ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜
- 日時: 2012/02/07 18:22
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: s32F0pf/)
どうも初めましてまたはこんにちは。
九龍と申します。
もうひとつ、小説を書いていますが、これと同時進行ということで。
少しずつ死に近づいて行く少年と、その背中を押す少女の物語です。
どこかで似てるのがあった……。とかがあったら、言ってください。すぐに直します。
注意
荒らし、チェーンメールはお断りです。
ホラー系が苦手な人、僕が嫌いな人は逃げた方がよろしいかと。
目次
登場人物>>2
プロローグ>>3
【一章 - はじめの一歩】
『青信号』>>6 『また会ったね』>>9 『わざと』>>14 『媛香』>>17 『比良坂兄妹』>>18
『お誘い』>>21 『生きるのって、楽しい?』>>22
【二章 - 境界線に立つ】
『死の希望』>>23
お客様
風猫様、クリスタル様
- Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.20 )
- 日時: 2012/01/18 16:51
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: qU5F42BG)
>>風猫様
お久しぶりです。
どっちがやばいかはわかりませんが、どっちも変なことは確かですw
……僕も、そういう学校にはいたくないですw
- Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.21 )
- 日時: 2012/01/22 21:30
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: CKpJ5zkK)
第六話『お誘い』
始業式、授業、授業終了のチャイム。
すべてがすっ飛んでいったような、そんな気がした。
頭の中に、また、あの二人のことを思い浮かべる。
始業式のときも、授業のときも、先生達の声は耳を通り抜けていく。
俺は、そのとき、ただ比良坂先輩と波月さんを見つめていた。
波月さんは、静かに先生の話を聞いていた。
比良坂先輩もそうだった。二人とも、模範生徒みたいに、きちんと座って話を聞いていた。
でも、あの二人、変だよな。
比良坂先輩には、変なうわさがあるし。
波月さんは、赤信号をわたろうとするし。
一見普通に見えても、ぜんぜん普通じゃない。
癖の強い先輩だ。
「……どうしたの、転校生くん。ご飯、食べないのかい?」
誰かが、俺に話しかけてきた。
ついさっき、こんな声、聞いたような気がするな……。
そう思いながら、声のしたほうを向いてみると、そこには波月さんがちょこんと立っている。
……あれ?
「波月さん、いつからそこにいたんです?」
「ついさっき。ほかの人たちがいないから、静かに入って脅かそうかなって」
あぁ、道理で、教室がやけに静かなわけだ。
俺は小さく頷き、誰もいなくなった、ばらばらの机だけがある教室を見回した。
「……で、波月さん、なんでしたっけ?」
「ご飯だよ、ごーはーん。今、昼休みだよ? お腹すいてないの?」
波月さんがそういって、首をかしげる。
え、昼休み? もう?
……俺、今日はぼぅっとしてるだけで、一日が終わりそう……。
そう思っていると、腹が「ぐぅー」っと、切ない音を立てる。
「……お腹、減ってるんじゃん」
「気づきませんでした……」
俺がそういって苦笑すると、波月さんは微笑しながら、俺の手を握る。
「良かったら、昼ごはん、一緒に食べない?」
……え?
「……あの、駄目、かい?」
「あ、いえ、ぜんぜんです!」
波月さんが、しゅんと肩を落として首をかしげるものだから、急いで沿う答える。
それを聞くと、波月さんはすぐに笑顔になった。
……なんだ、この人も、普通の女子生徒なんだ。
「それじゃあ、行こっ! 早く、早く」
波月さんは、そういって俺の手を引っ張る。
俺はそんな波月さんを見て、微笑みながらも、波月さんについていった。
- Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.22 )
- 日時: 2012/01/24 18:40
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: f27folsQ)
第七話『生きるのって、楽しい?』
屋上に着くと、暖かい空気が俺等を包んだ。
屋上のすぐ側には、校庭に生えた桜の木が、満開の桜が良く見える。
花びらがひらひらと舞っていて、とても綺麗だ。
広くて、どこに座ってもよさそうだし、眺めは最高。
なのに、屋上には、俺等以外に誰もいなかった。
波月さんはそんなことは気にも留めずに、屋上の隅に座り、フェンスに背をぴったりとくっつけた。
「赤城くんは、どのパンが好き?」
波月さんは、購買から買ってきたパンを床に置く。
パンの種類はさまざまで、サンドイッチ、揚げパン、菓子パンなど、いろいろあった。
パンの数もそれだけ多く、波月さんはパンを両手いっぱいに持って、ここまで運んできていた。
波月さんについていき、屋上へ行く俺を見て、みんなは不思議そうな顔をしていた。
「……赤城くん、パンは嫌い?」
波月さんが、悲しそうに首をかしげる。
俺が答えを返さないので、不安を覚えたのだろう。
ぼぅっと考え事をしていて、返事を返さなかったなんて、悪いことしたな。
「いえ、パン、好きですよ! じゃあ、あんぱんもらえますか?」
俺がそう答えると、波月さんは静かに微笑み、「どうぞ」とあんぱんを手渡す。
波月さんはサンドイッチを一つ手に取り、袋を開ける。
俺もあんぱんの袋をあけ、あんぱんにかぶりついた。
そんな俺を、波月先輩はじっと見つめて、微笑んでいた。
…………。
そんなにじっと見られると、なんだか食べにくい。
「あの、波月さん」
「ん、なあに?」
「どうして、俺のこと、そんなにじっと見てるんです? 俺の顔に、何かついてますか?」
「……ううん、何にも。気に障った? ごめんね」
俺の問いに、波月先輩は小さく首を振り、続ける。
「なんだかね、あんまり、幸せそうな顔してたから、さ」
——え?
幸せ、そう?
「君は、幸せそうだね。知りたいことがあるって目をしてる。嬉しそうな目をしてる。少し不安も混じってる、希望に満ちた目。うらやましいくらいに、幸せそうな目。生きることに何の疑問も持たない目。生きる幸せを固めた目!」
波月さんは、俺の目を見て、早口でそういった。
まるで、俺を攻めるみたいな口調で、そういっていた。
俺がぽかんとしながら、波月さんを見ると、波月さんはさらに言葉を続ける。
「あのさ、君に質問して良い? 君なら、きちんと答えられると思うんだ」
波月さんはそういって、俺の耳元に口を近づけ、小声でゆっくりとささやいた。
「ねぇ、生きるのって、楽しい?」
- Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.23 )
- 日時: 2012/02/06 19:38
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: LSK2TtjA)
第八話『死の希望』
——生きるのって、楽しい?
そんな風に聞かれたのは、初めてだった。
「あっは、何その顔! 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔って、そういうのを言うんだよね」
波月さんは、腹を抱えて笑う。
滑稽なものを見ているみたいに。
俺がピエロかなんかみたいに。
げらげら、げらげら。
笑う、笑う。
「……ところで、答えは、いつ聞かせてくれる?」
波月さんは、ぽかんと口をあける俺に対し、そう聞いてくる。
俺は、はっとして、波月さんの肩に手を置いた。
「あの」
「なに?」
「楽しいって、どういうことですか?」
「そういうことだよ?」
波月さんは、俺の問いに首をかしげる。
「人ってね、生まれたくなければ、流産して終わりなんだよ。だから、生まれたいって思って生まれてくるの。がんばって。なのにね、人は命を粗末にするの。生きてるより、死を選ぶ人だっているの。ねぇ、何でだと思う?」
「なんで、って……」
笑いもせず、機械みたいに無表情な波月さん。
その問いに、俺は戸惑った。
なんでって、そんなの……。
「つらいから、でしょ?」
「ううん。死にたいから」
俺の考えを聞いて、波月さんはすぐにそれを否定する。
シンプルで、ハッキリした、それでいて馬鹿らしくなるような理由で。
「死にたい?」
「うん、死にたいの」
「なんで、です? 自分で願って生まれてきたのに」
「だってね。死ぬことには、生きてるのとおんなじくらいの希望があるんだもん」
波月さんは、優しく微笑んで、俺の問いに答える。
俺は、屋上の冷たい床に手を突き、少しずつ後ずさる。
不気味だ。
死に希望があるなんて、いえる彼女が。
生きてるのが楽しいかなんて、聞いてくる彼女が。
それでも、俺を惹きつける彼女が。
波月さんは、後ずさる俺を見て、悲しそうに首をかしげる。
でも、言葉だけは、とどめなくあふれてくるらしい。
波月さんの口が、呪文でも唱えているかのように、早く動いている。
「生きてるだけは、楽しくない。人間、死ねるから生きてるの。生きてるだけだったら、終わりがない。終わりがないなら、達成感もない。死ぬのが痛いから生きてるだけで、もし人間が不死だったら、きっと多くの人は死を選ぶと思うの」
「やめて、くださいよ」
喉の奥から、声を絞り出した。
弱弱しい、かすれた声。
これ以上、俺を混乱させないで。
これ以上、俺をおびえさせないで。
これ以上、俺の頭の中を独占しないで。
「……やめてほしいなら、やめる。答えを返すのは、いつでもいいし」
波月さんは、俺の言葉を聞き、肩をすくめ、屋上から出て行った。
俺はただ、小刻みに震えながら、波月さんの後姿を見つめていた。
答えを、返さなければ、ならないのか?
あの、恐ろしい質問へ。
- Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.24 )
- 日時: 2012/02/07 19:33
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: DJvXcT4Z)
第九話『ちょっと変』
授業中、俺はいつも以上に熱心に、先生の言葉に耳を傾ける。
そうでもしないと、忘れられないんだ。
『ねぇ、生きるのって、楽しい?』
波月さんの、あの声が、頭の中で反響しているような樹がするから。
それをかき消したい。そう思い、先生の言葉に意識を集中させる。
けど、これがどうも、うまくいかない。
何故だかはわからない。波月さんのことが、どうも気にかかる。
遠くなる先生の声。
ぼんやりして、黒板の字も見えなくなりそうな視界。
あの人だけがずっと占領している、頭の中。一人の人以外、すべてが見えなくなるなんてこと、本当にあるんだな。
「では、これで今日の授業は終わり!」
先生がそういうと、学級委員が
「起立、気をつけ、礼」
と大きな声で言う。
俺は慌てて立ち上がり、頭を下げた。
そんな俺を見て、媛香は呆れたように笑っていた。
「なに、真誠ー。今の授業の内容、ちゃんと頭に入ったー?」
媛香は笑いながら、人差し指で頭をつんつんとつつく。
仕方ないじゃん。
だって、あの人に返す答えを探してたんだ。
「俺、波月さんに、質問されたんだ。返事はいつでも良いって行ってたから、今考えてる」
「はぁ? そんな理由で、ぼーっとしてたわけ?」
そんな理由、とはなんだ。
媛香にそう言いたくなった。俺は「生きるのって、楽しい?」なんて聞かれたんだぞ?
それのほうが、授業よりよっぽど気になる。
媛香も、そういう質問をされたらどうする?
はい、とか、いいえ、じゃ済まされないんだぞ?
どうせ、単純な媛香のことだ。すぐに忘れてしまうか、馬鹿らしい答えを言うに決まっているけど!
俺がそう考えていると、媛香が眼を丸くして、俺を見ていた。
驚いてる。眼を大きく見開いて。
俺を、怖がってるみたいに。
俺が、俺じゃない何かみたいに。
「……どうした、媛香」
「……今の真誠、すっごく怖かった」
「は?」
「なんだか、イラついてるみたい。それに、私のこと、軽蔑するような眼で見てた」
媛香はそういって、うつむく。
俺は、ため息をつき
「そんなことない。俺は、俺だよ」
といった。
すると、媛香は小さく首を振る。
「ううん、違う。私の知ってる、真誠じゃなかった」
媛香はそういって、さらに続ける。
「真誠、波月さんのこと話すようになってから、ちょっと変だよ? どうしたの?」
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