ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- エンゼルフォール 二期スタートっ
- 日時: 2011/05/17 23:41
- 名前: 遮犬 (ID: KnqGOOT/)
- 参照: 二期スタートいたしましたっ!これからも宜しくお願いしますっ
クリックありがとうございます〜w
シリアス・ダークでは二作目となりますwはいw
まだ白夜のトワイライトが終わってないのに出すとか…って自分で思ったのですが…
息抜き程度&修行&何より書きたかったということもあり、書かせていただきますっ!
どうか暖かく見守ってくれると嬉しいです〜!
更新再開しました!色々ありましたが、更新続けたいと思いますw
閃光のテイルと掛け持ち状態ですが、どうぞ宜しくお願いしますっ!
物語を最初から読んでおさらいするのが面倒な方はこちら>>86
〜目次〜(ただいま各話修正を行っております)
一期イメージソング「二足歩行」(初音ミク)>>5
二期イメージソング「ラブアトミック・トランスファー」>>66
旋風のキャラソンとかどうですか?>>53
プロローグ…>>1
〜一期〜
第1話:僕はやがて、天使となる(修正完了。物語一部改変。誤字脱字、描写追加)
♯1>>9 ♯2>>10 ♯3>>11 ♯4>>26 ♯5>>29
第2話:思い、悩み、そして(修正完了。誤字脱字、描写追加)
♯1>>32 ♯2>>35 ♯3>>36 ♯4>>39 ♯5>>40
第3話:異質と異能の交差(修正なう)
♯1>>43 ♯2>>48 ♯3>>62 ♯4>>64
第4話:守るべき温もり(修正予定)
♯1>>76 ♯2>>79 ♯3>>83 ♯4>>84
〜二期〜
序章>>87
第1話:引き合う旋律
♯1>>88
お客さん一覧っ(オリキャラ応募してくださった方も含む)
阿嘉狐さん!
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〜オリキャラの方々〜
【天使代行】
友永 勇火(ZEROさん作)…>>19 木下 龍平(青銅さん作)…>>20
音野葉(狩人さん作)…>>22 小山 凛子(ヴィオラさん作)…>>57
罪木 耶麻(ヴィオラさん作)…>>57 アトラ・ダイダロス(ZEROさん作)…>>65
【天使】
獄(ヴィオラさん作)…>>16 戦渦 (Neonさん作)…>>17
青生 命(るりぃさん作)…>>18 覚 (三咲さん作)…>>23
暦(六さん作)…>>37 ルシファー(紅蓮の流星さん作)…>>41
燐光(るぅらさん作)…>>46 恩恵(駒犬さん作)…>>51
氷水 冷華(沙癒或さん作)…>>56
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- Re: エンゼルフォール ( No.9 )
- 日時: 2011/05/09 23:03
- 名前: 遮犬 (ID: KnqGOOT/)
『——起きて……』
……なんだ?
『——起きて、起きて』
……誰なんだ?
『——私のこと……思い出して』
ッ!?
「起きろ〜〜!」
頭の中に、突如高い女の子の声が響くのと同時に飛び起きる。
「うわぁっ!!」
目を覚ますとそこは普通の何気ない部屋。と、目の前にいる女の子の顔。
「陽嗚?(ひお) 何回も私が起こさないと本当に起きれないんじゃないの?」
「え……」
僕は愕然とした。
「ねえ! ちょっと! 聞いてるの!?」
だって僕は——
「……だっけ?」
「え!? なんて? もっとハッキリと——」
「だれ……だっけ?」
「——え?」
この少女のことも、自分のことも、何一つ覚えていなかったのだから。
「はぁ〜……とうとう重症ね……」
目の前にいる可愛らしい少女は頭を抱える。
「私の名前は花坂 遥(はなざか はるか)! 毎回陽嗚を起こしてるの私なんだけど?」
怒ったような顔で遥と名乗る少女は陽嗚を見つめる。
「あぁ……ごめん。ちょっと調子悪くて……」
陽嗚はわざと言い訳をした。必死にその場を誤魔化したかったのだ。
「え、大丈夫? 何か持ってこよっか?」
途端に遥は陽嗚のことを心配したような顔で見つめた。
陽嗚はその遥の顔に少々顔が赤くなる。
「顔、赤くなってるけど……本当に熱あるんじゃない?」
そういって遥は陽嗚のデコに手を当てた。
「え、あ、の……大丈夫……だから……」
手だけではなく、顔も近づいたため、体温がまたも上がる。
「……これ本気で熱あると思うんだけど……」
遥は一つため息を吐いて立ち上がる。
「よしっ! じゃあ陽嗚のため……じゃなくて、今日の朝飯はおかゆでも作ろうかな」
なんていうかバレバレな嘘をいいつつ自分のことを心配してくれているということがよくわかった、けど
違う。ダメだ。僕は、陽嗚じゃないんだ。
(記憶が……君が知っている、陽嗚は……僕じゃない。僕は一体何なんだ? 一体僕は……誰なんだ?)
陽嗚は遥が部屋を出て行った後、頭を抱えてうずくまる。
自分が何者かわからない恐ろしさが身を包む。わけがわからなかった。
(僕は……そうだ。滝のようなところから落ちて……それからどうなった?)
答えがこんな穏やかな日常なんて考えられなかった。自分は何をしているか。アレは、夢だったのか。
(たとえあれが夢だったとしても……僕は、記憶がないんだ……何一つ)
色々考えている内にエプロン姿に着替えた遥が部屋を開けて笑顔で手招きをする。
「出来たわよ? 早くきてきて」
笑顔で遥は僕の手を引っ張り、強引に連れて行く。
罪悪感が陽嗚を襲う。だが必死で平静を取り戻し、遥のいる元へと向かっていった。
向かったテーブルには並べられたおかゆや他のおかずがあり、それらを目で見て、すぐさま席に座る。
いただきます、と元気そうな声で言う遥がとても輝いていて——とても、辛かった。
目の前にあるおかゆをゆっくりと陽嗚は口に運ぶ。その様子をじっと遥は見つめている。
「……どう? おいしい?」
「……うん、すごくおいしいよ。ありがとう」
陽嗚は微笑んで遥にいった。
実際ものすごく料理は美味しかった。おかゆも味がないのではなく、優しさに溢れていた。
「えっ……! あ、な、なんでいきなりそんな事……」
ちょっと顔を赤くし、驚いた顔で遥は言った。その態度に陽嗚は首を傾げる。
「え? おかしかった?」
「おかしいも何も……今までそんなことあんまり言ってなかったじゃない」
「ッ……!」
僕の前の陽嗚は僕みたいなことは言わなかったみたいだ。なんていう贅沢なんだろうと思った。
こんな優しい環境があって…僕は何一つ覚えていないというのに。
食事も済み、僕は学校へ行く支度をするために多少フラつきながらも服があるであろうタンスへと向かう。
「本当に陽嗚、大丈夫? 衣服の場所まで忘れてるなんて…病院行った方が良いんじゃない?」
どうやらタンスの方では無さそうだ。
アルツハイマー辺りの症状を思われているのかわからないが心配そうな目で見てくる。
「いや、大丈夫だよ。まだ寝ぼけてるみたいだ」
苦笑しながら遥に言う。必死に記憶のないことを隠しながら。
「……陽嗚? ちょっと今日、いつもとおかしくない……?」
「えっ……」
自分が陽嗚という少年を演じているのがバレたのだろうか。
しかし陽嗚はなんて答えたらいいのかわからず、そのまま押し黙る。それしかなかった。
「……ま、そんなはずないかっ! だって陽嗚だもんね」
笑顔で遥はそういって玄関まで行く。
その姿に思わず安堵のため息が漏れる。
「ほら! 早く行かないと遅れるよ〜?」
「あ、うん」
僕は遥に導かれるかのように玄関まで走っていった。
学校生活は正直、楽しかった。
「よっ! 陽嗚! お前相変わらずアホ面してんな〜」
「えっと……」
僕が教室に入ると声をかけてきたのは元気そうな男子だった。
「ちょっと! 登っ!(のぼる) 陽嗚からかってる暇あったら手伝いなさいよっ!」
横から活発そうな感じの女子が陽嗚に話しかけていた活発少年に言った。
「あぁ、はいはい……まったく、未来はうるせぇんだからよ……」
頭を掻きながら登は未来の方へ向いて返事を返す。すごく面倒臭そうだ。
「ったく……。あ、陽嗚! あんたも手伝いなさいって!」
と、手招きをする未来。それに流されるように陽嗚は適当に返事をした。
とりあえずこの二人の名前が分かっただけでもまだよかった。
他に分かったことは僕は高校1年生だということ。クラスは2組。
姓は柊というらしい。家に貼ってあったのを見ると柊と書いていたためである。つまり僕は柊 陽嗚…。
そして陽嗚はクラスの仲間達にも結構好かれているらしく、廊下でもよくクラスの人に話しかけられる。
大体がアホ面してるな、今日も。といわれるのはこのさい気にしない。
特に仲が良いのは遥とこの登っていう男子と未来っていう女子のようだった。
「おはよー、未来」
その関係はどうやら遥も同じのようだった。
「おっ! 遥〜! 今日も仲良く陽嗚と登校かぃ?」
「違っ! ……そんなんじゃないってば!」
赤面になりながらも遥は僕のほうをチラッと見てくる。
「ははっ、ま、いつもの感じだなぁ〜お前らは」
登が大きな声で笑いながら言う。
陽嗚はそんな三人の姿をただ笑って誤魔化すしかなかった。
(僕は、何がしたいんだろうか)
だんだんそう思えてきたのだ。
「陽嗚? 早くこれ作ってよっ!」
と、未来から差し出されたのは折り紙。
「……何を?」
「何をって……折り紙でほら、アレ作るの」
未来が指を向けた先には他のクラスメイトが持っている折り紙の何か。
「ほらっ! いつもの感じで!」
と、言われても陽嗚はやり方を全く知らない……はずだった。
「……ほら、出来たよ」
自然に手が動いたのだ。見たこともないはずなのに。
「おー! さすが! 手が器用だねぇ」
そういって満足気に未来は折り紙の何かを持っていった。
——心が、痛くなった。
いや、心なんて、無いに等しい。
僕はもう、陽嗚という少年ではないのだから。
- Re: エンゼルフォール ( No.10 )
- 日時: 2011/05/11 23:51
- 名前: 遮犬 (ID: KnqGOOT/)
陽嗚はそのまま何事もなく家へと帰り、自分の部屋のベッドへと寝転んだ。
「……僕は一体……?」
寝転びながら何もない天井に向かって手を伸ばす。
だけどそこには何もない。何も、なかった。自分の何もかもが。
どうやら自分は一人暮らしらしいということに今更ながらに気付いた。
歯ブラシやそれらのものは一本しかなかった。ただ使い捨てが結構あったのはもしかして遥の分だろうか?
親もいない、兄弟もいない。肉親と呼べる人が陽嗚という少年はいないのだろうと思った。
陽嗚はベッドから体を起こし、自分の部屋を探ることにした。
何か前の陽嗚の形跡か何かがあるかもしれないと思ったためである。
「ん…これって…」
そうした結果出てきたのは、一枚の写真だった。
その写真には笑顔の自分の姿と少し赤面な遥が自分と肩を並べてくっついている。
その後ろには登の姿と未来、そしてもう一人…見たことのない少女がいた。
「誰だ……?」いくら考えようと記憶がないためわからない。その写真はとりあえず自分のポケットに入れる
さらに探し続けると、少し大きい宝箱のようなものが一番奥にあった。
「何だこれは……?」
気になり、それを取り出して開けてみる。随分と埃っぽかったが、それらを払い落として目を落とす。
「これは……ノート?」
その中に入っていたのは一つのノートだった。だが外見が普通のノートは違う。
なにやらゲームのRPGでいう魔術本みたいな外見を誇っていた。
何が書いてあるのか気になったため、その本を開いてみる。
『何のために生きて、何のために死んで、何のために生まれ変わるのだろうか』と、記されていた。
「……なんなんだこれは……?」書いてあることが全くわからなかった。これは誰に記された本なのか。
だが、何故か続きが気になり、さらに開いてみる。
『人は生まれ変わる時が最も美しい。人間は人間でないぐらいが丁度よく美しいのだ』
何がいいたいのか。これを書いて、誰かが読んで何になるのか。
しかし、次の文章は陽嗚にとって驚愕の真実となる。
『人は一度死ぬとエンゼルフォールという世界の天秤の場へと行く。そこは生まれ変わるのか、ただ死ぬのかが決められる場。世界のバランスを保つ場でもある』
「エンゼルフォール……?」
エンジェルフォールとは日本語に直訳すると、天使の滝。
自分は…一体どこから来た?
(……滝……? ……まさか?)
自分はこの本を読んでいく内に自分の正体が一つのモノに結びついていく。さらに読み進める。
『生まれ変わるためにはエンジェルフォールへと落ちなければならない。だが、生まれ変われる可能性は0.01%である。そして、生まれ変わった者は——』
そこから先は途切れていた。
「そんな……!」
自分は、何者か。この本に書いてあることが真実ならば、自分は——
一度、死んで、エンジェルフォール…つまりあの滝に落ちた。
「僕は……一度死んでる?」
手が震え始める。異様に手に持っていた本が怖くなり、放り投げた。
それも、確率が0.01%だ。つまり下手をすれば自分は生き返らなかった。
ますます自分という存在がわからない。陽嗚という少年を死なせたのは自分ではないのか。
自分は陽嗚ではなく、他の誰か。そして生まれ変わったから陽嗚という少年そのものが死んだのでは?
考えれば考えるほど恐ろしくなっていく。頭を抱えて今にも叫びだそうとした次の瞬間、いきなり本が勝手に風も吹いていないというのにページを開きだす。
陽嗚はおそるおそる開かれたページを見た。
『生まれ変わった者は、もう一度自分へ生き返る。だが記憶は全て失われる、さらに——天使代行として天使の力を授かる』
「天使の……力? それに天使代行って……?」
よく見るとそのページにネックレスのようなものがあるとことに気付いた。
それはとても綺麗で、純粋な翡翠色のしたネックレスだった。
しかし、陽嗚がそのネックレスを手に取った瞬間、勢いよく輝きを増す。
「ッ!? ま、眩しい……ッ!」
陽嗚は翡翠色の光に包まれる。そして目を開けたその時。
「……女の……子?」
目の前にいたのは美しい、と一目見れば分かるような、まるで、天使のような女の子だった。
年齢は自分より下か同い年ぐらいで、格好は白い天使が着ているような真っ白な服を着ている。
髪も白色でまさに天使といえるような寝顔。その少女が緑色の光と共に現れたのだった。
「うっ……」
少女はゆっくりと眩しそうに目を開けた。陽嗚は戸惑ってはいたがとりあえず話しかけてみた。
外はもう真っ暗で今の光は何か近所の人が騒がしくなるのではないかと思ったが今はそんなときではない。
「あの……?」
「どこに……いるの……?」
「……え?」
その少女はゆっくりと立ち上がりながらそう言った。眼はどこを向いているのか虚ろなまま。
目の前にいる陽嗚の姿が見えていないようだった。
「どこ……に……!」
そして少女は陽嗚の方へと倒れる。陽嗚は彼女をゆっくりと抱きしめた。
「ッ!? 大丈夫? しっかり!」
だが少女は気絶しているようで陽嗚の言葉は少女の耳には届いてはいなかった。
——まだ、振り向いてくれないの?
——私はこんなに声を枯らしてまで君を呼んでいるのに。
——君は忘れてしまったのか。私のことを。
——君が死んだって、忘れたっていい。
——私は、君のことを
——ずっと、待っているから。
物語は小さく、小さく、しかし確実に——歩み始めた。
- Re: エンゼルフォール ( No.11 )
- 日時: 2011/05/12 00:07
- 名前: 遮犬 (ID: KnqGOOT/)
「うっ……」
少女はゆっくりと目を開ける。なにやら色々のものが散らかっている部屋のベッドで寝ていた。
「あ……起きた?」
そんな少女に優しく微笑みながら近づいてくる陽嗚の姿が、少女の目に映った。
「……誰?」
「誰っていわれても……それは僕も聞きたいことだよ」
陽嗚はベッドの傍にあった椅子に腰掛ける。
「……ここは?」
少女は陽嗚に不思議そうな顔をして聞いた。それに対して陽嗚は少し俯き、苦笑気味に答えた。
「はは……どこなんだろうな? 僕にも、正直分からないよ。生き返ったのか知らないけど」
その少年、陽嗚の言葉に少女は驚いた目をして陽嗚を見た。
「生き返った? じゃあもしかして貴方が私の契約者ですか!?」
突然、少女は体を前のめりにして陽嗚に聞いた。どこからか必死さが伺えてくる。
「契約者……? 何の話?」
「貴方は……あの本を見ましたか?」
あの本というと思いつくのは陽嗚にとって恐怖でしかない本しか思いつかなかった。
「あぁ、読んだよ……。信じられないことばかり書いていた」
「となると……やはり貴方が私のマスターですか……」
少女は陽嗚の顔を見つめながら言った。その表情はどこか切ない感じもする。
そんな少女に陽嗚は訝しげな顔で口を開いた。
「わけが……わからない。マスターとかなんだか知らないけど……俺は、記憶がなくて……自分が、生きているのか、死んでいるのかですらわからないから……」
段々と言葉が強くなってきてしまう。この少女には関係はないのに、つい、口調を強めてしまうのだ。
「いいですか? 貴方は死にました。でも、生かされたんです」
しかし、そんな陽嗚をもろともせずに少女は落ち着いた口調で言った。
「生かされた? 誰に? 何の目的で?」
陽嗚はただ少女に質問するしかなく、連続で問いただす。
真面目な表情で少女は陽嗚を見据えて言う。
「あなたは選ばれたんです。天使代行として」
「選ばれた? 天使代行? それは一体……?」
「それは——ッ!?」
その時、少女は何かに察知したようにいきなり立ち上がった。
「来る……」
「来るって何が—ー」
「……天使。つまり、敵です」
天使が敵。それは一体どういうことなのだろうか?
自分は天使代行ではなかったのか。しかし、この少女は天使を敵という。少女の言っていることはどことなく矛盾している気がした。
「ついてきてくださいっ!」
少女は陽嗚の手をとって窓を開ける。
風がふわっと部屋の中に舞い込む。それがどことなく心地いい感じがするが、今はそんなことは陽嗚にとってどうでもいいことだった。
「ッ! ここ二階……!」
「平気です!」
腕を引っ張り、少女は陽嗚と共に窓へと飛び出す。
勢いがあったため、心の準備も何もかもが整っておらず、陽嗚はそのまま空中に投げ出されることとなった。
「うわぁああああああ!!」
少女は華麗に近所の家の屋根へと舞い降りる。陽嗚は鈍臭くも尻餅をついて着地する。
「急ぎますよっ!」
少女は陽嗚の手を引っ張りながらも、ものすごい勢いで走る。
「急ぐって……どこへ!?」
振り回されるような形になりながらも質問をする陽嗚。
「天使のところにですっ!」
「何で!」
「決まってるじゃないですか! このままほうっておくと——天使に記憶を喰われるからです!」
少女は屋根を次々と飛び越えていく。陽嗚は少女に腕を掴まれているため、ついてきてはいる。
「天使に記憶を喰われる……?」
天使というのは確か神の使いか何かじゃなかったのか。何故記憶を喰らうのか。
「貴方は天使代行、私は召喚者、及び……通称、堕天使と呼ばれるものです」
少女は大きく飛躍し、地上へと降り立つ。陽嗚もそれにつられる形で何とか降り立つ。
「神のコンピューターと呼ばれるものがあります。神など実体は存在しないものなのです。神のコンピューターは天使によって管理されているのですが、天使のある一人がシステムを変えたのです。天使が、神になろうとしたのです」
少女は立ち止まる。陽嗚を掴んでいた手を同時に離された。
目の前にいた者。それは翼に白い羽を生やした姿は人間の者。
「天使代行の目的は……神のコンピューター、ゴッドイレギュラーと呼ばれるものを潰すことなのです」
その天使のような者はこちらを向く。そして、微笑む。
その顔に陽嗚は背筋が凍りつきそうになった。とても、冷血な目。天使といえたものではなかった。
「天使の力を解放してもらえますか?」
と、少女が陽嗚にいった。
「天使の力?」
「……もしかして……解放の仕方がわからないのですか?」
陽嗚は首を縦に振る。何も知らないのが当たり前だった。何も見ていないし、関わろうとも思わない。
「翡翠色の光を放つネックレスはどうしました!?」
陽嗚と少女が話している間にも天使と思わしき者はゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
「今持ってるけど……! 危ないっ!!」
「ッ!!」
少女は天使と思わしき者に殴り飛ばされ、陽嗚のほうへと飛ばされる。
「だ、大丈夫か!?」
「貴方は……解放の仕方を思い出してください。それまで私が天使を…止めます」
少女は格闘家のように構える。陽嗚を守るということなのだろう。
「解放の仕方を思い出すって……」
そんなこと、何一つもわからない。
「はぁっ!」
少女が天使と思わしき者に打撃を繰り出すが避けられ、逆に打撃を受ける。
「くっ……!」
状況は少女にとって最悪だった。
(せっかく……ここに来ることが出来た。私は……見つけるまで……死ぬわけにはいかない……ッ!)
だが、体が少女のような彼女は天使と思わしき者に歯がたたなかった。
「ッ! ……!!」
陽嗚は今更ながらに気付いた。少女の名前を自分はまだ知らないということを。
そして、そこに何かヒントがあるのではないかと。
「名前……! 名前を教えてくれ!!」
陽嗚は叫んだ。すると少女はそれに答えるかのように
「旋風……(つむじ)。旋風ですっ!」
「旋風…! 旋風! 僕は君を召喚する!」
陽嗚はいつの間にか叫んでいた。
翡翠色をしたネックレスが輝きを放ちだす。
「ッ!!」
また、少女——いや、旋風と出会った時と同じ眩しい翡翠色の光に包まれる。
そして、目を開けた先には。
翡翠色の綺麗な6本の翼を生やし、少女はまるで別人のような雰囲気を保っていた。
それは堕天使といえるものではなく、まさに天使。
「……契約、完了。これより——天使を破壊する」
- Re: エンゼルフォール ( No.12 )
- 日時: 2010/09/26 16:55
- 名前: 青銅 (ID: 2Ujo/OfH)
おぉ・・・面白くなりそうですね・・・!
- Re: エンゼルフォール ( No.13 )
- 日時: 2010/09/26 20:57
- 名前: さわ (ID: vysrM5Zy)
エンゼルフォール………
わたしがそこに落ちたら、
確実、生き返って来れないでしょうね(笑)
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