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- ポゴリツァ戦史
- 日時: 2010/03/20 17:18
- 名前: ポゴリツァ脱走兵 (ID: fjWEAApA)
どうも、ポゴリツァ脱走兵です。
前の作品、消されてしまったのかと思っていたら実はエラーで一時的に見えなくなっていただけのようです。
早やとちってすみません。
よろしければ『タホ戦争 ある兵士の記録』と並行して見てってやってください。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.19 )
- 日時: 2010/05/01 17:03
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
2938年3月27日 2:10 ポゴリツァ大統領官邸
ヒッポ—「こんな夜に皆に集まってもらったのは他でもないこれからの進展についての話だ。」
独裁者は薄暗い部屋の中で恐縮する各将軍や大臣達に話し掛ける。
電灯の具合が悪いのかチカチカと点いたり消えたりを繰り返し、骨ばった独裁者の顔を一層不気味なものにさせていた。
ヒッポ—「今回の攻勢では完全に敵に打撃を与えられず、今のような泥沼の状態になってしまった。このゆきずまりの責任をとってプッカ陸軍司令は処分した。他の皆も気を引き締め、間違っても処分の対象にはならないことを祈っている。」
これをきいて周囲の人間がごくりと喉を鳴らす。
明日はわが身だ・・・。
ヒッポ—「前置きはこのくらいにしておこう・・・。ケチャマウリ防空軍司令。」
そう呼ばれて出てきたのは50代後半の頭の禿げ上がった男だった。
ケチャマウリ「今、我々の軍は経済封鎖と敵の反撃により大いに消耗している。このままの状態で今後大規模な作戦行動をとるのは難しくなっていくだろう。実際我が防空軍の戦闘機も稼働率が5割を下回った。そこで、・・・」
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.20 )
- 日時: 2010/05/01 17:26
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
彼は今後の作戦について話始めた。
戦争の長期化が避けられなくなった今、ポゴリツァは持久戦の体勢に入るためイヴィ=ザード南部、マギ=グレックス地方の穀倉地帯を制圧することに重点を置く事となった。
イヴィ=ザードはこの穀倉地帯に食料供給の6割を依存しているという状態で、それに加えて隣国ミン=グァンは昨年の農地改革に失敗し他国への食料供給どころではなかった。
内容としては、現在タホ地域に張り付いている主力を南へ転進させマギ=グレックス地方へ侵攻、空白のタホ地域は油田施設を破壊しつつ後退する焦土作戦を展開する予定だった。
防空軍は敵の食料輸送の妨害(海路・空路によるもの)を担当していた。
始めは皆はせっかく手にいれた地域をこうも簡単に捨てることをよくもこの独裁者が許可したなと驚いていたが、ケチャマウリ本土防空軍司令の話が終わると各自の作業に励むこととなった。
作戦の開始は1ヶ月後。
この兵糧攻めによりイヴィ=ザードはこれから100万人以上の餓死者を出す飢餓地獄に見舞われることとなる。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.21 )
- 日時: 2010/06/12 22:27
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: SnKL5sIi)
あの後ポゴリツァの軍隊は撤退に撤退を重ね、アージルたちは自分達がポゴリツァ軍をタホ地域から駆逐したのだと喜んでいたが、事態は急変した。
撤退中のポゴリツァの主力が急きょ転進、マギ=グレックス地方に侵攻を開始したのだ。
イヴィ=ザード側の主力はウル=カレンに集結しており、マギ=グレックスへの侵攻が開始された時には空白地帯となったタホ地域へ進出しており、侵攻地域への応援は遅れに遅れた。
2938年5月25日 ソン=パエリ イヴィ=ザード国内
アージルは砂地の真ん中にぽつんとたたずむ村の入り口付近でその場をグルグルと回っていた。
ラジオではマギ=グレックス地方でのイヴィ=ザード守備隊の敗戦報告が繰り返されていた。
やる気は十二分にあるのに味方を助けに行くことすらできない、そんな状況がアージルたちを苛立たせていた。
イヴィ=ザードの部隊は輸送車両の不足と、燃料の不足に悩まされていたのだ。
ポゴリツァ軍が撤退する際にタホ地域の主要なツヴァイ油採掘施設、精製施設を徹底的に破壊していったので燃料の宝庫を目の前にして燃料が手に入らないという皮肉な状態となっていた。
アージルは近くに寄ってきた虫を思い切り踏み潰した。
砂地の黄色い砂に緑色の体液が広がり、すぅっと地面に吸い込まれていった。
虫に当たっていてもしょうがないことは分かっていたが、他にやることといっても何もなかった。
思わずため息が漏れる。
ディッキスの部隊とも離れ離れになり、アージルは今、心の支えがなくなっているような気がした。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.22 )
- 日時: 2010/06/12 23:16
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: SnKL5sIi)
くそぅ・・・こんなとこで何やってんだ俺は・・・
パン屋で平穏にパン売ってそこそこ幸せに暮らしてるはずだったのに・・・なんで・・・
戦争だってすぐに終わる予定だったんだろ?
ポゴリツァの野郎どもめ・・・あいつらさえいなければ・・・俺は・・・俺は・・・
憎かった。とにかくどうしようもなくポゴリツァ軍に復讐したい気持ちに襲われた。
だが、今考えてみるとまだアージルはポゴリツァ軍の人間を殺したことがないのだ。
これまでにも何度か殺せるチャンスはあったと思う。
しかし撃たなかった・・・いや、もしくは撃てなかったのか・・・
引き金を引くのがためらわれるのだ。
引いたが最後、もう後戻りできなくなるのが怖かった。
部隊の指揮官がいる前では何も撃たないわけにはいかなかったので少し照準をずらして撃っていた。
今の俺なら・・・撃てるだろうか・・・
敵にだって家族が友人が・・・でも殺らないと味方が殺られるんだ・・・
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.23 )
- 日時: 2010/06/12 23:52
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: SnKL5sIi)
俺だって生きるのに精一杯なんだ。
やつらの心配をしてる場合か・・・?
正確にはアージル自身の心の問題だった。
アージルは敵を殺すことによって自分の心が壊れてしまうのが怖いのだ。
前に本で読んだことがある・・・殺した後は冷徹な戦闘マシーンみたいになってしまって感情が抜け落ちていく・・・
あるものは復員した後に殺した敵が夢に出てきて一生うなされるとか・・・
後者はもう経験しているようなものだった。
戦闘初日の仲間の戦死体を見てからというものの眠れないわけではないが、夢をみる度に助けられなかった仲間がアージルを責めた。
起きたときに冷や汗でびっしょりもしょっちゅうだった。
これに少々の敵がプラスされる程度じゃないだろうかとアージルは考える。
不謹慎な話だが最近はこの夢にもやや慣れてきた感がある。
問題は1つ目だった。
一度戦闘マシーンになってしまうと社会復帰が難しいのだ。
ひどいと周囲の人を殺害してしまうこともあるらしい。
生きるか死ぬかのこの瀬戸際で生き残ることよりも生きて帰った後の心配をするのも変な感じだったが、重要なことだった。
復員したらまた面接に来なさいと言ってくれたパン屋の店長にも迷惑はかけたくなかったし、何より一緒に暮らす家族のことが心配だった。
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