ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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「ようそろ」
日時: 2012/08/02 23:44
名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: LUJQxpeE)

 こんにちは、紫です。ゆかり、じゃないですよ、むらさきです。

 設定が分からなくなるほど、久方ぶりの物語(笑)

 一年以上書いていませんでしたが、突然、書きたくなりました。設定もだいぶ頭から飛んでいて、少し大変ですが、また書き始めようと思います。昔々の文章なので、思うところが多々ありますが、せっかくのやる気をそぎたくないので、しばらくはこのままにしておきます
 おつきあいいただければ幸いです

 文章ぐちゃぐちゃ、構成ボロボロ、誤字脱字等連発と、まぁ、相変わらずそんな感じですが、よろしくお願いします。

 アドバイス、コメント等は二十四時間募集しています。

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Re: 「ようそろ」 ( No.15 )
日時: 2010/06/11 21:19
名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)

 戦おう。恐いという気持ちを振り払って、リュウカはしっかりと前を見据える。聖霊を盾のように自身の前に浮かべ、できる限りの速さで力をためる。カエンなら、一瞬にして限界値まで溜められるだろう。それから兄であるリュウクも。敵はもうかなり近づいている。間合いまで十秒と掛からない。「主人公じゃないから戦わない」と、そう言いきったカエンを惜しみながら、リュウカは一度歯軋りをした。
 その時だった。リュウカの隣から突然強い風が吹いた。ただの風ではない。辺りにあるものを舞い上がらせながら風は進む。そして着々と迫ってきた男達を——リーダーを残して——一瞬にして吹き飛ばした。
 唖然としていたリュウカは我に帰ったように隣を見る。そこにいたはずの最強の聖具使いはいなかった。

「主人公の戦いは、あくまでトップとの戦い。雑魚は雑魚らしく、脇役の遊び相手になるのがお似合いだろう?」

 風に何メートルか吹き飛ばされた、曰く“雑魚”たちが起き上がると、そこには「戦わない」と言い切った男が無表情で立っていた。その隣には巨大な光輝く鳥。黒装束の男達の表情は眼に見えてこわばる。同じ聖具使いとしてはっきりと分かるのだ。その圧倒的な格の違いが。

「ようそろ。さて、誰から遊ぶ?」

 ——後方で遊び、もとい虐殺が行われている時、リュウカとリーダー格の男は互いに相手の間合いを計りながら対峙していた。
 男の聖霊は黒い龍。大きさはリュウカのものより少し大きいくらいだろうか。その聖霊にリュウカは何となくしっくりこない気がしていた。何かがおかしい。しかし答えはまったく出てこなかった。

「なるほど、最強の聖具使いカエンか。死んだものと思っていたがな」

 男はそうつぶやくと、黒い龍を走らせて先手を取った。初激をリュウカは左へ大きく跳ぶことでいなす。そして間髪をいれずに自分の赤い龍を相手へと突撃させた。主人の危機を知り、黒い龍は狙いをリュウカから赤い龍に代える。二人の間で行われる激しい龍同士の戦闘。敵は訓練を受けた戦闘員。それに対してリュウカは今回が初陣であった。それでも彼女は決して遅れをとっていない。いや、むしろ優位に立っていた。兄や兄に付き従う聖具使いたちにいつもこてんぱに伸されていたリュウカはそのことに驚愕すると同時に、兄達の力を改めて思い知っていた。
 決定打を決めたのはリュウカの聖霊だった。黒い龍の胴体にかみ付いてそれを真っ二つにする。聖具使いとの戦いにおいて“勝ち”とは聖霊を倒すか相手の意識を奪うかである。聖霊は倒されるとそれから復活するまで相応の時間がかかる。聖霊の入れ物を壊してもいいように思えるが、それを壊すのは強度的にどんな聖具使いでも不可能であった。
 よってこの時点でリュウカの勝利は確定していた。

「くそ、忌々しい。フィンの最終兵器を奪って、ここまで来たってのに……」
「え……あなた、フィンじゃないの?」

 リュウカは男の言葉に耳を疑う。彼女の隣には戦いを終えたカエンの姿。彼もまた口にこそ出さないが目を見開いていた。二年前にフィンと戦っていたカエンとしては信じられないのだろう。彼が疑いすら抱かないほどその戦い方はフィンと同じだったのだ。
 敗れたリーダー格の男の周りには他のカエンに倒された仲間達が集まってくる。最強の聖具使いに敗れたのだ。戦うことはできない。それでもここに来たということはこのリーダー格の男への忠誠心がなせる業だろう。

「元、フィンだ。だからと言って、あんたらの敵であることは変わりないだろがな。フィンの上層部と決別して、俺たちは、俺たちの、フィンを、首領が、目指し……」

 言いながら、足元から徐々に男は石になって、すぐにさらさらと砂になってしまった。他の仲間達も同じように。消える寸前に伸ばされたリュウカの手。行き場を失った手のひらには、血のように赤い欠片が残っていた。

Re: 「ようそろ」 ( No.16 )
日時: 2010/05/26 19:04
名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)

 村人達を守っていた光のドームはいつの間にか消えていた。イハクも意識が戻ったようで、少しふら付きながらだが、ゆっくりとこちらへ歩いてきている。命に関わるような怪我はない。そのことにリュウカはほっとすると同時に、ふと思い出したように自分の手の中にあるものに目をやった。
 手に乗った赤い欠片は、わずかだが輝きを持っていた。はじめは妖しさを感じた光だったが、すぐにリュウカはどこか馴染み深いもののように感じられるようになった。どこか不思議な暖かさ。もっと言えば、体を預けてしまうような心地よさ。砂になって消えた男達。それが何を意味するのか、まだリュウカには分からなかった。それはあるいは幸いだったのかもしれない。彼女の中ではその現象が生命の死と直結しなかったのだ。
 依然として欠片が何か分からない。仮にも元フィンが持っていたものだから、カエンなら何か知っているだろう。そう思ってリュウカはそっと隣を見た。

「あの、カエンさん。これ、何か分かりますか?」

 リュウカは言った後に気づいた。カエンの表情が普段からは想像もできないほど青ざめていることに。目はこれでもかというほど大きく見開かれ、唇はわなわなと震えている。不規則に荒く吐き出される息は苦しげで、その様子は苦手意識を持っているイハクが隣に来ても全く変わらなかった。
 カエンはごくりと一度つばを飲み込む。そして一言だけ言った。

「それは……聖具の破片だ」

 言い終わると急にカエンは自分の口を押さえた。額には汗がにじんでいる。そしてすぐに村の奥へと走っていってしまった。リュウカは心配になって後を追おうとするが、それは誰かに手首を握られることで止められる。イハクだ。リュウカは懇願するように医者の目を見るが、女医姿の男はただ首を横に振るだけだった。

「聖具の欠片ならしょうがないわ。それはカエンちゃんにとって最大のトラウマだから」
「カエンさんの、トラウマ?」

 静かな口調で言うイハクに、リュウカは思わず問い返した。村の奥からは嘔吐や咳き込む音が聞こえる。表面的な強さを言うならカエンは人並み外れて強い。だが今はどうだろうか。イハクが引き止めてくれたのは救いだった。耳で聞いているだけにもかかわらず、リュウカはカエンがとても弱い存在に思えていた。

「ええ。でも、私から言えるのはそれだけね。あんまり軽々しく口に出していいことじゃないの」
「……じゃあ、イハクさん。一つだけ。聖具の破片って何ですか?」

 ここならまだ訊いても大丈夫だろうか。世の中の常識として、聖具は破壊できるものではない。リュウカにとってはそれの破片という概念が今までなかった。今“聖具の破片”なるものを持っているのはリュウカ自身である。握っているものの正体を知るくらいなら許されるだろう。
 イハクはそっとリュウカの手にある赤い欠片に触れた。

「そっか、リュウクちゃん——あなたのお兄さんは何も妹に教えなかったのね。真面目なあの子らしいわ。いいこと? 形あるものは、いつか壊れる運命にあるの。聖具が壊れるのも決して不思議じゃないわ。それが世の中の理で、おおよそ“モノ”と呼ばれるものの逝くべき道なの。リュウクちゃんが口を噤んでいる以上、そこまでね、私が言えるのは」

 イハクはそう言うと、リュウカに聖具の破片をしまうよう促した。そしてなるべくカエンの目に触れないように、と。
 村の奥からげっそりとした様子でカエンが戻ってきた。それとほぼ時を同じくして、わずかに吹いてくる風に雨粒が混じり始めた。助けられた村人達は天候のこともあって二人に泊まっていくように言うが、カエンはそれに応じようとしない。イハクやリュウカの説得もむなしく、結局は夜明けの近づく霧雨の道を先へ進むことになった。地を固めるには少なすぎる雨は、ただ旅人の身体を冷やすだけだった。

Re: 「ようそろ」 ( No.17 )
日時: 2010/06/04 23:41
名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)

 七

 結局、その日の夕方になっても雲が晴れることはなかった。
 霧雨が降ったかと思えば止み、止んだかと思えば降る。そんな繰り返しの中でカエンは一言もしゃべらずに前へと進み、リュウカは気まずそうにその後ろを追っていた。連れの体力を鑑みてだろうか。途中で休憩を取ることは何度もあった。そんな時も突然地面に座り込み、そしてまた何の前触れもなく立ち上がる。ただそれだけであった。
 かれこれ七度目だろうか。薄暗い街道で唐突にカエンは座った。この先は道が二本に分かれている。ひとつは町へと出る道。もう一つは山に至る道だ。目指す方向は山の向こうだから、おそらくはこのまま山に入るのだろう。リュウカはかばんからイハクの村の人々からもらったパンを取り出して、半分にすると片方を隣にいるカエンに差し出した。

「どうぞ、カエンさん」
「……いらない」

 カエンはパンを見ることもなく、左手で頭を支えていた。なんだかんだでこの男は朝からずっと何も食べていない。ずっとこの調子なのだ。深くかぶっている帽子と左手で表情は見えにくい。それがいっそうリュウカを心配にさせていた。

「もしかして、体調悪かったりしますか?」
「……別に」

 埒が明かない、とリュウカは少し呆れながらため息をついた。話が堂々巡りなのだ。ただでさえ二人とも少なからず雨に濡れている。このまま山だけはどうしても避けたかった。

「とりあえず、今日はそこの町に泊まりましょう、カエンさん」
「問題ないだろう。山へ行く」
「カエンさんが問題なくても私は大ありです。いつまで年頃の女の子を野宿させるつもりですか? 機会があるなら宿に泊まってお風呂に入らせてください」

 本当は嘘である。リュウカとしては全く野宿など気にしていなかった。しかし、カエンはこういわないとまず宿をとろうなんて思わないだろう。何分、二年間樹海で過ごした超人、いや、変人なのだから。

 そのあと少しの間カエンは渋っていたが、結局はリュウカの思惑通りに折れた。
 町の名は“シュクエキ”といった。おそらく真名で書くと“宿駅”であろう。つまり宿場。実際その名に恥じぬほど宿が乱立していた。

「昔は、何もなかったのにな」

 町の門前で、不意にカエンはつぶやいた。旅人と見るや否や、様々な宿から手を引かれる。活気のある町で、暗くなっているのにも拘らず人の往来が激しかった。

「そうなんですか?」
「ああ。どうやら、二年間で世の中はだいぶ変わったと見える……はぐれるなよ。そこまで面倒は見きれない」

 早口でそう言うと、カエンはリュウカの手を握って先程より速く歩き出した。その手は暖かいというより熱い。やはり体調が悪かったのだろう。そう思うとリュウカは申し訳なくなってきた。誰が何と言おうと巻き込んだのは彼女である。何もできない。何もできないが、リュウカはカエンの手を強く握り返した。

「——カエン、か? おい、カエン!」

 人混みの中から誰かが名を大声で呼んだ。男の声であるのは確かだ。カエンは少し辺りを見渡す。すると何かを見つけたようで、人を押し分けて数ある宿屋の中でもかなり高そうな建物の中へと入っていった。
 内装はきらびやかというわけではなかった。だがその一つ一つは相応の値がしそうな高級品で、リュウカは目をあちらこちらへ泳がせていた。
 
「引きこもりが終わったかと思えば、次は女の子と旅か?」
「ようそろ。誰かと思えば、あんたか。いつぞやの」

 ここの店のオーナーだろうか。上等な着物を着た三十代後半ほどの男は、カエンの前に立つなり親しげに話し始めた。カエンもカエンでいつもの無表情を少し緩めて返している。二年前にフィンを倒したカエンなら人脈も広いのだろうか。自分の里の人間以外知り合いらしい知り合いがほとんどいないリュウカは、少し恥ずかしくなって思わず俯いた。

「この町に泊まるんだろ? だったらうちに泊まっていけよ。金は取らないから。お前には返しきれない恩がある。あいにく一部屋しか空いてないが、それで良ければ好きなだけ滞在してくれ」
「いいのか?」
「おう。大体この宿始める資金はお前からもらったんだ。それに俺の“今”もな。かみさんもいて、その腹には子供もいる。正直こんなに楽しいものとは思わなかったよ、あの頃は」

 オーナーはそう言うと少し目を細めた。誰かがこちらに近づいてくる。着物姿の女性。その腹部は膨らんでいる。にこりと笑って礼をする姿は上品で、オーナーは満面の笑みで「妻だ」と言った。二、三言葉を夫と交わすと女性は「こちらへどうぞ」と静かに階段を上がっていく。段に足を踏み入れる前にカエンは一度立ち止まり、「よかったな」と昔なじみに微笑んで、一度祝福するようにその肩を軽く叩いた。

Re: 「ようそろ」 ( No.18 )
日時: 2010/06/05 18:03
名前: こたつとみかん ◆KgP8oz7Dk2 (ID: bGx.lWqW)
参照: 時間が欲しいなぁ…orz

ボンジュール!
久しぶりに見たら相当進んでいて驚きましたよ^^
あれ? これ前にも言った? …まあいいか。
それなりに想像していたこととはいえ、やっぱり戦闘シーンのカエンさんは特に格好良すぎますっ! 「誰から遊ぶ?」これは鳥肌モノですよw
そして、>>17で会ったカエンさんの知り合いが経営する宿屋に泊まるときにオーナーが言っていた気になる一言、「あいにく一部屋しか空いていない」。ま、まさか……^^;

あと、誤字ですかね。>>15での下から五行目、「それでもここへ着た」が目に止まりました。
「来た」かと。間違ってたらごめんなさい。

これからも頑張ってください!
こたつとみかんでしたっ!

Re: 「ようそろ」 ( No.19 )
日時: 2010/06/11 21:12
名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)

 どうもこんにちは! 体育祭の準備とか演劇部の助っ人とかでやっと久方ぶりにここに来れました。返信遅れてすみません……

 誤字……失礼しました。
 本当にいつまでも治りそうにないです。また教えていただけると本当にありがたいです。


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