ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ふたりぼっち
- 日時: 2011/03/01 20:56
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
悲しい小説をかいてます。
小説は初心者なので良く分からない表現があると思いますが、寛容な心で読んでくれるとありがたいです<(_ _)>
≪悲しみを悲しみぬいて、そこから何かを学ぶ事ができなければ、その悲しみは何の役にも立ちません。
あなたがどれだけ泣きわめこうが、自分を犠牲にして何かを訴えようが、私の心を掴むことはできません。
ただ、この悲しみを悲しみ抜いて日々をやり過ごし、そこから何かを学び取り、次に悲しんでいる人と同苦し、時にはその人を慰めてあげる事が、あなたがこの悲しみを最大限に生かせる方法なのです。≫
あの人からの手紙だ。小さく几帳面な字があの人の人間性を表している。僕はその手紙をびりびりに破いて、昨日の雨で増水してる河に流した。いびつな形をした白い蝶々たちは、薄茶色の泥水の流れに乗って、やがて沈んでいった。
「嘘つきだ。さようなら。」
- Re: ふたりぼっち ( No.17 )
- 日時: 2011/03/22 10:28
- 名前: ようこ (ID: /jbXLzGv)
振り向くと、そこには同じクラスの女子がいた。その細面の大人びた綺麗な顔は覚えがあるが、どうしても名前が出てこない。地味ではないが、教室の背景と同化してしまいそうな、存在感の薄い女子だった。
『まぁね。夏休みは特にやる事ないし』
僕は再び参考書に目を移し、素っ気無く答えた。この当時は女子と話を交わす事はなんとなく憚れる事で、僕も例外ではなかった。
『私も同じ』ふっと軽く笑って、断りもなく僕の隣りの席に座った。
女子がこんなに近くに座っている。僕はなんとなく気まづい思いになって、書くのを中断した。
それに気付いたのか『私が隣りにいると邪魔?』と僕の横顔を覗いた。
『そうじゃないけど…』僕は頭をかきながら、上手い言葉を探す。
『天野君って頭良いよね。私に勉強教えてくれないかな?』
その女子は僕にもっと顔を近付けた。
どうして良いかわからず、ドット柄をした天井を仰ぎ見た。
その時、図書室のドアをそっと開ける音がした。
『あ、石井さんと天野君じゃない』
白い半袖のポロシャツにゆったりしたGパンを履いた『先生』じゃなく『普段』に近い、あの人がいた。
- Re: ふたりぼっち ( No.18 )
- 日時: 2011/03/22 12:19
- 名前: ようこ (ID: /jbXLzGv)
『先生こんにちはー』
僕の隣りに座っていた女子、石井さんが挨拶する。
あの人は、僕らの方に近付き、『夏休みなのに勉強ー?えらいじゃない』
とこめかみから流れでる汗をハンカチで押さえながら感心した様子で言った。
『だって夏休み、なんも予定ないんだもん。皆が遊んでる時に勉強して、ますます頭良くなってやるわ』
石井さんはケラケラと笑って、『ねっ』と僕の方に同意を求めた。
僕は石井さんとあの人の顔を見ながら、ゆっくりうなずく。
『言うじゃない。2学期楽しみにしてるわよ〜』少し意地悪そうな目で僕らを見るあの人。先生と石井さんはなかなか親しいらしく、僕を放ってあれこれと、くっちゃべって笑っていた。その様子はまるで仲の良い姉妹のようだった。
あの人は、図書の先生に用があったらしく、石井さんから『ついさっき、たぶん職員室の方に出かけてったわ』という事を聞き、『そうなの?いつも入れ違いで嫌になるわ。じゃぁしっかり勉強するのよ』と僕らの方に背を向けて行こうとした。
その時石井さんは、『あっ』と何かを思い出したように小さな声を発し、『せんせっクラスで一番取ったら"約束"守ってよね』と先生の腕を掴んだ
あの人は、笑って『良いわよ。だけど天野君がいるから一番は難しいわね』と石井さん手をぽんぽんと優しく叩いた。
『"約束"ってなに?』
あの人が出て行った後、僕は石井さんに尋ねた。
『秘密よ。"約束"が守られた時、天野君にも教えてあげるわ。そのために私に協力してちょうだい。勉強を教えて?』
石井さんは、椅子の下に置いてたスクールバッグから、数冊の参考書を出した。どれも、色とりどりのポストイットが挟んでいて、石井さんのやる気は本気だと感じた。その一方で今まで気にしてなかった自分の『学年首位』を奪われるかもしれないという焦りを少し感じた。
この日から僕らは一緒に人気のない図書室で勉強する事になった。
石井さんは、サバサバした性格で、良く笑い、よく喋った。同性以上に気をつかう事もなく、一緒にいて心地よかった。
時々あの人が僕らの様子を伺いに図書室に来た。3人なると相変わらず僕は遠い国からやって来た人間みたいに2人の会話に上手く入っていけなかった。
時々あの人が僕に質問したり、石井さんが僕に同意を求めたりするのをぎこちない態度で受け答えるだけだった。
ある日、あの人が言った。『石井さんと天野君はとても良いコンビね』
なんとなく冷やかしが入った言葉に感じて僕は少し腹が立った。
『でしょ。私ら2人がいればうちのクラスの平均点は学年一位よ』
石井さんはケラケラと冗談半分の事実を言う。
『そうね。それに…いつも一緒にいるからかしら?似てるのよ。2人とも』
あの人は僕らの目を見ながら何か考えるように言った。
『似てるってどこが似てるんですか?』
僕の質問に少し間を置いて、『雰囲気かしら…とにかく良いコンビよ。あなた達は』
- Re: ふたりぼっち ( No.19 )
- 日時: 2011/03/23 13:18
- 名前: ようこ (ID: /jbXLzGv)
あの人が感じた僕ら2人の"雰囲気"はわからなかったが、僕と石井さんが似ているという事はなんとなく気付いていた。
心の中に覆っている厚い悲しみの雲を石井さんは取払えずにいた。僕と同じで。
『ねぇ、一人でいるのと二人でいるの、どっちが良いと思う?』
英文法の穴埋めをしている最中に突然、聞いてきた。
『ねぇ』から始まる突拍子もない質問は石井さんの癖だった。だけど、この質問の時はいつもよりも真面目な顔をしていた。
『一般論から言うと、2人の方が良い』
『一般論とかどうでもいいわ。私は天野君の考えを聞きたいの』
『俺は…』
石井さんの顔を見て言い淀んだ。澄んだ黒い瞳が僕に、"正しい"答えを求めているのが伝わってくる。
『わからない。人それぞれだし、時と場合によって人を煙たがったり、必要以上に求めたりするものじゃん。どっちが良いかなんて決められない』
『慎重な意見ね』
石井さんは多少腑に落ちない様子で手許の参考書に目を落とし、問題を解き始める。
『ただ—』
この言葉に石井さんは、また顔をあげた。
『二人でいてもそれ以上の人数の中にいても、感じる孤独は、一人の時よりもっと大きいものだと思う』
この僕の答えに、少し黙ってから、『天野君は考え過ぎで少し複雑よ』
と、表情に陰りを見せながら弱く笑った。
その理由をなんとなくわかっていた。そして図書室に彼女が入り浸ってる理由も。
だけど、彼女が僕に特別な"愛情"を求めていたのには気付かなかった。
人から何かを求められるのは初めてだったからだ。
彼女は中学2年の秋に、いなくなった。この学校からではなく、この全ての地上からいなくなったのだ。
彼女の机の上には、水色の花瓶が置いてあり、造花のような不自然な黄色をした菊の花が差してあった。
- Re: ふたりぼっち ( No.20 )
- 日時: 2011/03/23 13:25
- 名前: ようこ (ID: /jbXLzGv)
「晴れちゃったー」
風が雲をゆっくり運んでいる。雲間から見える空の青と眩しい太陽の光。
桃色の傘を小さなパラソルのように立て掛け、傘の中に頭を突っ込んで仰向けに寝ている乙女。とは私のこと。
ここは学校の屋上。
"立ち入り禁止"の看板を無視し、一か八か試しに、錆びれたドアノブを回したら、見事開いた。さすが、セコムの無いうちの学校。
今日からここを私の隠れ家とする。
40%の青空と60%の雲を眺めながら、天野くんの事を考える。我ながら青春してるなぁと思う。さぼった体育の授業に多少の罪悪感を感じつつ。
(天野くんは今どんな事を考えているんだろう)
少女漫画の主人公みたいな台詞に一人で「きゃーベター☆」なんて照れて足をバタバタさせる。
体育の先生、腹が痛いなんて嘘ついてごめんなさい。めっさ元気です。
はたと思い付き、鞄からマジックを取り出して、屋上の手摺に[天野宗一郎・菜々子]と相合い傘を書く。
そのラクガキを手で愛しく撫でながら、ニヤニヤする。
「あれ?」
デジャヴを感じる。近い昔にこれと同じ様な事をした気がする。あれは中学ん時だったっけ?
「そーだ!中1の時の副担のイケメン先生!」
中学一年の時、初恋をした。天野宗一郎までとは言わないけど、なかなか男前の先生がいた。
いじめられっこで友達のいない登校拒否気味の私に先生は、「特別に補習してやる」と言って保健室で補習授業を受けた。
補習授業は名目上のもので、実質は保健室登校の生徒たちと一緒に、簡単なゲームをしたり、くっちゃべってたりした。
—先生は、きっと私に居場所を作ってくれたんだろうな。
半ば強引な所もあったけど、良い先生だったなぁと今は思う。
いつの間にか忘れていた。だって、2年に上がる時にはもう、いなくなっちゃってたし。あれ?なんでいなくなったんだっけ?
『体調不良だって言ってたけど、うつ病らしいよ』
保健室メイトの櫻井の言葉を思いだした。
そうだ。その話を初め聞いた時、不思議だった。頭も良くて、顔も良くて、お金にも困ってなくて、奥さんもいるのに、何を病む事があるんだろうって。
なんて言う名前だっけ?大切な存在だったのに思い出せない。確か…
『古賀 雄一です』
先生の初めての挨拶の声が頭に優しく響いた。
- Re: ふたりぼっち ( No.21 )
- 日時: 2011/03/22 15:25
- 名前: ようこ (ID: /jbXLzGv)
最近、過去の事を思い出す。全てあの人絡みの事だ。
顕微鏡に映る巨大化された自分の髪の毛を見ながら、あの人と石井さんの事を思い出していた。
配られたA4プリントは、空白が目立っていた。
「天野君、問4なんて書いた?」
目の前に座っている女子の声で目が覚めた。
隣りにいる女子はもう後片付けに入っている。
「ごめん。まだ書いてないんだ」
「珍し。てか天野くん、さっきからぼーっとしてるけど大丈夫?」
僕の顔の前を手で振る。少しむかっ腹が立ったが、仕様がない。今の僕は誰が見ても、ふ抜けだ。
メトロノームの様に揺れている女子の手を掴み「たぶん大丈夫」と言ったら、あの変な女と同じく頬を赤くした。
「天野君ってさぁ…」
目の前の女子が、茶色く染めた髪を耳に掛け直しながら、少し俯き加減で喋る。
なんとなく嫌な予感を肌に感じる。
「上野菜々子とどーゆ関係?」
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