ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Arcobaleno Nero〜黒き虹の呪い〜
- 日時: 2012/03/04 15:00
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: ksYmVYP2)
挨拶行きます、どうも初めまして狒牙と申します。
普段、ファジーとコメディのところにしかいないのですが
この度シリアスで初挑戦したいと思います。
パッと思いついたらすぐにしたくなる癖がついております。
と、言う訳でおそらくこれは更新する速度が相当に遅くなります。
もしかしたら月に二、三回になるかもしれません・・・
シリアスではまだ読んでいる作品が無いんですよ・・・
という理由があるのでできればお勧めの物や自分の物を紹介して下さい。
何度も言うように更新おそくなりますが見守ってください。
ついで言うと題名は「アルコバレーノ・ネロ」って多分読むと思います。
翻訳サイトで綴りしか出てきませんでした。
意味は「黒い虹」。なんか虹の呪いってジャンプ漫画のあれみたい・・・
では、始めたいと思います。
プロローグ
これは遠い、未来の話。
かつて無い程の大きさの壮絶な戦争が起きて、それまでの人類の文明は完全に廃れてしまった。
徐々に進んだ文明も逆光の道を辿り、中世のヨーロッパのような街並みにまでなってしまった。
そのような世の中で、最も多く生き残った民族は日本人だった。
戦争放棄、平和主義、交戦権を否認していた日本はただ自衛に努め、その結果大した犠牲は出さなかった。
それでも多少の被害者は現れた。そして残りの一億人ほどの日本人と、各国のほんの少しの生き残りが一同となり、新たに国を築き上げた。
二度と戦争なんて起こさないために、強大なたった一つの国を。
公用語はもちろん日本語だが、人々の名は西洋寄りになっていった。
それだけが唯一世界中の者が日本に頼んだこと。先祖から受け継いだ大事な名字を継ぐことに関しては日本人もあっさり許可した。
そのようなことの数百年後、世は先ほど述べたように中世のヨーロッパのような街並みになる。
恒久の平和が続くと人々は信じ、願い、維持してきた。
しかし平和も束の間、新たな脅威が生まれ出てきた。<呪い>という存在だ。
国は最初それを静観していたが、ある時急に呪いを弾圧せんと動き始めた。
その背景には底知れぬような漆黒の虹が、天空を統べるようにかかっていた。
———これは、七人の少年少女の呪いと闘う物語。
赤い髪、オレンジの髪、黄色い髪、緑色の髪、青い髪、藍色の髪、紫の髪、彼らは口々にこう告げると言う話だ・・・
———止めときな———止めておいて———ごめんなさい———待って———止めて下さい———……———どうする?———
———アタシに関わったら———オイラに近づいたら———それ以上私に関わると———僕に関わると———そうなりたいなら話は別ですが、関わった場合は———貴殿、そう成りとうなければ———これ以上関わったら軽く———
—————死んでしまいますよ—————
—————アタシの名前は、レナ・レッディ・ローズ
—————オイラの名前は、スティーク・オーレン・サンセット
—————私(わたし)の名前は、エール・イーロ・サンフラウ
—————僕の名前は、カイル・ヴェルド・フォレス
—————私(わたくし)の名前は、ハリエル・ブルエ・オーシャンズ
—————我の名前は、サムエル・インディガ・ナイトスキィ
—————俺の名前は、ディアス・ヴィオレッティ・グーフォ
黒き虹の呪いを受けし者——。
——の使用が多いのは今回ぐらいです。
普段も稀に使いますが。
Story
第一話 生い立ち
GREEN>>1RED>>2ORANGE>>3YELLOW>>4BLUE>>5INDIGO>>6VIOLET>>9RAINBOW>>10
第二話 出会い
RED>>11ORANGE>>12YELLOW>>13INDIGO>>14GREEN>>15BLUE>>16VIOLETO>>17
第三話 遭遇
RED>>18GREEN>>19>>21ORANGE>>20YELLOW>>22BLUE>>23
- Re: Arcobaleno Nero〜黒き虹の呪い〜 ( No.19 )
- 日時: 2011/12/26 18:35
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: QxOw9.Zd)
- 参照: 第三話 遭遇 Green Side
「着いたと……思ったんだけどなぁ……」
赤々と燃える夕日を背に浴びながら、カイルは溜め息を吐いて残念そうに呟いた。正午前に、目的地である街に辿り着いたかと思ったが、実は違っていた。確かにアバブ・オーシャンなら見えた。だがそれは、ギュルムから森を抜けた先から見ることができただけで、まだまだ歩かないといけなかった。それもそうかと彼は嘆く。本来ギュルムとアバブ・オーシャンの間にはシューチェなどの二、三の街がある。それらを一気に飛ばして向かおうとしたのだが、元々二、三の街を経由すると言うならばそれなりに距離があるということ。
という理由で内心カイルはとても焦っていた。日が暮れたら野宿するしか術が無くなるのだが、今歩いている道には階段しか無い。こんな所でどうやって寝ろと言うのだろうか、そういう訳で一日程度徹夜してでも良いと言わんばかりにややハイペースで歩いていた。
階段を下るのは楽だけど……、現実に階段を下りながらカイルは母親の言葉を思い出す。
「階段を下るのは楽だけど、疲れっていうのは登ってる時より下る時の方が溜まるのよ。だから、楽なんだけど次の日に筋肉痛になりやすいのよ」
そう、昔の文献に書いてあったらしい。はっきり言って当時のカイルはこの言葉を疑った。だが昔の技術や知識は今よりも進んでいる。ならば言っていることはきっと正しいだろうと思い込んだ。そして実際に旅を始めてから実感した。
とりあえずは数少ない持ち物の一つの、寝袋が安心して置けるスペースが必要だった。カイルの所持品は寝袋、父の写真、財布とその中身、工具箱その他少量の雑貨だった。
五年も野宿していたらそろそろ慣れてくる。地面に寝袋を敷いて寝ることにはもう抵抗は無い。ただし道など人の邪魔になるところでは眠れる訳が無い。治安が悪いところはとことん悪いからだ。道端で寝て、見知らぬ者に貴重品を強奪されないとも限らない。
ふと、日が沈んでいく方向を見つめると自らが旅立ったギュルムがあった。その後に反対側を見ると、アバブ・オーシャンが目に入る。やはりまだまだ遠い所にアバブ・オーシャンの姿が見えた。数少ない持ち物の一つの地図を取り出す。
「うーん……やっぱり地図で見るより時間かかるかな?」
旧時代の地図の見方を知っている者ならば、上海、今のアバブ・オーシャンから測るにシェンチェン、つまりはシューチェより遠いギュルムとの距離の長さは分かるだろう。日本ならば軽く都道府県の二、三は越えることができる。
実は彼の中には思い過ごしがある。さっき日の沈む反対側にあるのはアバブ・オーシャンと書いたが、それはカイルの思い込みであり、実際にはシューチェである。細部の描かれていない世界地図でそれを判断するのは、確かに不可能に近いが、これはかなり致命的なミスだった。ついでに補足すると、実はパンドラの遺品の中には凄い物があった。
いついかなる時でも、どの種類のものでも、世界中の鉄道に無料で乗れるパス。これでシベリアというギュルムから離れた所から一気に到着したのである。
「どこかに駅があったら良いんだけど……」
世界中に張り巡らされている鉄道は一種類ではない。国と国を繋ぐタイプ、一国の中を大まかに進むもの、さらにその内部を網目のように細部まで行き届いている種類。旧ロシア……シベリアから旧中国まで来たのは、大国間鉄道と呼ばれるタイプで、今探しているのはローカル線。
「本当に……どこまで行けば良いんだろ?」
延々と続く階段は終わりが見えてこず、ただひたすらに可視範囲の限界まで続いている。うっすらと暗くなってきていて、見える範囲が余計狭められていることを加味しても、これは尋常ではない。どうにかならないものかと考えている時に、視界に今までとは少し違う変化が訪れた。
階段を登ってくる数人の集団が見えたのだ。十分程度で去れば死なせずに済むので、とりあえずは手短に質問をしようとその人たちの方へとカイルは歩きだした。向こうがこちらに向かって来ていることもあり、見る間に距離は詰められていく。近づき、話し掛けられる間合いに入り、声をかけようとしたその時に、彼は口をつぐんだ。先に彼らが、カイルに対して質問したからだ。
「おい……レナ・レッディ・ローズという女を知らないか?」
「知ら……ないけど?」
「ならば、スティーク・オーレン・サンセットならばどうだ?」
「だから知らないって」
「エール・イーロ・サンフラウは?」
「知らない。それに知ってたらどうするの?」
質問続きでうんざりとしたカイルは逆に問う。そんな事訊いてどうしようとしているのかさっぱり読み取れないからだ。探し人にしては少々数が多いことは否めない。何か大きめの理由があるだろうと予想できる。実際その目的は大きめのものだった。しかも、カイルの想像以上に。
「邪魔だから殺さないといけないのだ」
「えっ……」
「おい紫村、冗談が過ぎるぞ」
唐突の殺気満々のコメントにカイルは驚きの色を隠しきれなかった。そのために間の抜けた反応がこぼれた。それにフォローを入れるように集団の中の別の男が声を荒げた。いや、荒げるというよりかは焦って上ずらせたと表現すべきだろうか。どうやら子供相手に言って良い冗談ではないと諭しているのではなく、不用意な発言に対するお叱りのようだった。僅かながら怒気も含んでいる。
「まあ、こいつ嘘を吐いている雰囲気はなかったからな。放っておいても良かろう」
「そうか、まあ紫村が言うなら構わないが……」
この少しの会話に、カイルは気付いた。もしかしたらこの紫村という男は、人が嘘を吐いているかどうかが分かるのだと。おそらくは長年の勘だろう。
「ところで少年、後四人……と言いたいが一人だけ最後に訊かせてもらう」
「最後……なら良いけど」
「パンドラという男について、だ」
少々短いですがここで次回に続きます
次回はオレンジサイドです
- Re: Arcobaleno Nero〜黒き虹の呪い〜 ( No.20 )
- 日時: 2012/01/10 21:57
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: syXU4e13)
- 参照: 第三話 遭遇 Orange Side
「アバブ・オーシャン?」
「そうだ。ここの近く……ってか隣街の大都市って言ったらやっぱしそこだろ」
「へぇ……あっ、聞いたことあるよ。そこって確か倭の国の中心とも近いよね」
「そこまで近くねぇけどな」
旧中国は韓国と比べると大して日本と呼ばれた地域には近くない。全体的に見ると欧州よりかは遥かに近いが、それでも気軽に訪れられるような距離ではないことは確かだ。数百、場合によっては千キロはあるだろうから船だとゆっくり行ったら一週間はかかる。
「でも、地図だったらこんなに近いよ」
地図なら近い、そんなの当たり前だろうとレナは呆れた。地図というのは実際の土地を小さくしたものを書き写しているのだから。大方、地方地図と同じ縮尺で世界地図を眺めているのだろう。地方地図は各街や地域に配られる政府の作った地図で、細部まで書かれている代わりに、狭い範囲しか映らない。
世界地図の縮尺をまず確かめようとする。横の長さは大体四十センチメートルぐらいと記されているので、一億分の一だ。ほとんどの街の地方地図はと言うと二万五千や五万だ。縮尺の基準をそこにするならさぞ日本とここは近いだろうなと黙りこんだ。
「まあ、良しとするか。こっからだと隣街みたいなもんだから三日も歩けば着くんじゃねぇの」
まだ八歳の子供にそんな事をダラダラと説明しても理解してくれるか怪しいので、もうそこについては触れずに、次の目的地に向かう意識をはっきりとさせた。すると子供らしからぬ、いやどちらかと言うと子供らしくちゃんと頷いた。それも、これ以上なく力強く。
呪いを解きたいという意志には年齢なんて関係ない、誰だってそのためならば普段以上の力が発揮できるのだろう。歳端もいかない少年も思春期真っ盛りの自分も同じ思いを同じくらい強く抱いている。
それにしても……。レナは考え始めた。今、自分以外に呪いにかかった者を一人見つけた。だとすると、まだ他にもいるのではないか、そのような予測もできる。虹の七色がもしもレッディとオーレンだけでなく、イーロやヴェルド、ブルエ、インディガとヴィオレッティを指しているとしたら。そう考えると少なくとも後五人は少なくとも虹の呪いに侵されているのだろう。
多くの者の生命を脅かすそんな物を撒き散らした者たちの気持ちはどんなものだったか訊いてみたい。喜んだか、悲しんだか、狂喜に破顔したか。何のために作ったのか? 富か名声か金か異性か。少なくとも、正義のためではないとレナは思った。
「ねぇ……あのさぁ……」
「ん? どうした?」
考え事をしているレナにスティークは語り掛けた。小声でおずおずとしているので何か頼みごとがあるのかと身構えた。すると予想以上に些細な事で、聞いた時に思わず笑ってしまった。
「初対面のいきなりで悪いんだけど……レナって読んで良い?」
こんなにも行儀が良く、可愛らしく子供らしい子供に会ったのはきっと初めてだ。自分の生まれ育った故郷にはレッディの者しかいなかった。武道に生涯を捧げる一族ばかりだ。たとえ年上の大先輩であろうとも当然のように、気さくに呼び捨てにする。その上、その里が壊滅してから会った奴らは金や体目当てのゴロツキばかり。世の中にはこんな仰々しく敬意を払う奴がいるとは思っていなかった。
笑った理由が全く察することができないスティークは首を傾げる。そのように分からない事を訊こうとしても気まずくて押し黙ってしまう姿の人を見るのも初めてだった。結構レッディ家とは馴れ馴れしいのだと、他の人たちと比べて初めて知った。
「よっしゃ、ぐずぐず言うのは一旦止めて、出発すっか」
物怖じする幼い少年に有無を言わせず、レナは歩き出した。急な事だったが、置いて行かれたら困ると思ったスティークは小走りで追い付く。先ほどの疑念はこれで一気に吹き飛んだ。別にレナがクスクスと笑った理由を知らなかっただけではこの先の運命なんて変わらない。意識の淵でそう考えていたので、この事については綺麗さっぱり、跡形も無く忘れてしまった。実際これの既知か無知かで、行く末が変わるような変動は無かった。
それよりもレナは移動手段や経路をスティークと共に考え始めた。まあ、船だと時間がかかりすぎる上に鉄道は高いのでやはり徒歩に限るのだが、どのような道を通るのかが問題となる。一番良いのは街道を進むことだが、それだとかなり大回りになる。獣道を進む場合、短いが疲れる上に迷ったら大変だ。小さい子を連れるならば街道の方がよっぽど安全だ。それならばもう、時間をかけてでも楽な道を取ろう。
ただ時間をかけて行く場合別の問題が発生する。確かに手元に五千円あるから三日程度は生き延びれるだろう。街道は無料の休憩場所として寝場所が整備されている。だからそこに関しては大丈夫なのだが問題は食料だ。三日分一遍に買っても既製品は腐りやすい上に、材料を持って行っても調理する自信は無い。長持ちする不味い非常食を三日もスティークに口にさせ続けるのも酷だ。
普段は危ないとか関係なく、一日のうちにそういう街と街の間の道を抜けようと短い方の道を通っていた。だから大してそういう心配は無かったのだ。
「ったく……アタシにどうしろって言うんだよ」
「ん? 何か悪い事でも起こったの?」
「えっ、ああ。いや、実はな……」
そして食料的な問題が起きることをレナはスティークに説明した。自分が考えたことを全く変えずにそのままで。だが、その心配は完全に杞憂で終わることになるとは思ってもいなかった。と言うより、侮っていた。幼いとはいえスティークは立派なオーレン家の人間、それならば料理は得意なのだろう。これまでの彼が旅の道中で食べてきたのは全て、自分の作ったものだった。
「そうか、じゃあ適当にアラウンド・バーンで野菜とか貰って行きゃあ良い訳だな」
「どうやって持って行くの?」
「このカバンに詰める」
中身が空っぽであまりにもぺしゃんこだからコートとさらしの間、要するに見えない所で背負っていたリュックサックを取り出した。なかなか容積の大きいもののようで、結構な量が入りそうだった。ちなみに休憩場所には食堂は無いが、給湯室と銘打ったとても簡素な、普通の家のキッチンのような調理空間がある。
これで障害は全て無くなった。これでもう引っ掛かるような問題は無いと確認したレナはスティークに行くぞと告げた。了解の意味を込めて頷くその様子を見ている彼女はもうとっくに忘れていた。後五人、呪われた者がいる可能性に。
〈to be continued〉
次回グリーンサイド
- Re: Arcobaleno Nero〜黒き虹の呪い〜 ( No.21 )
- 日時: 2012/01/21 22:19
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: jxbxTUdV)
- 参照: 第三話 遭遇 Green Side
「パンドラ・ネロ・リンボルという男を知っているか?」
「えっ……」
唐突に、今まで会ったことの無い七人組から父親の名前が出てきてカイルはたじろいだ。なぜ自分の父の事を訊きたいかが分からないからだ。さっき言っていたレナとかスティークとかいう名前の時、殺すは流石に冗談だと笑ったがその声は真に迫っていた。きっと、いや確実に殺意を持っているだろう。
本当にその二人を殺すつもりだとしても、今パンドラの名前が出てきたのは俯に落ちなかった。なぜならパンドラはもうすでに死んでいるからだ。殺意どうこうの話でなくて、見ず知らずの誰かが父の事を知っていて、尚且つ追い求めていることが不可思議で、奇妙で、恐ろしいと感じた。
もしかしたらこの人たちはパンドラの研究結果が知りたいのかもしれない。たまに帰ってくるだけだったが、その時に何度か言っていた。“絶対に俺の事は誰にも言わない方が良い”、と。そうでないと思わぬ面倒に巻き込まれたり、反感を買うかもしれないと。どんな面倒なのかなぜ反感を買うのかは一切教えてもらえなかった。それでも声音から伝わってきた真剣さから、それは事実だと分かった。
そしてその二つの中でも今回は思いもよらない面倒事の方だろう。少なくとも反感を買うような雰囲気ではないが相当不味そうだ。父がパンドラだと名言した時には、確実に自分の死期は近づく。十三歳の、まだまだ経験の浅い知識と記憶から推測する。だが、だからと言って嘘を吐く訳にもいかない。かくなる上は嘘を吐かずに済む言い回しを考えないといけない。
「聞こえなかったのか? パンドラ・ネロ・リンボルという男を知らないか?」
「ま、待って! 今考え中だから」
カイルが心の中で、自分自身に現状を言い聞かせている間に、数十秒は過ぎていた。反応が全く無いことから何事かと感じ取った目の前の一団はカイルに呼び掛けた。それに対してカイルは、今は考えている途中だと言い放った。
「考え中ってことは思い出してんのか、なるほどなるほど」
先ほど紫村と呼ばれた男がカイルの狙い通りに意味を受け取ってくれてまずは一息吐いた。そして思いついた、回避できそうな解答を。
「知り合いにそんな人はいないよ」
ただしこの言い方は自分にきちんと納得させないといけない。知り合いとは大して面識は無いがとりあえず知っているレベル、それに対してパンドラは家族。二つが交わることは無いのだとしっかり暗示させる。そうでもしないと紫村にばれてしまう。
「考えても思いつかなかったか……なら仕方ないな」
「しゃあね、行くとすっかね。紅、帰るぞ」
「That's all right(了解)」
一人あらぬ方向を向いていた女はカイルを見た。その目はとても深く沈んでいて、本当に生きているか訊いてみたいぐらいだった。しかし、次の瞬間に気付いた。他の者も同じだということに。何百年も永く生きて淀んでしまったかのような汚い黒をしている。
「紅、日本語分かるならそうしてくれ。英語は面倒だ」
「しょうがないわね」
紅という女は深すぎる溜め息を吐いて、何かを見せ付けるようにして肩を落とした。要するに英語が使いたいとアピールしているようだと察した紫村は嘆息し、やはり英語で良いと、諦めて許可した。
これで終わりかと、ようやくカイルが安心した時に目の前の今まで黙っていた女性がカイルに話し掛けた。
「そっちからは何も訊かないのね」
「えっ、あ……っ、えっ…………」
「妙な質問ばっかりだって思っているでしょう? なのにずっと何も訊かずに黙っている」
「いや、僕だって先急いでるし……」
へぇ……そう、と含み笑いをしながら呟いた後にその女性は踵を反した。何やら全てを悟られてしまった気がした。その人の着る服には荒々しい海の刺繍が背中側一面に入っていた。
彼女が戻ったところ、仲間の皆は相談をしていた。次はどこに行ったら呪われた者達が見つかるか。こんな時代に一人旅なんてしている少年を見て怪しいと思ったので先ほどの子供に声をかけたが、見事にその予想は玉砕した。本当は合っていたというのに。
ただし一人だけカイルが怪しいと睨んでいた。なぜなら、知り合いにパンドラ・ネロ・リンボルがいないならば、パンドラはともかく“ネロ”の段階ですぐにいるかいないか悟ることができるはず。ネロという名前はありえないのだ。それを知らないにしては少し歳を取りすぎている。
だとすると、やはりあの少年はパンドラの息子、カイル・ヴェルド・フォレスだろうという結論に達した。まだカイル・ヴェルド・フォレスについての質問はしていない。相手がヴェルドならそこまで訊いておくべきだったと、紫村に舌打ちした。
だがそれにしても、頭の回転の早い小僧だと彼女は笑った。今まであんな奴には会ったことがない。今まで会った頭の切れる奴は皆、しゃがれた老父や四十は越えた連中だった。二十歳に達してもいないのにあそこまで賢いのは中々いない。きっとさっきの子供はパンドラは家族、知り合いではないと言い聞かせた。そして暗示がかかってから答えたのだ。前の会話で紫村が嘘を暴けると察した上での行動だろう。
実に面白い、この永きに渡る中でも相当上位の愉しさだ。沸々と面白さが心の底からせり上がってくる。
——————勝ちの目しか無い勝負はつまらないな。
瞬間、彼を生かすか否か考査するも生かしておくことにした。勝負や試合は負けるリスクが無いと盛り上がらない。自分たちがプランニングした余興〈ゲーム〉だって、どうせなら楽しくないと。
それにどのみちあの小さな少年に阻害されるようなものならば実現の見込みは無い。パンドラの息子、そう聞いたら手強そうだが十三歳の少年と考えたら取るに足らない。よって障害のサンプルの一つ程度の認識で良いだろう。
「青海、何をしてるんだ、早く来いよ」
「美緑は黙ってて」
一人ぼうっとしながら足を止めっぱなしの女を見て、翡翠色のブレスレットを付けた男は声を掛けた。黙っていろとバッサリと切り捨てられて美緑は黙り込む。こういう事は慣れているようで表情一つ変えるつもりはないらしい。分かっているなら大丈夫だろうと、踵を返して先へと向かう。
「また会いましょう、カイルくん」
夕陽の向こう、強い光にかき消されるような場所にいるカイルの姿は、もうすでに見えてはいなかった。
〈to be continued〉
- Re: Arcobaleno Nero〜黒き虹の呪い〜 ( No.22 )
- 日時: 2012/02/05 16:40
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: .pdYDMor)
- 参照: 第三話 遭遇 Yellow Side
「じゃあ、俺は家に帰ることにするよ」
「そうか。それにしても、貴殿は借金をどうするつもりなのだ?」
「そうだな……やっぱりまっとうな事して手に入れたもので返そうか」
人質を取った脅迫は終わり、その犯人である実行犯の男とはいつしか打ち解けていた。追い詰められて、そのせいで越えてはならない一線を越えてしまっただけであって、元々の彼の姿は普通の、どこにでもいる男性だった。金を返済する当てが無いからか、なんとなく肩が下がっている気がするが、ギリギリのところで踏みとどまったからか、その顔はむしろ生き生きとしていた。
会話の相手のエールは、そろそろ時間的に不味いのではないかと思っていた。いつからかは分からないが、首元にナイフを突き付けられた時間を考えるとかなりの時間で彼と接していることになる。とすると、許容範囲である三十分はもうすぐ経ってしまうかもしれないのだ。
なので、折角改心したこの人を死なせたくない、それだけを考えていた。さらに、隣に立つインディガの浪人もかなり不味い筈だ。自分のせいで二人も死なせる訳にはいかない。
——————ただしそれを考えているのは、隣にいる青年も同じだという事を少女は未だ知らない。
ここだと思った瞬間に別れを切り出そうとしているのだが、なかなかそのチャンスは巡ってこない。なかなか実態を掴めないような焦燥感の中、ようやくチャンスは回ってきた。
「お嬢ちゃんはどこに行くつもりだったんだい?」
「えっと……実は本来向こうに何があるのか分からずに進んでいたのですが……」
「向こうには無法者の街があると御侍さんから聞いたって訳か」
「はい、そうなんです。だからそろそろ街に引き返そうかと……」
これで良いだろう、そう思いながら彼の返答を待とうとした。しかしそこで気付いてしまった、彼の指の先が、ほんの少しの狭い範囲だが朱に変わっていることに。皮膚の上から染料を塗られたのではなく、本当に手が赤色に変わっているのだ。
瞬間、エールの顔は青ざめた。まさか、そんな事がある筈が無いと頭の中でぐるぐるとその言葉だけが螺旋している。逃げ切りたくて階段を上ろうにも、終わらない螺旋階段。
「あなた……なんで……その指……」
一度気付いてしまったらもう動揺は隠しきれない。本人にも隠さない方が良い。震える手で男の右手の人差し指を指差した。明らかにその声は罪悪感と恐怖に苛まれていた。瞳孔は開ききって、息が喉元で渦を巻いているような感覚がして呼吸ができているか怪しく感じられる。そして彼女の頬を熱い何かが流れた。またしても、自分のせいで……。
「うん? どうした?」
エールに示された部位をまじまじと見つめた男性はようやくその異変に気が付いた。かなりの狭い範囲で手の色が変わっている。初め彼はこれに猟奇的な色を示したが、すぐにそれはなくなった。水が砂の山に浸透していくように、赤い痣は一気に広がった。右腕は瞬く間に、その勢いで右半身、首から上、左腕と左足の先まで。
これを見てインディガの青年も血の気が引いた。呪いが発動したのかと、呟き駆け寄る。肩を支える。隣で涙を流して泣いているイーロの少女を見て彼はさらに驚愕した。この痣が浮き出た男が襲ってきたのは言うまでもなく少女と話してからだ。要するに彼女と接した時間の方が長い。
それなのに彼女の体には何も異変が無い。不可解だとサムエルは感じた。今まで見てきた呪いの進行具合では、おおよそ三十分関わると死ぬことしか分からなかった。もしかしたら発動までの時間に個人差があるだけなのかもしれないとも考えるが、そうだとしても可笑しな点がある。なぜ、このイーロ家の少女は涙を流しているのかという訳だ。
確かにいきなり目の前の人間の肌の色が変わってしまったら驚嘆するだろう。でもだ、泣き出す理由が分からない。怖くて涙を流すならばなぜこの者は逃げ出さないどころか寄り添うのだろうか。まるでこの先に続く結末が分かっているようだ。この症状が出たらもう何をしようと無駄だ、死を待つばかり。
「なぜ貴殿にはその痣が浮き上がらない……我と接した時間は貴殿の方が長いはずなのだが……」
「私に痣が出ないなんて当たり前でしょう! それならもうとっくに死んでますよ! 私の知り合いはことごとくこれで死にました……自分にもこれが出れば良いと……」
そこで一旦、彼女は言葉を切った。黙り込んでしまったかと思ったサムエルは顔を覗きこんだが、声を押し殺して泣いているだけだと分かった。
「自分にもこれが出れば良いと……何度、何度思ったことか!」
「えっと……二人ともいきなりどうしたんだ!? それになんで、俺の体は赤……」
「虹の呪い……私と三十分の間接点を持ってしまった者に発動する死の呪い」
「死…………の?」
「はい、回避方法は、発症してしまったらもう……ありません」
目の前の男が驚きのあまり呆然としてしまったようで、その声は得体の知れない何かに怯えているようだった。しかし、この地点まで逢着すると、もはや待つのは死という事実のみ。はっきりと率直に告げる、それが今のエールにできる最善だった。
彼女は自分が最も悪い、そのように説明した。怨まれても仕方ないと完全に割り切って、どうせなら死の間際の怒りは自分に当てて欲しいと考えた。しかし、予想に反してその男は怒りだす気配は無く、ただ静かにしていた。天罰かな——ただそれだけ呟いて穏やかで哀しげな目をしていた。
「やっぱり犯罪に走ろうとするのは、神は許す気はないらしい。俺にお前たちを人質に取らしたのも、神の采配か」
「何を言っているんですか!? あなたは私に怒っても構わないんですよ!」
「それならば、お前だって俺が死んで喜ぶべきだ。さっき殺されかけたのを忘れたか?」
「関係ありませんよ、あなたは殺してないのにあなたは殺される……そんな事って……」
「当然だろう、俺が死ぬなんて。俺があんな事したのは自分の意志、だがお前はそうじゃない」
でも、それじゃ報われない。そう言いたいのも山々で、彼が何と言おうとエールの心の中には罪悪感しか無い。誰が何と声をかけようと彼女はきっと救われない、死に行く者が安らかになるまでは。
「その呪いは進行と共に色が変わります。紅は肉体的苦痛の象徴……段々と色が変わるに連れて苦痛の種類は変わり、精神的苦痛にとなる、紫がそれの象徴……そして死んでしまうと虚無を現わすために黒く染まります」
少しずつ、体を蝕む痣の色が濃くなっているのが分かる。これが燃え盛る炎と同じ深紅に、レッディ家の瞳のようになった時に完全に始まるのだ。
もうすでに、カウントダウンは始まっている——————。
〈to be continued〉
- Re: Arcobaleno Nero〜黒き虹の呪い〜 ( No.23 )
- 日時: 2012/03/04 14:59
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: ksYmVYP2)
- 参照: 第三話 遭遇 Blue&Violet Side
「オーシャンズ家ってアバブ・オーシャンに本家があんのか?」
「えぇ、知りませんでしたか? アバブ・オーシャンを統治する貴族がオーシャンズです」
「……そういう事か。なら納得だな」
「納得してくれたようで有難い事です。では鉄道の方に向かいましょうか」
ハリエルがディアスに実家の由来を説明し終わった辺りで歩き始めた。十やそこらの少女が青年の前に立ち、得意げにしているそのようすはとても珍しい光景に思われる。だがそれもほんの一瞬だけの話、ほとんどの者はすぐさま気取る。ハリエルからは上流階級の人間の雰囲気が漂っているのだ。それに対してディアスは一般人、召使やボディーガードの類に思われても仕方ない。
サラサラとなびく青いポニーテールの少女とくしゃくしゃの、妖艶な紫色の髪の青年。煌びやかなお嬢様の後ろに控えるは不良のような若者、どう見ても二人組にしてはミスマッチ。本来なら交わりそうにない二人、彼らはとある共通点がある。
二人とも、虹の呪いを受けた者、という事だ。
五年前のとある日、彼らの目に映ったのは黒ずんだ虹だった。そしてその日から彼らは呪われた身となった。その呪いとは、自らと関わった者を死滅させるものだ。その死に様が虹をイメージさせるので、虹の呪い。
その呪いのせいで二人とも両親を失ってしまった。ただしハリエルの場合は、両親こそ死んだが数人の使用人は生き残っている。自分が死を撒き散らしていると気付いた時、彼女は書き置きを残して故郷を去った。だが、書き置きを見つけた従者が追ってきてこう言った。旦那様、つまりはハリエルの父親から言伝があると。
十分で話は終わると言われたハリエルはその話を聞き始めた。それによると呪泉境に向かえば良いという事、そしてもう一つ。貴族の特権を使わせてもらえることだ。
オーシャンズ家を始めとする貴族には、街中で生きるにしても他の者より便利な制度がある。我が家が融資をしているグループの店では家紋を見せることで無料でサービスを受けられる。オーシャンズ家から金を貰っている旅館などはオーシャンズ家には宿泊費を請求できないのだ。
オーシャンズ家の家紋は身体のどこかに刺青を入れられる。ハリエルはそれが手にある。荒々しい海をモデルとした青のタトゥー。
鉄道とて例外ではない。五大貴族の一つがオーシャンズ家、五大貴族は全て鉄道企業に融資をしている。
「ハリエル、とりあえず席の質よりも早く着くことを主としたもので頼む」
「構いませんよ、お安い御用でございます」
「次期当主だったのに敬語とか使うんだな」
「誰が相手でも礼儀正しくと言われたものでして。ただし怪しい人は別ですがね」
「初対面の俺は怪しかったのかよ……」
ハリエルに聞こえないように、ディアスはボソボソと呟く。中身までは聞こえなくて、何と言ったか気になったハリエルはディアスを問いただすも、彼は答えなかった。
まあそれはそれ、これはこれと、気にするだけ無駄と判断したハリエルは早歩きになる。そうでもしないとディアスが先に行くと思っているのだろうが、ディアスとしては分かっている事を伝えたいのであまり好ましくなかった。
「虹の呪いについてはもう知らねぇけど……呪泉境のヒントならあるんだよな……」
呪泉境、それがどこにあるのかはまだはっきりとはしていない。ただ一つだけ出ているヒントは『伊』という文字だ。これは旧時代から見てもかなり古い時代、平仮名の代わりとして使われていたものだ。名を万葉仮名、『伊』は『い』や『イ』を表している。
ディアスは、このようなヒントをもう何人かが持っていて、繋ぎ合わせたら何か分かると推測していた。その内の一文字がこれなのだろうと。しかしまだハリエルには訊いていなかった、同じようなものを知らないか、と。
「とにかくネロの後継者を全部集めないと……」
父親の持っていた資料の中身を思い出す。半分神話のような存在として君臨している裏一家、自らを不死と語る“永遠の旅団”。アルコバレーノ・ネロ以外に存在する呪い。
それにしても本当に恐ろしい技術が旧時代にはあったようだと、ディアスは身震いした。中でも凄まじいのは現在を作る要因となった核兵器。最終的には小島一つ容易く吹き飛ばせるほどの威力に到達したらしい。
「カイルの正体にテロメアに、呪泉境の在処……一体何から調べたら良いんだよ」
空を見上げてそこにいる人間に問うも誰も答えてくれない。年寄りは引退、浮き世は浮き世で勝手にしなさいと、押しつけられているように感じる。先導する少女に察せられることのないように溜め息を吐く。
今のところの経過は順調、その筈だが少しばかり先行きに不安がある。
ただし一番の年長は自分なのだ、自分が動揺してどうするのだと落ち着ける。しかも今は行動を共にしているのは八個も年下の女子だ。不安にさせる訳にはいかない。
「そーいやお前、アバブ・オーシャン行ったら家族と会うんじゃね? 良いのか?」
「ええ、確かにそうなる可能性もありましょうが、あそこは相当広大な都市です」
「言い方から察するに会う確率は低いと?」
「そうなるかと予測ができます」
流石は世界一の大都市だと洩らしながらディアスは頷く。しかし、もしもそうであれば問題だ。今ハリエルが言ったこと、それは、裏を返せば自分たちが他のネロの後継者を捜すのも困難であるという事。
だとするとかなり急いで行かない限り、自分たちが捜し当てる前に旅立たれたならば、他の面子を捜すのは困難になる。カイルやサムエルなどにとっても調査に時間のかかる大都市だが、それ以上にディアス達の方がハードルが高い。
カイル達はただ単に、虹の呪いという、漠然としたものを知っているか問うだけ。それに対して、たった数人の連中を何百万や何千万の民から捜し当てないといけない。しかも時間の制限を決めるのは他ならぬ調査対象の一人一人。
妙案が思い浮かばずに頭を抱えるディアスに、極めて冷静な声でハリエルは話し掛けた。
「何、人捜しなんてすぐに終わりますよ」
「あぁ? そいつは一体どういう事だ?」
「要はやり方です。こちらの推論では彼らは呪いを解こうとしている。解きたいのです。だから情報を探している————」
そんな中で、我々はそれについて熟知しているとビラでも撒いたらどうしますか? 私ならば飛び付くと推測します。ついでに面々の名前を記入しておけばより一層来やすくなるでしょう。確かに怪しいと感じましょうが、それ以上に気になる。これを逃すといつ情報を手に入れられるか分からないのですから。
「……お前本当に十歳か?」
「オーシャンズ家を嘗めないでください。その嫡子には家を継ぐ義務と使命があるのです。あらゆる事に長けていないといけない。その内の一つに兵法や心理学があった、それだけです」
それはそれで感嘆に値すると、ディアスは呆れて舌を巻いた。やはり幼くてもオーシャンズ家の一員、侮れないと一人納得していた。
〈to be continued〉
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