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魔女か狼人間
日時: 2010/07/08 21:51
名前: カラマワリスト (ID: nWdgpISF)

調子に乗った2作目です。

前の続きと言えば続きです。
主に千夏と千秋が出ます。
暇つぶし程度に見てやって下さい。

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Re: 魔女か狼人間 ( No.5 )
日時: 2010/07/12 20:45
名前: カラマワリスト (ID: nWdgpISF)

第一ステージ
〜千秋サイド〜

人が落ちてきた。


場所は美吉駅近く。
用事が予想以上に早く終わったので、
バスで先回りして千夏を待ち伏せようと
バス停から駅へ歩いて行く所だ。

どうやら、頭上の線路から落ちてきたらしい。
時間的に考えて、千夏が乗ってる電車から落ちたっぽい。
大丈夫だろうか?

「・・・あ、ぐう」
「えっと、あの大丈夫でしょうか?」
「大丈夫・・・じゃ、ない」

なまりのある日本語だ。
どうやら、黒髪だけど外国の人らしい。

トラ柄のバンダナを額に付けている。
ボロボロでだぼだぼのノースリーブシャツに
ボロボロで古そうなジーパン。
ボロボロなのは多分、落ちた時のものだ。

そこそこの大通りに落ちてきたものの、
通行人達は何か怪しいモノをこの男性に感じたのか、
スルーしている。
まあ、妥当と言えば妥当。
ほめられるような事ではないけど。

「えっと、まずは救急車・・・」
その中で唯一、私だけがその男性に話しかけていた。

「救急車、呼ぶな」
携帯を取り出した私に
弱々しい声で抗議する倒れた男性。

「は、はい?」
「俺、病院とかに」
「え、と」
「運ばれると、ちょっとヤバい」
「あ・・・」

怪しい人に会ってしまったみたいだ。
後悔先に立たず。

「じゃあ、誰を呼べばいいのですか?」
「・・・***、****」

言われた番号に、電話をかける。

Re: 魔女か狼人間 ( No.6 )
日時: 2010/07/13 22:36
名前: カラマワリスト (ID: nWdgpISF)

電子音みたいな声の人が出た。

「はい、こちら山村運送でございます」
「・・・」

えっと・・・

何の冗談だろうか?
運び屋?

ちらっと、倒れた人を見る。
その視線に気づいたのか、
「【トラ柄】からの伝言だ、と言え」
と、指令を受けた。

「【トラ柄】からの伝言です」
「・・・ああ、そう」
「・・・・・・」

言葉が見つからず、指示を仰ぐ。

「●●●●●●、●●●●●●」

何語?
このヒトの母国語だろうか?

仕方なしに復唱
「え・・・と、●●●●●●、●●●●●●」
「・・・ええ、はい。今そこに【トラ柄】は居ますか?」
【トラ柄】というのはこのヒトのあだ名だろう。
「あ、はい。居ます」
「では、すぐそちらに伺いますので。
 動かないでください」
「は、はい」

切れた。

「今、どこの言葉だったんですか?」
「俺達の、集落の方言」
「へえ・・・ちなみに、なんと仰ったんですか?」
「失敗した、動けない」
「だけ?」
「だけ、で伝わる」
ふうん。

しかし、このヒトの知り合いというのなら、
やはりそっち系の人だろうか?

ついさっきまで一緒だった男性の顔を思い出す。
こういう時に居てくれたら便利なんだけど。

「ん、来たな」
「え?」

まだ数分しか経ってないはずなんだけど。
そんなに近くで待機していたのかな?

そんな事を思いながら、
【トラ柄】さんが指さした方向を見る。
ちょうど、それらしき人が信号を渡っているところだった。

「【トラ柄】・・・っとぉ。いたいたぁ」

妙に語尾を伸ばす特徴的な発音で話すその人は、
私と同い年くらいの少年だった。

「はっはぁ、哀れで無様だねぇ・・・っと」

にっこり微笑みかけてきた。

「僕の名前は【ブーツ】。
 よろしくねぇ、お嬢さん」

Re: 魔女か狼人間 ( No.7 )
日時: 2010/07/14 22:39
名前: カラマワリスト (ID: nWdgpISF)

身長は私より高そうだから、多分170前後。
肩まである金髪の髪の毛が目立つ。
優しそうな眼。
汚れた白いTシャツに、ジーパン。ごついベルト。
そのベルトにさした5本ほどの多種多様な剣。

・・・・・・

一か所だけ間違いがあります。

「えっと・・・」
「ん?あぁ、大丈夫だよぉ、この剣はただのアクセサリーだからぁ。
 少なくとも君みたいな美少女を斬ったりしないよぉ」
・・・・・・
美少女と評価されたのは人生初だ・・・
このヒトもそっち系だ。

「【トラ柄】ぁ、大丈夫かいぃ?」
「結構、大丈夫じゃない」
「そうかいぃ」

よっと

と、小さく掛け声を出して【ブーツ】君は
決して小柄とは言えない【トラ柄】さんを担ぎあげる。

「へえぇ、重いぃ」
「うるさい、運べ」
「ひっでえ暴君ぶりじゃん」

笑う【ブーツ】君。

「んじゃあねぇ、キレイなお嬢さん。ありがとぉ」
「いえ、別に・・・」
「感謝する、さようなら」
「さようなら」

もう二度と会う事は無いだろう。

手を振って別れた。
駅へ向かう。


美吉駅で夜まで待ったが、千夏は来なかった。

Re: 魔女か狼人間 ( No.8 )
日時: 2010/07/15 22:19
名前: カラマワリスト (ID: nWdgpISF)

第二ステージ
〜千夏サイド〜

「・・・おやじを知ってるのか?」
「ええ。
 あ、そういえば5年間くらいに飛行機事故で死んだんだっけ?
 ご愁傷さまでした」
「茶化すなよ!何でお前みたいなのが親父を——」

ス、と
人さし指で俺の唇を抑える。
「・・・??」
「それ以上知りたいなら、あたしについてきて」
「・・・・!!」
「あぁ、勿論2、3日はかかるわよ。
 でも、諸費用はあたしが払ってあげるからお金は要らないわ」
「〜〜〜〜〜〜〜!!」

ちょっと抑えられてるだけなのに、喋れない——?

「来る?」
「ン〜〜ン〜〜!」
「ああ、唇押さえてちゃ喋れないわね」

ス、と
唇が指から解放される。

「・・・わ、分かったよ」

悪い、兄ちゃん。
任せた、千秋。


親父の事を俺はほとんど知らない。
なぜなら、俺が物心ついたときから親父は
世界を股にかけ、家にはほとんどいなかったからだ。

だから、親父の事が知りたい。
俺は好奇心旺盛なんだ。


「じゃあ、とりあえず美吉駅で降りずに終点辺りまで行くわよ」
「ん、ああ」
「・・・んーその前にあんた、その服どうにかしてよ。
 ダサいよ」
「ふっざけんな!!
 お前の格好の方がどうにかしてるわ!!」
俺はグレーのパーカーにジーパン。
一方魔女は身体に穴こそ開けていないものの
黒を基調にしたベストに派手なアクセサリーと
パンクファッションに身を包んでいる。
髪の毛も派手な金髪だし。
「・・・これが、魔女か・・・ハァ」
「何そのため息」
「落胆のため息」
「言っとくけどねぇ、今時の流行に合わせてんのよ?」
「あっそ・・・」
他の魔女もこんな感じなのか・・・?
某魔女っ子は所詮凡人の妄想だったのか・・・?

「ん〜そうね、じゃ、このカチューシャつけなさい」
「何で!?」
真っ黒なカチューシャを嬉しそうに差し出す魔女。
なんか白い髑髏マークとかついてるし。
魔女が何故か修正液持ってるし!
「きっとカッコいいわ。
 あんたも若干金入ってるしね」
「確かに俺の祖母は外人だけど・・・」
なんだか、なぁ・・・

『次は〜赤波駅〜赤波駅〜』

美吉駅は、とうに過ぎていた。

Re: 魔女か狼人間 ( No.9 )
日時: 2010/07/16 23:35
名前: カラマワリスト (ID: nWdgpISF)

「じゃ、どこのホテルにするよ?」
「知るか」


結果、超高級ホテルに決めたらしい。
フロントで魔女が最初に放った言葉は
「一番高い部屋で2人」

そんなんじゃフロントの人も引くよ、とか思ったが、
さすが1流のフロントマン。
躊躇なく最上階のスイートルームへと案内された。

・・・さっすが、スイートルーム・・・
なんつー豪華な・・・

「ふーつっかれたぁー」
棒立ちの俺を無視する魔女は
真っ黒のベストを脱ぐと、ベッド脇に放り投げ、
ふっかふっかのダブルベッドに寝転がる。

「・・・お前さ、どっからお金を・・・?」
「んぁ?あぁ、カードで払ってるの」
「そういう事を聞いたんじゃ無く、資金源を聞いたんだが」
「ちょっとね。訊かない方が身のためよ?」
「・・・」
じゃあ、きーかないっと。

「あーあ、電車って疲れるわよねー」
「ああ、5、6回ぐらい乗り継いだもんな」
終電ギリギリまで乗ってたもん。
「通行手段としてはいいんだけどなー
 乗り心地をもう少し良くしてほしいなあ」
「そうかい」
「そうよ」

言いながら魔女は次々と服を脱いでいく。
・・・・・・
眼を逸してテレビをつける。
わぁ、大画面の液晶テレビ。お持ち帰りしたいなぁ。

「どうしたの?」
「いいから服を着ろ!!」
「あんたみたいなガキにみられた所でどうってことないわ」
「お前はな!!俺はガキだからどうってことあるんだ!!」
「へーあっそー」

衣擦れの音が野球中継の音にまじって聞こえる。

「じゃ、あたしシャワー浴びるからね」
「さっさといけ!」
「ほいほーい」
魔女がバスルームに向かう足音(恐らく全裸)。
続いてシャワーの水の音。
その間ずっと野球中継の音。

「あーさっぱり」
「あっそ」
振り返るような愚は犯さない。
どうせ全裸なんだ。この露出狂が。
「いちおー着てるわよ。バスローブ一枚」
「そんなの着てるうちに入らんわ!」
「これで寝るんだけど」
「あっそ!」
もう、色々限界です。
助けなきゃよかった。
誰か助けて。

「で?お父さんのこと、訊きたくないの?」
「あ、ああ。訊きたい」
「話する人の目を見なさい」
「あ、うん」

振り返る。
なんか、異常かつ非常に扇情的な画だ。

「せめて、布団に包まるとかできないのか?」
「は?」
「ってか、頼む、包まっててくれ」
俺の願いを聞き入れてくれたのか、
しかたないなーとか言いながら布団にもぐる。

そうして、物語は始まった。

「あたしの事を守るって言った人間は、4人いるわ」



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