ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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『四』って、なんで嫌われるか、知ってる?
日時: 2012/08/23 17:09
名前: 香月 (ID: G7eOzdZ7)

プロローグ



 ねえねえ、どうして病院の部屋番号で、『四』が使われた病室がないのか、知ってる?

 『死』をイメージさせるからでしょう?

 せいかーい。
 『四』は、縁起が悪いのよ。無くすべきだわ。




 無くす、べきだわ。


* * * *

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皆様のおかげで、十話&参照300いきました!私の脳内、ただ今大感謝祭開催中(←?)です(泣

そして、コメントも大募集中でございます…←

とにもかくにも、楽しんでいただけたら幸いです(^^♪

* * * * 

<登場人物>

篠原 蘭・・・主人公。長女。しっかり者だけど冷めた性格。

篠原 凛・・・次女。天然でおばかさん。楽観主義。

篠原 玲・・・長男。お調子者で、運動神経がいい。

篠原 塁・・・次男。無口だけど、超絶頭がいい。

* * * *

第一話 >>1 第十一話 >>21
第二話 >>4 第十二話 >>26
第三話 >>5 第十三話 >>29
第四話 >>6 第十四話 >>30
第五話 >>7 第十五話 >>34
第六話 >>8 第十六話 >>37
第七話 >>11第十七話 >>40
第八話 >>12第十八話 >>44
第九話 >>14
第十話 >>17

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Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.6 )
日時: 2012/03/13 17:57
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

<第四話>



 「もちろん、いいわよ」

 二つ返事で許可するお母さん。
 まあ、そうだろうなとは思ってたけど。

 「やった!お母さんサイコー!」

 凛が喜んでいる。
 お母さんも、もっと家計のことを考えてもいいんじゃないだろうか。

 「凛!新しい飼い主が見つかるまでだからね。忘れないでよ」

 満面の笑みの凛に、水をさす私。

 「分かってるよー・・・。でも、どうやって探せばいいの?新しい飼い主」
 「友達に片っ端から訊くとか、町中に貼り紙するとか」
 「あっ、なるほど!でも、貼り紙作るの面倒だな〜」
 「だったら、私が作る」
 「えっ、ホント?・・・なんか蘭、やる気だねー。そんなに犬嫌いだったっけ?」

 ・・・嫌いだよ。この犬は、ね。
 凛の質問に、心の中でつぶやく。
 さっきチワワが笑っているのを見てから、チワワの方を見るのがなんとなく怖い。もちろん錯覚かもしれないし、笑ったからなんだといわれたら何も言えないけれど、私は言いようのない不安に襲われていた。
 とにかくできるだけ早く、このチワワには我が家を出て行ってもらいたい。
 そんな思いからの、飼い主探し全面協力の申し出だった。
 私が本気を出せば、新しい飼い主なんて一週間足らずで見つかるでしょ。
 ・・・なんて余裕に思っていたが、なかなか難航しそうな兆しが見えてきた。
 うちの家族が、思いのほかチワワを気に入ってしまったのである。

 「本当、この子の鼻かわいいわねー」

 頬に手を当てて言うお母さん。
 着眼点、鼻なんだ。

 「母さん、今週の日曜にでも犬小屋買いに行こうか」

 ゆるんだ顔で言うお父さん。
 その顔にちょっと引く私。

 「犬小屋なら、うちにあるダンボールで作れるんじゃない?」

 楽観主義の凛。
 もはやここまでだと、楽観主義というよりただの非常識な人だ。

 「なー、こいつボール取ってきたりできるんだよな?」

 運動主義の玲。
 きっと今玲の頭の中では、フリスビーとかが飛びかっているんだろう。

 「・・・・・・」

 沈黙主義の塁。
 塁は今のところチワワに関してはノーコメントだけど、チワワを凝視している。興味はあるみたいだ。
 ・・・まずいな。
 そう思った現実主義の私は、五人に釘をさす。

 「うちじゃ飼えないんだからね」

 このムードだと、確実にこの得体の知れないチワワを飼うことになってしまう。
 ていうかよく考えれば、チワワが捨てられていたなんて、やっぱりおかしい。うちの家族にも、こんなにうけがいいんだ。わざわざ手放す人なんて、そうそういないはず。だからって凛が嘘をつくとは思えないし、何かいわく付きなんじゃ・・・?
 険しい表情で考えていたら、ふと視線を感じた。顔を上げると、視線がぶつかる。

 ・・・また、あのチワワだ・・・。

 そうとだけ思って、すぐさま目をそらす。
 急に、心臓の音が大きくなる。

 なんで、こっちを見ていたの?
 まさか、私の考えていたことが、分かったから・・・?

 「ねえ!蘭ってば、聞いてる〜?」

 凛の声に、はっとする。

 「あ・・・ごめん、何?」

 我に返った私は、もう一度チワワを見る。
 チワワは、凛の腕の中で目を閉じていた。
 少し心臓の音が和らぐ。
 ・・・うん、そうだよ。人の考えが分かるなんて、非科学的だ。ありえない。考えすぎなんだ、きっと。
 半ば自分に言い聞かせるようにして、私は頭を振る。
 悪い方にばかり考えるのはやめよう。

 「だからさ、父さんたちもいいって言ってんだし、このチワワうちで飼おうって話」

 玲がテレビを見ながら言う。
 テレビに映ってるのは、甲子園球場。今日はこの台風で野球どころじゃないだろうから、録画しておいたものだろう。

 「・・・いいんじゃない」

 私はため息まじりで言った。
 テレビの中の投手が、体を横に向ける。

 「えっ、いいの!?」

 凛が驚いたような声を出す。
 投手は足を上げ、体をひねって、ボールをかかげた。

 ・・・その手から繰り出されるボールは、ストライクか、デッドボールか。


 次の日。

 「・・・ウソ、でしょ・・・?」
 「・・・ジャクソン・・・・・・」



 ・・・ストライクか、デットボールか———。




Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.7 )
日時: 2012/03/18 11:06
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

<第五話> ※少しグロい描写があります。苦手な方、ご注意を。



 「うーんとー、ドッグフードにトイレ用シート…」
 「遊び道具も必要じゃないかしら?」
 「あと、首輪とリードもな!」
 「ドッグフードは、父さんが明日の帰りにでも買ってくるよ」

 大いに盛り上がっている、塁と私を除く四人。お父さんたちまで、いい年して…。
 塁はもうチワワに興味が無くなってしまったのか、テレビを見ている。さすが塁、切り替えが早い。

 「ねえ、そういうのもいいけどさ、まずは名前決めたら?」

 私は興奮している四人に呼びかける。
 なるほど、というように手をたたいて、凛が言う。

 「ああ、そうだね!じゃあ……そうだ、『さつお』なんてどう!?」

 …は?さつお?
 凛の不思議発言に、目が点になる私。

 「なんで?」
 「私今、さつまいもにハマってるんだ〜」

 ・・・なんでもかんでもハマっているものにちなんで名前をつけるのは、やめてもらいたい。

 「そんな江戸時代にいそうなのはだめだ!ここはやっぱ『ベーブ・ルース』だろ」
 「ベーブ・ルース?誰それ」
 「知らねーのか?蘭らしくねえな。イギリスのホームラン王だよ!塁、知ってんだろ?」
 「うん。ちなみにイギリスじゃなくてアメリカ」
 「……」

 面目丸つぶれの玲。ドヤ顔だっただけに、余計に痛々しい。
 さらに塁は、私さえ忘れていた、根本的なことを指摘する。

 「っていうかこのチワワ、メスなんだよね?」
 「…あっ」
 「そういやそうだな」
 「…私も忘れてた」

 …さて、仕切り直しである。

 「『まいもん』は?」
 「どっかのゆるキャラみたいになっちゃってる。却下」
 「『ベール・ルイス』とか」
 「…それ、ベーブ・ルイスのパクリ…あっ、間違えた。ややこしい!却下!」
 「ポチ」
 「えっ…それは、ちょっと…ライオンにタマって言ってるようなもんなんじゃ…」

 思いついた名前を連ねてみたものの、なかなか…というか全然パッとしない。
 何か、チワワにぴったりな、オシャレな感じの…。
 …そうだ!

 「ねえ、『シアン』は?」
 「シアン?」
 「うん。フランス語で犬って意味」

 なぜ知っているのかというと、クラスにいるフランスからの帰国子女に教わったからである。
 なぜか『シアン』が印象深くて、まだ覚えていた。

 「シアンかー、うん、いいかも!」
 「なんかチワワっぽいな」
 「俺もいいと思う」

 …というわけで、満場一致でチワワの名前が決定した。
 『シアン』
 我ながらいい名前だと思った。
 そのときは。

 
 次の日。
 目覚まし時計の音で起きた私は、いつものように制服に着替える。
 窓の外を見ると、青い空が広がっていた。昨日の嵐が嘘のようだ。

 「凛。早く起きないと遅刻するよ」
 「…う〜ん」

 凛を起こしてから、階段を下りる。
 一階は静か。お父さんたちはまだ起きていないみたいだ。
 リビングのドアを開ける。
 ……あれ…?
 ドアを開けたとたん、変な臭いがかすかに漂ってきた。
 なんだろ……?
 重苦しくて、鼻に残るような臭い。
 恐る恐る、リビングに足を踏み入れる。
 一歩、二歩、三歩。
 歩くたびに、臭いが強くなる気がする。
 そして、四歩目を踏み出したとき、視界の端に、赤い何かが映った。

 「……」

 汗が一筋流れるのを感じる。
 私は壊れたロボットみたいに、ゆっくり、ぎこちなく、首を回した。

 「……う……」

 思わず手を口に持っていく。

 「ふあ〜。もっと寝てたいー。あっついし…」

 凛の声が、背後から聞こえる。
 ……止めなきゃ。見るなって、言わなきゃ。
 そう思うのに、なぜか体が動かない。声が出ない。

 「おはよー、蘭。…蘭?どうし………っ!!」

 凛の、息をのむ音。

 「…嘘、でしょ…?」
 「…ジャクソン…」

 少し黒ずんだ赤い血溜まりの中央に、体のほとんどが血に染まったジャクソンが横たわっていた。元の毛が何色だったのか分からないほどだ。
 私たちはそんなジャクソンの姿を、ただ見つめるしかなかった。
 何分、そうしていただろう。
 急に気配を感じて、振り返る。

 「……シアン」

 凛が、つぶやいた。


 その日の夜。
 
 「……猛、毒……」

 私は無意識につぶやいていた。




 

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.8 )
日時: 2012/03/23 15:45
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

<第六話>



 「…であるから、この憲法九条に基づいて…」

 若い女の先生が、教壇の上で動き回っている。
 私の好きな、社会科の授業。
 なのに、ぜんぜん頭に入ってこない。
 眠いからじゃない。
 今朝の光景が、頭から離れないからだ。


 あの後、お父さんたちも起きてきて、獣医さんを呼んだ。
 もしかしたら、まだ助かるかも…という薄い望みからだった。
 でも、ダメだった。
 あんな朝早い時間に来てくれた親切な獣医さんは、ジャクソンを丁寧に診てくれた後、私たちに奇妙なことを言った。

 「篠原さん、ジャクソン君なんですが、少しおかしなことがありまして」
 「おかしなこと?」
 「ええ。あんなに血が流れていたのに、ジャクソン君には傷がないんです」
 「え?」
 「周りの血がジャクソン君のものかどうかは、DNA鑑定をしないと分かりませんが…」

 本当に、奇妙な話だ。
 私は学校に向かう道でも、遅刻で学校に着いてからも、ずっと獣医さんから聞いた話について考えていた。
 
 傷がないのに血を流す方法なんて、まず無い。周りの血がジャクソンのものじゃないなら話は別だけど、物理的に不可能だ。
 
 そうすると考えられるのは、あの獣医さんが嘘をついていた、ということ。普通に考えたら、これが一番ありえる。
 …いや、ないな。
 私は首をふる。
 あの獣医さんが嘘をついて得することは、何も無いはずだ。逆に人格を疑われる可能性だってある。多分、とても正直で親切な人なんだろう。そんな人が、わざわざあんな嘘をつくとは思えない。

 となると、あとは…。
 ここまで考えたとき、急に私の脳裏に凛の声が響いた。

 『……シアン』

 かすかに、震えていた。

 「……」

 私は前を見つめる。
 授業はもう終わっていた。


 学校からの帰り道。
 空が茜色に染まっている。
 腕時計を見ると、もう七時。なのにまだ蒸し暑い。

 「蘭!」

 ふいに背後から声がかかる。
 ふり返ると、褐色の肌と白い歯が、私の目に映った。

 「…玲」
 「よー、帰り?」
 「当たり前じゃん」

 家に帰る以外に、何か用があるのだろうか。

 「あ、そうそう。この前向井が、蘭と進展がないーとか訴えてたぞ」
 「なんであんたが言うの」

 向井くんとは、クラスメイトにして私の彼氏だ。
 彼氏といっても、形式上の、だけど。
 とはいえ、別に嫌いなわけでもなく、むしろ話してると比較的楽しい。果たしてこれが『恋』なのかが、よく分からないだけ。

 「いやあ、俺なりに心配なわけよ、向井とは仲いいからな」

 あまり玲に心配されたくない。なんか下剋上された気分だ。

 「それはどうも」
 「…で?どこまでいった?」
 「はい?」
 「とぼけんなよ。もうキスはしたんだろ?」

 玲の質問に、私はほほ笑む。

 「どうでしょう?」
 「何だよ、教えろよ」
 「…聞いて驚け。まだ手もつないだことない」

 目が点になる玲。
 ちなみに私と向井君は、もうすぐ付き合って半周年。

 「…あー、それはかわいそうだわ、向井」
 「なんで?いいじゃん、ピュアな少女でしょ」
 「自分で言ってる時点でピュアじゃねえよ」

 玲と言い合いながら家に入る。
 入ったとたん涼しい空気に包まれて、思わず吐息をもらした。

 「お帰り、二人とも」

 お母さんだ。今日は出掛けてないらしい。
 どうせなら、こういう晴れた日に出掛ければいいのにと思うのは、私だけだろうか。

 「母さん、アイスある?」

 玲がエアコンの前を陣取って言う。

 「あるけどご飯前なんだから、一個だけよ」
 「サンキュ!」
 「蘭は?」
 「私はいいや」
 「あら、そう?」

 こんな時間にアイスなんて、胃がもたないと思った私は遠慮する。

 「あ、そういえば」

 お母さんが何かを思い出したように、私たちに顔を向けた。

 「今朝来てくれた獣医さんの奥さんから、さっき電話があったのよ」
 「電話?」
 「そう。なんかね、獣医さんが私たちの家に来てくれてから、まだ帰ってないらしいの」
 「え?」
 「蘭に玲、何か知らない?」



 その日の夜、私は本棚から辞書を引っ張り出した。
 ある単語の意味を、調べるために。

 「シ…シ……あった」

 シアン。
 刺激臭のある、猛毒気体。

 辞書には、そう書いてあった。

 「…猛、毒………」

 私は無意識につぶやいていた。




 「……玲?どうかしたの?」
 『…蘭…やばい、俺……血が、とまん…ない…』
 「…玲?…ウソ?玲っ!どうしたの!?玲!!」



Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.9 )
日時: 2012/03/24 22:12
名前: るな ◆OMIlZuXo5U (ID: WmpS5rDY)

初めまして!
すごく面白いです!
続きが気になります

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.10 )
日時: 2012/03/25 09:41
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

 >るなさん


 コメントありがとうございます!

 うれしいです(^^♪

 これからも読んでもらえるとありがたいです!


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