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Carrier
日時: 2010/02/21 13:23
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

クリックありがとうございます。 シリアスで少し暗めで歪んだお話にしていきたいです。 どうぞ。

<Characters>

──愛山 優──アイヤマユウ
16歳 精悍な整った顔立ちと黒い短髪から少年のように見える。 運び屋。 淡々とした性格。

──夜巣咲 洋一──ヨスザキヨウイチ
25歳 運び屋の上司。 「ヨッさん」と呼ばれている。 見目麗しい好青年。 優の保護者。

──稲辺 セイゴ──イナベセイゴ
22歳 金髪にサングラスという派手な見た目。 喧嘩が強く、関わろうとする者はごく少数。『捜し人』

──キサト──
12歳 透明な雰囲気の無口少女。 本名にトラウマがある為、『キサト』は姉であるノドリが付けた。
絵を描くことで相手に気持ちを伝える。 会話手段は筆談。

──柏崎 美影──カシワザキミカゲ
18歳 学校には行かず、闇に手を染める青年。 タヒんだような目をしており、ストレスからか髪の色素が抜けて白髪。

──驫木 音羽──トドロキオトワ
20歳 ニート。 藍とは高校時代からの友人。 能天気な性格。

──神授 藍──シンジュアイ
20歳 ニート。 音羽とは高校時代からの友人。
音羽の暴走に日々つき合わされている。

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Re: Carrier ( No.43 )
日時: 2010/02/19 17:23
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)



「いいか? そっちの目的は 『アブト』 の奴らを連行する事。 こっちの目的はプログラムチップ。それを忘れるなよ」
「分かってる。 だからこうして苦手なお前とまた会ってんだろ」

苛立たしそうにセイゴが言った。
煙草を灰皿におしつけ、かすかな煙の匂いが部屋に充満した。
その匂いを鬱陶しそうに嗅ぎながら、洋一がグラスを手に取る。

「美影に情報を求めたっつーの・・・お前にプライドはねェのか? あんな18そこそこのガキに情報を求めたりして」
「アイツも、『アブト』 に関わってる」

セイゴの言葉に、洋一が驚いてグラスを落とす。
中身は飲み干し、空だったが音をたててグラスは割れ、その破片がセイゴの手首に当たる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どういう事だ?」
それを全く気にせずに洋一が尋ねた。
「アイツは昔色々とワケわかんねー 『裏』 に首突っ込んでるからよ。 そのマフィアの双子と昔会った事があるらしい」
「あー、若気の至り?」
「違うと思うが」

サングラスの奥で、「ふざけるな」と目を細める。
洋一は両手を軽く上げて目を閉じた。
「ハイハイ。 で、双子って言うけど何ソレ」
「・・・・・・・このごろ起こってる連続殺.人事件、アレもそいつらのせいじゃねェかと俺は踏んでる」
「何で」

「殺.し方が素人すぎる。 美影の話でも、その双子らは武器に関しては全くの無知らしい。 遊びみてーにぶっ壊すんだ。 ・・・・・・色んな意味でイッてるな」
「で、セイゴはどーすんの」
「分かるだろ?」

ニヤリと口角を上げ、珍しくセイゴが笑う。
「優の後を追うんだよ。 俺もやる」
「・・・・・・・・イノハも動くらしいよ」
帰ろうとしたセイゴの体が止まった。
ゆっくりと振り返る。 驚愕の表情があった。

「・・・・・・・・・・・・・・・イノハだあ?」

「ああ。 ま、心変わりしてなければ」
「あいつも・・・・ナギも来んのかよ・・・・・」
「まー、そうだろうね。 イノハはナギが居なきゃ成り立たないし」
「・・・・・・・・・・・あ、そ」

短く返事をし、セイゴがドアに手をかける。
セイゴの姿が見えなくなり、一人オフィスに残された洋一は不敵に笑みを零した。

「俺はナギ君は 『人間』 だとは思わないけどね」



           ♪


セイゴが 『ハイエナ』 の本部から出てきたとき、既に街は夜。 暗闇だった。
──ナギが来るのか・・・・・。 メンドくせぇ。
脳内でブツブツと文句を吐きながら、煙草を取り出す。
ポケットからライターを捜そうと手を伸ばしたとき、

「クイズ出しま───っす♪」
「!?」

後頭部に何かを押し当てられ、そんな言葉。
どこか聞いた事のある言葉に、一瞬思考回路が硬直する。
「・・・・・・あ?」
「第一問目。 キミは何高でしょうかー」

素直に答えていいのかどうか迷っていると、ぐっとそれが押し付けられる。
「・・・・・・・富岳高校」
「正解でっす♪ んじゃ第二問♪ キミといっつも喧嘩してた生徒の名前は何でしょうー」

──ンなの覚えてるワケねーだろ。

そうは思ったが、ほんの数年前の事。
セイゴは普段あまり使わない頭を動かした。
喧嘩・・・確かにセイゴは喧嘩をよくした。 腕っ節も強く、顔立ちも整っている為、一目置かれる存在だった。
そんな自分と、喧嘩・・・・・・

ピントを合わせて、とある人物が浮かび上がってきた。
一瞬目をシロクロさせ、
「おまっ・・・・・・・」
「はい時間切れー」
しかしそれは相手によって打ち消される。

「んじゃ最終問題。 今、俺は何をキミの頭に押し付けてるでしょーかー」

相手の質問を最後まで聞かず、セイゴは身軽に身を伏せ、相手の手首を掴んで背負い投げをしようとした。
しかし、ソレは交わされて相手に逆に手首を掴まれてしまう。

「過激だなー♪ セイゴくんは♪」
「・・・・・・・・翡翠っ」
「でも惜しい。 俺は自分の指を押し付けてただけ」

セイゴが歯軋りをしながら、昔殺.し合いをした男を睨み付ける。
セイゴを見下ろしているのは、フードを深く被り、左顔半面に酷い火傷をした美形な男だった。

「いやー俺の事覚えててくれてたんだー♪」
「てめっ・・・・何しにここにいるっ」
「ひどいなー、セイゴくん。 俺だって自由気ままに外出ぐらいできると思うんだけど」
「ざけんなっ! テメ・・・・・生きてやがったのかっ」

憎しみを剥き出しにしてセイゴが怒鳴る。
翡翠と呼ばれた男は呆れたようにため息をついた。
「生きててって・・・・あのねぇ、生きてなかったらこうして久々にセイゴくんに喧嘩なんて売らないデショ」
「相変わらずムカつく減らず口だなっ!」

勢いよく立ち上がり、セイゴが翡翠の胸倉を掴み上げる。
「おっと」 「俺ぁ今忙しいんだっ! てんめに付き合ってる暇はねぇっ!」
胸を押し、翡翠がよろめく。 セイゴは足早にそこを立ち去ろうとしたが、


「 『アブト』 を捜してるんでしょ」


冷たい空気が背中を伝う。
戸惑いがちに、セイゴが足を止めた。

「俺さ、今まで人間なんてどーでもいいって思ってたんだよねー」

童顔の青年が爪を噛みながら独り言。

「セイゴとか、ヨッさんに会うまでは」
「・・・・・・・・・・・あ?」
「俺、人間なんてクズだって思ってんだけど・・・。やっぱクズだわ。 おもしろくて仕方ない」

ニヤリと笑いながら、火傷を負った男が衝撃の言葉を言い放つ。


「 『アブト』 のキングは、俺なんだけどな」

Re: Carrier ( No.44 )
日時: 2010/02/21 13:37
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

          ♪

セイゴと翡翠が出会ったのは、高校の時だった。
先輩である洋一も卒業し、セイゴはほぼ退屈で寂寞な生活を送っていたのだが、そんな彼の前に翡翠は現れた。

「人間ってさ、クズだよね」

冷淡、そういう単語がお似合いの冷たい笑みでセイゴを睨み付けてくる。
喧嘩を売られた。
セイゴはそう確信し、翡翠を殴りにかかった。

中学の頃から、セイゴは異様に喧嘩が強かった。
年上だろうが関係ない。 売られた喧嘩は買ってきた。 そして負けた事はない。
翡翠もそういった人間の一部だと思っていた。
しかし───、

彼は殴りかかったセイゴの腕をナイフで切りつけたのだ。
無論、喧嘩にそんな凶器なんてものはセイゴの中では疑問符が浮かぶばかりだった。
今までバッドや鉄パイプを持っていた集団を一人でぼっこぼこに潰したことはあるが、ナイフで直に切りかかってきたのは翡翠が初めてだったのだから。

「ほーら、すぐに皮膚は裂けて血が出ちゃう」
「テメ・・・・、汚ねぇ奴だな」
「そうかな。 そうかも知れないね。 でもそれが俺だから、セイゴくんには関係ないね」

その喧嘩は結局───セイゴの勝利へと終わった。

翡翠は殴られ蹴られで倒れ、セイゴが立ち去った後、彼に興味を持った。
「うわ・・・・人間ってクズだけど面白い」



翡翠が喧嘩を売ってきたから、二人は出会った。
そして今、またもや翡翠が挑発してきた為、二人は対峙している。

「・・・・・あんだって? アブトが・・・お前?」
「耳までダメになったの? まー当たり前か。 あんだけ裏表の激しい場所にいちゃあ鼓膜だって」
「アブトは、テメーなのか?」

静かな質問に、翡翠が身を起こす。
火傷を負った顔を隠すように髪の毛を持っていく。
「学習能力、及び記憶能力が無いなぁ。 俺は今、自分が 『アブト』 の 『キング』 だって言ったつもりなんだけど・・・・」

セイゴの拳が、きつく握られる。
「・・・・・・・・美影って奴を知ってるか?」
「美影・・・ああ、はいはい。 柏崎美影でしょ? 知ってるも何も、あの子は大分 『裏』 につかってるから、知らない人はいないと思うんだけど」
「・・・・・あのバカ」

──余計な『裏』に首突っ込むなって教えたのに。

翡翠は起き上がり、暗い空を見上げてほくそえむ。
「キミは、『捜し人』 をやってるみたいだけど・・・・そのリストに、俺の名前は入ってるのかな?」
「安心しろぃ。 バッチリ入ってやがるぜ。 一番にな」
「それは嬉しいねぇ」

冷たい空気を肺に入れ、翡翠がセイゴを見据える。
沈黙の時間が少しだけ流れた後、




「・・・・・・・あ?」

Re: Carrier ( No.45 )
日時: 2010/02/22 14:21
名前: 嵐猫 (ID: n5JXVFg7)

久し振りです。

わぁ、めちゃくちゃ、すごく!!
続きが気になる終わり方!!!!!!
どうなるんだろうかっ。

Re: Carrier ( No.46 )
日時: 2010/02/22 15:59
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

ご無沙汰です。
嵐猫sの小説にも伺いますねぇー

Re: Carrier ( No.47 )
日時: 2010/02/22 16:12
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

セイゴの目の前に突き出されたのは、紙だった。
二枚の書類。
「・・・・・・・・・・・・・・なんだ、コレ」
「君に教えておくけど・・・・・・『チップ』 はもう物じゃないんだ」
「???」

書類を手に持ち、セイゴが不思議そうにその書面を睨む。
「なんだ、このガキ・・・・・・・」
「『ハイエナ』 じゃない君に言っておく。 もうチップは消えた。 いや・・・・違うな、消えたんじゃない。 その形を “変えた” んだ」

翡翠の言っている事が分からない。
コイツは何を言っている?

「まさか・・・・・お前、まさか・・・・・」

セイゴはまだまだ甘かった。
この翡翠という男が、 『目的の為ならどんな事でも成し得る人間』 であった事も。

「『ハイエナ』は人殺.しにならなきゃいけないねぇ」
「テメ・・・、甘かった。 洋一の野郎にマジでぶっ殺.されていりゃあ良かったんだ」
「後悔は後にしても遅い。 既にもうゲームは始まってるんだよ」

響く、響く、響く、

体の内でのた打ち回る獣が、吠える。

「『ハイエナ』 の男の子・・・一人で行っちゃったけど大丈夫なの?」
「???」

何かロクでもない事を企んでいる翡翠の目。
その奥に隠れる本心を覗こうとするが、全く無意味だった。

「無駄足ならまだよかった・・・でも、あいつら二人がいるからなぁ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・あ、」
「連続殺.人事件、あったよね? あの犯人、まだ捕まってないなってさー」

──連続殺.人犯がもし、『この書類の双子』だったら───ッッ!!

「翡翠・・・・・ッッ!!」
「ストップ」
目の前を手で遮られ、セイゴが動きを停止させる。
「今俺をやっつけるのもセイゴくんらしいけど・・・いいの? 本当に大切なモノは何か・・・よく考えないと♪」

「なにを・・・なに、企んでやがるッ」
「そんなの、黒幕しか分からないって♪ ああ、本当にセイゴくんは面白い。 人間はクズだけだと思ってたけど、セイゴくんの単細胞ははるか上だよ」

勝ち誇ったように暗闇に姿を消す翡翠を呆然と見つめながら、

やがて──、

「くそがッッ!!」

セイゴの怒鳴り声が響いた。


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