ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポゴリツァ戦史
- 日時: 2010/03/20 17:18
- 名前: ポゴリツァ脱走兵 (ID: fjWEAApA)
どうも、ポゴリツァ脱走兵です。
前の作品、消されてしまったのかと思っていたら実はエラーで一時的に見えなくなっていただけのようです。
早やとちってすみません。
よろしければ『タホ戦争 ある兵士の記録』と並行して見てってやってください。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.4 )
- 日時: 2010/03/20 19:00
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
しかし、実戦が始まってみると簡易な訓練を施しただけの彼らではとてもまともに戦うことはできなかった。
アージル「ああ、あっちからもこっちからも銃声が・・・とにかく隠れなくちゃ・・・どこかに・・・どこかに・・・」
勇ましく突撃していく仲間は次々とポゴリツァ軍の機銃弾の前に倒れ、闇雲にライフルを撃ちまくっていた者は弾が詰まって混乱し、わめき叫んでいた。
そんな中アージルはただ逃げ惑うことしか出来なかった。
最初の勢いはどこに行ったのか、ただただ敵の弾に当たるのが怖かった。
突撃で負傷したり死んでいった仲間を見てしまってから、足がすくんで立つこともできなくなっていた。
地面を這いずりながら物陰まで移動し、戦闘が早く終わるようにひたすら祈っていた。
まぶたをつぶれば死んだ戦友が思い出され、こんな自分が情けなくてたまらなかった。
英雄はもちろん、兵士としてすらまともに機能できていないではないか。
あんな偉そうに救世主だのなんだの言っていた自分は・・・
ただ頭を抱えて縮こまり震えていることしかできなかった。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.5 )
- 日時: 2010/03/20 19:24
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
しばらくして銃声が止み、目を開けるとそこには死んでいった仲間の死体が散らばっていた。
今まで張りつづけてきた緊張の糸が切れ、吐き気をもよをしてきた。
こみ上げててくる胃液をこらえ、目の前をもう一度よく確認する。
そこには訓練キャンプで仲が良かったシェリーギェンの姿があった。
まだ敵がいるかもしれないというのに思わずシェリーギェンの死体の傍まで走り寄り、ただ呆然と立ち尽くした。
目をぎゅっとつぶり、歯を食いしばっている表情は苦しそうとしか言いようがなかった。
体をよく見ると、左腕がもげてすぐ近くに転がっていた。
腹にも機銃弾による傷があり、背中側からは損傷した腸がはみ出かけていた。
俺も・・・こんなになってしまうんだろうか・・・
恐怖がアージルを襲う。
人間の身体は脆い。こんなの1発当たっただけで死ぬかもしれない・・・
アージル「や・・・やってらんないよ・・・命がいくつあっても足りない・・・・・・冗談じゃないよ。」
アージルはもう脱走の事しか頭になかった。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.6 )
- 日時: 2010/03/20 19:39
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
そうは思うものの脱走なんて簡単にできるもんじゃないし、もし見つかれば拷問の末に処刑される。
敵前逃亡は最も重い罪の1つなのだ。
拷問・処刑
この2つの単語がアージルを冷静にさせた。
そうだ、脱走なんて馬鹿なこと考えてる場合じゃない。
そんなことしたところで行く当てなんかないのだし、いずれ捕まり殺されるのだ。
アージル「今は味方のとこまで戻んなきゃ。」
腐臭漂う中、アージルは歩き始めた。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.7 )
- 日時: 2010/03/24 23:08
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
戻った時には味方陣地はもうなかった。
ポゴリツァ軍によって制圧され、味方は散りじりになっていた。
アージルは物陰に隠れながら制圧された味方陣地を見つめていた。
そこに残っていたのは戦友の死体だけ。
見回してみて、部隊の指揮官の死体は1つも見当たらなかったことに怒りがわいた。
死ぬまで戦えと何度も繰り返していた上官。
戦局が悪くなるや真っ先に逃げ出したのだ。
・・・・・・なんのために戦友たちは戦い死んでいったのだ・・・。
上官の保身のための盾になるためだったのか・・・?
それでも今のアージルには怒りをぶつける先がなかった。
こんな時、物語の中ならどうなっていただろうか。
悪の侵略者が攻め込んで全ザード国民がピンチ。
もうヒーローが現れて侵略者達を追い払ってくれるのではないのか。
そんな都合のいい物語なわけないのだ。
夢見てたってヒーローは現れないし、ヒーローにはなれたりしない。
神様に祈っていても、神様は助けてはくれないんだ。
アージルはそっとその場を離れ、さらに味方陣地の後方へと歩いていった・・・。
- Re: ポゴリツァ戦史 ( No.8 )
- 日時: 2010/03/24 23:43
- 名前: ポゴリツァ脱走兵# (ID: fjWEAApA)
2938年3月20日 ハルバラ— ポゴリツァ大統領官邸
その独裁者は少々焦りを感じていた。
予定の時期はもう過ぎていたのにウル=カレンがまだ落ちていなかったのだ。
予想外の抵抗、そして・・・
ポゴリツァ大統領補佐官「先の世界国家共同体の全体会でプルートがキルヒフの反対票を無理に押し切る形で我が国への経済制裁案を通しました。加盟国は5ヶ月、キルヒフも表面的には5ヶ月の輸出制限を行なう模様です。」
恐れていたことが現実になった。
ポゴリツァはまだ各産業の発展が進んでおらず、医薬品や武器弾薬の多くを海外(主にキルヒフ)からの輸入に頼っていたのだ。
それが切れるとなると・・・
ヒッポ—「そうか・・・。プルートめ・・・」
流石の独裁者も失望の色が隠し切れなかった。
これから向こうの反抗が来る。
この5ヶ月の間にプルートはイヴィ=ザードに武器を供給し、一気に体勢を立て直してくる。
更には、イヴィ=ザード北部から侵入してくるミン=グァンの部隊の数も無視できないものになっていた・・・
※ミン=グァンとは・・・ポゴリツァ、イヴィ=ザードの北にまたがる連邦国家で、イルピン大陸で唯一1億を越える人口を有している。
イヴィ=ザードとは兄弟国で、タホ戦争開戦の3日後にポゴリツァに宣戦布告。イヴィ=ザードと共闘している。
※先進国・・・プルート民主共和国、キルヒフ連邦共和国、その他11の工業国を指す。
イルピン大陸には先進国はない。(ポゴリツァ、イヴィ=ザード、ミン=グァンとも先進国ではない。)
この掲示板は過去ログ化されています。