ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 片雲の黒装束と赤い羽根
- 日時: 2011/01/14 17:19
- 名前: 真瑠 (ID: VJgd52Wn)
これは、
片雲=ちぎれ雲 | ちぎれ雲のようにゆったりと旅をする
黒装束 | 黒装束と
赤い羽根 | 黒い羽帽子についた赤い羽根
を身にまとった青年の話。
*キャラクター*
◆フェーヴル・ロイト
・・・黒装束の旅人。
ある『力』を持っている。
◆メア
・・・フェーヴル捜索隊の権力者の一人。
ある目的から、ロイトを追っている。
◆グラウス
・・・フェーヴル捜索隊の権力者の一人。
主に情報収集を得意とする。
その他キャラクター随時更新予定**
まだ科学が発展しきっていない、西洋の街並みが舞台です。
私の日々の体験から感じたことを、『黒装束の旅人』を通じて皆様にお届けできたら、と思います。
- Re: 片雲の黒装束と赤い羽根 ( No.36 )
- 日時: 2011/01/14 17:11
- 名前: 真瑠 (ID: VJgd52Wn)
第一話 麗しの令嬢 Ⅸ
「・・・・・」
黒装束の青年は押し黙る。
彼女の意見に、賛成できないから。
確かに、レイラ嬢は美しい。
けれど、本当の『美しさ』とはかけ離れていると思うから。
「レイラ嬢・・・あのベンチに座っているご老人をどうお思いになられますか?」
黒装束の青年は、目線で白いハトを膝に乗せている老婆を指した。
令嬢は、その方向に目を向けると、一瞬訳が分からない、といった様子でロイトを見てから言った。
「え?・・・・あら・・・あの年寄りのこと?・・・クスッ」
「どう思うかですって? そうね、必要のない人間だわ。何も出来ないし、美しくもないもの!」
ロイトは一瞬顔を歪ませたが、嘲笑に夢中になっているレイラ嬢は全く気付かなかった。
そんな彼女の様子に、静かにため息をつく。
「果たして、美しさは見た目で決まるものでしょうかねぇ・・・。」
「何いってるの?・・・クス・・・そうに決まってるじゃない」
『どうかな?』
今までずっと、敬語で会話していた青年が、急に態度を一変した。
深く被った羽帽子の下から、澄んだ青い瞳がレイラをとらえる。
そんな彼の様子に、彼女はときめきを感じずにはいられなかった。
- Re: 片雲の黒装束と赤い羽根 ( No.37 )
- 日時: 2011/01/14 17:11
- 名前: 真瑠 (ID: VJgd52Wn)
第一話 麗しの令嬢 Ⅹ
しかし、ロイトの態度は長くは続かず、また、いつものように笑った。
「若くて美しいのは大して素晴らしい事ではありません。けれど、年を取って老いても、美しいと思える人の美しさは、魂の美しさです。」
そう言って、立ち上がり、くるっと周囲を見渡した。
「ん〜・・・。この街には、「美しい人」が多いですねぇー・・・」
ほのかに窓から差し込む暖かい太陽の光に向かって、気持ち良さげに伸びをしながら、ロイトは呟いた。
レイラ嬢は、彼につられて、ふと空を見上げた。
広がる青空に、うっすらと虹が架かっていた。
その時、静かな風が辺りを包んで、老婆の傍にいたハトが一斉に空へと舞いあがった。
「あ・・・・・」
抑えきれない、あたたかい何かが、心の中で弾けた。
彼女は立ち上がる。
微笑むロイトの姿を見て、彼女もまた微笑んだ。
———————どんな人でも、「美しく」なれる。———————
第一話 麗しの令嬢 END
- Re: 片雲の黒装束と赤い羽根 ( No.38 )
- 日時: 2011/01/14 17:23
- 名前: 真瑠 (ID: VJgd52Wn)
特別編Ⅰ:追う者
「・・・・メア。」
そう言ったのは、比較的体つきが良く、背の高い男。
この時代の男性には珍しい、長髪の男だ。
「なあに?グラウス」
それに応えたのは、美麗な容姿を持った女。
「フェーヴルが、レントの街に現れたらしい。」
「レント!?」
彼女は怒りを露わにしながら舌打ちした。
「一年前に私が偵察に行った街だわ・・・・!一度偵察したから、って・・・・甘かった・・・」
「・・・過ぎた事を悔やんでも仕方ない・・・。だが、王妃から捜索隊の増兵が指示されたから、後は・・・」
「時間の問題、という事ね?」
「ああ」
彼らにとっていい話なのは確かだが、彼らは全く笑っていなかった。
「兵はもう、レントへ向かって・・」
状況の説明を続けるグラウスを、メアは左手を振って制止した。
「・・・・無駄よ。もうロイトはレントを発ってるわ。それよりも、近場の街を洗いざらい探すよう伝えて!」
「・・・やけに張り切ってるな、メア?」
くくっ、とグラウスは俯きながら微笑した。
そんな彼の様子に、メアは怒ったような、呆れたような声で呟いた。
「・・・・グラウス・・・アンタには分からないかもしれない。けど、『あの人』は私の一番大切な・・・・大切な人だったの。何としてでも・・・・」
彼女の呟きは、後半になつにつれ勢いを増し、最後は怒鳴り声で叫ぶように言い切った。
自分の思いと決意を、心に秘めながら。
「ロイトに『力』を使って貰うわ!どんな手を使っても!!」
特別編Ⅰ:追う者 END
- Re: 片雲の黒装束と赤い羽根 ( No.39 )
- 日時: 2011/02/06 18:31
- 名前: 真瑠 (ID: VJgd52Wn)
第二話 山岳 Ⅰ
悪の令嬢によって陰湿だったレントの街は、黒装束の旅人がやってきてから、たった2日で、街を脅かすものが消えてしまった。
あのアリーシャ・レイラ嬢が、改心したのである。
しかし、その後すぐに旅人は街を去った。
そんな謎の旅人の話を、彼らは飽きもせずに話し続けていた。
その、黒装束の旅人はというと・・・・。
「はぁ・・・。やっぱやり過ぎた・・・。なまじ綺麗な街は情報好きが多いんだなぁ・・・あんなに噂になるなんて」
旅人はため息をつく。
状況としてはかなり危険な状態だが、ロイトの心は落ち着いていた。
野原の香りだとか、川の流れる音だとか、そんな自然のせせらぎが、彼の気分を明るくさせるからだ。
それに、ここは山の中。
そうそう見つかる心配もない。
「ま、今頃・・・追手はレントの街に向かってるだろうから・・・」
『どこに向かってるって?』
「!?」
ロイトはあからさまに驚いた顔をして、声のした方向に一瞬で体を翻した。
そして、舌打ちをする。
「・・・メア・・・・!」
「ひさしぶりね♪ロイト。しばらく見ないうちに、大分凛々しくなったようね?」
ザッ
背後から草が踏まれるような音がして、ロイトが振り返ると、彼の記憶にはない、逞しい男が無表情のまま立っていた。
「・・・・!?」
「あら、紹介がまだだったわね。ソイツは私と同じ、特捜捜索部隊・副隊長よ。名前はグラウス」
メアは勝利の笑みを浮かべ、
グラウスと呼ばれたその男は、冷酷な眼差しで青年を見つめていた。
- Re: 片雲の黒装束と赤い羽根 ( No.40 )
- 日時: 2011/02/28 18:26
- 名前: 真瑠 (ID: VJgd52Wn)
第二話 山岳 Ⅱ
二人はじりじりとロイトにつめより、包囲網を狭めていく。
「・・・捜索部隊のお偉いさんが、たった二人で捕獲?部下に逃げられたんですか?」
そんな状況でも、ロイトは不敵に笑って皮肉を言う。
「部下はレント周辺に派遣したのよ。アンタをここに誘い出す為にね!」
「・・・なるほど?あえて『周辺』ってわけか・・・」
「詰みだ。フェーヴル・・・。我々と城に来い!」
途端にロイトは顔を歪めた。
「・・・・誰があんな所・・・・ッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
『!!?』
突如、空気の振動が肌を伝って体内に響いた。
そして、徐々に揺れだす地面。
「地響き・・・・!」「大きすぎないか?」
旅慣れない二人は驚愕の表情を浮かべる。
そんな二人の様子に、ロイトは真剣な表情のまま、呆れたようなため息をついた。
「・・・何も調べないで来たのか?・・・この山岳地帯は、地震が異常発生する地形。揺れなんて日常茶飯事・・・・。でも」
「な、何よ?」
「誤算でした。こんなに大きい地震は、近年起こらなかった・・・」
不意に、ズドン!!という音がして、その振動で、心臓が大きく脈打つ。
それを皮切りに、次々とその音が繰り返される。
「今度は何!?」
状況の理解に追われるメア。
グラウスは周囲を見て全てを察したようだった。
「落盤、ですよ・・・・。ちょっとマズイなぁ・・・。どうだろう、一時休戦、ってのは?」
「ふざけないで!!あ、あたしは、アンタに・・・・」
「・・・『力』の事なら、返事は変わらない。それより、共倒れになってもいいのか?僕だって、人を見殺しにするのは気が引けるし・・・」
「助かる方法、知ってるのか」
めずらしく、グラウスが尋ねる。
「まあね」
そっけなく返すロイト。
だがそこに、何か信じられるものを見つけたのだろうか。
「・・・メア」
グラウスが、視線で彼女を諭した。
「・・・わかったわよ!『一時』休戦ね!」
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