ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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白黒人間。
日時: 2011/03/09 21:52
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)

 ——彼が堕ちたのは、それからだ。



初めまして紫です。ゆかりでもむらさきでも何でもいいです。
前の名前とはグッバーイ☆しました。分かる人には分かる…はず。気づかなくてもいいです。
今回の小説は似合わないファンタジー小説と更に最近やってない三人称。てか最近小説も書けなかったんですけど。


色々矛盾してたり誤字があったりと見苦しい所が多数あると思うのですが「こいつバカだろwww」と罵ってあげて下さい。



目次、

序章【ホワイトブック】 >>1
一話 【ドリームワールド】
1 >>2 2 >>3 3 >>4 4 >>5 5 >>8 6 >>9 7 >>10 8 >>11 9 >>12
二話 【アイアム?】
10 >>13 11 >>15 12 >>16 13 >>17 14 >>18 15 >>19 16 >>21 17 >>22 18 >>23

おまけ
現時点のまとめ >>20



お客様、
AW工作員さん

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Re: 白黒人間。 ( No.15 )
日時: 2011/02/25 20:48
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)

 彼はまた、行方不明になった。

 彼は、その町に足を踏み入れ、暫く町を歩き続けていると、大声で泣いている少女の姿があった。

「どうかしたか?」

彼は少女の背の高さに屈み、優しい声色で話しかける。

「か、髪留め、なっ、無くしたのお……」

少女は、泣きじゃくりながら青年に伝える。青年は、一瞬驚いた様な顔をし、緑のベストにあるポケットを探り、物を取り出して少女の前に出す。
少女は、目の前にある桃色の花の髪留めを見て、驚いた。

「さっき拾ったんだ。貰ってくれ」
「……あ、ありがと」

手を差し出したまま、無愛想に青年は言う。少女は、安堵の笑みを見せ、涙で濡れている目を擦った。

「お兄さん、旅の人? 良ければ私の家に止まってく?」

表情を泣き顔から笑い顔に変え、青年に問いかける少女。彼は、少し悩んで答えを少女に言う。

「……うーん、まあ、お言葉に甘えようか」


 二人で仲良く手を繋ぎ、少女の家に向かっている途中、無垢な少女が口を開いた。

「そう言えば、お兄さん、名前は?」
「ああ、そういやまだ言ってなかったな」

 ——レジェ・グリートル。
確かに彼は、その名を口にした。

「お前さんは?」
「私は、ヴィーナス!」
「そうか、女神さんか。お前に似合うな」

眩しい程の笑顔を見せ、目の前のレジェは少女に優しく言った。

Re: 白黒人間。 ( No.16 )
日時: 2011/02/25 21:38
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)

 賑やかな声が飛び交う街で、彼は突っ立っていた。
驚きと動揺を隠せない様に、彼はそこに棒の様にただ立っていた。
 道の真ん中で立っている彼に街の人々がぶつかる。人々は、ぶつかった後に謝罪の言葉を残して先に行くか、彼を睨んで謝りもせず立ち去るか。十四回目に達した時、前者でも後者でもないパターンがあった。

 「お前、ぶつかって謝りもしねーのかぁ?」

少し太り気味の中年男性が、偉そうに彼に問いかける。野次馬は、不安と情けの目で黒づくめの青年を見る。 
が、青年はそれをものともせず俯いて黙っている。 

「黙ってないで、なんか言えよ! 俺は盗賊なんだぞ!?」

その空気の悪い沈黙に、自称盗賊は怒鳴り青年の鳩尾を蹴り上げ、自身が強い事を主張する。
 その行動で、やっと青年は顔を盗賊の方へ向ける。

「……いった。痛いの、久しぶりだ」

彼は、手で腹を摩り呟く。暫く摩って、手を離すと何かを構える。
それは、日本で有名な空手と言うスポーツ。の構え。
 盗賊に蹴りを入れ、盗賊を背負い投げ——しようと持ち上げた。が、青年は盗賊を下ろした。

 「——騒ぎ起こしたら、問題とかなりますか?」
  
身の危険をものともせず、彼は言う。くだらない事で騒ぎを起こしたくはないのである。
 だが、盗賊を下ろした所で更に騒ぎが起こるのであった。

Re: 白黒人間。 ( No.17 )
日時: 2011/02/28 20:23
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)

 無垢な表情で彼はそう言った。その野次馬への呼びかけが、彼に大怪我を負わせる事になる。

「無視してんじゃねえよ!」

 それは一瞬だった。青年の右腕に何か早い物がかすり、そこから赤い液体が出たのは、ほんの一瞬の出来事だった。
 液体がドロドロと彼の腕から流れる。その彼は立ち尽くしている。そして、驚愕の表情で右腕の方に目を向けた。
 ——それは、明らかに血。黒い衣服から赤い血が流れ出てくる。手で押さえても、手が赤に染まるだけ。
野次馬たちは静まる事も無く、かと言って彼を助けようと行動する者はそこに居なかった。大体の者がそこで悲鳴をあげ、パニック状態に陥っている。
 じわじわと、少しずつ痛みを催す腕。時間が経つにつれ、彼は鈍痛を顔で表す様になった。 

 「そろそろ死んで貰おうか?」

皮肉な笑みと銃を青年の額に向ける盗賊。青年は、何も言う事無く、ただ痛みに耐えているだけだった。

「銃で撃たれる事なんて望んでなかったけどな……」

無理矢理に青年も皮肉な笑みを作り、盗賊に言葉と一緒に向ける。盗賊が怒りの頂点に達し、引き金を引く瞬間。

「ちょっとー、何してんのよアンタ! 銃とか撃っちゃってさ。そっちも銃ぐらい避けなさいよ……って、アンタ」
「ヴィーナス……」

思いも寄らない、再会。

Re: 白黒人間。 ( No.18 )
日時: 2011/02/28 21:22
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)

 「ゆ、う。何してんの」

彼女は、青年との再会に目に涙を浮かばせる。嬉しそうな、怒っている様な微妙な表情。
 その感動の再会を、盗賊とその他は不思議そうな目で見る。だがそれも束の間。盗賊はまた怒鳴り、銃の引き金を引こうとした刹那。
——金属がぶつかり合う音がして、盗賊が持っていた銃はいつの間にか地面に落ちていた。
 盗賊の目の前に居たのは、剣を持った少女と、怪我人と、野次馬たち。盗賊は目の前の光景を見て、呆気に取られていた。その間にヴィーナスと呼ばれた紫の髪を一つ縛りにした少女は、青年の手を取って騒ぎの場所から抜け出す。
野次馬たちの、ぼんやりとした視線が二人に向けられる。

 「さってと、病院行こう」

毛皮のマントを勢いよく脱ぎ捨て、自分より年上である青年をいとも簡単にお姫様抱っこをして持ち上げ、背中にある黄緑の有色透明の羽で空に浮かぶ。

「俺、歩けるって」
「怪我人は黙ってるのが正解。……本当、心配した」
「そりゃどーも。喧嘩別れしたからどうかと思ってたよ」
「嘘。アンタ私ともう会えないって思ってたよ」

ヴィーナスの発言に目を見開き、その次に微笑んで彼は言った。

「正解。エスパー?」
「ひっどい! アンタそう言う奴だから良いけどね」
「それよりヴィーナス、お前なんでこんなとこに」
「ただの買い物よ、買い物」

二人の会話は、病院に降りるまで続いた。


Re: 白黒人間。 ( No.19 )
日時: 2011/03/03 21:39
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)

 「いやー、良かったわね、掠り傷で!」
「銃弾で撃たれて掠り傷って事はないと思うけど」

ヴィーナスは満面な笑みを彼に向ける。その彼は、引きつった様な笑みを浮かべ、小さい粗末な病院から出る。
 ——盗賊に銃を向けられた時、彼の頭には、ヴィーナス、つまり今、彼の隣で歩いている、紫色の髪と黄緑の羽が目立つ妖精の事を思い浮かべていたのだ。
 『できる事ならばもう一度会いたい』と、そう頭の中で願い、それが本当に実現したのである。 

 「いやー、でも救われたよ。ヴィーナスの剣術見たかったし」
「私は優の事心配してた。勝手にフラフラ出歩いて挙句の果てに行方不明なるんだもん」
「俺は色々彷徨ってたなー。森とか現実とか」

彼——田原優は自分に嘲笑を向け、ヴィーナスに話しかける。ヴィーナスは顔を傾けた。理解不能の言葉を理解しようとして、諦めた顔と言うのが、田原優には分かっている。

 「別に良いよ、ヴィーナスが理解する事じゃないから」
「ふーん。で、次はどこに行くの」
「流れに身を乗せる」

ヴィーナスの問い掛けに、無計画である事を思わせる言葉が田原優の口から飛び出る。
田原優の言葉を聞いた彼女は、呆れたかの様に溜息を吐く。

「アンタ、そんなんじゃすぐ殺されるわよ」
「うーん、まあ何とかなるでしょ」

『最強の力を持っているから』とは、彼は言わなかった。
 そんな田原優を見て、ヴィーナスは「甘い」と、厳しい口調で言う。

「あのね、武器は持ってるだけじゃダメ! どんだけ強い武器を持ってようが、扱いなれてなければすぐ死ぬのよ。アンタそれ分かってる?」
「何となく。一応武術は習ってたよ。格闘技だけども」

田原優は無表情で、やる気なさげに淡々と言う。それを聞いて即答でヴィーナスは言葉を出した。

「甘い甘い甘い甘い! 人生そんなもんじゃダメ!」

ヴィーナスは更に続ける。

「アンタ、さっきみたいな武器持った奴に体術で対抗したら隙だらけじゃないの」



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