ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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GAME 命をかけた殺し合い
日時: 2011/01/05 19:55
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

初めまして、山下愁です。
ちなみに、初投稿です!

その1…荒らしはお断りします。

その2…中傷、パクリ、お断りします。

その3…お客様、大歓迎です。


上記を守って、楽しく読みましょう。


目次

登場人物紹介>>01
プロローグ>>02
第1話>>03
第2話>>04


以下、もう面倒なので止め!

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Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.14 )
日時: 2010/10/13 17:22
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

 自分の腹には、血がぼたぼたと流れ落ちていた。
 あぁ、死ぬんだなと紅月は身を持って実感する。何故か、それはこの傷だから。
 紅月の膝が、ガクッと落ちて地に倒れこむ。
 木村は、気味悪く笑っていた。嗤っていた。

 嗤っていた?

(俺、バカだな)
 紅月は小さなため息をついた。
 自分は死にかけている。
 皆に何度も何度も、ゴメンゴメンと謝りながら瞳を閉じた。 刹那、

 甲高い、轟音。そして、鼻を突く火薬の香り。

 そう言えば、自分の体痛くない。
「な、にが……?」
 紅月は身を起こし、状況を把握する。
 自分の目の前には、翼がいて銃を構えている。傍では、美咲が手当てをしてくれていた。
 傷は、ただの切り傷でそんなに痛くはなかった。
「な、んでお前ら!」
「ばーか。皆でこのGAMEから抜け出そうと言ったのはお前だろうが」
 翼は呆れたように言い、銃を捨てて代わりに背負っていた機関銃を構えた。
 相手である木村(本名:木村大介)は、慌てて薙刀を構える。
「まったく、心配して来てみれば……。こんな浅い傷で、倒れているんじゃないわよ。それでも男?」
「男ですけど、何か?」
 自分に向かって辛辣な台詞を吐く美咲に向かって、紅月は堂々と答えた。
 美咲は、治療が終わった紅月の体を叩き、行きなさいよと一言告げた。
 紅月は、大太刀を掴んで、鞘を抜く。そして、鞘を美咲に預けて立ち上がった。
「木村、どうして狂ったんだよ。仲間割れなんか起こしてよ」
「仲間割れ? これはGAMEだろ。殺し合うのが目的だろう?」
 木村は狂った笑みを浮かべながら、両腕を広げて言った。
 紅月はため息をつき、大太刀を構えた。
「翼、こいつ———— 俺がやっても良い?」
「良いけど。どうしてだよ?」
 翼は機関銃を下ろし、紅月に訊いた。
 すると、紅月は満面の笑みで答えた。

「俺、こいつ大ッッッ嫌いなんだよね」



———— 第9話

Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.15 )
日時: 2010/10/19 15:01
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

 紅月にとって、これは仲間割れだ。
 ただの仲間割れだ、そうに決まっている。少なくとも、あの変な殺し合いじゃない。
 けど、何故だろうか。
 心臓がものすごくうるさい。この戦いに、うずうずしているかのような。

 あぁ、うるさい。

「大嫌いなんだよね。こいつ」
 紅月は、ため息をつくように言葉を吐きだした。
 そう、紅月は大介が嫌いだった。
 いつも何かと意地を張っていて、それにうるさいし。ついでに言うと、美咲を虐めていた。
 そんな大介を、紅月は心の底から嫌いだった。
「何だよ、何だよぉ!! 嫌いって、お前ww」
「事実だけど、何か?」
 紅月は、平然と言ってのけた。
 大介の表情が強張るのが見えた。ざまあみろ。
「う、うっせぇな!!! 死ねよ、お前! 俺だって、俺だって、生きたいんだよ!」
 大介はそう叫ぶと、薙刀を振り回した。
 いい加減すぎる薙刀裁きは、戦いの素人である紅月でも簡単によけられる。
 紅月はひょいひょいとよけると、大介の腹に回し蹴りを叩きこんだ。
 それは見事にヒットして、腹部にかなりきついダメージが大介を襲う。
 大介は腹を押さえて、地に座り込んだ。
「痛ぇよ、痛ぇよぉ……」
 涙が滴り落ち、地を濡らす。
 そんな大介に、紅月は容赦はしなかった。
 大太刀を捨てて、大介に殴りかかる。
「ぎゃッ!!!」
 大介は顔を殴られた。口の中に、鉄の味が広がる。
 紅月の拳が、大介の顔を殴る。殴る。殴る。
 何故こんなに、紅月は大介の顔を殴るのだろうか。顔が嫌いなのか?
 嫌いならば、大太刀で大介の首をはねれば良いだけの話。しかし、紅月は殺すのが嫌だった。

 自分を、見失うから。

 誰1人、自分を救ってくれる人はいない。手を差し伸べてくれる人はいない。
 だから普通に、こんな事を出来る。


 パシンッ


「もう止めろ」
 翼が、紅月の拳を止めた。
「放せよ」
 紅月は、低い声で呻いた。しかし、翼は放さなかった。むしろ、力を込めていた。
 翼は紅月を自分の方に向けて、殴った。
「ッ!!!」
 紅月は殴られた右側の頬を押さえ、翼を睨みつける。
 翼は、紅月の胸倉をつかむと紅月に向かってどなりつけた。

「お前は、一体何なんだよ! 皆で、このGAMEから逃げようって言ってたくせして…。
 だから俺は、お前のそういう所が大嫌いなんだよ!
 人が死ぬのが怖いとかほざいて置きながら、現に人を殴り殺そうとしてるんじゃねぇか!
 お前は一体何なんだ! 誰だ! 言ってみろ!」

 紅月は、翼の腕を振り払い大太刀を鞘に収めた。
「ゴメン。俺、もうお前らとは一緒に居れない」
 細々とした声で謝ると、紅月は屋上の扉に手をかけた。
 翼はハンドガンを持つと、紅月に狙いを定める。
「このまま、お前を撃つぞ」
 そう言うと、紅月の手がゆっくりと下ろされた。

「撃てば良いじゃん」

 返ってきた答えは、とても悲しそうな声だった。


———— 第10話

Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.16 )
日時: 2010/10/19 15:49
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

 紅月は、こう言った。撃てば良いと。
 翼の翡翠色の瞳が、見開かれる。あぁ、死にたいのかと思った。
 美咲が、止めてと叫ぶのが聞こえた。
「……、正気か?」
 翼は、紅月に訊いた。
「じゃなきゃ、こんな事言わないよ?」
 紅月はほぼ棒読みで言ってのけた。
 その途端、翼の指が引き金を引いた。
 轟音、白煙と同時に銃弾が紅月へ向かっていく。
 その場にいる全員が、息を飲んだ。もちろん、紅月も。
 銃弾は、紅月の横を通り過ぎ、壁にぶち当たる。
「……じゃぁ、何でそんなに死にたくなさそうな顔をしてるんだよ。死にたいなら、大太刀で自害でもしろ」
 翼は、ハンドガンをホルスターに収めると大介に蹴りを入れた。
 大介は呻いて、地に転がる。
「そう言えば、俺もこいつ嫌いだわ」
 翼は大介の胸倉をつかみ、額にハンドガンの銃口を突き付けた。
 おびえているのが、瞳に映る。
 紅月は、その光景をずっと見ているだけ。
「……あぁ、全員このGAMEから抜け出すんだっけ? じゃぁ、殺したらまずいなぁ」
 翼はわざとらしく言う。
 すると、紅月が大介をずるずると引きずり、屋上の淵に立たせた。
 何をする気だ、と大介は叫んでいた。
「決まってんじゃん」
 紅月はにっこりとした笑顔で、一言。

「死ねよ、お前」

 大介の顔が、青ざめた。
「だって、言ったじゃん俺。お前が大嫌いなんだって」

「それも、殺したいほどに」

 1人ぐらい良いよなァ、だってこれはGAMEだしな。
 それに、こいつクラスから嫌われているし。消えても良いんじゃねぇ?
 紅月の頭に、そんな考えがよぎった。
 大太刀を鞘から抜くと、大介に突き付けた。

「紅乱月」

 赤い閃光が、大介を襲った。


***** ***** ***** *****

「これで、良かったのかな」
 紅月は、空を見ながら言った。
 翼はため息をつくと、

「良いんじゃない」

 と、適当な答えを返した。 その時だ。

 ドサッ————。

「———— 美咲?」

 紅月の視線の先には、美咲が倒れていた。
 胸からは血を流している。矢が刺さっていた。
「誰だ!」
 翼はハンドガンを抜くと、辺りを見回した。しかし、誰もいない。
 すると、矢の乱舞が起きた。
「?!!」
「逃げるぞ! 上原を背負え、今ならまだ間に合う!」
 紅月は言われた通り、美咲を背負う。微かに、息をしていた。ホッとする。
 翼は矢の放たれた方に、一発撃つと屋上から飛び降りた。
「えぇぇぇ?!!! 何してんのあんた! 自殺?!!」
「ンな訳あるかぁ! 早く降りてこい!」
 紅月は辺りを見回すと、屋上から飛び降りた。


「あーぁ、逃がしたよ」
「どうするんだよ、作戦失敗」
「団結してると思ったら、まさか小人数とは思わなかったよ」
「まぁ、何とかなるってぇ」


———— 第11話

Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.17 )
日時: 2010/10/19 17:20
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

 もう街の中を走る走る。めちゃめちゃ走る。
 紅月は、ただ翼を追いかけるしかなかった。だって、走ってんだもん。
 翼は、こっち!! と叫んで、右に曲がる。そこで、ようやく止まった。
「ハッ、ハァッ……。何なんだよ、辛い」
「俺も死ぬわ。でも、問題は上原だろうが」
 紅月の背中で、虫の息で何とか生きている美咲。
 翼はとりあえず、矢を抜き持っていた包帯とガーゼで止血する。
 美咲は、まだ辛そうにしていた。
「だ、大丈夫かよぉ……。美咲ぃ…」
 紅月は、あわあわとしていた。
 翼は、大丈夫だろうとつぶやいて美咲を紅月に押しつける。
「止血しといた。後は、全員の集まる所に逃げるだけ」
「あいつら、殺されないかな」
 紅月は、細々とつぶやいた。
 翼は、紅月にがすっと蹴りを入れるとデコピンをした。
「バカ、自信を持て」
 紅月は額を押さえ、翼を殴る。
「あぁ、サンキュー」
 翼は小さく笑うと、走り出した。


———— 第12話 前編

Re: GAME 命をかけた殺し合い ( No.18 )
日時: 2010/10/20 16:18
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

 ばたんッ!!! と、騒々しい音がして部屋のドアが開かれる。
「早く入れ!」
 翼が紅月に向かって叫ぶのが聞こえた。
 そして、慌てて入ってくる紅月が見える。背には、美咲を背負っていた。
 その3人の姿を見て、竜輝は驚いた様に訊く。
「どうしたんだ、3人とも。そんなに慌てて」
「み、美咲がぁ!!!」
 竜輝は、背負われている美咲を見て目を見開いた。
 撃たれた形跡がある。もう瀕死の状態だ。
 この緊張した空気を破ったのは、隆大の声だった。
「別に良いじゃん。使えない奴がそんな状態だし。いっそ殺すか?」
 隆大の言葉に、紅月は大太刀を抜き隆大の首筋に当てた。
 微かに震えている。
 紅月は、声を振り絞ってどなった。

「仲間を、役立たず呼ばわりするな!!!!!」

 白刃が闇夜をきらめいた。刹那、
「止めろ紅月!」
 翼が、紅月の腕を止めた。
「放せ、放せよッ!! こいつは、こいつはぁッ!!!」
「今はそんな事をしている場合か!」
 紅月は、小さく舌打ちをすると大太刀を鞘に収めた。
 翼の瞳が、隆大を睨みつける。そして、すぐに視線を移し、外の状況を説明した。
「今は外に出ない方が良い。矢の嵐だ」
「じゃぁ、上原は撃たれたのか?」
 誰かが訊く。
 翼は、静かに肯定した。
 紅月はというと、美咲の手を握って座り込んでいた。
 絶対に死なせない、殺させないから。皆で帰ろうぜ、とブツブツつぶやきながら。
「だから、出ない方が良いかもしれない」
 翼は真剣だった。
 守る為、皆を守る為。だから、真剣に話していた。
 いつの間にか、翼も紅月に協力するようになっていたから。
「でも、外に出なきゃ……、食料とかどうするんだよ?」
 竜輝が翼に訊いた。
 あぁ、それは心配ないと隆大が答える。
「乾パンとかあったろ。あれ食え。賞味期限もまだあるしな」
 隆大が乾パンの缶詰を、翼に向かって投げた。
 翼は缶詰をよけ、後ろにいた紅月に当たる。カンッと良い音がした。ついでに言うと、ブッという吹き出す音も。
「……痛いんですけど。誰だよこの野郎!」
「あ、てめーに当たったのかよ。ナイスピッチング、俺」
「てめっ……、表出ろや! ガチで喧嘩したるわ!」
「上等だごるぁ! やられる前に、やったらぼけこらかすぅぅ!!!!」
 喧嘩に発展。取っ組み合いの喧嘩になる。
 これには翼もお手上げだった。
 放っておこうと思い、後ろを向いた途端、

「死ね」

 背に駆け上がる殺気。
 翼は咄嗟に振り返り、相手を蹴り飛ばす。
 相手の手には、短いバタフライナイフが握られていた。
 途端に喧嘩が止まり、紅月が声をあげた。

「如月……!! お前ッ……!!!」


ドンドン裏切る仲間。

果たして、

最後に残るは、

希望か、絶望か。


———— 第12話 後編


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