ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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『四』って、なんで嫌われるか、知ってる?
日時: 2012/08/23 17:09
名前: 香月 (ID: G7eOzdZ7)

プロローグ



 ねえねえ、どうして病院の部屋番号で、『四』が使われた病室がないのか、知ってる?

 『死』をイメージさせるからでしょう?

 せいかーい。
 『四』は、縁起が悪いのよ。無くすべきだわ。




 無くす、べきだわ。


* * * *

クリックしてくださり、ありがとうございます!

皆様のおかげで、十話&参照300いきました!私の脳内、ただ今大感謝祭開催中(←?)です(泣

そして、コメントも大募集中でございます…←

とにもかくにも、楽しんでいただけたら幸いです(^^♪

* * * * 

<登場人物>

篠原 蘭・・・主人公。長女。しっかり者だけど冷めた性格。

篠原 凛・・・次女。天然でおばかさん。楽観主義。

篠原 玲・・・長男。お調子者で、運動神経がいい。

篠原 塁・・・次男。無口だけど、超絶頭がいい。

* * * *

第一話 >>1 第十一話 >>21
第二話 >>4 第十二話 >>26
第三話 >>5 第十三話 >>29
第四話 >>6 第十四話 >>30
第五話 >>7 第十五話 >>34
第六話 >>8 第十六話 >>37
第七話 >>11第十七話 >>40
第八話 >>12第十八話 >>44
第九話 >>14
第十話 >>17

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Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.1 )
日時: 2012/05/02 18:05
名前: 香月 (ID: mt080X2r)

<第一話>



 窓がガタガタ鳴っている。幽霊登場シーンで流れてきそうな、怪しい風の音。
 はーあ、超憂鬱。こんな日でも、学校は平常営業。いっそのこと、学校なんて風に飛ばされちゃえばいいのに。火事でもいいけどさ。
 何でもいいからとにかく、無くなって欲しい。

「蘭、蘭!起きて!外見て、そとっ!」

 そんな危ない思考を破る、凛のうるさい声。何をそんなに興奮しているんだ。

「らんっ!起きてる?」
「朝っぱらからうるさいよ。とっくに起きてるよ」

 ドアを壊す勢いで入ってきた凛に、ため息まじりで言う。

「外見た?」
「見たけど」
「やばくないっ?」
「何が?」
「台風八号!すごい風!こんなの生まれて初めてだよ〜!」

 無駄に騒ぐ凛。さすが天然おばかさんだ。学校のテスト0点連続取得記録を塗り変えただけのことはある。

「警報出てる?」

 ベットから這い出ながら、少し期待を込めて聞く。もしかしたら、学校が休みになるかもしれない。
 そう思いつつ足を動かすと、鈍い痛みが走る。
 そういや昨日、久しぶりの部活だったな。完全に筋肉痛だ。余計に気分が重くなる。

「出てるよー!さっき塁が言ってたんだけど、何だっけな。えっとー」
「あー、いいよ。塁に訊くよ」

 制服を手に取る。凛の記憶力の悪さは、私が誰よりも知っている。ぬか喜びする羽目になるのはごめんだ。

「今日、学校あるかなー?」
「さあね。警報次第だと思うよ」
「休みになったらやだなあ」
「なんで?」
「え?フツーにヤじゃない?」

 凛の思考回路は理解不能だ。同じ親から生まれたのに、何でこうも違うのだろうか。生命の神秘ってやつ?いやでも、性格は環境によって変わるって、あのハゲ担任が言っていたような気がしなくもない。
 階段を下りながら、好きでもない生物分野のことを考えていたら、

「蘭!社会のノート貸してくんね?」

 玲の日に焼けた顔が目に飛び込んできた。玲は、どんな環境で育てられたらこうなるんだと言いたくなるほどの、スポーツバカだ。そう、スポーツ『バカ』なのだ。

「何でよ、塁に借りてよ」
「俺はもうほかの人に貸しちゃってるんだ。だから無理」

 背後から静かな声。
 塁は、親からすれば理想過ぎるほどの天才で、私の唯一の敵だ。一度でいいから、塁よりいい点がとりたい!・・・というのが、私の目下の目標なのである。

「な!だから、蘭に頼むしかないんだよ」
「私は〜?」
「凛のノート、解読不能だからだめだ」
「えっ、ひっど!玲のだって、象形文字じゃん!」

 私は、どんぐりの背比べを始めた玲と凛を無視して、塁に尋ねた。

「塁、今警報出てる?」
「うん。でも、学校からは連絡無いから、休みじゃないよ」

 塁が、私の考えを見透かしたように言う。
 塁が言うんなら、絶対だ。あーあ、超最悪。ちょっと期待してたのに。なんか、胃がむかむかしてきた。朝ごはん食べるの、面倒だな・・・。
 と、思った矢先に、

「ほら、そこの四人!早く食べないと、遅刻するよ!今日は風も強いんだから、飛ばされないようにいっぱい食べておかなきゃ」
 
 お母さんの声。後半のセリフに多少疑問はあるが、私は素直に返事をした。
 我が家には、どんなに遅刻しそうでも、たとえ遅刻をしても、朝ごはんは抜いてはいけないという非常に面倒な決まりごとがある。胃のむかつきだって、決して例外ではないのだ。

「いただきまーす」

 若干ずれてはいたが、そろって声を上げた私たち四つ子は、目の前に用意された食事を黙々と食べ始めた。

 

 そう、私たちは四つ子なんだ。

 

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.2 )
日時: 2012/03/04 12:47
名前: 輝 ◆sSA6ZLKK6w (ID: EE/vzbC4)


タイトルに惹かれてやってきました!
四つ子ですか!

偶然にも私もコメディ・ライトの方で四つ子の小説を描いているんです!
(↑宣伝っぽいですねw・・、さーせん、)

なんか親近感わk(ry((

四という数字を悪いほうに捉えるかいいほうに捉えて考えるかで自分の中の世界って変わりますもんね、(

更新がんばってくださいb

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.3 )
日時: 2012/03/04 15:40
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

>輝さん


コメントありがとうございます!すっごいうれしいです!

そうなんですかー奇遇ですね!四つ子ブーム到来の兆しか!?・・・
・・・・・・。

輝さんの小説見てみますねb(あっ・・・なんか上からですいません!)

がんばりますので、駄文ですがこれからものぞきに来て頂けるとありがたいです!

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.4 )
日時: 2012/03/11 10:12
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

<第二話>




「行ってきます」

 決して明るいとは言えない声でいい、ドアを押す私。心なしか、ドアがいつもより重く感じられる。

「わーーー!!」

 そんな暗い心持ちの私の目に、嵐の中で叫んでいる人影が映った。狂った人みたいだ。

「・・・何やってるの」
「あっ、蘭!何か言った?」
「何で叫んでるの?」
「え?鍋?」

 すさまじい風のために聞き取りにくいのか、凛は何度も聞き返す。
 面倒くさくなった私は、適当にあしらってから体の向きを変えた。風に舞い上がる髪を押さえつけながら、重い足を動かす。
 まだ雨が降っていないだけましだ。これで雨まで降っていたら、仮病を使ってでも学校を休んでいただろう。

「あっ、待ってよ。塁と玲は?」
「二人とも先に行ったよ」
「あれ、そうなの?」

 すごいことになっている髪を気にもせず、こちらに走ってくる凛を見てから、私は空を見上げた。
 何重にも重なった雲が、すばやく動いている。
 まさしく『曇天』という言葉の響きがぴったりな空模様に、私は少し不安になった。





 『四つ子であることの弊害』は、色々ある。
 というかまず、「四つ子だ」と言うだけで大抵の場合騒がれる。

「えーっ、マジで!?」
「似てる!?」
「今度写真見せてー!」

 ・・・などなど。
 まあ、これがごく普通の反応なわけだが、私にとってはうっとうしくて仕方がないのである。単純な玲や凛は別に気にならないかもしれないけど、ていうかむしろ嬉しいんだろうけど、私は騒がれるたびに、

「もっと静かに会話できないの?」

 ・・・と言いたくなる気持ちを抑えて、愛想笑いを振りまいている。
 これが、意外と精神力を浪費する作業なんだよな・・・。
 本当の自分をさらけ出せないって言うのは、なかなかに疲れる。いつもボロが出ないように、気を張っていないといけないからだ。面倒くさいことこの上ない。
 そんな訳で、私は学校という所が嫌いだ。
 いじめを受けている人からすれば、鼻で笑いたくなるような理由だとは思うけど、私的には結構な悩みの種なんだ。

 話が脱線したので元に戻すと、『四つ子であることの弊害』その2は、『比較』だ。
 これは四つ子だけに限った話ではないが、一応こんな私でも、比べられることに苦しんでいた。
 玲や塁たちとは性別が違うのでまだよかったが、凛と比べられる頻度はかなり高かった。
 一卵性って言うのは本当に拍手したくなるほどに顔が同じで、違うのは中身だけ。中身が残念な私は、やっぱりどんなに猫をかぶっても、凛みたいに人と心からうちとけられなかった。それゆえに、昔はよく凛をうっとうしく思ってもいた。
 けど、よく考えたら、凛も同じなんだよね。・・・っていう当たり前なことに、あるとき気が付いた。
 凛は、勉強面で相当苦労していた。していた、と言うか現在進行形だ。そんなそぶりは見せないけど、周りにも私と比べられて、色々言われているんじゃないかと思う。
 それでも、私みたいにひがんだりしない凛は、本当にすごい。まあ、そんなこと考えもしないだけかもしれないが。
 それに凛は基本的に性格がいいから、今では割と凛が好きだ。昔はわら人形の作成を考えてしまうぐらい、気に食わなかったけど。
 ただ、あのバカさ加減はもう少しどうにかならないものかと、たびたび思う。まあ、それが凛のとりえ(?)でもあるし、仕方ないんだろう。

 『四つ子であることの弊害』は、自分の部屋がない、テレビのチャンネル奪い合い戦争がたびたび勃発する・・・とか、挙げればきりがない。なのでこの辺にしておくが、今思うと、あれも『四つ子であることの弊害』のひとつだったのかも知れない。いや、確実にそうだ。
 まさか、朝に感じた不安が大当たりするとは、思ってもみなかった。


「・・・何それ?」
「えへへ・・・捨てられててかわいそうだったから、連れてきちゃった」
 
 へらへらと笑う凛の腕に抱かれていたのは、大きな瞳が目に焼きつく、黒っぽいかたまりだった。


 

Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.5 )
日時: 2012/03/10 17:56
名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)

<第三話>



 「はぁ」

 私は短くため息をつく。
 右手にはぬれたカバン、左手には見るも無残な姿の傘。
 この傘、お気に入りだったのに・・・。
 学校帰りの道中ですべて折れてしまった骨から、水色の布が垂れ下がっている。こうなってしまっては、もう手のほどこしようがない。
 これと似たような傘を買うしかないか・・・。
 傘をめちゃくちゃにしてしまった風と雨とを恨みつつ、目の前のドアを開けて、家の中に入る。

 「あ、おかえりー!」

 凛の声。一足先に帰っていたようだ。

 「雨、まだひどいの?」
 「うん。やむ気配なし。お母さんは?」
 「いないみたい。たぶん買い物だと思うよ」
 「そう。こんな天気の中買い物なんて、さすがお母さん」
 「ほんとほんと〜」

 凛とドア越しに話しながら、洗面所にタオルを取りに行く。洗剤のいい香り。お母さんによると、フレッシュフローラルとかいう香りのする洗剤らしい。新鮮な花の香りって何だろ、なんて思いながら、タオルで雨にぬれた髪をふこうとしたとき。

 「ねえねえ、蘭!見てよ、この子!」
 「この子?」
 
 洗面所に入ってきた凛の言葉に嫌な予感がした私は、眉をひそめながら振り向く。

 「かわいいでしょっ?」
 「・・・何それ?」
 「えへへ・・・捨てられててかわいそうだったから、連れてきちゃった」

 へらへらと笑う凛の腕に抱かれていたのは、大きな瞳が目に焼きつく、黒っぽいかたまりだった。黒っぽいかたまりは、じっとこちらを見つめている。少したじろぐ私。

 「・・・何?犬?」
 「ピンポーン!子犬だから、まだちっちゃいの。しかもチワワだよっ!?」
 「チワワ?・・・それ、本当に捨てられてたの?」

 チワワを捨てる人間なんているのか?と思った私は、凛に訊く。まして子犬である。ペットショップで買ったら、相当な金額になるはずだ。

 「うん。ダンボールの中にこの子が入ってて、『メスのチワワです。拾ってあげてください』って書いてあったの」
 「その捨て方、まだ絶滅してなかったんだ」
 「そうみたいだね〜」
 「・・・それ、本当にチワワ?」
 「そうだってばー。ほら、よーく見てみなよ!」

 凛に言われて、チワワ(仮)に少し顔を近づける。
 ふさふさした黒い毛並みに、大きめのつぶらな瞳。そして何よりこの小ささ。チワワは、犬の中で一番小さい犬種だからなあ。
 ・・・確かに、見た目はチワワだけど・・・。

 「ね?チワワでしょ?」
 「・・・うーん」
 「とにかくチワワだよ!チワワじゃなくてもチワワなの!」
 
 いや、チワワじゃなかったらチワワじゃないでしょ。ていうかチワワ何回言ってるの。
 ・・・とは言わず、私は凛がこのあと言い出しそうなことを、先に否定しておく。

 「何でもいいけど、うちじゃ飼えないからね」

 この言葉に、凛は予想通りの反応を示した。

 「えーっ!!なんで〜!?ジャクソンは飼ってるじゃん!何でこの子はだめなのー?」

 ジャクソンとは、うちで飼っているウサギのことだ。名付け親はもちろん凛。ジャクソンを飼い始めた頃、凛はちょうど某世界的有名歌手にハマっていて、その人にちなんでつけた名前らしい。
 なんでファーストネームの方にしなかったのかという謎は残るが、まあ今はそんなことどうでもいい。凛にチワワ(仮)を飼うのをあきらめさせることの方が先決だ。

 「ジャクソンがいるからだよ。エサ代とかも、バカにならないんだよ?」
 「・・・じゃあ、お母さんとお父さんに訊いてみるよ」
 「あの二人は、いいって言うに決まってるでしょ」

 そう、うちの両親はそういう人たちなんだ。この親あってこの子あり、ってかんじ。あ、あくまでも凛の場合だけど。

 「でも、この雨風の中ほっぽっとくなんてかわいそうだよ。食べ物もないだろうし」

 私は窓の外に目をやる。まだ木々がうねっている。とてもやみそうにない。

 「まあ、そうだけど・・・」
 「ね?でしょ!?じゃあ、飼っても・・・」
 「新しい飼い主が見つかるまでなら、いいと思うよ」
 「えっ・・・?」
 「この狭い家じゃ、その子がかわいそうでしょ?チワワって室内犬だし」

 うちは一応一軒家だけど、4LDKで、決して広いとは言えない。

 「ま・・・まあ・・・そうだけど・・・」
 「じゃ、そういうことで」
 「・・・まぁ、いいか!うん、分かった!よかったねー、チワワちゃん!」

 単純な凛の腕に抱かれたチワワは、小さくしっぽを振っている。一応なんとなく、何言ってるか分かるのかな。
 そんなチワワの姿をぼんやりと眺めていたら、急に背筋に寒気が走った。思わず一歩さがる。

 チワワが、笑っていた。こちらを、向いて。
 
 口の両端を左右に大きく持ち上げて、目を細めて、笑みを浮かべていた。人間みたいに。
 その笑みが不気味に見えたのは、光の加減のせい?それとも、私の目の錯覚?

 ・・・それとも・・・・・・。



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