ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ふたりぼっち
- 日時: 2011/03/01 20:56
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
悲しい小説をかいてます。
小説は初心者なので良く分からない表現があると思いますが、寛容な心で読んでくれるとありがたいです<(_ _)>
≪悲しみを悲しみぬいて、そこから何かを学ぶ事ができなければ、その悲しみは何の役にも立ちません。
あなたがどれだけ泣きわめこうが、自分を犠牲にして何かを訴えようが、私の心を掴むことはできません。
ただ、この悲しみを悲しみ抜いて日々をやり過ごし、そこから何かを学び取り、次に悲しんでいる人と同苦し、時にはその人を慰めてあげる事が、あなたがこの悲しみを最大限に生かせる方法なのです。≫
あの人からの手紙だ。小さく几帳面な字があの人の人間性を表している。僕はその手紙をびりびりに破いて、昨日の雨で増水してる河に流した。いびつな形をした白い蝶々たちは、薄茶色の泥水の流れに乗って、やがて沈んでいった。
「嘘つきだ。さようなら。」
- Re: ふたりぼっち ( No.2 )
- 日時: 2011/02/21 23:11
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
「天野君ってモテるでしょ。意外と」
下卑た笑みを浮かべながら、僕の顔をじっと見てくる。
購買でパンと豆乳コーヒーを買った帰りに、渡り廊下で出くわしたショートカットの変な女。僕の前で両手と両足を広げ、通せんぼうをした。どの学年で、どこのクラスだ?記憶に残らないような、地味な顔をしている。
「ちょっとそこどいて。腹減ってるんだ」
「ここで食べれば良いじゃない。どうせいつも一人で食べてるんでしょ?今日は私がいるわ。ラッキーね」
この女、素性はわからないが、肝が据わっている。そして、とても腹が立つ。
「馬鹿いうな。立ち食いは消化に悪い。第一、お前と長話する気はない。」
「長くはならないわ。」女は広げた手と足を元に戻した。
「私の質問に答えてよ。いままで何人の女子と付き合ったの?」
「明後日答える。いいから早くどいてくれ。次の時間体育なんだ」
「13人ね」
したり顔で出鱈目言うこの女。素数なら信憑性があると思っているのだろうか?ますます腹が立つ。今手に持っている豆乳コーヒーを顔にぶっかけてやりたい。
「勝手にしろ」
僕が先へ行こうとすると、女はまた、手を広げて道を塞ごうとする。その制した手を少し強く握ると、女はびっくりしたように小さな目をまん丸とさせて僕を見た。
「小さい手だな。爪切っとけ」
女は手を振り離し、目線をリノリウムの白い床に落とした。頬がほんのり薄紅色になるのがわかった。
- Re: ふたりぼっち ( No.3 )
- 日時: 2011/02/22 00:10
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
「天野君ってモテるでしょ?」
教室の窓外から差し込む夕陽。長く伸びた窓の縁の影が、オレンジ色に染まった机に影絵を映し出していた。西日を少しまぶしそうに右目をほそめて、窓から日が沈んでいくのを、ぼんやり見ているあの人の横顔。
セミロングの髪を形の良い右耳にかける。その仕草にどこか気品を感じさせ、僕はつい見とれてしまっている。
そしてあの人が言う。
「天野君ってモテるでしょ?」
おの変な女と同じ台詞を。あの人独特のおっとりとした口調で。
「さぁ…よくわからないけど、どうして?」
「まず美男子よね。それに頭も良いし、ちょっと普通と感覚がずれている所とか…とにかく魅力的な人よね!」
「からかってるんだ」
あの人はニコニコ笑う。笑うと左頬に小さなえくぼが二つできる。あの人の少女らしい所に僕の心の何か—理性みたいなものが、バランスを失っていく。
「私があなたと同じくらいの年だったら、アタックしてたかもね」
- Re: ふたりぼっち ( No.4 )
- 日時: 2011/02/25 23:41
- 名前: ようこ (ID: TFVRu1Ih)
- 参照: http://bj2336@za2.
『ちいさい手だな』
すこしハスキーでかすれた声をした美少年が、私に言った。
自分の右手をまじまじと見ながら、クフフとついにやけてしまう。天野宗一郎。握られた右手はまだすこし、鈍い痛みを残している。愛しい私の右手…
半分足が宙に浮いていたら、急に頭から何かが降ってきた。大量の埃やらちり紙やらなんやらの雨が私の頭の上に落下する。
「相変わらず、きもい顔してんな」
ごほっごほと、むせぶ私の目の前に立つ、凛々しく仁王立ちをして腕を組み、私を睨む雌。
「何すんのさ!ゴミは焼却炉にもっていきなさいよ!」
「てめえを焼却炉に持ってくか?いっぺん死んでみぃ。そしたらあんたの頭も正常になるんじゃん?」
「世の中が歪んでいる限り、正常な頭じゃ生きていけないんさ。なんの用さ?」
「天野」
「あぁ振られた男の事ね」
「お前の内臓を引きずり出してソーセージにしてやろうか?」
「その極道みたいな言葉やめなさいよ。Vシネマが好きなのはわかるけどさぁ…」
そう言うと目の前に立っている雌の憤怒のこもりこもった握りこぶしが、私の顔面に追突した。赤くなった鼻先を両手でいたわりながら、目に涙をためながら、言った
「『答えてくれなかった』これでいい?」
- Re: ふたりぼっち ( No.5 )
- 日時: 2011/02/25 18:48
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
女野獣はふんっと鼻息をもらし、私の左足のすねに蹴りをいれ、「つかねー奴」と捨て台詞を吐いて、私の目の前から去って行った。こんな理不尽な仕打ちをなぜされなければならないのだろう?答えは簡単。私が学校という小さな社会から理解されない存在であるからだ。女野獣に限らず、得体の知れないイキモノは、容赦ない差別と冷ややかな視線を浴びることになる。
天野 宗一郎 君も同じでしょ? 私と同じ、イキモノ。
「なーんちゃって」
舌をべーっと出して、あはははと大きな口で笑う。笑い声が廊下、教室、階段、学校の建物の中を響き渡る。
じんじんする左足をかばうように、びっこを引きながら歩き出す。さー帰ろっと。帰ったら何する?そーだ近所の大西さんに今日の面白い恋物語を話さなくちゃ。
西昇降口の玄関をでたら、雲と雲の間にとろんとした生卵の黄身みたいな太陽が覗いていた。
だんだん日が沈む。私より私の影の方が背を高くしている。
さー早く帰ろっと。大西さんとペンペン草で遊ぶんだ。
日が雲と雲に隠れていく。
- Re: ふたりぼっち ( No.6 )
- 日時: 2011/02/25 19:29
- 名前: ようこ (ID: qDIY9VCZ)
- 参照: http://bj2336@za2.
春は嫌いだ。ねっとりした暖かな風が人々の心を無気力にさせる。
桜は嫌いだ。咲く時は、傲慢にも大きく目一杯咲き、散る時はしとしとと、雨季の小雨のように湿っぽく散っていく。
こう、あの人に言ったら、「天野君ってひねくれた考え方をするのね」と、僕の顔を、黒く大きな瞳でじろじろ見ながら、くすくす笑う。
浅川の土手沿いを自転車で駆けていく。甘くねっとりした風を感じる。左の視界に入る小さな紅色の蕾が昨日より大きくなったと、変化に気づく。
春が来ている。自分のすぐ近くに。
「私は好きだけどなー。春が来ると、ほっと安心するのよね。厳しい冬の寒さに耐えて耐えて、やっと来た暖かい風。何か努力をしてやっと
報われたー…そんな瞬間に似ているの」
あの人は、渡り廊下の窓から見える大きくなった桜の蕾を見ながら、ふと寂しそうな顔をし、何かを思い出している様子だった。それが何だったのか、僕は気になった。けれど、あの人はその翌日、何も言わずに僕の前から去って行った。
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