾を筆頭とし妖怪を始め、天照など日本の神々、魔術や死神も出てきます。
変な作品ですが、どうぞ暖かい目で見守って下さると助かります。

Index〆
第一部 九尾の妖狐
序章 とある少女の逃走劇 >>1
第一章 堕天使は静かに忍び寄る
交差点01 >>2 交差点02 >>3 交差点03 >>4 交差点04 >>5 交差点05 >>6
第二章 魔法名“双翼の闇”
交差点06 >>7 交差点07 >>8 交差点08 >>9 交差点09 >>10 交差点10 >>13 交差点11 >>16
第三章 黒の使者、蠢く
交差点12 >>25 交差点13 >>27 交差点14 >>30 交差点15 >>31

訪問者様〆
イビリ様 (( `o*架凛殿 アド殿 咲夜殿

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Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.27 )
日時: 2010/02/02 21:20
名前: 更紗@某さん ◆J0e2FQAL2U (ID: YpJH/4Jm)

交差点13

 そういえば神崎は詩世を発見する前、コンビニに行ってたのだった。テーブルに置いてあったビニール袋の中からホットドックなどのいくつかのパンを取り出し、詩世と二人で食べていた。
 詩世は物珍しそうに袋に入ったパンを見ると、まるで小動物のようにくんくんと臭いを嗅ぐ。暫く考え込むと神崎の「食えよ」という促しもあり、思い切って袋を破りパンにかぶりつく。すると気に入ったのか、両手でパンを掴み、むしゃむしゃと食べ始める。
 そんな詩世を見ながら、神崎は思い出したように訊く。

「そういやさグリゴリ……だっけ? そいつらって何でお前を狙ってるんだ?」

 詩世は食べる動作を止め、

「結構長い間追いかけられておるんじゃが、それはわしにもよく分からん。わしが九尾の妖狐だからかのう」

 「へえ」と神崎が相槌をうつと、詩世は話を続ける。

「“堕天の一団”(グリゴリ)は“薔薇十字団”(ローゼンクロイツ)と並ぶ巨大な魔術結社……つまり魔術師の組織なんじゃが、門番(ゲートキーパー)を始めとし多彩な役職があるとエルザから聞いておる」
「……それってお前、かなりヤバイ奴らから狙われているんじゃ?」
「そうじゃな」

 一応詩世を心配する神崎だが、当の本人は呑気にコンビニの安いパンを小動物の如く食べていく。
 ダルシーも撤退し、本人もそう言っている事だし、とりあえず今はコンビニ食でも食べておく事にした。

 ***

 少年は、迷っている。というよりは目的地が分からず辺りを彷徨っている、なんてところか。
 少年の年齢は外見からして14〜16というところだろうか。毛先が少しツンツンした感じのする黒髪に、充血したような赤い目。格好はまさに『冬』という感じを醸し出している。ニット帽のような黒の帽子、黒いマフラーに黒のコート、黒のブーツと黒で統一された完全防寒服。——と言っても、本人は常時この格好なのだが。
 只少年の服装の中で一つ合わない物がある。少年の足の付け根辺りに西部劇を思わせるようなガンベルトが装着されており、二丁の銃が装備されてある。
 少年はある少女を探していた。本来なら“双翼の闇”という魔術師が標的の少女を浚ってきてくれる筈だったのだが、色々と事情があって代わりに少年が借り出されたわけだ。
 少年——“堕天の一団”(グリゴリ)の一柱・オズは面倒臭そうに溜め息をつく。雪が降り積もる純白の世界に、オズの息が白くなる。
 だがそう面倒臭がってもいられなかった。オズの後ろから僅かながら気配がする。オズは装飾銃を取り出し何も無い場所を撃った。
 すると何も無い筈の場所から、弾け飛ぶ。——雪ではなく、ルーン魔術に使う護符が。
 オズが「出て来い」と言うと、オズの後ろから一人の少女が現れた。緩いウェーブのかかった、腰まであるクリーム色に近い金髪にエメラルドグリーンの瞳、白いYシャツに緑色の細いリボン。グレーのブレザーにグレーのチェックのミニスカート。ミニスカートの少し手前まである黒いニーソックスに茶色のローファーと、一見どこかのお嬢様学校に通う少女のようだ。顔立ちも可愛らしい。
 ……だがオズと同じく、そんな外見を台無しにしているのは少女が手にしているいくつもの紙。ルーン魔術に使う為の護符だ。右手に持っているのは十数枚程度だが、おそらくまだ隠し持っているのだろう。
 オズはそんな少女に見覚えがあるのか、呟く。

「お前……“夢幻の旋律”か」
「その名前で呼ばないで頂けやしませんかね。私にはコリンヌ=ベルジュっていう名前があるんですよ。“薔薇十字団”(ローゼンクロイツ)では立場上納得してますが、魔法名で呼ばれるのは好いちゃいねえんですよ」

 どこか粗雑さの混ざった敬語で、少女・コリンヌ=ベルジュは不満そうに言う。オズは面倒臭そうな顔で「分かったよ」と了承。

「で、コリンヌだっけか? お前、俺に何の用だ?」

 オズが尋ねると、コリンヌは護符をもう片方の手にも持ち、にやりと不敵に笑う。

「愚問じゃねーですか? 私は“薔薇十字団”(ローゼンクロイツ)なんですよ?」

 瞬間、オズの周りをコリンヌの護符が取り囲む。

「簡単に言うと、あんたを殺しに来たんです」

Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.28 )
日時: 2010/02/02 21:02
名前: 更紗@某さん ◆J0e2FQAL2U (ID: YpJH/4Jm)

やっとコリンヌ出せたwww
ダルシーvsエルザの会話で一回名前出てきたんだけど、気づいた人はいるのだろうか。

Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.29 )
日時: 2010/02/04 18:30
名前: 更紗@某さん ◆J0e2FQAL2U (ID: YpJH/4Jm)

ノベルの絵板にオズ絵をうp
……なんかオズじゃねえなと思いつつ。

そして期末テストが再来週にはあるというのに、何をやっているんだ俺は。

Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.30 )
日時: 2010/02/04 20:55
名前: 更紗@某さん ◆J0e2FQAL2U (ID: YpJH/4Jm)

交差点14

 冷酷な一言にオズが答える前に、ルーン魔術の護符が爆発する。

 「チッ」

 オズは軽く舌打ちをし、爆風から逃れようと上に高くジャンプした。そして僅かな滞空時間にもう一丁装飾銃を取り出し、コリンヌに金色の光を帯びた弾丸を連射する。だがコリンヌは弾丸を難なく避け「どこ狙ってるんですかぁ?」と嘲るように一言。
 着地すると、つくづく面倒臭い奴にあったものだと内心もう一度舌打ちをする。
 「殺しに来た」などとコリンヌは簡単に言ったが、その言葉に込められた意味は『人の命を奪う』という事。つまり言うと目の前の人間は、人を殺す事に何の躊躇いも持っていないのである。“双翼の闇”といい“夢幻の旋律”といい、元々魔術師にろくな人間はいない。人の命をゴミのように扱う魔術師だってざらにいる。
 ——もっとも、今まで数々の人間の命を奪ってきた自分が言える事ではないのだが。

「貴方の力はこの程度なんですか? まあ弱い方が殺しやすくて、私としては楽なんですがね」
「悪ぃけど俺はまだ死ねねえよ、“夢幻の旋律”」
「『死なない』じゃなくて『死ねない』なんですか、まあどっちだっていいですけど。最低限一生動けねえ身体くらいにはしてやるんで、安心しちまって結構ですよ——あと」

 コリンヌは右手に持っていたうち、一枚の護符をオズに向ける。

「魔法名で呼ぶなっつったでしょーが!!」

 怒りの咆哮と共に、ルーン文字が刻まれた護符が吹雪へと変化しオズへと襲い掛かった。オズはとっさに銃の引き金を引く。
 バァン!!と言う風船が破裂するような音と共に、銃口から弾丸が発射された。ただ少しおかしいのは、金色の光を帯びた弾丸が子供の頭ほどもある巨大なものと化しているのだ。
 コリンヌはその一撃に対し、瞬時に護符を並べて「異なりし氷と刃。照応、眼前の我が敵を殲滅せよ」
 護符は何十何百もの氷の刺となり、子供の頭ほどもある弾丸を相殺する。
 装飾銃から発射された弾丸の速度は、だいたいで言っても音速はある。先程もそうだが、普通の人間が見切れるスピードではない。別に小難しい事ではない。——魔術師がそこまで“異常”という事を示しているというだけ。根拠も法則も無く、只それだけだ。その中でもコリンヌは更に“異常”の域にいる事が、オズには分かった。
 だが、それ程の相手でもオズは怯えはしない。このレベルの魔術師なら、今まで何人と相手にしてきた。そして何度も殺してきた。
 
「ねえ、貴方の魔法名って確か——“黒の余韻”でしたっけ? 本当の名は何て言うんですか?」
「名は、……オズ。で、それがどうしたんだ」

 それを聞いたコリンヌはクスリと笑う。
 戦いの最中、急に真名を聞いてくる相手にオズは戸惑う。——あるいは、質問された事にではなく名を名乗る事に途惑っているのかもしれないが。
 
「そうですか、ではオズ。答えたくなきゃ答えなくてもいいですけど、何で貴方“堕天の一団”にいるんですか?」
「……は?」
「だから、何で貴方が“堕天の一団”にいんのか聞いてるんですよー」
「……別にどーだっていいだろ」

 オズは片方の装飾銃を放り投げてはキャッチしながら、コリンヌの問いに答える。何か言いたくない事情があるのか、それとも本当にどうでもいいのか
 コリンヌはそのどちらかは分からない、いやコリンヌの目的はそこではないのだろう。これ以上問い詰める様子はない。
 その代わり、衝撃の一言を発した。

「貴方、“堕天の一団”を抜けて“薔薇十字団”に入りませんか?」

 コリンヌが敵に対して発した言葉は、それだった。

Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.31 )
日時: 2010/02/09 19:07
名前: 更紗@某さん ◆J0e2FQAL2U (ID: YpJH/4Jm)

交差点15

 勧誘の言葉に、冷静だったオズもさすがに目を丸くする。コリンヌは自分達側につけと——今所属している組織を『裏切れ』と言っているのだ。
 驚きともう一つ、その言葉にオズは疑問を抱いた。コリンヌは敵である自分を殺しに此処に来た。『殺す』とも言っている——なのに何故『裏切れ』などと言ってくるのだろう。それとも油断させた隙に自分を抹殺する気なのか、はたまた仲間に引き入れ敵である“堕天の一団”(グリゴリ)に関しての情報を吐かせる気か。クスクスと笑うコリンヌの真意は分からない。
 ——何がどうであれ、油断はできねえな。
 オズは目の前の敵によりいっそう、警戒心を抱く。コリンヌの不振な言動に。……それと何故かは分からないが、コリンヌの言葉にどこか感じていた“嬉しさ”を埋めるように。
 そんなオズに対し、コリンヌは何も告げない。
 少しの間二人から言葉は発せられなかった。しかしついに沈黙を破るように、オズが問いかける。

「……“夢幻の旋律”」
「だからコリンヌ=ベルジュだっつってんでしょーが。ぶっ殺されたいんですか?」
「何で俺を誘う? お前は俺を殺しに来たんだろ?」
「……最初はそのつもりだったんですけどねぇ」

 コリンヌはクスクスと笑う。

「貴方の持ってる二丁拳銃……神器ですよね?」

 コリンヌの言葉に、オズは軽く舌打ちをする。コリンヌは気づいたのだ、自分が所有している銃が只の銃ではない事に。
 オズの脳裏に、昔の記憶が浮かんでいく。
 こいつも所詮は貪欲な鼠共と同じか。
 そう思った時にはどこか感じていた“嬉しさ”は消えていた。
 
「聞いた事があります。『魔弾』の異名を持つ神器、“太陽弾”(タスラム)。己の魔力を銃弾とし、練りこむ魔力の量によって大きさは自由自在。使い方によっては巨大な魔力の弾をぶっ放すだけではなく、科学兵器でいうと『散弾銃』(ショットガン)のように何十何百もの小さな弾を一気に放つ事もできる。遠距離戦においては最強と言われる神器……そうじゃないですか?」

 敵の武器を完璧なまでに解説するコリンヌに、オズは黙り込む。やはりこいつも貪欲な鼠と思っていいようだ、とコリンヌの印象を固める。
 何故オズがそう思っているかといえば、コリンヌが狙っているのは“オズ”という魔術師の存在ではなく、“太陽弾”という神器の存在。
 おそらく自分を“薔薇十字団”に引き入れた後、所有者である自分を殺して神器だけ奪うつもりなのだろう。
 だからこそ、オズは疑問に思う。

「今の“薔薇十字団”はそんなに力が欲しいのか? 神器ならてめえらも結構持ってるだろ。それに神器の『適合者』がそう易々と現れるとも限らないと思うけどな」

 オズは吐き捨てるように言った。
 コリンヌは一瞬吃驚したような顔でオズを見た。だが次の瞬間、馬鹿でも見たかのようにゲラゲラと笑い始める。

「貴方、馬鹿ですかあ? 魔術結社なら少しでも力が欲しいのが当たり前でしょーに。それは貴方のとこのボスだって同じでしょう? ましてや貴方が持っているのは神の力を宿せし“神器”ですよ、欲しいに決まってるじゃないですかー」

 力が欲しいのは当たり前だと言うコリンヌに対し、オズは諦めたように溜め息をつく。——そして答えが決まったように銃を構える。

「コリンヌ=ベルジュ」

 オズは初めて、少女を魔法名ではなく真名で呼んだ。

「“太陽弾”は諦めろ」

 クスクスと笑っていたコリンヌであったが、答えを聞いた瞬間表情を変える。くりくりとしたエメラルドグリーンの瞳は細まり、痛い程の殺意を宿す。両手には、まるで暗器のようにルーンの護符を取り出し構える。
 オズはコリンヌに銃口を向け、引き金を引いた。バアン!!という、静寂な純白の世界を引き裂く音が鳴り響く。
 だが標的のコリンヌには当たらず、コリンヌはオズの後ろへと移動した。とっさにオズは後ろを振り向く。
 コリンヌは両手に持っている護符を全て右手に移す。

「“五大元素の一角、大いなる恵みの水よ。それは人の生命を育み、時には堕落せし者を飲み込む断罪の青なり。水の支配者にして月の守護者、大天使ガブリエルの名を用いて此処に命ずる。今、我が身の為に此処に顕現せよ” 」


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