ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ふたりと、きみ。
- 日時: 2011/10/17 17:42
- 名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
朝倉の小説の題名は、必ず最後に「。」が
つきますよね。
これつけないと、なんだかムズムズします。
執筆開始 10月1日〜
登場人物 主要キャラ
清川暁人>>3
霧島レイ>>3
江藤マヤ>>7
西滝音羽>>20
古里嘉一>>20
サブキャラクター
浅沼小夜葉>>25
- Re: ふたりと、きみ。 ( No.26 )
- 日時: 2011/10/19 01:44
- 名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
自転車の後ろに霧島さんを乗っけても、苦にならないほど軽かった。
田んぼに囲まれた狭い道を、気を付けながら通過する。 霧島さんの手はオレの腰をしっかり掴んでいた。
なんか、傍から見るとラブラブな恋人同士に見えるんだろうな。
「あっ」 「どうしたの?」 「靴、落とした」
ちゃんと履かないから。
「戻ろうか?」 「いい。 べつに、いらない」
霧島さんの片方の運動靴。 田んぼのすぐそばにあるドブの溝に落ちた。
いらないって言っているけれど、この子どうやって帰るつもりなんだろう。 まったくの謎だ。 もしかしてオレがまた自転車で送り返さなきゃいけないんだろうか。
うむ、面倒くさいと思わないのが、また不思議。
チャキチャキと自転車をこいで、江藤の家に行く。
昨日、殺人現場で初対面を遂げた霧島さんと江藤。 江藤は何やら霧島さんに不思議な好意を抱いたらしく (本人曰く、恋愛じゃない)、お友達になりたいと申請してきた。←半分嘘。
「江藤ってキレたら怖いけど、いい奴なんだ」
「レイ、怒られるようなことしてないよ」
「ああ…………女や子どもにはあんまり怒らないけれど。 本気で怒ったら、遠慮も容赦も無ぇから」
オレは覚えている。
昔、江藤がオレをからかったクラスメイトを、半殺しにしたことを。
「レイは嬉しいときに笑ったり、悲しいときに泣いたりする人、ふつうに好き。 分かりやすいし」
「んー、そうだよね」
オレには分からない価値観だったから、適当に頷いておいた。 返事は適当だけれど、けっこう真面目に話は聞いたつもり。
霧島さんの価値観は人とはズレているけれど、そこがまた、面白いというか。
「これから江藤の家に行くけれど、アイツ、部屋汚されるの嫌いだから」
「リョーカイ」
江藤の家での唯一のルールを説明し、承諾を得る。 霧島さんの表情はいつもどおりで、異性の家にお邪魔するという概念は無いらしい。
霧島さんは、恋をすることなんてあるのだろうか。
「バラバラ殺人、怖いよな」
昨日起こった殺人事件が新聞に載ってある。 別にそれくらいは日常的だ。
何らかの事件が起きたらニュースとして取り上げられることは、最早必然だ。 いつもどおりの日常に、近所で殺人事件が起こったとはいえ、オレたちの心境はあまり変わらない。
じっと新聞を凝視している江藤に声をかけると、新聞紙をぐしゃっと丸めてゴミ箱に捨てた。
簡単なその動作を、霧島さんは目を逸らさずに見ていた。 その虚ろにも見える眼球がふたつ、じぃっと。
「殺されたのってオレらの高校の生徒会長らしいわ。 堀田さんって人。 江藤、知ってる?」
「知らん」
ハッキリと切り捨てたけれど、一応江藤も18歳で、高校にも通っていた時期があった。 自主退学したけれど。
年齢的には、殺された堀田さんと同じ学年なんだけど。
「なんか最近物騒になってきたよな。 こんな田舎でも殺人が起き始めてんだから」
「人間、腐ってんだよ。 クレイジーってやつ」
江藤が人差し指でオレの頭をつつく。
「んで、なんで霧島を連れてきたんだよ」
「江藤が霧島さんのこと気に入っていたから。 それに、霧島さんは友達だし」
「いやそこはいいけど。 なんで右足だけ泥だらけなんだよ」
「途中、運動靴が片方だけ脱げた」
「拾えや」
見事なまでに会話のキャッチボールが出来ている。 うぉし、さすが友達1号の江藤だ。
──♪──
人をひとり殺しても、欲求は満たされない。
彼じゃなければ。
彼でなければ。
息切れする体を抑えて、深呼吸する。
こんなにも心臓がドキドキ鳴っているのに、生きている感じがまったくしない。
ああ、愛しい彼のために。
今日も殺人者になろう。
- Re: ふたりと、きみ。 ( No.27 )
- 日時: 2011/10/21 16:07
- 名前: 赤時計 (ID: u5ppepCU)
赤時計です。嘘つきにお越しくださりありがとうございます。。。
うわぁ・・・レイちゃんの不思議感がすごい好きです!死体見ても動じない感じとか、靴落ちても慌てないとか・・・フミちゃんに一途ですねレイちゃんは(笑)
最後の詩みたいな所、意味深くていいですよね。私好みです!
では、更新頑張って下さい。。。
- Re: ふたりと、きみ。 ( No.28 )
- 日時: 2011/10/21 19:14
- 名前: △ (ID: QHlX.g1E)
嘉一って、暁人くんの家庭教師の嘉一のことですよね?
違っていたらごめんなさい。
小夜葉ちゃんみたいな人、私のクラスにもいます。
ズバズバっと意見を言っています。本当に強気。
まさかのバラバラ殺人が起こりましたが、これは嘉一云々に関係しているのでしょうか??
気になります
- Re: ふたりと、きみ。 ( No.29 )
- 日時: 2011/10/24 16:58
- 名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
わざわざお越しくださって
ありがとうございます。
詩のようだと仰っていますが
そのとおりでございます。
その人の感情を詩のように
書いております。
嬉しいコメント、どうも
ありがとうございました!
>赤時計さん
そうです、その嘉一くんです。
朝倉のクラスにも小夜葉のような
人がいます(-_-;)
正直、朝倉は彼女は好きではないけれど
意見をハッキリいう人は嫌いでは
ないのです。
嘉一云々かどうかは、また後ほど
>△さん
- Re: ふたりと、きみ。 ( No.30 )
- 日時: 2011/10/25 00:45
- 名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/ 絶賛熱なう
同じ部屋に、同年代の青年が3人居れば、どんな話が展開するんだろう。
もしかしたら、誰も喋らないかもしれない。 だって、オレと江藤と霧島さんだし。
そう思っていた不安は、杞憂に終わった。
「フミはねえ、ものすごく優しくて、可愛い女の子なんだよ。 レイ、フミみたいな子が大好き」
「そーか」 「へえ」
「フミとはあまり会えないけれど、レイ、寂しくないよ。 いつか再会しようって言ったから。 フミと早く会いたい」
「そーか」 「そうだねえ」
レイが語る 『フミ』 という人物を聴きながら、江藤の内職を手伝う。
彼女は 『フミ』 を語る時だけ、感情が素直に表に出る。 幼い子どものように、彼女は喋る。
「フミのこと大好き。 死んじゃうくらい好き。 レイ、フミのことになると周りなんか、どーでもいい」
「…………オレも友だちなのに?」
「フミは友だちとは少し違う。 特別な存在だから」
少しだけだけど、オレの心の中に 『フミ』 に対する嫉妬が募り出す。
霧島さんの 『特別』 に、オレもなれたなら。 嬉しいんだけどね。
江藤は興味も無さそうに、手だけを動かす。 ミシンの音。 針を貫く繊維の細やかな音。
「でも、暁人のことも、マヤのことも好き」
名前を呼ばれた瞬間。
江藤の手が止まり、オレの呼吸を一瞬停止する。
霧島さんの口から出た、オレの名前。 脳内に反響して、軽い感動を覚える。 そういえば、教室でも 『暁人』 って呼んだけれど。
こうしてハッキリ耳にすると、嬉しい。
「…………霧島さん」 「なに」 「オレも好き」
霧島さんのことが好き。
んー、でも、恋愛感情とかじゃなくて。
そんな薄っぺらい、ガキでも抱くような感情じゃなくて。
もっと、こう、なんていうんだろう。
「暁人?」
恋愛感情じゃなくてさあ、えっと、ほら、こういうのなんていうんだっけ。
あれ、この感情に名前なんてあったっけ?
分からないけど、でも、むかし、
とおい とおい むかしのこと オレは知ってる。
この薄汚い感情の名前を、知ってる。 そんな、気がしたけれど。
気のせいだったかな。
あれ、江藤の声が聞こえる。 オレの名前を呼んでる?
これも、気のせいかな。
あれ、あれれ?
「暁人っ!」
鼓膜が震えて、瞼を開けて、江藤の醜い左反面が見えた。
ああ、そうか。
オレ、恋愛なんてできないじゃん。 あんな汚い感情なんか持てるかよ。
霧島さんのことだって、好きなんかじゃないよ。
難しいね。 難しい。
あの大人のように、愛し合った結末がああなってしまったのなら、恋愛なんて、無いほうがまだマシだ。
「…………ダイジョブ」
自分でも驚くほど、声が上ずった。
「だいじょぶ、だから……。 少しだけ、なんか、困っただけ……」
「────汗、酷いぞ」
体中から吹き出した汗は、オレの困惑した感情がドロドロと溶け出したもの。
横を見ると、霧島さんはポカンとした目でオレを見ていた。
理解できない。
そう思っているような目だった。
理解だなんてされたくない。
そういえば、今世間を賑わせているバラバラ殺人事件の犯人だって、その心境を理解されたいだなんて、思っていないだろうな。
理解、できやしないだろうな。 普通なオレたちが、異端者の気持ちなんて。
「ちょっと……気持ち悪い……吐いてくる……」
普通?
オレが普通か?
江藤も、霧島さんも、普通か?
みんな日常に無理に溶け込もうとして、ズルズルと、そのまま、堕落していくだけの、
ただの、
「暁人」
霧島さんがオレを呼ぶ。
無視して、トイレまでズルズル行って、大量に嘔吐物を吐き出した。
噎せ返る胃液の中、後ろで人の気配がする。
「暁人」
また、霧島さんがオレを呼んだ。
今度は振り返る。
彼女は、鮮明にそこにいるはずなのに、ひどく不透明に見えた。
「暁人って、“ふつう” じゃないよね」