ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 「ようそろ」
- 日時: 2012/08/02 23:44
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: LUJQxpeE)
こんにちは、紫です。ゆかり、じゃないですよ、むらさきです。
設定が分からなくなるほど、久方ぶりの物語(笑)
一年以上書いていませんでしたが、突然、書きたくなりました。設定もだいぶ頭から飛んでいて、少し大変ですが、また書き始めようと思います。昔々の文章なので、思うところが多々ありますが、せっかくのやる気をそぎたくないので、しばらくはこのままにしておきます
おつきあいいただければ幸いです
文章ぐちゃぐちゃ、構成ボロボロ、誤字脱字等連発と、まぁ、相変わらずそんな感じですが、よろしくお願いします。
アドバイス、コメント等は二十四時間募集しています。
- Re: 「ようそろ」 ( No.1 )
- 日時: 2010/04/10 17:58
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)
一
「いぃぃぃやあああぁぁぁあああ!」
日がほとんど差し込まない樹海で甲高い絶叫が響き渡る。見るとまだ十代中ごろの少女が息を切らしながら全速力で走っていた。可愛らしくツインテールにしていた真っ赤な髪は時間がたつにつれて悲惨なほど崩れていく。元々色白の顔は真っ青で、それとは対照的に明るいオレンジ色の目は必至でどこまでも同じ景色の前方を睨み続けていた。
「何なのよ!? あたし自殺志願者じゃないよー! あんた達には他の仕事があるでしょ!?」
少女は走りながらそう叫ぶ。その数メートル後ろには、象の頭に水牛の身体を持った生物、いや、怪物が三体。体力的にかなり限界が来ている彼女とは対照的に、怪物達はまるで遊んでいるかのようにスピードの上げ下げを繰り返している。しかも悪いことにこの状況でよそ者は少女のほうであった。慣れない土地でのデッドレースは圧倒的に不利である。見るものが見ればこの勝負の行方は明確だった。
「あたしは、人を、探してる、だけなのに! あぁ、そうよ! 健気にお兄ちゃんのためにいなくなった親友を探すすばらしき心を持っ——」
一瞬怪物のことなど忘れて自分に酔いしれていた少女は、大きな木の幹に足を引っ掛けて湿った土の上に転んでしまった。膝小僧を切ったらしい。たいした量ではないが傷口からは血が出ていた。
だが、そんなことはどうでもいい。何より今危険なのは——目の前に三体の怪物がご丁寧に揃って口を開けているということだった。
「ごめん、お兄ちゃん、あたし……」
少女は両目に涙を浮かべ、今目の前に迫っている死を実感してつぶやいた。
怪物が一斉に奇声を発しながら迫ってくる。鋭い牙が嫌というほど目に入ってくる。少女はぎゅっと目を瞑った。
だが痛みはいつになってもやってこない。少女は恐る恐る目を開けた。すると巻いていたうす紫色のショールが光を放っていた。兄が旅に出る前にくれたお気に入りのショール。怪物たちは光に包まれた彼女に少しも触れることができなかった。
「お兄ちゃん! ありがとう!」
少女はそうつぶやくと右腕を突き出した。その手首にはまばゆく輝く赤いブレスレット。数秒のうちにその光はどんどん大きくなり、そして片腕ほどの赤い龍になった。
「時間ができればこっちのもんよ! がーちゃん、行っけー!」
先程の泣き顔はどこに行ったのか、少女は不適に笑いながら龍に命じた。“がーちゃん”はその名に恥じないほどの大声を上げて怪物に突っ込んでいった。身体こそは小さいものの、龍は的確に怪物の急所を突いて、一体目、二体目、三体目と、確実に倒していく。少女は、余裕にもその間に崩れた髪を直していた。
「がーちゃん、ありがとう!」
少女は龍に駆け寄って頭を撫でると、再び光に戻してブレスレットに閉まった。そしてほっとして一度息を吐くと、ゆっくりと辺りを見渡す。どこを見ても木しかない。磁石も使えない樹海の中。ただ遠くのほうから先程の怪物と同じような雄叫びが、山びこのように聞こえてくるだけだった。
「あれ……? ここ、どこ? もしかしてあたし、迷った?」
第二の危機がやってきた。
少女は恐る恐る足を進める。先へ、先へ、先へと。しかしどこを見ても見覚えがある。見覚えがあるのにどんなに歩いても樹海のはじめにあった山小屋が見えてこない。
もしかしたらこのまま樹海をさ迷い続けることになるのではないだろうか。少女は思わず身震いをした。
「ようそろ」
わずかに風が頬を撫でた。その直後、背後でどこかで聞いたことのある声がした。低く感情のこもらない声。少女ははっとして振り返った。
「カエンさん……?」
- Re: 「ようそろ」 ( No.2 )
- 日時: 2010/04/11 15:23
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)
二
そこがどこだかは、よく分からない。ただ言えるのは、先程までいた場所ではないと言うことだけ。
ぼやける視界。辛うじて木のようなものが確認できた。それだけなら何も変わらないのだが、耳には微かに水のせせらぎが聞こえてくる。それから何かおいしそうな焼けた肉の臭い。だんだんとはっきりと周りが見えてくる。少女はゆっくりと身体を起こした。
それを見計らったかのように、横からしっかりと火を通した骨付き肉が飛んできた。少女は危うく落としそうになりながらも何とかそれを掴むと、飛んできたほうに目をやった。
「……食え」
火の後始末をしながら男はそうとだけ言った。薄汚れた白っぽいシャツにボロボロのジーパン、首には黒い金属製のペンダントをつけている。表情は深く被っている赤い帽子でよく見えない。わずかに見える赤い目はひたすら消えかけている火を見つめていて、耳に少しだけかかる程度の黒い短髪は少し汗か何かで濡れていた。
「え、あ、あの……」
「何だ? 水ならその辺にある。全く、人を見た途端倒れやがって、心臓に悪い」
「……すみません」
戸惑う少女を尻目に淡々とした口調で男はつぶやいた。何となく状況が理解できてきた。少女は男に申し訳ないと思いながら、ゆっくりと肉を口にし始めた。食べたことのない味だがなかなかおいしい。さらに絶妙な組み合わせで使われている香辛料とあわせって、少女の顔は知らず知らずのうちにほころんでいた。
「……で、リュウクの妹が、こんなところに何のようだ? 自殺志願者というわけではなさそうだが」
食べ終わるころあいを見計らって、男はやっと火から目を移して訊いた。彼がそう思うのも当然である。この樹海は自殺の名所として有名なのだ。磁石が効かないから迷ってしまえば出口には辿り着けない。さらに先程のような怪物。普通の人間は一日とて生き延びることはできない。少女が足を踏み入れた樹海はそんな場所であった。
「何度も言わせないで下さい。あたしにはリュウカって名前が——」
「——で?」
少女——リュウカはむっとした表情で言うが、その昔なじみの男はそんなことはどうでもいいと言うかのように遮って、またあの感情のこもらない声色で訊いた。
「“フィン”が復活しました」
「へぇ、そう」
少女の言葉に、男は無関心そうに適当な相槌を打った。“フィン”とは、かつてこの国で暗躍した秘密結社である。それなのにその反応だけとは、世の中に無関心であるにもほどがある。
「“へぇ”じゃないですよ! また人工的に“聖具”を作り出そうとしたり、怪物を作り出したり、本当に今大変なんですよ!?」
「で、それがどうした? 俺に何の関係がある?」
「何のって、二年前にフィンを倒したのはあなたじゃないですか、カエンさん!」
リュウカは勢いよく立ち上がって、呆れながら男を見た。目の前の男——カエンは確かに二年ほど前、フィンを壊滅まで追い込んだ男である。もちろん一人ではない。カエンの親友であったリュウカの兄をはじめとして、仲間は他にもたくさんいた。だが、最初に戦い始めたのは紛れもなくカエンであって、今回の復活で再び旗印として戦うべきは当然カエンであった。
ちなみに今出てきた聖具とは、生まれたときからその人間を見守っている聖霊のことである。先程リュウカが出した龍もそれで、戦闘に特化したものから果ては料理、裁縫に特化したものまでその種類は数え切れないが、フィンが作っているというのは主に前者である。
「リュウクはどうした? あいつは聖具使い長だろ? 国の」
「もう二年前に辞職しました。あなたに負けた責任を取るために」
「……あの、馬鹿」
カエンは真面目一筋といった親友の顔を思い浮かべて、初めて困ったような表情をしてつぶやいた。リュウカの兄であるリュウクは、かつて最強の聖具使いと謳われていた男である。当然のように若くして聖具使いトップの座に就き、順風満帆なエリートコースを突き進んでいたが、フィンとの戦いを通して出会ったカエンと一対一の決闘をして、紙一重の差で敗北。「負けたナンバーワンはナンバースリーより惨めだ」と言い残して、彼は付き従う部下と共に故郷に帰ってしまった。
「だから、もう一度戦ってください! お兄ちゃんはもう里のためにしか戦わないって……」
「……俺も、戦わない」
リュウカはひたすら頭を下げ続けるが、頼りの最強を倒した男は、ただそんな一言だけで切り捨ててしまった。仮にもカエンは巷では英雄と称されている男である。それなのに戦わないと、ただその一言だけ。リュウカはこぶしを強く握り締めた。
「かつての英雄のくせに、今の世界はどうでもいいんですか!?」
「——“かつての”英雄だからこそ、だ。俺の物語はもう終わっている。役を終えた主人公は人知れず消えて、語り継がれるのが一番美しい」
カエンはさらりとそう言うと手近にあった木の実を一つ口に放り込んだ。役を終えた主人公にしては若すぎるその横顔。リュウカは怒りももちろん湧き上がってきたが、それ以上に寂しさを感じていた。奇しくもそれは家を飛び出してくる直前の兄のように。里のためにしか戦わないと、そう言いきった自警団長も同じ横顔をしていた。
だからこそ、リュウカはつかつかとカエンのほうへ歩いていった。そしてうっすらと目に涙を溜めながら手を上げる。そして、一撃。ありったけの力を込めて兄の親友の頬をはたいた。出がけに兄にしたものと同じように。最強の名を持つ彼なら、避けようと思えばいくらでも避けられただろう。だがカエンはリュウクと同じように避ける動作も見せずに直撃を受けた。
- Re: 「ようそろ」 ( No.3 )
- 日時: 2010/04/11 16:38
- 名前: 小夜 ◆XJXbtjB8eQ (ID: 34QCmT3k)
吹奏楽の先輩と同じ名前やっ
- Re: 「ようそろ」 ( No.4 )
- 日時: 2010/04/12 18:17
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: HQL6T6.Y)
>>3
はじめまして!
先輩、紫さんですか!
いいですよねー、私ももっとかっこいい名前がよかったのになぁ
だからせめてネットだけでもw
あ、でも“ゆかり”じゃないですよ、“むらさき”です^^
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