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『四』って、なんで嫌われるか、知ってる?
日時: 2012/08/23 17:09
名前: 香月 (ID: G7eOzdZ7)

プロローグ



 ねえねえ、どうして病院の部屋番号で、『四』が使われた病室がないのか、知ってる?

 『死』をイメージさせるからでしょう?

 せいかーい。
 『四』は、縁起が悪いのよ。無くすべきだわ。




 無くす、べきだわ。


* * * *

クリックしてくださり、ありがとうございます!

皆様のおかげで、十話&参照300いきました!私の脳内、ただ今大感謝祭開催中(←?)です(泣

そして、コメントも大募集中でございます…←

とにもかくにも、楽しんでいただけたら幸いです(^^♪

* * * * 

<登場人物>

篠原 蘭・・・主人公。長女。しっかり者だけど冷めた性格。

篠原 凛・・・次女。天然でおばかさん。楽観主義。

篠原 玲・・・長男。お調子者で、運動神経がいい。

篠原 塁・・・次男。無口だけど、超絶頭がいい。

* * * *

第一話 >>1 第十一話 >>21
第二話 >>4 第十二話 >>26
第三話 >>5 第十三話 >>29
第四話 >>6 第十四話 >>30
第五話 >>7 第十五話 >>34
第六話 >>8 第十六話 >>37
第七話 >>11第十七話 >>40
第八話 >>12第十八話 >>44
第九話 >>14
第十話 >>17

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Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.26 )
日時: 2012/05/11 15:55
名前: 香月 (ID: OldIND5q)

第十二話



 「あ、それともうひとつ」

 尻尾を一振りするシアン。

 「初めに注意しておくわ。わたしを殺そうとしたって無駄よ。わたしは森羅万象をつかさどる、科学の力が及ばない存在だから」
 「……どういう意味?」

 凛が、訳が分からないと言いたげな顔で私に訊いてきた。

 「…だから…全てのものを操ることができる、非科学的な存在ってこと……?」

 私は、凛にも分かるような言葉で翻訳する。
 とは言え、私も状況は飲み込めていないけど。

 「そうよ。だから、科学的に考えれば不可能なこと…あのウサギを殺すことだって難なくやってのけるし、こうして人間の言葉を話すことだってできる。『科学』なんて所詮、人間が勝手に定めた法則よ。科学には、例外なんて星の数ほどあるわ。わたしもその例外のひとつ。『科学』という妄説に、いつまでもとらわれていてはだめよ」

 ……そんな、有り得ない。
 つまりシアンは、化け物の存在を信じろ、と言っているようなものでしょ?
 そもそも、犬が話すってこと自体、信じられないのに。
 そのうえ、この世の全てのものを、自分の意のままに操れるなんて…。
 ……シアンは、何者なの……?

 「あ、そういえば」

 ふいに声を発したシアンが、どうでもいいことだけど、と前置きをしてから言った。

 「獣医さんが行方不明になったでしょう?あれも、わたしがやったのよ」
 「えっ!?」

 三人……私と凛と塁の裏返った声が、重なった。

 「だってあの人、余計なこと言うんですもの。わたしは、自分の計画を人に荒らされるのが嫌いなのよ。想定外の所でわたしの正体がばれてしまったら、気分悪いもの」

 ……そんなくだらない理由で?

 「獣医さんをどこへやったの?」

 私は、口調を少し強めて尋ねる。
 奥さん、すごく心配していたのに。
 どうでもいい理由付けで人に危害を加える方が、よっぽど気分悪い。気分、というか、気味が悪い。一体どんな神経をしてるの、あんたは。
 そう言いたかったけど、さすがにそこまでの勇気はない。

 「さぁねえ。わたしは知らない」
 「嘘!」
 「嘘じゃないわよ。私はただ、この世から出て行くように命令しただけだから」

 ………!!
 …それって…もう……。

 「あと、今入院している兄弟…玲くんだったかしら?いるわよね。その子の事故も、わたしのしわざよ。もう、うすうす気づいてたとは思うけれど」

 玲の事故まで……!
 そういえば玲、幽霊に突き飛ばされて車にひかれた、とか言っていた。あれは、シアンのせいだったんだ。

 「あの子のは、失敗したわね。本当は殺してしまいたかったんだけれど。…まあ、いいわ。これからが本当のお楽しみよ」
 「……何が、失敗だよ。なんでお前は、こんなことをするんだ?」

 塁。押さえているけど、怒っているのが声で分かる。

 「そうだよ!理由を教えてよ」

 凛も、嫌悪感をあらわにした顔をして言う。
 そんな私たちを見て、

 「……理由?そんなの簡単よ」

 シアンは笑った。

 「『四』っていう数字が、嫌いだからよ」

 怯える子どもたちを前にした、狂ったピエロのように。







 「全部、ぜーんぶ、あなたのせいなのよ」



Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.27 )
日時: 2012/05/12 20:32
名前: *天地少女* (ID: quLGBrBH)

あなたのせい??!
気になるーw
更新ふぁいとです

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.28 )
日時: 2012/05/20 10:07
名前: 香月 (ID: OldIND5q)

>*天地少女*さん

コメントありがとうございます(^^♪

さて、誰のせいなのでしょうか…w

乞うご期待!(自分でハードル上げてどうする)

これからものぞきに来て下さいね!

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.29 )
日時: 2012/05/20 10:30
名前: 香月 (ID: OldIND5q)

第十三話



 この時ほど、四つ子に生まれたことを恨めしく思ったことはない。
 『四』と言われたら、私たちが思うことはひとつ。

 「……私たちが、四つ子だから」

 凛が、ポツリとつぶやいた。

 「その通りよ」

 首を縦に振るシアン。
 そして続けた。
 相変わらず、薄ら笑いを浮かべつつ。

 「でも、安心して。四人全員を殺す気なんて、さらさらないから。わたしは一人だけでも殺せれば、それで満足よ」
 「……何言ってんの!?そんな理不尽なこと……!私たちが何をしたって言うの?何もしてないでしょっ!?」

 凛が叫ぶ。
 凛も、分かっているはずだ。
 シアンに何を言っても、意味がないことぐらい。
 それでも、藁にもすがる思いで叫んでしまうのは、みんな同じだ。

 「…何もしてないことはないわよ、凛ちゃん」

 シアンの声と共に、凛の肩がピクッと小さく震えた。
 私はシアンを見る。

 「と言うより、あなたが全ての元凶よ」

 シアンの目が、光を宿したようにきらめいた。
 ……ように見えたのは、私だけだろうか。

 「……何、言っているんだ?」

 塁が、一言一言を噛み締めるように訊く。
 …なんだか、嫌な空気。さっきより暗くなった気がする。

 「だってそうでしょう?」

 語尾を持ち上げて、首をかしげるシアン。

 「私をこの家に連れてきたのは、他でもない、凛ちゃんなのよ?」

 シアンは無邪気な表情を浮かべている。
 でも、その仮面の下がどんな顔なのかは、分からない。

 「分かるでしょ?凛ちゃん。
 あのウサギが死んだのも、
 獣医さんが消えたのも、
 玲くんが大怪我をしたのも、あなたのせいなの。

 全部、ぜーんぶ、あなたのせいなのよ」


 分かりたくもない、私は小さくつぶやいた。






 「……邪魔者は、取り除かなくちゃいけないわ」



Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.30 )
日時: 2012/05/27 14:54
名前: 香月 (ID: OldIND5q)

第十四話




 凛の表情が、見る見るうちに抜けていく。
 血の気も失せて、綺麗なはずの黒い瞳も虚ろになって。
 まるで、木偶のようだ。木彫りの人形。
 冷静にそんなことを考えている自分が、嫌になった。

 「そんな顔をしたって、もう遅いわよ。だって、あなたが選んだんですもの。わたしをこの家に連れてくるっていう選択肢を、ね。分かるわよねぇ、凛ちゃん?諸悪の根源は、あなたなのよ」

 …こいつ……凛を精神的に追い詰めて、身動きを取れなくしようとしている。
 …目的は?
 私は険しい顔つきで、シアンを見つめる。
 嬉々とした表情。
 その顔を見て、私はゾッとした。
 ……シアンは、人が絶望するのを見て、愉悦しているだけだ。目的なんてものはない。
 …なんて奴…!

 「凛ちゃん、も」
 「凛っ!」

 私は、シアンの言葉を鋭くさえぎる。
 こんな奴に、凛を好き勝手にされてたまるか。
 私は、横目でシアンをにらんだ。

 「凛のせいじゃない。いい、よく聞いて?
 りんの、せいじゃ、ないよ」

 私は一語一語を区切って、ハッキリと発音する。
 凛の心と頭に、刻みつけるように。

 「そうだよ、凛。こいつは、凛の反応を見て面白がってるだけだ。
 俺たちの言葉じゃない。
 俺たちが言ったんじゃないんだ。
 凛が責任を感じるようなことは、何一つない」

 塁も、いつもより強めの声で凛に語りかける。
 その言葉に促されたように、凛が顔をこちらに向けた。

 「……」

 今にも泣き出しそうな顔。
 ……よかった。表情が戻ってきた。
 凛には悪いけど、私はほっと胸をなでおろした。
 表情のない凛の顔は、まるで暖かみのない人形のようで、怖い。凛自身まで抜けていってしまったような、気がして。

 「……あーあ、残念。せっかく凛ちゃんのお顔、綺麗だったのにねぇ」

 シアンがまた話し出した。

 「死体みたいで、ね」

 満面に笑みをたたえている。
 死体なんて……縁起でもない。

 「さてと…もう言うことも無くなって来たし、そろそろ準備に入るとしましょうか?」
 「……準備?」

 塁が怪訝な目をシアンに向けた。

 「そうよ」

 うなずいて、豊かな毛に包まれたしっぽを立てるシアン。

 「思う存分楽しむために……邪魔者は、取り除かなくちゃいけないわ」

 私はそのしっぽが振り下ろされるのを最後まで見ることなく、意識が途絶えた。








 「……お父さん?……お母さん?」



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