ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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日時: 2013/10/20 21:25
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: HKLnqVHP)

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Re: 見えない物、見えない殺し合い。 ( No.1 )
日時: 2010/05/13 21:20
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

プロローグ

「はぁ……はぁ……」

少女は走っていた。
ただただ走っていた。
すでに限界は超えていた。

喉は砂漠の大地のように枯れ果て、
足は古いパイプ椅子のような棒になり、
枯れた喉がズキズキと痛み、息は隙間風のようにヒューヒューとなっていた。
足は走るたびにギシギシと小さな音がした。

少女の後ろには青い翼の生えた少女が、少女を追いかけていた。
体力の限界を超えていた少女とは反対に、青い翼の生えた少女は疲れなどを感じさせず、ただ走っていた。

「来ないで……こっちに来ないでよぉ……」

涙、鼻水、涎で顔をグシャグシャにした少女は、今、逃げているのだ。


そしてその少女の背中には、紫色の翼が生えていた。

Re: 学園と見えない物。オリジナルキャラ募集 ( No.3 )
日時: 2010/05/18 22:16
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

第一話

新学期。

上を見ると見事な桜が満開の花を咲かせていた。
下を見ると桜の花弁が道に散っていた。

梶原一炊は桜を掴もうとしながら、駅まで歩いて行った。
一炊は今日から高校一年生になる。

入るのは『紫陽花学園』。電車で15分程度で着く学園だ。

この辺りでは1、2を争う名門校で、お金持ちの家の子供や天才しか入れないと言われていた
そしてレベルが高いだけでは無く、校舎や制服がオシャレなのもその学園の魅力の一つだった。
去年までは入れる生徒の数が40人3クラス計120人と少なく、普通の中学校に通っている様な平民の入学は無理だと言われていたが、
今年から50人5クラス計250人に変わったのである。

自分の成績はそこまで良くなかったのだが、寝る時間を削ってとにかく勉強をしたお陰で何とか学園に入学する事が出来たのだ。
一年前を思い出して、俺は涙が溢れそうになった。

夏休みの終わり頃、
ついに世間は完璧な受験モードに変わり、その時にはほとんどの人間が行きたい高校などの進路を決めていた。
自分は家から近い高校に入学しようとしていたのだが、なんと父に『就職しなさい』と言われた。
高校に絶対に行きたいし、このご時世に中卒がろくな仕事に就けるはずが無かったからもちろん反対をした。
しかし父は『就職しなさい』としか言わなかった。
けれど、食い下がらない自分を見た父は『紫陽花学園なら認める』と無理難題を押し付けてきたのだ。

それからは地獄のような日々が続いた。
学校へ登校、休み時間、下校……時間さえあれば勉強をし、毛嫌いしていた塾にも通い始め……
『絶対に高校に行く!』それだけが俺の手を動かしていた。

そして運良く俺は合格できたのだ!
努力がむくわれて、俺は空すら飛べそうな気分だった。
ちょうどそこへ電車がやって来た。

「乗ります乗りまーす!」

やって来た電車にスルーと滑る様に乗り、俺は空いている座席に座った。
陽気な鼻歌を歌い、これから来る輝かしい学園生活に自分は心を弾ませていた。

Re: 学園と見えない物。オリジナルキャラ募集 ( No.4 )
日時: 2010/05/22 21:30
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

学園に着いて、最初に自分が発した言葉は

「でっけぇー!」

一昔前の雰囲気の校舎で、まるでハリーポッターに出てくる魔法学校のような建物だった。
この学校の生徒数は約500人(先生も合わせて)それにこのバカでっかい校舎は贅沢すぎではないか?

でも最高だ!こんな素敵な建物を見るのは中学三年の頃の京都以来だ!

でも不思議だな、何で校舎が離れてるんだ?
校舎は三つに分かれており、右と左に同じ大きさの校舎が二つと、真ん中にその二つより一回り大きめの校舎があった。
その三つの校舎は四本の道で繋がれていた。
一階、二階、三階、四階にそれぞれ繋がっていた。
ガラス?でちゃんと囲まれていて、落ちる事は絶対無いだろう。

体育館と校舎が離れているのは分かるが、不思議だな。

まぁ、いいか。
それより早くクラス表が見たい。
入学説明のパンフレットによると、講堂でクラスは分かるらしい。

体育館と講堂が別々にあるなんて、贅沢な!
そう思いながら俺は講堂へ走っていった。

「うわ!講堂もデカ!」

ちょっと走ると講堂が見えて、迷わなかった。
良かったとは思ったが、ここまでデカくする必要は何処にとも思ってきた。

講堂の中に突撃……じゃなくて入った俺は、すぐに中で迷ってしまった。
どこにもクラス表らしきものが見当たらなかったのだ。

講堂の中に居る生徒はすでに座る場所を把握しているのか、席について静かに待っていた。
どこだどこだと迷っていると、突然後ろから何者かに肩を叩かれた。

「ひぃ!」
「そんな驚いてんじゃねぇべぇ!」

後ろを振り向くと女子生徒が一人、迷惑そうな顔をしながら立っていた。

「講堂の入り口の真ん中でつったたれたら他の人に迷惑だべぇ!」
「あ、あぁ!ごめんなさい」

しかし何故彼女は田舎臭い喋り方をしているのだ。
目の前の女子生徒は特別美少女でもなく、不細工でもなかった。
ただ、高い位置に縛ったポニーテールと喋り方が気の強そうな感じに見えた。

「ん、あんた私と同じクラスだんべ」

女子生徒は俺のネクタイと自分の制服のリボンを指差した。
そのネクタイとリボンは、同じ灰色だった。

「ネクタイの色によってクラスって違うもんなの?」

そう俺が言うと、突然彼女はプッと吹き出して笑い出した。

「おめぇそんな事も知らずに、ここに入ったんべか?」
「わ、笑うな!
 だって俺、入学説明会の日は風邪で休んじゃってたし、パンフレットもまだ全部読んでないんだよ!」

合格が決まり一週間後の入学説明会の日、俺はどっと疲れが出てきたと思ったら風邪を引いてしまったのだ。
そして、後から渡されたパンフレットはなんと50ぺージにも及ぶ厚さ!

「かわいそうだがら、特別に教えてやるべ。
 この学校はなぁ五クラスに分かれてて、クラスによってネクタイとかの色が違うんだべぇ。
 一クラスは青色、二クラスが白色、三クラスが灰色、四クラスが黒、五クラスが紫なんだべ。
 それには理由があるんだべぇ……」
「理由……?」

俺は握り拳を作り、話にのめり込んでいた。

「あ、そろそろ時間だべぇ。
 私達は三クラスだがらあっちだべ」

女子生徒が指差した場所は、灰色のネクタイ・リボンをした生徒達が集まっている場所だった。
みんな礼儀良く席に座っているが、所々隣りに座っている人と仲良さそうに会話をしている人が居た。

「あぁ!よかったやっと場所が分かった!えーと……」
「広田善恵(ヒロタヨシエ)だ!あんたは?」
「梶原一炊って言います!」

でも良かった。普通の人もちゃんと居た(訛ってたけど)……
普通に会話をしている人も居るし、お金持ちの家の子や天才ばかりって訳じゃなくて本当に良かった。

俺はそっと胸をなでおろし、三クラスの担任と思われる先生から指定された場所に座った。

Re: 学園と見えない物。オリジナルキャラ募集中 ( No.5 )
日時: 2010/05/22 22:55
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

第二話

長い長い校長先生の話が終わった後、広田さんの後姿を見つけた。

「広田さーん!さっきの話の続きをプリーズ!」
「あー、そう言えばそだな。教室行きながら話すべ」

俺はある事に気付いた。

「広田さん。この人は誰です?」
「ん、コイツは私と同じ中学だった鷹山だべ。あと敬語やめるべ」

広田さんは隣に立っていた背の高い男子を指差しながら言った。

「俺は鷹山信勝(タカヤマノブカツ)!この馬鹿な広田と小学校からの知り合いだ。
 敬語じゃなくて良いからなー。気軽にノブって呼んでくれ」
「馬鹿って言うんじゃねぇべ!」

それにしてもノブは背が高いな……
自然と自分は彼を見上げる形になっていた。

「まったく……それじゃぁ話に戻って説明するべぇ」
「聞くべー」

広田に足をポコッと蹴られた。痛い。

「えーとなぁ、春夏秋冬(ヒトトセ)家と浮気(ウキ)家を知ってるべか?
 まぁそれで、その二つの家、仲がすんごく悪いんだべ」
「その家と、クラスによってネクタイの色が違うのに何の関係があるんだ?」
「大人しく聞いとけって。為になるから」

ノブに肩をポンッと叩かれた。とくになんともない。

「この学園ってかなり歴史あるでしょ?
 ある意味コレって伝統でさぁ、別にこれが初めてと言う訳じゃないんだよ」

いつの間にか広田が訛っていない事に気付く。

「今年ね、両方の家の息子さんが高校一年生になったん。
 まぁそうゆう事、二人共この学園に入学してしまった。
 
 そして、春夏秋冬家の春夏秋冬充(ヒトトセミツル)は青いネクタイの一クラス。
 浮気家の浮気麗奈(ウキレイナ)は紫のネクタイの五クラス。」
「あぁ、仲が悪い家の子を違うクラスに!」

広田は一回頷いた後、話を続けた

「それだけじゃない。
 
 クラスによって違うのはネクタイとその二人だけじゃなく、
 この学校って資産家の家の子とかが多いじゃん。
 それでさ、家によって支持している家が違うわけよ。
 
 その代表的なのが伊呂波家と加藤家。
 
 伊呂波家は春夏秋冬家支持者の家の子だから一クラス。
 加藤家は浮気家支持者の家の子だから五クラス。
 
 理由は簡単。同じクラスにしたりなんかしたらヤバイ事が起きるから。
 それで、一クラスは春夏秋冬家支持者の家の子が集まるクラス、二クラスはどちらかと言うと春夏秋冬家寄りの家の子、
 三クラスはどちらにも属さない中立の家の子、四クラスはどちらかと言うと浮気家寄りの家の子、五クラスは浮気家支持者の家の子」

ほほぅ……。
俺は何回も頷いた。

「自分以外全員が浮気家支持者の家の子で、自分だけ春夏秋冬家支持者の家の子だったら、絶対に苛められるよな……」

ノブが小さく呟く。

「ねぇ広田。伝統って事は昔もこうゆう事があったの?」
「うん、もちろんあった。
 仲が悪い一家が偶然同じ学年に入る事になったら、すぐにクラスが五つ分けられる。
 そうやってなるべく問題を避けるように出来てる……らしいべぇ」

広田がまた訛った。

「もしかして訛ってるのってえん……」

また蹴られた。痛い。

「あ、そうそう。
 クラスによって校舎が違うのも言ってなかったべぇ。
 一クラスが東校舎、五クラスは西校舎だべ。その他のクラスは真ん中の校舎だべ。
 職員室と保健室や食堂とかも一つの校舎に一つずつ、計三つあるべ。音楽室も美術室、被服室とかもとにかく沢山だべ!」

迷子になりそう。
後で学園の地図をちゃんと見ておこう。
そう思いながら、俺は1-3の教室へ入った。


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