ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ふたりぼっち
- 日時: 2011/03/01 20:56
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
悲しい小説をかいてます。
小説は初心者なので良く分からない表現があると思いますが、寛容な心で読んでくれるとありがたいです<(_ _)>
≪悲しみを悲しみぬいて、そこから何かを学ぶ事ができなければ、その悲しみは何の役にも立ちません。
あなたがどれだけ泣きわめこうが、自分を犠牲にして何かを訴えようが、私の心を掴むことはできません。
ただ、この悲しみを悲しみ抜いて日々をやり過ごし、そこから何かを学び取り、次に悲しんでいる人と同苦し、時にはその人を慰めてあげる事が、あなたがこの悲しみを最大限に生かせる方法なのです。≫
あの人からの手紙だ。小さく几帳面な字があの人の人間性を表している。僕はその手紙をびりびりに破いて、昨日の雨で増水してる河に流した。いびつな形をした白い蝶々たちは、薄茶色の泥水の流れに乗って、やがて沈んでいった。
「嘘つきだ。さようなら。」
- Re: ふたりぼっち ( No.12 )
- 日時: 2011/03/06 01:01
- 名前: ようこ (ID: .057oP6P)
『お前に頼みがある』
顔を少し俯かせ、頬を薔薇色に染め、モジモジしながら喋る女野獣。その余りの気色の悪さに、私は口の中に入っていた玉子焼きとゆかりご飯を全て吐き出した。
『調べて欲しいヤツがいる』
女野獣に(無理やり)連れられて、その『ヤツ』がいる教室を覗き見る。
あそこに一人で飯食ってるヤツがいるだろ?と、女野獣はずっと遠くの方を見ながら指差す。
確かにいた。教室の角の角で無気力そうにメロンパンを食べている細身の男子が。
『根暗じゃん』
という正直な私。
『根暗じゃねーし』
と珍しく人を庇う女野獣。これも恋がなせるワザである。
教室の隅っこでパンをかじっている天野宗一郎は、後ろに幽霊を3人くらい背負ってるような陰気さをもっていて、ちっとも魅力的な男子には見えなかった。
『あいつが今彼女がいんのか、何人と付き合ってたのか、聞きだせ』
私には拒否権というものも黙秘権というものさえもない。女野獣の面倒な指令に『わかったガッテン』と敬礼して応える。私みたいな役割を担った人間を俗世界では『パシリ』と呼ぶそうな。
- Re: ふたりぼっち ( No.13 )
- 日時: 2011/03/06 21:57
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
2度目に天野宗一郎を見たのは、図書館だった。私が「世界の変人100」
という本を返しに図書館に行くと、見たことのある、細身の負のオーラを身に付けた男子がいた。
やっぱり座る席は一番端っこで、頬杖をつきながら、分厚い本を読んでいた。彼の傍らには2・3冊の本が積まれていた。
(文学青年ってやつかい。こりゃ完全に根暗だわ)
細身≒「不健康」。不健康+読書狂は人を鬱にさせ、暗闇の世界へと導く…っていう勝手な私の偏見である。
こんな男のどこが良いのだろうか。
カウンターで天野宗一郎と同じく、頬杖を付きながらふと浮かぶ疑問。女野獣は変わった趣味を持っているとしか言えない。
その時、窓が開いていたらしく、カーテンがふんわりと舞い上がった。カーテンで隠された西日が天野宗一郎の右顔をオレンジ色の光で照らす。
ハッとさせられた一瞬。
色素の薄い髪と瞳。強い太陽の光を受けて柔く輝く。形の整った鼻、唇、顔のラインがくっきりと、光によって縁どられる。
それまでの不健康さは全く無くなり、真横から注がれる夕陽は、天野宗一郎を幻想的に輝かせた。
このころから、私は心から天野宗一郎を知りたいと思った。
- Re: ふたりぼっち ( No.14 )
- 日時: 2011/03/08 20:13
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
通学路の坂道を自転車で引いていくと、僕の前にピンク色の傘を差している女子が歩いている。雨など降ってないのに。
なにやら聞いたことのある歌を口ずさみ、傘をくるくると回し、時々スキップをしている。よほど上機嫌らしい。
見たことのあるスカートの模様。うちの学校の生徒だ。
僕は自転車を引きながら、その女子の側を通りすぎようとした。が。
「あー天野宗一郎!」
と、呼び止められた。振り返ってみると、その女子はこの間の変な女だった。
「自転車通学なのね。ってことは家は結構近いのかしら」
僕は黙って自転車を引いて早足で歩く。この変な女に関わりたくない。
「ちょっと無視しないでよ。それになんで自転車に乗らないで引いてるの?」
「坂道だから」
「あなたってもやしっ子なのね。こんな坂なんてなんてことないじゃない。本当に勉強だけが取り柄で体力ないのね」
いっそ自転車に乗ってこの女を轢いてやりたい。
「そういえば昨日の質問答えてよ」
僕は足を止め、この変な女に向かって言った。
「誰とも付き合った事なんてない。俺は女には興味がない。お前にも興味がない。これでいいだろう?お願いだから俺にかまわないでくれ」
「んじゃ男が好きなのね」
頭痛がした。
「男色の気はない。人間に興味がない」
「男色ってどういう意味よ」
「ケータイで検索しろ」
坂道を越えて、平坦な道になった。本当にケータイで検索している変な女を一瞥し、自転車に乗って走ろうとした。が。
「逃がさないわよ」と上着をがっしり捕まえられ、危うく転倒しそうになった。
「何するんだ。一体俺に何の用があるんだ」
ふっと不気味に笑う女。
「あなたに興味があるのよ。わたし、奈々子っていうの。よろしくね。天野君」
- Re: ふたりぼっち ( No.15 )
- 日時: 2011/03/08 21:44
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
「俺はお前とは関わりたくない」
相変わらず素っ気ない態度の『天野君』。それにしても美男子。まつ毛がバンビちゃんのように長い。ニキビひとつない顔。一体なんの洗顔フォームを使ったらこんなにゆで卵のような白い肌になるんだろう。
恍惚と見ていたら、「何じろじろ見てんだよ」と、いかにも不愉快そうな顔で『天野君』に睨まれた。
「天野君に興味があるの。今まで一度も付き合った人がいないってってたけど信じられないわ。無駄にきれいな顔をしてモテないってなにか欠点でもあるの?ホモ以外に」
「女に興味がないっていったろ。女は卑しくて弱くて嫌いだ。わかったか?オカチメンコ」
「今なんていったの?下ネタ?」
「電子辞書で引いてみろ」
『天野君』は、時々平成を生きる私にはわからない言葉を使う。きっと文学のせいだわ。ゲーテとかドスなんとかの読みすぎに違いない。
「ねぇ、あなたって普通の高校生と違うわよね。なんていうか浮世離れしてるっていうか、老人臭いというか…」
「喧嘩売ってんのか。いい加減に手を放してくれ」
『天野君』の言葉にはっとした。ずっと彼のブレザーの裾を握ってたのに気づき、すぐに手を離した。
「ごめんなさい。でも、一緒に話しながら歩かない?自転車に乗らないで」
「お前と話す事なんて何にもない」と、無愛想で冷たい『天野君』は自転車のペダルに足を乗っけて走り出そうとした。
「じゃ、今までに好きになった人は?」
天野君は一瞬立ち止まって小さな声で呟いた。
「お前には関係ねーよ」
- Re: ふたりぼっち ( No.16 )
- 日時: 2011/03/22 08:48
- 名前: ようこ (ID: c52Pxlps)
僕は人を愛した事がない。そもそも愛するという事がわからない。
蝉のジージーという声が聞こえる。残りの生命力思いきり振り絞って鳴いている。
中学2年の夏休み、僕は学校の図書室で勉強をしている。いつもは、学校で勉強ばかりしてると、周りの友達に煙たげられ、横から何やらつまらない冗談や時には参考書ごと持ってかれるような悪戯に構わなくてはならない。けど、夏休みの図書室はちがう。誰も僕に干渉する人間などいない。僕を妨げるものは耳から頭の中を震わす、『ジージー』という蝉の自己顕示欲だけだ。
参考書の英文をノートに書き写してる時、僕の左側に人の気配を感じた。
『えらいね。いつもここで勉強してるの?』
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