ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- GAME 命をかけた殺し合い
- 日時: 2011/01/05 19:55
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
初めまして、山下愁です。
ちなみに、初投稿です!
その1…荒らしはお断りします。
その2…中傷、パクリ、お断りします。
その3…お客様、大歓迎です。
上記を守って、楽しく読みましょう。
目次
登場人物紹介>>01
プロローグ>>02
第1話>>03
第2話>>04
以下、もう面倒なので止め!
- Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.19 )
- 日時: 2010/10/21 16:41
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
逃げる逃げる。
追いかける。
また逃げる。
街を駆け抜ける、数人の人影。行く先も無く、ただ逃げるのみ。
時には前に現れる、他人を殴り蹴り道を走り抜ける。
その時に、いつも悲しそうな顔でゴメンとつぶやくのは、紅月だけだった。
「紅月、いちいち謝っていたらキリがないぞ」
翼が前に現れた少年を撃ちながら言う。
紅月は、倒れて動かなくなった少年を見てゴメンとつぶやいた。
背には、きちんと美咲が背負われている。とても荒い息をしていて、生きれるかどうかが心配だ。
「二階堂、しっかりしろ!!! 如月の事は諦めろ。人って言うのは、どうせ裏切るもんなんだよ」
「でも、如月はそう言う奴じゃない」
紅月は、沈んだ表情でつぶやいた。
この手は、もうすでに人を殺している。
———— 木村。
彼が1番嫌いな人物。
ビルの屋上から突き落として、姿を消したクラスメイトの少年。
紅月は、一切その事は気にしなかった。むしろ、したくなかった。
殺してから気付いた。
自分は、なんて愚かな事をしたんだろうと。
「二階堂しっかりしろ。お前のバカが唯一の救いなんだ」
「何だよそれ。俺のバカは武器って事?」
「「「当たり前じゃん」」」
翼、竜輝、隆大が声をそろえて言った。
「お前のバカな発言を聞いているとさ、何か明るくなれるって言うかな……。まぁ、そんな感じ」
隆大は、珍しく紅月を褒める。
その言葉を聞いて、紅月は少しだけ笑ってみせた。
「お前が褒めるのなんて珍しいな」
「当たり前だろうが。ライバルなんだからよ」
紅月と隆大は、喧嘩友達でライバル同士である。
その時、
「二階堂!!!!」
隆大の叫びが聞こえ、背にいる美咲が振り落とされる。
紅月は、床に叩きつけられた美咲を見て目を見開いた。
美咲は、ナイフを持っていた。刃渡りが僅か3㎝程の、小さなナイフ。
おそらく美咲は、紅月を刺そうとして隆大に振り落とされたんだろう。
「み、さき、」
「来ないで」
ゆっくりと近づいた紅月に向かって、美咲は短い台詞を吐き出した。
紅月は、思わず立ち止まる。
「どうしたんだよ美咲?」
「だから、来ないでって言っているでしょ?!!」
美咲は、半分泣きながら叫んだ。
紅月の動きが止まる。
「私、出来れば紅月君を殺したくなかった……。でも、でもぉ……」
美咲はナイフを落として、泣く。涙をボロボロと落としながら。
紅月は、美咲と同じ目線に立ち、顔を見つめた。
「綾羽が、殺せって……!!」
綾羽は、やっぱり裏切った。
紅月の呼吸が止まりかけた。竜輝が目を見開くのが見えた。隆大が息を飲むのが聞こえた。翼が舌打ちをするのが聞こえた。
美咲は泣き止まず、しゃっくりをしながら言葉を吐き出す。
「ゴメンね、ゴメンねぇ……」
「大丈夫だから、な? 美咲、俺はまだ殺されてないんだから」
紅月は、笑顔で言う。
美咲はその笑顔を見て、同じような笑顔を作った。
「ありがとう」
「何だ、結局役に立たないじゃん」
美咲がゆっくりと倒れた。
胸から血を流しながら倒れた。
後ろには、綾羽が狂った笑みを浮かべながら佇んでいた。
紅月の、赤い瞳が綾羽を映し出す。
震える手で、倒れた美咲の手を取った。
眠っている。
涙を流しながら、眠っている。
———— ダレカ、タスケテ。
「あ、あぁ……」
紅月の唇が、ゆっくりと開かれる。
「あぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!」
———— 第13話
- Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.20 )
- 日時: 2010/10/23 13:04
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
それは、突然の出来事。ほんの、0.1秒の殺人。
「あ、あぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!」
叫んでも、どんなに名前を呼んでも戻ってこない。
それほどに、人の命は儚くて。脆くて。小さなもの。
紅月の瞳からは、止めどなく溢れる涙が地面に落ちる。
翼も、竜輝も隆大も、バツが悪そうな顔をして美咲を見ていた。何も言わずに。
ただこの場で笑っていたのが、綾羽だけだった。
「てめぇ、てめぇぇ!!!」
紅月は綾羽に向かって叫ぶ。
綾羽の瞳が、泣いている紅月を捕らえた。形の良い唇が、歪む。
嗤った。そして、言った。
「良かったじゃない。役立たずが死んで」
お前は、本当に友達だったのかよ?
紅月はそう言いたかったが、今は黙っていた。
「だって、私美咲の事が大嫌いだったんだもん。死んで良かったぁ」
綾羽は、すがすがしい笑顔を浮かべて言う。声が妙に明るく、気持ちが悪い。
翼の右腕が、ハンドガンに触れる。ゆっくりと引き抜き、綾羽に銃口を向けた。
綾羽の視線が、翼を映す。
「それで殺すんだ?」
「黙れ!」
翼は叫び、引き金を引いた。
しかし、
「どこを狙って撃ったの?」
綾羽は、目の前でナイフを構えていた。
隆大が綾羽を蹴り飛ばし、吹っ飛ばす。
「しっかりしろ、紅月!」
「……ぁ、ぇ、」
紅月は涙を拭うと、美咲の腕をつかんで立ち上がる。
竜輝が紅月の手を、美咲の腕から放す。
しかし、またも紅月は、美咲の手を握る。
「いい加減にしろ! そいつはもう死んでいるんだぞ!」
「だからだ!」
紅月が叫んだ。
「せめて、せめてよぉ……。埋葬は、してやんなくちゃいけないだろう……?」
竜輝は、苦しそうに唇を噛んだ。
そして行動に移す。
紅月の手から、美咲の腕を無理矢理引きはがして紅月の襟首を持つ。そして、駆けだした。
翼と隆大も、後から追いかける。
「放せ!! 放せよぉ!!!」
紅月の叫びは空しくも、空へと消えた。
———— 第14話
※美咲さんゴメンなさい。残酷な死に方をしてしまいました。
- Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.21 )
- 日時: 2010/10/24 12:57
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
目の前から、人が消えて行く。
自分の仲間が、殺されていく。死んでいく。
「あ、あぁ……」
それを見ている、自分はとても愚かだ。
「何だよ、これ……」
翼は口に手を当てて、つぶやいた。
目の前に広がる世界は、血の海と人の死体だけ。皆死んでいた。
誰かが殺したのだ。
「嘘だろ、だって……クラスで喧嘩だけは強い郷田が殺されているって…!!」
隆大は、悲鳴のような声をあげた。声色は、恐怖の色に染まっている。
紅月の手が、小さく小刻みに震えていた。
どうして、人は死ぬの?
どうして、こんな狂ったゲームがあるの?
どうして、俺らは殺し合わなくちゃいけないの?
紅月の中に、質問が生まれては消えて行く。
運命なのだ。この狂ったゲームの盤上に立たされた、駒としての。
背負っていた大太刀を下ろし、静かに鞘を抜く。
「次会う時は、望月中で会えると良いな」
声がやけに静かだった。
紅月は、手に持っていた大太刀を地面に刺して、合掌した。紅色の両瞳からは、2筋の涙が伝っていた。
竜輝も、隆大も翼も、合掌した。
「一緒に生きていてくれて、ありがとう」
そう言った時だ。
チュインッッ
頬をかすめた、小さな弾丸。
「誰だ?!!」
竜輝は叫ぶ。辺りを見回す。
しかし、銃を撃った者は見当たらない。
「星川、お前か?」
「バカを言え。弾丸は真正面から飛んできただろうが。後ろにいる俺にどう撃てと?」
翼は、舌打ちをするように答えた。
それに、翼はライフルを持っていない。
「じゃぁ、誰が———」
「浅古ぉ!!!」
隆大の背には、大きな斧の影が。
煌めく白刃。このままでは、殺される。
しかし、隆大の体は動かなかった。まるで、石になったかのような。
(まずい、殺され——————!!!)
瞬間、
キィンッ!!
隆大の体が、誰かに押されて吹っ飛ぶ。見えたのは、大太刀を構えた紅月の背中。
紅月は、大太刀を押し斧で斬りかかってきた人を倒す。そして、首筋に大太刀を突き付けた。
紅月の背後には、ハンドガンを構えた翼の姿があった。
「今此処で殺されたくなければ、逃げな」
翼は、静かに冷静に言った。
斧を振ったクラスメイトは、一目散に逃げて行った。
「案外、弱い奴なんだな」
竜輝はため息をつくように、言葉を吐きだした。
翼は、ハンドガンをホルスターに収め、紅月に視線を投げた。
紅月の瞳は、とても虚ろ。光をまるで宿していない。
翼の唇が、何かを言おうと動いた時、
「死ねぇぇぇぇえ!!!!」
紅月に向かってくる、2つの刀。
両刀を持ったクラスメイトが、紅月に向かって斬りかかってきた。
(反応が、間に合わない!!!)
翼は紅月を押し倒そうと、手を伸ばした瞬間。
「うぉぉぉぉ!!!」
ザッ
地面に落ちる、血の塊。
紅月の目が、少年の姿を捕らえた。
「ゆ、うだい?」
隆大の体を、両刀の刃が貫通していた。
翼はハンドガンを抜き、クラスメイトを撃つ。
泡を吹いて倒れたクラスメイトは、白目を向いて天へと召されていった。
隆大の体が、ゆっくりと倒れて行く。
「隆大!!!」
紅月は、隆大を抱き起こす。
隆大は、薄く笑みを浮かべて紅月を見上げた。
「ハッ……。しくじったな……」
「喋るな、喋んなよ! 血が、溢れて……」
隆大は、紅月の腕を掴んで首を振る。
「俺は、死ぬんだ。自分の体は、自分が1番良く分かる」
「嘘だろ、お前が死ぬなんて!!!」
紅月は叫んだ。
隆大は、大きく最期の笑顔を見せた。
「絶対生き残れよ……!!! 紅月」
そう言い残すと、静かに眠っていった。
「隆大、隆大ぃ!!!」
紅月は、隆大の名前を何度も叫んだが、それでも隆大は起きなかった。
———— 第15話
- Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.22 )
- 日時: 2010/10/26 16:37
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
自分の為に死んだ隆大。
「絶対、生き残れ」
隆大の、最期の言葉。
紅月はただ泣くしかなかった。涙を流して、ただそこにいるしかなかった。
翼は、紅月に優しく声をかける。
「行こう。隆大が、絶対生き残れって言ったんだから」
「……そうだな」
紅月は静かに立ち上がり、隆大を見下ろした。
顔が紙のように白い隆大は、静かに眠っている。起きる気配もない。
「じゃぁな、隆大。生まれ変わったら、また喧嘩しような」
紅月は、そう言い残し2人と一緒に去った。
***** ***** ***** *****
3人は、街の中を走っていた。
「生き残るには、生き残るにはッ……」
「とりあえず、参加者全員見つければ……」
すると、竜輝がピタリと止まった。
気付いた翼が、竜輝の方を向く。そして、心配そうに顔を見上げた。
竜輝の表情は、泣きそうだった。まるで、今世界が終ると宣告されたように。
「どうしたんだよ、竜輝」
紅月は竜輝に声をかけた。
竜輝は、曖昧な返事を返すと震える声で言った。
「先に行ってくれ」
竜輝は震えている。
翼の目が、怪訝そうに細められた。
「何かあったのか?」
「何も。2人だけで、先に行っててくれ。頼む」
竜輝の声が、微かに震えていた。
「何かあったのか言えよ!!」
紅月は、竜輝の肩を掴んで、どなりつけた。
竜輝は、紅月の腕を振り払うと同じようにどなった。必死の形相で。
「良いから先に行けよ!!!!」
それは、必死の願い。
竜輝自身の、最期の思い。
その思いに気付いた翼は、紅月の腰を持つと駆けだした。
「竜輝ぃ!!!!」
紅月は、竜輝の名前を呼んだ。
竜輝は、今まで無表情だった顔に笑顔を浮かべると、手を振って2人を見送った。
「じゃぁな、2人とも」
蒼穹に、紅が混じった。
———— 第16話
- Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.23 )
- 日時: 2010/10/28 16:31
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
「竜輝ぃ!!! どうして、どうしてぇ……!!!」
紅月は、大粒の涙をポロポロと落としながら悲鳴のような声を上げる。
隣で見ていた翼は、ただ黙っているしかなかった。
竜輝は死んだ。
自分を犠牲にして、2人を生かした。
代わりに、竜輝は青い空の遠くに消えてしまったが。
「紅月、もう泣くな」
「でも、でも……。これ以上、仲間が死んだら嫌だ……!!」
紅月は、両手で顔を覆いながら言う。
表情は見えず、涙を流しているように見えていた。いや、実際流しているのだが。
翼は、紅月の頭に手を乗せた。
「大丈夫だ。まだ、俺がいる」
紅月の涙が、一瞬だけ止まったような気がした。
「俺は、お前の傍を離れないから。だから、泣くな。だらしがない」
翼の低い声が、紅月の中に響いた。
涙を拭い、翼の手を振り払い、前を向く。手には大太刀を持っていた。
「約束な」
紅月は、ボソリと一言告げた。
翼は一瞬驚いたような表情をしたが、微笑を浮かべ紅月の前に立つ。
そして、紅月の頬をグニッとつねった。
「あぁ、約束だ」
この痛さこそが、約束の証。
昔のように、こうして約束を交わし誓う。絶対に生き残ると。
紅月は、翼の頬も同じようにつねり返して、にっこりと笑う。
翼もさらに力を入れて、笑う。
「んじゃ、ぼちぼち行きますかな」
「たてたてよこよこまーるかいてちょんちょん♪」
「痛いッ! 痛いし、この野郎がッ!」
「いって! てめぇ、何しやがる泣き虫が!」
地味な喧嘩を始めた2人。その時だ。
「見つけた」
ドンッ!!!
地面のコンクリートが、めり込む音。同時に、少女の声がした。
なびく黒髪は美しく、清廉でしなやか。なんて綺麗なんだろうか。その少女は。
紅月の瞳が、見開かれた。
翼の口が、大きく開いた。
「綾羽!!!」「如月!!!」
———— 第17話
※クライマックス直前!!! です。